ヒット作『Blue Prince』開発者、「8年間週80時間ゲームを作り続けたけどもう一度やるのは無理」とこぼす。“体力的に”持続不可能
『Blue Prince』の開発者Tonda Ros氏は自身の次回作について、同作のようなゲームは二度と作れないと語った。

『Blue Prince』を手がけたTonda Ros氏は自身の次回作について、海外メディアAftermathのインタビューで尋ねられ、『Blue Prince』のようなゲームは二度と作れないと語った。というのも、ゲーム開発自体は続けていくそうだが、同様の規模で開発を続けるのは同氏の“体力的に”不可能だそうだ。
『Blue Prince』は2025年4月10日に発売されたローグライト形式の謎解きパズルゲーム。プレイヤーは、日々構造が変化する謎めいたシンクレア邸に足を踏み入れ、「ルーム46」と呼ばれる46番目の部屋の発見を目指す。開いた扉の先に待ち構える部屋は、毎回ランダムに提示される3つの候補から選択していく。
こうして館を拡張しながら、部屋ごとに隠されている謎を解き明かし、アイテムを収集して、その間取りを館の設計図(ブループリント)に反映させていく。ただし館の間取りは日付が変わるとすべて変化してしまうため、その日のうちにルーム46へ到達できなければ状況は一新されてしまう。部屋の探索にはリソース制限があるため、計画的かつ慎重に謎を解き明かしていかなければならない。

『Blue Prince』は発売前からメディア・批評家間で緻密なゲームデザインが好評を得ることに。「ジャンルを説明することさえ難しい」とも評される独特な体験ながら、プレイを続けることで知識が蓄積されていき、システムやルールへの理解を深まっていく点が評価を受けてきた。Steamユーザーレビューでは約1万5000件のレビューを集め、うち86%が好評とする「非常に好評」ステータスを獲得。発売直後に同時接続者数が約2万人に達していた(SteamDB)。またレビュー集積サイトMetacriticではメタスコア92点を記録し、The Game Awards 2025ではBest Independent Game部門にノミネートされた。
批評面でも大きな成功を収めた『Blue Prince』だが、その作者であるTonda Ros氏は海外メディアAftermathの取材に対して、同作のようなゲームを再び作るのは不可能だと宣言し、注目を集めている。
Ros氏によると、現在は『Blue Prince』のアップデート作業に取り組んでいるとのこと。細部を調整したり映像演出を加えることで、自分が本来ゲームに盛り込みたかったものすべてを反映させたいのだそうだ。昔のゲームのように発売前にすべての要素が揃っているのが理想、との考えを示したうえで、それが叶わなかったのはクランチ(過重労働)ですべてを詰め込むよりもバグ取りなどを優先したためだという。というのも、常に高負荷の作業状況にあった同氏にとって、作品を完成させるためには優先事項を絞り込む必要があったからだ。

同氏によれば、『Blue Prince』の完成に向けて毎週80時間を開発に充てる生活を、8年間も続けてきたのだという。発売に至るまで信じられないほど長い道のりがあったと振り返りながら、このようなハードワークを繰り返すことは二度とないだろうと語る。上記のような開発体制は若いうちでなければ維持が難しいといった考えも述べており、年齢を重ねた今となっては“身体的に”不可能というわけだろう。そのため『Blue Prince』は今後も含む自身のキャリアでもっとも野心的なゲームになるだろうと同氏は語る。
一方でRos氏は本作の制作を通じてゲーム開発に恋をしたとも語っており、今も開発への情熱は衰えていない様子。時間をかけて自身のヴィジョンを実現できる環境に楽しさを感じているといい、自分が楽しいと思える限りはゲーム開発を続けていきたいそうだ。
長期にわたって開発を続けていた個人開発者が作品の発表後にいわゆる燃え尽き症候群に陥る例は少なくない。例えば『Balatro』の作者LocalThunk氏は大型アップデート1.1を予告していたが、パッチ修正やモバイル版の開発などで燃え尽きたと語り、開発は続けるものの「完成したときが完成」と同アップデートの無期限延期を宣告した。先日にはアップデートの開発が続いていることが報告されたものの、期限を設けずに開発が進められているとみられる(関連記事1、関連記事2)。

大手ゲーム企業では発売直前のクランチが問題視されることが多いが、個人開発でも過密なスケジュールに陥ることは問題になりうるようだ。労働時間を自ら管理するがゆえに、熱意の高い開発者ほど長期にわたって無理をしやすい傾向もあるのだろう。
昨今では、たとえば早期アクセス配信であっても求められるクオリティが高まっているとの開発者の声も聞かれるほか(関連記事)、特にSteamでは年間にリリースされるタイトルが膨大になり競争は激化していることだろう。今回のインタビューからは、そんな中で打ち出した作品がたとえヒットしたとしても、今度は“燃え尽き”という問題が立ちはだかることを物語っている。経済面と健康を両立させるような、持続可能なゲーム開発の難しさが改めてうかがえる証言かもしれない。
『Blue Prince』はPC(Steam/Microsoft Store)/PS5/Xbox Series X|S向けに配信中。なおゲーム内の日本語表記には対応していない。
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