売上100万本ローグライト『BALL x PIT』大ヒットの秘訣は「プレイヤーの時間を尊重」する作り。“やりたくないこと”をさせない楽しさループ
本作が成功した要因の一つとして、「プレイヤーの時間を尊重する」という設計思想があると販売元は分析する。

Devolver Digitalから発売された『BALL x PIT』が100万本を超える大ヒットを記録している。同社の共同創業者は、本作が成功した要因の一つとして、「プレイヤーの時間を尊重する」という設計思想があると分析している。GamesIndustry.bizが報じている。
『BALL x PIT』は、ブロック崩しのように敵を倒すローグライトアクションゲームだ。ステージは縦スクロールで進行し、迫り来る敵の大群に対してボールを投げ、経験値を集めてレベルアップすると3択のパワーアップを選択する。ボールにはさまざまな効果が存在し、道中で新たなボールを獲得したり合成したりして、強力なコンボやシナジーを生み出しながら進んでいく。また、永続的な強化につながる拠点建築要素も用意されている。
本作は10月16日に発売され、本稿執筆時点のSteamユーザーレビューでは約1万6000件のうち95%が好評とする「圧倒的に好評」ステータスを獲得している。中毒性のあるゲームプレイや1プレイの手軽さなどが高く評価され、発売から約6週間で世界累計販売本数は100万本を突破。また、12月12日に開催された「The Game Awards 2025」では、Best Independent Game部門にノミネートされていた。
そんな本作について、パブリッシャーであるDevolver Digitalの共同創業者兼マーケティング責任者であるNigel Lowrie氏、および開発者であるKenny Sun氏へのインタビューがおこなわれた。
Sun氏によれば、本作は4年前にモバイル向けの『ポンボール(PunBall)』をベースとしたプロトタイプから開発が始まったそうだ。同作はたくさんのボールをブロック状の敵に撃ち込む基本プレイ無料タイトルであり、いわゆるスタミナやガチャの要素が存在。同氏は開発したプロトタイプをとても気に入っていたものの、「無料プレイの要素が多かったのは気に入らなかった」という。そうした要素を除いた自分なりの作品を作ろうとした結果、まったく違うものへと進化していったと語っている。
Sun氏はDevolver Digitalに対して、過去作から通算3度目となる売り込みをおこない、本作で初めてDevolver Digitalがパブリッシャーとなることに。Devolver DigitalのNigel Lowrie氏は本作を素晴らしいゲームだとしつつも、初年度の売上は30万本を見込んでいたそうだ。発売時点で25万件のウィッシュリストがあったものの、6週間で100万本の売上予測を立てられるような指標ではなかったという。インフルエンサーやメディアを通じて本作の評判が広まったことが、記録的な売上につながったと語っている。
またLowrie氏は、本作が成功した理由の一つは「プレイヤーの時間を尊重している」点にあると分析している。同氏によれば、本作における戦闘と拠点建築を繰り返すゲームプレイループ自体は、多くのゲームに見られる構造だという。一方で、たとえば本作では、ステージに挑むたびにほぼ毎回新たな建物の設計図を入手でき、それらを建設することで戦闘面の強化や新たなキャラクターのアンロックなど、常にもう片方のパートに持ち込める要素が得られるゲームプレイループとなっている。加えて、どちらの側にも本質的な面白さがあるため、やりたくないことを強いられないつくりが実現されていると考えているそうだ。

続けてLowrie氏は、高評価作品として知られる『Cult of the Lamb』や『Vampire Survivors』も本作と同じように魅力的な報酬や変化が常にプレイヤーに提供されるような調整になっていると語る。これらの作品は「時間を無駄にせず、ひたすらプレイするだけのものではない」という。一方で同じようなゲームプレイループをもつ多くの作品では、「プレイヤーの時間を尊重していない」と指摘。一つの報酬を獲得するために、同じことを繰り返すような作品が多いというわけだろう。
この「プレイヤーの時間を尊重する」というアプローチは、タイパ(タイムパフォーマンス)を重視する現代のプレイヤーのニーズにも合致しているだろう。いわゆる倍速機能が実装される作品も増えており、本作においてもステージ中でゲーム速度の変更が可能だ。それに加えて、本作では稼ぎ行為のような周回プレイを必要とせずに、毎回新たな報酬や変化がプレイヤーに提供される。そうした要素が口コミを通じたヒットにつながったのかもしれない。
こうした設計思想については近年ではジャンルを問わず取り入れられており、たとえば来年2月に発売予定の『ドラゴンクエストVII Reimagined』の開発においては、ユーザーの可処分時間に配慮してテンポ改善などが図られたことが明らかとなっていた(関連記事)。リリースされるゲームの数も年々増え、ユーザーの時間を奪い合うような傾向がますます加速することも予想される現代。“時間にやさしいゲーム”であることもゲーマーの評価基準になっているのだろう。
なお、本作は2026年に3つの無料大型アップデートが配信予定。1月、4月、7月にかけて新たなキャラクターやボール、進化やパッシブなどが追加される。本作では各ステージ毎に10段階のハイスピードモードやクリア後のNG+なども用意されているため、アップデートまでに本作をプレイしておくのもいいだろう。
『BALL x PIT』は、PC(Steam)/Nintendo Switch/Nintendo Switch2/PS5/Xbox Series X|S向けに配信中だ。
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