エイム訓練ゲーム『Aimlabs』にて「マウスの重さとエイム上達の関係」示す大規模研究。“軽めマウス”の結果はいいけど、“慣れ”でもカバー可能かも

『Aimlabs』を手がけるデベロッパーのStatespaceが、マウスの重さとFPSなどにおけるエイムのスキル上達との関係を研究・分析した論文を発表した。

エイム訓練ゲーム『Aimlabs』を手がけるデベロッパーのStatespaceは10月8日、同社の共同創業者兼CEOであるWayne E. Mackey氏をはじめとした研究チームの成果として、FPS・TPS訓練ゲームにおけるマウス重量の違いと、プレイヤーのスキル上達の関連を分析した論文を発表。「大規模な実環境下のゲーム集団における、マウス重量と1週間の運動スキル向上との関連(Computer mouse weight is associated with one-week motor skill improvement in a large naturalistic video game cohort)」と題するこの論文は、生物学や神経科学の研究論文をいち早く発表・共有できるサーバー「bioRxiv」にて無料で閲覧可能となっている。なお、本稿執筆時点では本研究は査読前のプレプリントとなっており、第三者による検証を経ていない点は留意されたい。

本研究では、PCやコンソール機において高い人気を誇るエイム訓練ゲーム『Aimlabs』の運営元であるStatespaceが、同作で収集された詳細なプレイデータを用いて大規模な調査を実施。ゲーム内のデータからマウスを変更したと検出された9000人以上のプレイヤーに対して、「変更前後の技量の変化が使うマウスの重量とどのような関係を持ちうるのか」といったことを統計的に分析した。

『Aimlabs』

使用されたマウスの重量については、35g~124gの幅を約10gごとで8つの区分に分け、変更後1週間のスキル上達度を統計学的に推定した。すると、重量帯全体では有意な差異が確認された。おおむね重量が軽い方が、マウスを切り替えた際のスキル上達度合いは高く、予測上達度が最も高かったのは35~44gの最も軽い区分であった。とはいえ、重量帯ごとの結果は単調なもの、つまり「軽いほど良くなり、重いほど悪くなる」わけではなかった。具体的には85~99gの区分よりも100~114gの重い区分のほうが高い予測値を示すなどの結果がみられた。

また、最も軽い35~44gの区分は、ほか3つの区分と比べて予測上達度が有意に高かったものの、すべての重量帯に対して有意な差が確認されたわけではない。研究チームは、マウス重量と短期的なスキル上達との関連を統計的に示せたものの、プレイ開始時の技量によって重量帯と上達度の関連パターンが異なるという統計的な証拠も得られなかった点から、ある特定の重量が万人にとって最適であるとは明言できないとしている。

マウスは軽めのほうが“一見”良さげ

今回の調査では、2025年5月27日から2026年5月27日までの1年間に『Aimlabs』をプレイしたユーザーのデータが使用された。総計約700万人のデータが基準集団として統計学的な計算に使用され、マウスを変更したと記録されたユーザーのデータは詳細な分析対象として扱っている。研究チームは、十分なプレイ回数・時間や各種の条件(データの妥当性など)を満たし、マウスの変更前の21日間と変更当日を除外した変更後7日間の記録を詳細に取得できるユーザー9067人のデータを抽出。マウス変更前後の技能水準の差をスキル上達度と定義し、マウス重量との関連を探った。

とはいえ、一口に技能水準やスキル上達度と言っても『Aimlabs』には1000以上の訓練項目が存在し、それぞれの課題によってスコアの尺度も異なってしまう。そこで著者らは、各タスクのスコアを、そのプレイヤーが全体の中でどの程度の順位にいるのかを表す「パーセンタイル順位」に換算し、その平均の差を変更前後で比較することにした。

具体的には約700万人のデータと、特にプレイされている4つのタスク(Gridshot Ultimate、Sixshot Ultimate、Valorant Small Flicks、VT Miniphase VALORANT)のスコアを基準として使用。各タスクと4つの基準タスクの両方をプレイしたユーザーのデータから、「とあるタスクでこのスコア帯だったプレイヤーは、基準4タスクでは平均してこのくらいの順位帯」というような、スコア帯と基準タスクでのパーセンタイル順位の対応関係を推定・換算した。そしてマウス変更前の21日間の平均順位と、変更当日を除く7日間の追跡期間における平均順位の差をスキル上達度として扱っている。

