生成AIの進化で“エルデンリングをマリオ化Mod”や“ニューヨーク版Fallout”など続々と出現。権利元も黙ってない、問われる「創作と侵害」の線引き

生成AIを活用し、既存のゲームやIPをベースとするModなどのユーザー制作コンテンツが次々と出現。権利元からの削除要請を受ける例も発生している。

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生成AIを活用し、既存のゲームやIPをベースとするModなどのユーザー制作コンテンツが次々と出現。物議を醸し、権利元からの削除要請を受ける例も発生している。

ModはPC向けゲームを中心に人気を博している文化であり、主にユーザーの手によって、新規コンテンツの追加からバランス調整、翻訳まで多岐にわたる変更をゲームに加えるものだ。大規模な例では、元のゲームを土台としながら別作品に近いコンテンツが制作されることもある。非公式Modの導入しやすさはゲームやメーカーによってまちまちであり、なかでもBethesda Game Studios(以下、Bethesda)の作品はModコミュニティの活発さでも知られている。同社の作品ではModの公式制作ツールやサポート環境も提供されており、メーカー側も長年にわたりMod文化を後押ししてきた代表例といえる。

一方でそんなBethesdaの作品を含め、さまざまな人気ゲームにおいてAIエージェントにコーディングを任せる、いわゆるバイブコーディングで非公式ゲームやModなどが次々と制作され、物議を醸している。たとえば生成AIで制作活動をしているというChris First氏は9月29日に、Anthropicの新AIモデル「Claude Opus 5.5」を用いて、ブラウザで遊べるゲームとして「Fallout: New York」を制作したと報告。クエストや対話のほか、『Fallout』シリーズの特徴的なシステムであるV.A.T.S.やPip-Boyといった要素も備えているという。

同氏によると、“リード開発者”となるClaude Opus 5.5が一度に最大12のAIエージェントを起動して作業を進める“AIゲームスタジオ”を用意し、「Fallout: New York」の開発をおこなったそうだ。テクスチャやサウンドファイルを用いず、すべての建物、武器、キャラクターの顔、音声などをすべてコードによって生成したと主張している。つまり、本家『Fallout』シリーズ作品に含まれるアセットを使用していないという説明だ。

ところがFirst氏は10月2日になって、Bethesdaの親会社であるZeniMax Mediaから知的財産権侵害に関する通知を受けたと報告。ドメイン名「fallout.nyc」を含むURLで公開されていた「Fallout: New York」について、ZeniMax Mediaが権利を有する『Fallout』関連の素材や、「Fallout」の商標を使用しているとの見解が示されている。この通知を受けてFirst氏は「Fallout: New York」の公開を停止。ただ同氏は知的財産権に抵触しうる名称や要素を削除したうえで、ストーリーも書き直した同作の新バージョンをふたたび公開すると表明している。

「Fallout: New York」に限らず、最近になって生成AIによるバイブコーディングの、ゲームの知的財産権を侵害しうる用いられ方は波紋を広げている。なかでもソフトウェアエンジニアのMaurice Heumann氏は、2009年発売の『Call of Duty: Modern Warfare 2』(以下、CoD: MW2)の実行ファイルなどを解析して、多数のAIエージェントを並列稼働させてC++コードに逆コンパイル(decompile)し、元のコードに近い形で再構築するプロジェクトを進めていた。同氏は10月1日の投稿でプロジェクトが終盤に差し掛かっていると報告。ゲームが完全にプレイ可能で視覚的なバグもほとんどなくなったとしつつ「オリジナルのソースコードにきわめて近いのではないか」との見解を述べ、『CoD: MW2』の70%以上の関数が元の実行ファイル内の関数と一致していると主張していた。

Heumann氏はそんな“『CoD: MW2』再構築版”の実際のゲームプレイ映像を投稿しており、再構築版で初めてキルストリークの「戦術核」発動に成功したシーンをおさめていたそうだ。ところが本稿執筆時点では添付されていた動画が著作権者からの申し立てによって削除。さらに、同氏が“『CoD: MW2』再構築版”の進捗を報告していたサイトには本稿執筆時点でアクセスできなくなっており、同氏のブログ投稿からも再構築版に関する投稿はすべて非公開になった模様だ。

さらに、最近になって『The Elder Scrolls V: Skyrim』(以下、Skyrim)や『エルデンリング』といったゲームを、『マインクラフト』のUIやプレイヤーキャラの手が表示された一人称視点で遊ぶ動画がそれぞれ注目を浴びている。ユーザーが主にAIエージェントで制作しているとみられる、「Passthrough Mod」と呼ばれる新方式のModを使用した際の動画だ。

一見すると『マインクラフト』の3DモデルやUIなどのアセットを抜き出し、そのまま各作品に導入したようにも見える。ただ実はこれらのModは、複数の作品を“仲介”しているに過ぎないようだ。たとえば『Skyrim』と『マインクラフト』を組み合わせた「SkyCraft」では、Modのプログラムを通じて同時に起動させた両作品がリアルタイムで情報をやり取りし、『マインクラフト』側で移動や戦闘、インベントリなどのゲームプレイを処理しつつ、『Skyrim』側のワールドやNPC、クエストなどと組み合わせる仕組みだ。これによって、あたかも『Skyrim』の世界を『マインクラフト』のシステムで遊んでいるかのような体験を実現しているわけだ。

そのため、少なくとも現時点で公開されているPassthrough Modについては、先述したとおり3DモデルやUIなどの知的財産となるアセットを抜き出してModデータに含めて配布されているわけではない。ただこうしたゲームを組み合わせるModはPassthrough Mod以外にもさまざまな手法があり、中にはパッケージ版ソフトから抜き出したゲームデータが必要になるModや、逆コンパイルによって再構築されたゲームコードが利用されているとみられるModもある。いずれにせよ異なる作品の表現やゲームシステムを密接に組み合わせる仕組みのModであり、今後各作品の権利元がどのような見解を示すかは不透明だ。

※『エルデンリング』の世界を『スーパーマリオ64』のマリオとして遊ぶModの映像を紹介するポストの一部は、権利元の申し立てで動画が削除されている

ゲーム開発においても、性能が急速に高まる生成AIやAIエージェントの活用法が模索されている一方で、学習データの権利関係を巡る議論や各地域での法整備が進められており、各社が慎重な姿勢を見せている。対して、企業による商用ゲーム開発とは異なり、ユーザー制作コンテンツの領域では、さまざまな分野でAIエージェントがひと際積極的に活用されているようだ。“人力”では長い歳月を要する、あるいはきわめて困難だったようなコンテンツも生み出されており、それぞれ関心が高まっている。

ただ先述したとおり、もとになった作品の権利元から削除要請や知的財産権の侵害の申し立てを受けたケースもさっそくみられる。たとえアセットの盗用などがなく純粋に“AIエージェントが生み出した二次創作”だとしても、ユーザーの混同を招くようなコンテンツには権利元の懸念も生じるだろう。これまで各社が一定の範囲でModなどの二次創作を許容・支援してきた一方で、商標や名称を用いたり、既存作品を再現したりするAIエージェント製コンテンツにどのように対応していくのか、今後の動向が注視される。

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Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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