Unity Technologiesは先月、新料金システム「Unity Runtime Fee」を発表。その内容を巡ってゲーム開発者を中心としたユーザーから大きな反発が起きる一幕があった。元CEO兼社長の退任などにも繋がった同騒動について、Unity内部のスタッフの証言とする内容を、mobilegamer.bizが伝えている。
騒動の発端となったUnity Runtime Feeは、2024年1月から導入予定の新料金システムだ。Unity利用者が開発したゲームが、エンドユーザーによってダウンロード・インストールされた回数を基準として、Unityの利用料が上乗せされる仕組みとなっている。
この仕組みが発表された当初より、開発者を中心としたユーザーたちからは猛反発が起きた。後にUnityは、同システムを自己申告制としたり、Unity Personalプランへの適用を撤廃したりなど、条件の緩和を提示。また、Unity TechnologiesのCEO兼社長だったJohn Riccitiello氏が退任するなど、波乱の状況となっていた(関連記事)。
mobilegamer.bizは一連の騒動について、Unityのスタッフやモバイルゲーム業界関係者による証言だとして、さまざまな裏事情を伝えている。まずとあるUnityスタッフの証言として、新料金システム発表後にとある大手モバイルゲームパブリッシャーが前述のRiccitiello氏と面会。その場で「くそったれ、私たちは払わんぞ(Fuck you, we’re not paying)」と新システムを痛烈に拒否されたと報告されている。同システムがいかにUnity利用者や業界関係者に歓迎されなかったかを示す報告だろう。
ほかにも、同システムが「焦って推進されていた」との報告もされている。Unityマネージャー層の、経験ある多数の従業員たちは、同システムが一般に告知される前にミーティングに招集されていたという。同ミーティングではUnity Runtime Feeについて話し合われ、参加者の約半数が「料金モデルが複雑すぎ、反発を招きそうなのでまずは人々との対話を優先すべき」といった意見を投じていたという。
しかしながら、ミーティングの中では“すでに人々との対話はした”として、新料金システム導入の流れに。mobilegamer.bizに向けて証言した人物は、新システムの開始日といった詳細も知らないまま、ただ気づけば新システムが形になっていたと語っている。また、「焦って進められているように感じた」ともしており、これは別の元従業員が以前SNS上で語った「新料金システムへの変更は強行的に決定された」との内容とも一致する証言だろう(関連記事)。
ほかには、UnityによるRuntime Feeの導入は、モバイルマーケティング企業であるAppLovinに対抗するための施策でもあった、との見解も伝えられている。というのもUnityは子会社としてモバイルマーケティング企業ironSourceを擁している。そして以前には、ironSourceがモバイルゲーム開発元に向け「ironSourceの広告サービスであるUnity LevelPlayを使うなら、Unity Runtime Feeを免除する」との提案をしていたとの証言も報道されていた。今回は、モバイルゲーム開発側から新たに、そうした報道内容は正確だったとする証言が得られたという。
そしてmobilegamer.bizに証言したスタッフたちは、Unityの以前からの株価下落傾向といった、業績の悪化も理由のひとつだったと見ているという。2021年11月には200ドルに迫った株価も、Runtime Fee導入の告知の前には36ドルにまで下がった。とあるスタッフは、「Unityに悪意はなかったと本気で考えている」とコメント。Unityは18年間で多くの資金を失ってきており、とにかく新たな収益を得るための苦肉の策だったとの見解を伝えている。
前述のとおり、Unity TechnologiesのCEO兼社長であったRiccitiello氏はすでに退任。エグゼクティブ層が交代して、新たな舵取りをおこなっている。Runtime Feeが生まれた背景も改めて語られ、台所事情の厳しさも伝えられる中、今後Unityがどのように運営されていくかが注目されるだろう。