「『オーバーウォッチ2』は自分のキャリアで最大級の失敗」と、元ディレクターが吐露。“幻のPvE路線”の舞台裏
かつてディレクターを務めていたJeff Kaplan氏が『オーバーウォッチ2』の開発について「キャリアの中で最大級の誤り」だと語り、注目を集めている。

『オーバーウォッチ2』は2022年10月から配信開始された基本プレイ無料のFPSゲーム。2026年2月にはタイトルを再び『オーバーウォッチ』へ戻すことが発表され、大きな反響を呼んだ。そうした中、かつて本作でディレクターを務めていたJeff Kaplan氏が、『オーバーウォッチ2』の開発について「キャリアの中で最大級の誤り」だと語り、注目を集めている。YouTubeチャンネルLex Fridmanの番組に出演した際の発言であり、GamesRadar+が報じている。
『オーバーウォッチ2』はBlizzardが手がけるオンライン対戦型FPSゲーム。2016年に発売された『オーバーウォッチ』の続編として、2022年10月に基本プレイ無料タイトルとして配信開始された。タンク・サポート・ダメージの3つのロール分けがなされたチーム対戦が繰り広げられる従来のゲーム性を踏襲しつつ、チーム編成は6対6から5対5へと刷新。新たなゲームモード「プッシュ(Push)」が追加されるなど、積極的な改革が施された。

一方で、当初実装予定であると告知されていた大規模なPvEモード「ヒーローミッション」については、本編のリリース後に一転して開発中止が報じられるなど計画は難航。最終的にPvEコンテンツは「ストーリーミッション」として、有料ダウンロードコンテンツ(DLC)で配信されたが(関連記事)、当初の予想とは異なる小規模な展開にファンの間では失望の声も聞こえていた。
そんな本作に対して、かつて『オーバーウォッチ』シリーズでディレクターを務め、Blizzardの副社長も歴任していたJeff Kaplan氏が『オーバーウォッチ2』開発当時をYouTubeのポッドキャストで振り返っている。Kaplan氏は『オーバーウォッチ2』について、自身のクリエイティブリーダーとしてのキャリアの中で最大の失敗のひとつだったと語り、反響を呼んでいる。

Kaplan氏によれば、同作の開発を進めるにあたって大きく2つの失敗があったそうだ。第一に、開発チームの中にPvPや競技型シューターを好まないメンバーが在籍したことを挙げている。彼らはオーバーウォッチの世界観やキャラクターを心から愛していたものの、PvE環境で自分たちの好きなようにヒーローを操作したいと考えていたという。初代『オーバーウォッチ』が成功したのはPvPであるにも関わらず、それよりも協力プレイやキャンペーンの体験を重視してしまっていたと同氏は指摘する。
Kaplan氏は続けて、もう1つの失敗は経営陣の判断にあったと批判する。同氏によれば『オーバーウォッチ2』の発表に向けて無理のある開発スケジュールを余儀なくされたそうだ。なお本作を手がけるBlizzard EntertainmentはActivision Blizzard社の子会社であり、同氏によれば特にActivision経営陣からのプレッシャーが強かったとのこと。『オーバーウォッチ2』は2019年に配信する予定ではなかったのかと経営陣から強く迫られていたという。

なお、そうしたプレッシャーは過去に経営陣に開発スケジュールを提示したことが発端となっていたようだ。Kaplan氏は、当初提示したスケジュールはあくまで暫定的な見通しに過ぎなかったと説明。資料には2019年頃に第2作がリリースされる想定が示されていたが、同氏によれば「絶対にあり得ない」計画だったそうだ。開発ヴィジョンを伝えるための資料に過ぎず、具体的な計画を示したものではなかったが、経営陣はそのようには捉えてなかったとのこと。そしてこの経験を踏まえて同氏は「経営陣へのパワーポイントを使ったプレゼンは絶対に避けるべき」と強く戒めている。
また『オーバーウォッチ2』へのプレッシャーが高まった背景には、同作の構想がかなり早い段階から存在したこともあるようだ。Kaplan氏によると、なんと初代『オーバーウォッチ』のリリース前となる2015年の時点から続編の議論が始まっていたという。Kaplan氏のほか、元クリエイティブディレクターのChris Metzen氏や元リードライターのMichael Chu氏らも交えて『オーバーウォッチ2』の構想を練っていたそうだ。当初は『オーバーウォッチ』シリーズを“多面的なIP”として展開する狙いもあったのだという。そうした点も、PvEコンテンツの開発中止までに時間を要した背景にあったのだろう。しかしながら結果として『オーバーウォッチ2』はPvPにフォーカスした前作と同様の内容に留まることになった。

なお、Kaplan氏は2021年にBlizzardを退職している。Activision Blizzardの当時のCFOから、もし規定の売上を達成できなければチームの1000人を解雇すると告げられ、強い怒りを覚えたためだという。『オーバーウォッチ』は自身のアイデンティティの一部のように感じており、まさか退職する日が来るとは想定していなかったと伝えつつ、この一連のやりとりをきっかけに退職の道を選んだとしている(GamesRadar+)。
なおそんな『オーバーウォッチ2』は2026年2月にタイトルを『オーバーウォッチ』へと戻すことを発表。現開発チームはこのタイトル変更について、『オーバーウォッチ2』が失敗だったと認める意図ではないとするコメントを伝えていた(関連記事)。『オーバーウォッチ』にタイトルを戻す理由は、「永遠に続いていくゲーム」として、いつか「オーバーウォッチ3」に置き換わるのではないかという不安をプレイヤーから払拭したかったからとのこと。とはいえ、Blizzardのライブサービス責任者であるWalter Kong氏はもし過去に戻れるのなら『オーバーウォッチ2』とは名付けないだろうともコメントしており、やはり多方面へのIP展開ではなく、当初の『オーバーウォッチ』のPvP路線に立ち返った側面もあるのだろう。一方で『オーバーウォッチ』のモバイル向け新作『Overwatch Rush』も開発中であり(関連記事)、当初とは異なる方向性でIP展開が模索されていることもうかがえる。

なお今年2月にリブランディングを果たした新生『オーバーウォッチ』はタイトル変更に併せて、多くの新ヒーローの追加を含む大規模なアップデートを実施。Steamにおける連日の最大同時接続プレイヤー数は、従来の接続者数の約3倍にあたる10万人前後で安定しており好調なスタートとなっている(SteamDB)。紆余曲折を経た『オーバーウォッチ』がこれからどのような展開を見せるのか、期待が高まるところだ。
『オーバーウォッチ』はPC(Battle.net/Steam)/PS4/PS5/Nintendo Switch/Xbox One/Xbox Series X|S向けに基本プレイ無料で配信中。
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