人気ローグライクポーカー『Balatro』、全年齢向けからいきなり「18歳以上対象」にIARCレーティングが引き上げられ一部で販売停止。急な変更に販売元は怒り

Playstackは、『Balatro』のコンソール向けダウンロード版が、一部地域にて一時的に販売停止となっていることを報告した。レーティング区分が「IARC: 3+」から「IARC: 18+」に突如変更されたことが原因だという。

パブリッシャーのPlaystackは、『Balatro』のコンソール向けダウンロード版が、一部地域にて一時的に販売停止となっていることを報告した。レーティング団体IARCが、本作のレーティング区分を全年齢対象にあたる「IARC: 3+」から18歳以上対象となる「IARC: 18+」に突如変更したことが原因のようだ。

なお本作の対応プラットフォームはPC(Steam)のほかPS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S/Nintendo Switch。本稿執筆時点では、国内向けにはすべてのプラットフォームで販売が継続されている。


『Balatro』は、ポーカーとローグライクデッキ構築ゲームを組み合わせた作品だ。プレイヤーは手札の8枚から5枚選び、ハンド(手役)を作ってポーカーの役を揃えることになる。役に応じた得点倍率と、役に使われたカードの数字の大きさから計算されるチップを獲得。ハンドの制限回数以内に目標チップを達成することを目指す。手札を入れ替える「ディスカード」を活用しつつ、ショップで購入した特殊なカードを使いながら獲得チップを高め、吊り上げられていく目標チップや特殊な制限を乗り越えるのだ。

本作はSteamにて、現時点で約1万1000件中97%が好評とする「圧倒的に好評」ステータスを獲得。同時接続プレイヤー数がピーク時で3万5018人を記録しているほか、本稿執筆時点でも数万人のプレイヤー数を維持している(SteamDB)。なおPC(Steam)のほかPS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S/Nintendo Switch向けにも展開されており、発売から72時間で売上25万本を突破するなど、個人開発の新作として爆発的な人気を博している(関連記事)。


突然のレーティング変更


そんな本作のパブリッシングを担当するPlaystackは今回、コンソール向けの本作ダウンロード版が、一部地域のストアにて一時的に販売停止になっていることを報告した。ストアから削除されるかどうかも現時点では不明瞭な状況だという。ユーザーからは主にNintendo Switchでの販売が停止されていることが報告されており、弊誌で確認するかぎり、現時点では英国向けのストアなどで本作のストアページが閲覧できなくなっている。

Playstackによると、本作は少なくともPC(Steam)版はストアから削除されない見込みとのこと。できるかぎり早く販売再開されるように取り組まれているほか、(販売停止中の地域・コンソールであっても)すでに本作を購入したユーザーであれば引き続きプレイできるそうだ。なお本稿執筆時点では、PS/Xbox/Nintendo Switchすべての国内向けのストアで販売が継続されている。

Playstackは、一部地域・コンソールで販売が停止された原因は、ダウンロードゲーム・アプリを専門とするレーティング団体IARCのレーティング区分の変更にあるとしている。本作は当初、全年齢対象にあたる「IARC: 3+」のレーティングが付与されていた。しかし目立つギャンブルの画像(Prominent Gambling Imagery)が含まれるとして、「IARC: 18+」の区分に突如変更されたそうだ。実際に国内向けのMicrosoft StorePS Storeにて「IARC: 18+」となっていることが確認できる。

なおニンテンドーeショップでは、本来指定されるべきレーティングとの差が2段階以上あると、任天堂が作品の配信を一旦停止し、開発・販売元に対してゲームの再提出を求めるとされる。今回のレーティング変更では「IARC: 3+」のレーティングから「IARC: 18+」へ4段階もの差が生じたため、一部地域のニンテンドーeショップでは配信停止の措置がとられているかたちだろう。

なお国内向けニンテンドーeショップでは先述の通り販売が継続されているものの、本稿執筆時点で依然として「IARC: 3+」としてレーティング表記されている。レーティング変更が反映された際にも販売が継続されるかどうかは不明だ。また国内PS Storeでは、原則として「IARC: 18+」のタイトルはCEROレーティングの取得もメーカーに求められる方針がある(関連記事)。一方今回は発売後の突然のIARCレーティング変更という珍しい事態となったこともあってか、本稿執筆時点ではCEROレーティングが取得されずに販売が継続されているようだ。


全年齢対象で認められていたのに

PlaystackによればIARCは事前に同社に知らせることなく、レーティング変更を実施したという。Playstackとしては『Balatro』は賭博行為を奨励するような作品ではないと判断しているそうで、賭博の仕組みが一切含まれないように細心の注意が払われているとしている。

そしてPlaystackが伝えるところによると、こうした判断は本作の2月21日の発売に先がけて、IARCに向けても昨年10月に共有されていたという。当初からIARCは本作に「IARC: 18+」のレーティングを付与する予定だったそうだが、Playstack側の主張を受け入れて「IARC: 3+」のレーティングを与えていたとのこと。さらにその際にはIARC側でのレビューにも基づいて「(『Balatro』では)ギャンブルがテーマの作品と表示する必要はない」といった判断も明言されていたという。そうした経緯があるなかで、IARCが発売後に突然レーティングを変更したことにPlaystack側は「強く失望している(especially disappointed)」と伝えている。


本稿執筆時点ではIARC側の声明はなく、突如『Balatro』のレーティングが変更された理由は不明だ。本作は発売後大きな反響を呼んでおり、トランプゲームのなかでも賭博に用いられやすいポーカーを題材とし、チップを獲得するといったゲームプレイを問題視する見方もあったのかもしれない。

なお本作の開発者LocalThunk氏は過去に海外メディアPC Gamerのインタビューに対し、「ポーカーをまったく遊ばないし、あまり興味もない」と伝えていた。本作のシステム自体の着想はポーカーではなく、別のトランプゲーム「Big Two」にあるという。一方でよりメジャーなポーカーをモチーフとして、ルールの分かりやすさやビジュアル面でのテーマ性にまとまりをもたせる狙いがあったとのこと(関連記事)。賭博性は少なくとも開発者・販売元側では本作の主要な特徴として意図されていなかったのだろう。

Playstackは販売再開に向けて取り組む間、本作が一時的に「IARC: 18+」レーティングに変更されたままになる可能性があると伝えている。販売再開への対応と並行して、レーティングを「IARC: 3+」に戻すようにIARCとの交渉がおこなわれるのかもしれない。現時点で販売継続中の国内PS版およびNintendo Switch版の今後も含め、動向が注目される。

『Balatro』は、PC(Steam)/PS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S/Nintendo Switch向けに配信中だ。

【UPDATE 2024/3/2 13:38】
国内PS StoreでのIARCレーティング「IARC: 18+」の扱いについて追記。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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