SIE・PS Studios発『アストロボット』開発者、GOTY受賞スピーチで任天堂に感謝を述べる。メーカーの垣根を超えたリスペクト

PS Studios・Team ASOBOの『アストロボット』開発者が、GOTY受賞スピーチにて「任天堂に向けた感謝」を語り、注目が寄せられているようだ。

毎年恒例となるゲームの祭典「The Game Awards 2024」にて、今年は『アストロボット』がGame of the Yearの栄光を獲得した。受賞の際には、PlayStation Studios傘下である開発元・Team ASOBIの開発者が登壇。そこにて披露された「任天堂に向けた、メーカーの垣根を超えたスピーチ」に注目が寄せられているようだ。

『アストロボット』は、今年9月6日にPS5向けに発売されたアクションゲームだ。いわゆる「3Dプラットフォーマー」ジャンルの作品となる。ソニーインタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)が傘下に納める、PS StudiosのTeam ASOBIが開発している。本作はリリース後、Metacriticなどのレビュー集積サイトでユーザー/メディア双方から高評価を獲得。11月には売上150万本を突破するなど人気と好評を両立し、今年のGOTY候補の一角となっていた(関連記事)。

本作は、12月13日に開催されたThe Game Awards 2024にてBest Game Direction、Best Family Game、Best Action/Adventure Gameを獲得。さらにはGOTYを受賞し、4冠となった。GOTY受賞の際には、『アストロボット』主要開発陣が壇上に。クリエイティブディレクターを担ったNicolas Doucet氏・アートディレクターのSebastian Brueckner氏、サウンドデザインの佐野淳子氏・プログラミングリードの山田真之氏らが登壇した。その際にDoucet氏が語ったスピーチが、「ゲームメーカーの垣根を超えるもの」として、SNS上などで称賛を集めている。

Doucet氏は壇上にて、プレイヤーのことを第一に想って開発する姿勢や、「子供が初めて遊ぶゲームになるかもしれない」ことの重要さについて触れ、本作開発にあたっての想いを述べた。またDoucet氏は、Team ASOBIのメンバーおよび、本作の実現を支えた、PlayStation StudiosのScott Rohde氏らなどSIEの多数関係者にも感謝を伝えた。

そしてDoucet氏は、「本当はこれは話さない予定だったけど……でもいいや、話そう」とつぶやき、さらに熱を込めて語りだした。同氏は「プラットフォーマー」というジャンルについて、ノスタルジックだったり、とても新しかったりするとコメント。PlayStationの30年の歴史の中ではたくさんのプラットフォーマーが生み出されてきたとしつつ、「それよりも前にプラットフォーマーを作っていた人々がいた」とした。

続けてDoucet氏は同氏の子供時代、1989年のクリスマスの思い出として「“灰色の箱”と『スーパーマリオブラザーズ』をプレゼントにもらい、とても、とても楽しんだ」とした。灰色の箱とは、もちろん任天堂のNES(海外版ファミリーコンピュータ)のことだろう。

Doucet氏は、Team ASOBIは東京で、“その会社”は京都で活動していると触れ、「プラットフォーマーを熱心に作り、革新と高いクオリティを常に提供し、我々がゲーム作りの道へ進むよう触発してくれたその会社に賛辞を送りたい」と熱く語った。すでにDoucet氏のいう“会社”が任天堂であることは明らか。しかし同氏は「その会社の名前は言わないでおこう」とユーモアを交えつつ、任天堂がゲーム業界に与えた影響と功績をふたたび称えた。

任天堂とソニー(SIE)といえば、日本を代表するゲームメーカー、そしてコンソールメーカーとして競合相手だ。またTeam ASOBIといえば、SIE JAPAN Studioを前身とし、PlayStation Studiosにおける代表的なスタジオとなっている。同スタジオの生み出した「アストロ」は、 PSブランドのマスコットとしての色も強めつつあり、『アストロボット』はまさにPSファーストパーティータイトルの筆頭といっても過言ではない。

そんな本作の開発を牽引したDoucet氏が、GOTY受賞の場で任天堂についてコメントしたのは異例だろう。しかし、Doucet氏がスピーチで言葉にしたのは、ゲームという娯楽がもつ魅力を子供時代に教えてくれた、任天堂への感謝の言葉だ。その純粋な想いには、メーカーの垣根など関係ないだろう。一連のスピーチはSNS上で海外ユーザー中心に注目され、GamesRadar+といった海外メディアにも取り上げられている。

幼き日のDoucet氏が任天堂の『スーパーマリオブラザーズ』に受けた衝撃が、PlayStation StudiosのTeam ASOBIにおける『アストロボット』開発、そしてGOTY受賞にまで繋がったと考えると感慨深い。今度は『アストロボット』に魅了されている子供たちが、将来傑作ゲームを生み出していくのかもしれない。未来のゲーム業界にも、引き続き期待したいところだ。

ASTRO BOT(アストロボット)』はPS5向けに販売中だ。

Sayoko Narita
Sayoko Narita

貪欲な雑食ゲーマーです。物語性の強いゲームを与えると喜びますが、シューターとハクスラも反復横とびしています。

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