『Aimlabs』

結果として7日後のスキル上達度(予測改善値)が最も大きかったのは、マウスの重さを8つの区分に整理したうち、最も軽い35〜44gの区分で、2.74ポイントのパーセンタイル順位の上昇が見られた。次いで45〜54g区分が2.58ポイント、55〜64g区分が2.10ポイントの上昇と続いている。以下の図はマウスを変更したプレイヤーについて、変更前21日間と変更後7日間の平均パーセンタイル順位の差をもとに、重量帯ごとのスキル上達度を推定したものだ。軽いマウスでは比較的高い値が示されている一方、85〜99gの区分では0.67ポイントまで低下し、100〜114gの区分では1.80ポイントに持ち直すなど単調な結果にはなっていない。

Figure 1
マウス変更群における予測改善値のグラフ。縦軸は変更前後のパーセンタイル順位の変化について推定される改善値を示し、横軸はマウスの重量帯を示す。各点の上下に描かれた線は95%信頼区間であり、推定値の不確実性を表している。なお「予測値」とされているのは、変更前のスキル水準・練習量・マウス感度など、複数の変数を含む要因から特定の数値変化の影響を調べたい場合、それ以外の変数を調整する統計モデルによって関連を“推定”しているためだ。

上達に“重量差”はあるけど、好きなマウスならそれでいいかも

研究チームは次に、各重量帯のスキル上達度を別の重量帯と比較していった。重さが異なる場合、その差が偶然では出にくいものであるかを統計的に分析したのだ。8つの重量帯で2組のペアを作る組み合わせは全28通りとなり、それぞれで差の大きさと推定の精度を調べたところ、うち11通りで統計的に有意な関連が示されている。具体的には、最も軽い35〜44gの重量帯は75~84g、85~99gそして115~124gの3つの区分に対して有意差が認められている。また45〜54gや55〜64gの重量帯も、85〜99 gや115〜124gといった重めの区分より有意に高い順位の伸びを記録している。一方で、ほかのすべての重量帯に対して有意に高いスキル上達度を示す重量帯は今回の調査では見つからなかった。

また、研究チームは重量帯8区分すべての予測値も全体として検定しているほか、重量帯とスキル上達度の関係が、プレイヤーの元々のスキル水準(基準スキル)・変更後の練習量・マウス感度によって変わるかも調べた。くわえて、基準スキルを下位25%・中央値・上位25%の値に固定した場合に各重量帯の間で差が見られるかも検証。以下の表は、マウスを変更した9067人を対象とした各検定の結果となる。

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Table 4
「8区分の平均予測上達度/Average predicted improvement across the eight weight bands」と、「重量関連の全項目に対する検定/ All weight-related model terms jointly」、「基準スキル下位25%での差/ Eight weight bands at 25th-percentile baseline skill」、そして「基準スキル中央値での差/ Eight weight bands at median baseline skill」の4つの項目において統計的に有意となっている。なおp値(偶然差が生まれたと思われる確率)は多重比較の補正をしていない値で、本研究では最小で0.001となる。

上の表では4つの項目において統計学的な有意性が確認されている。そのうち「8区分の平均予測上達度」では、8つの重量帯で予測上達度がすべて同じとは言えない、という結果になった。つまり、少なくとも一部の重量帯の間には予測上達度に差があることになる。なお、どの重量帯間に差があるのかは上述の比較(28通り)で調べたとおりだ。また、「重量関連の全項目に対する検定」も有意だった。これは基準スキル・練習量・マウス感度を調整したうえで、マウスの重量がスキル上達度と何らかの関連を持っているということを示している。

