Steam同接上位に君臨する猫ゲーム『Bongo Cat』、実は「まったく儲かってない」。でも開発者いわく“真の効果”はお金じゃない

台パン猫放置ゲーム『Bongo Cat』はリリース以来、Steamの同時接続プレイヤー数ランキングで上位の常連となっている。ただ本作には利益がほとんどないという。

台パン猫放置ゲーム『Bongo Cat』がSteamに登場してから4か月あまりの時が経った。2025年2月のデモ版公開、そして3月のリリース以降、Steamの同時接続プレイヤー数のランキングでこのかわいらしい猫の姿を見ない日はない。しかし、デベロッパーのIrox GamesのCEOであるMarcel Zurawka氏が海外メディアEurogamerのインタビューで語ったところによると、本作は「赤字運営」ながら「戦略的成功」を収めているという。

『Bongo Cat』は、プレイヤーがキー入力やマウスのクリックをすると猫が「台パン」するように手を動かす放置ゲームである。元ネタとなったのは、クリエイターのStrayRogue氏が最初に台パンする猫のイラストを公開し、DitzyFlama氏が『スーパーマリオワールド』のBGMとボンゴの画像を付け足したことで2018年ごろから流行した同名のネットミーム。本作は、それを元にZurawka氏が放置ゲームに仕立て上げたものだ。

本作はSteam放置ゲームフェスでデモ版が話題となったことを皮切りに、3月のリリース以降はプレイヤー数を伸ばし、本稿執筆時点で連日ピーク時約17万人のSteam同時接続プレイヤー数を記録している(SteamDB)。ただしZurawka氏は、正確な数値はわからないものの、このうちおよそ半数は人間ではなくボットではないかと考えているそうだ。

Zurawka氏によれば、多くのプレイヤー数とは裏腹に『Bongo Cat』はほとんど収益を上げていないという。同作は無料で配信がおこなわれており、Steam上の課金アイテムや、プレイヤー間のアイテム売買の手数料が収益のもととなっている。先述のボットも、この手数料を目当てに稼働しているわけだろう。そうした背景からか、『Bongo Cat』がこれまでにあげている純利益は平均して月々約3000ドル(約43万円)とのこと。これは開発者1人分の人件費にも満たず、赤字運営をしているのが実情だそうだ。現在ボット対策も検討されているという。

それにも関わらず、『Bongo Cat』が「戦略的成功」を収めているとZurawka氏が語るのは、その「マーケティング効果」によるものだ。現在Irox Gamesは、『OKU』という日本風の世界を僧侶として旅する3D探索アドベンチャーゲームを開発中である。本稿執筆時点で『OKU』のSteamウィッシュリスト登録数は5万件を超えており、YouTubeにアップロードされたトレイラーもこれまでに14万回以上再生されている。実は、Steamで『OKU』をウィッシュリスト登録したり、トレイラーの視聴をすると『Bongo Cat』内のアイテムをもらうことができる。『Bongo Cat』が新作の広報役となっているわけだ。


また、『Bongo Cat』が同時接続プレイヤー数のランキングに居続けていることにより、スタジオの認知度を向上させる効果もあったようだ。これまでは返信すらなかったパブリッシャーからも返信が来るようになり、パブリッシャーを探して回らなければならなかったところ、今では向こうから声をかけてくるとZurawka氏は語っている。

そうしてIrox Gamesの一風変わった広告塔となっている『Bongo Cat』はもともと実験的な作品だったそうだ。邪魔にならない放置ゲームというコンセプトで、Steam上のゲーム内アイテムを売買できる「コミュニティマーケット」上の実験ができるものとして2024年12月ごろに開発がスタート。最初は猫ではなく「石」をドリルで掘削し続けるゲームだったという。Irox Gamesのオフィス内でスタッフにプロトタイプを見せているうちに猫にするアイデアが生まれ、さらにネットミームとなった「Bongo Cat」へと発展していったようだ。

実験的プロジェクトとして始まり、強力な広告塔となった『Bongo Cat』には、今後さらなるアップデートも予定されているという。内容については語られていないが、プレイヤー数を大幅に増大させるもので、ゲームの遊び方自体も変わりうるもののようだ。アップデートの配信は2025年7月から8月となる見込みだ。


『Bongo Cat』はPC(Steam)向けに配信中。

Naoto Morooka
Naoto Morooka

1000時間まではチュートリアルと言われるようなゲームが大好物。言語学や神話も好きで、ゲームに独自の言語や神話が出てくると小躍りします。

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