基準スキルを下位25%の値と中央値に固定した場合に関しては、各重量帯の間に有意な差が見られたものの、「上位25%の値(Eight weight bands at 75th-percentile baseline skill)」では差があるとは言えなかった。さらに「重量帯×基準スキル(Weight band x baseline skill)」の項目も有意ではなく、基準スキルによって重量帯と上達度に変化が生じるとは示せていない。なお、これらは観察データにおける関連であり、マウスの重量がスキル上達の原因であることを示すものではない点は留意されたい。

研究チームはこれらの結果から、マウスを変更したプレイヤーにおいて、変更後のマウスの重量区分が1週間後のスキル上達度と統計的に有意な関係を持つと述べている。特に軽い重量帯では予測値が改善していく傾向がみられた一方、どの重量区分も全体との比較では有意ではなく、単に軽ければ軽いほど上達しやすいと言えるような結果も得られなかったことから、「万人に適した推奨値」が存在するとは言えないと説明している。

また、基準スキルと重量帯との関連パターンがスキル上達度に与える影響に関しては、基準スキルが低い層や中程度の層において、重量区分の変化が予測改善度に差を生じさせること示しているものの、「マウス重量とスキル上達度の関係性が基準スキルの高低によって変化する」とまでは言えないと指摘。スキル帯によって最適なマウスが違うことを証明できないと述べ、個人的な快適さやフィット感、感度にくわえ、求められる課題や適応する時間などもパフォーマンスに影響を及ぼす可能性があるとしている。

『Aimlabs』

今回の研究では、『Aimlabs』を運営するStatespace自らが、その詳細なゲーム内データを利用して大規模な検証を行っている。しかし、マウスの変更やその重量は研究者が割り当てたものではない観察研究であり、「軽いマウスがスキル上達を促す」といった因果関係を示すものではない。マウスを変える人はもともと意欲が高いかもしれないし、ほかの機器も変更しているかもしれない。マウス自体の形状なども未検討だ。

そのほか、スキル上達度を算出する変更前後の平均順位の差も、基準スキルで調整して影響を減らしてはいるものの、測定値に偶然の要素が入ることを完全には排除できていない。たまたま調子がよかった、悪かったという要素がどうしても混在するかもしれないのだ。くわえて、区分間の差は最大でも2ポイントのパーセンタイル順位程度で、追跡は1週間だけである。この効果がどこまで続くのかは分かっておらず、当然ながら本研究の結果は『Aimlabs』以外のゲームで同じ結果になるとも限らない。

なお、本論文の著者2名はCEOであるMackey氏はもちろん、『Aimlabs』を運営するStatespaceの所属となっている。資金やデータは同社のものであり、使用されたデータ(プレイヤーによる1回1回の詳細なプレイ記録)については商用目的のため公開できないとしているが、解析コードや統計モデルの仕様などについては後日公開する予定であるとのこと。ちなみに利益相反については論文末尾に記載が存在。とはいえ、解析者がデータの所有企業の従業員で、非公開のデータも存在することから、第三者による独立した検証がしづらい点には留意が必要かもしれない。

『Aimlabs』

本論文ではエイム訓練ゲーム『Aimlabs』のデータを用いて、マウスの重量が短期的なプレイヤースキルの上達度と関連を持つことが統計的に示された。調査の結果としては、軽いマウスにおいて上達度の伸びが大きくなり得るものの、差はそれほど大きくなく、また「重ければ伸びが悪い」という単調な傾向でもなかった。くわえて、スキル上達に最適と言える重量も全体との比較では見つからず、プレイヤーのスキルによってそれが異なるということも言えなかった。

つまるところ、「重量と上達度の関連は見られたが、ケースバイケースという面を否定できない」結果とも言える。お気に入りのマウスが重いからといって、スキル上達のために無理に買い替える必要は必ずしもないのだろう。論文においても、快適さやなじみ具合が成績に影響を与える可能性を示唆しており、モデルや形状が好きならそれでいいという見方もできなくはない。一方で、もし新しいマウスの購入に悩んでいるなら、この論文の内容は一つの判断材料になるかもしれない。

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Kei Kano
Kei Kano

キャラクリが出来て没入感のあるゲームが好きです。ゆっくり歩いて世界観を味わったり、自分なりに脳内設定を組み上げたりして遊んでます。

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