Unity、脅迫によりオフィス一時閉鎖も「社員が犯人だった」と現地警察が伝える。別の元社員は「新料金システムに強く反対したが強行された」と事情を吐露

 

サンフランシスコ市警察は9月15日、Unity Technologiesを脅迫した犯人について「Unityの従業員だった」との情報を、海外メディアPolygonに伝えた。また、Unity Technologiesについて元従業員から「料金形態変更に全力で抵抗した」といった内部事情が明かされるなど、混沌とした状況が続いている。


Unity Technologiesは、ゲーム開発プラットフォーム「Unity」を運営する企業だ。同社は9月12日、同プラットフォームの各提供プランの利用料金に加えて、ゲームのインストール数を基準とする「Unity Runtime Fee」を2024年1月1日から導入すると発表し、すぐさま開発者を中心とするユーザーらから批判の声を浴びた。同社はこれを値上げであると認めつつ、実際に支払いが発生する利用者は全体のごく一部だと強調して説明。しかし、Unityを利用するゲーム開発者を中心に、引き続き非常に多くの批判が寄せられる状況が続いている。

そうした中では、Unity Technologiesを相手とした脅迫事件が発生していた。同社広報担当者は、脅迫を受けて従業員の安全を考慮し、複数オフィスを一時的に閉鎖したとした(関連記事)。また、SNS上などではUnityの新料金形態への批判などとは別に、脅迫というあるまじき行為に対する批判の声があがっていた。

しかし、その犯人は、Unity Technologies従業員の人間だったという。サンフランシスコ市警察がPolygonに伝えたところによると、同警察は同社のサンフランシスコオフィス、すなわち同社の本拠地オフィスからの通報に応じたという。そして、「脅迫を通報してきた集団(reporting party)」は同警察に対して「ある従業員が、雇用主に対してSNSを使って脅迫行為に及んだ」と伝えたとのこと。つまりUnity Technologies従業員が、上司や重役に対する脅迫をWeb上で投稿したり、DMを通じて送ったりしたなどのケースが考えられるだろう。なお、この犯人は、サンフランシスコオフィスではない別の同社オフィスの従業員だったという。

そうした衝撃的な顛末が伝えられる一方で、同社従業員からは「新料金形態については、多くの社員が反対していた」といった内容の証言も出ている。上述の投稿は、Unity Technologiesの従業員だったというJono Forbes氏によるものだ。同氏は同社サンフランシスコオフィスにて7年以上にわたって勤め、シニアソフトウェアエンジニアとして従事していたようだ(LinkedIn)。

Forbes氏は上述の投稿にて、「今朝までUnityの社員だった」と同社を辞したことを伝え、内部事情を明かしている。同氏によれば、今回の新料金形態への変更は同氏含む複数の従業員らが「必死で抗った」のだという。従業員らは新料金形態についてあらんかぎりの懸念を指摘し、答えを待ったという。しかしその答えは得られることはなく、従業員らに無断で、新料金形態への変更の一般告知が実施されたという。

Forbes氏の証言は、Unityの唐突な料金形態変更については、内部の従業員たちも異議を唱える状況で、上層部に強引に押し切られてしまったかたちとの主張だろう。“脅迫犯”の従業員の動機についても、その行為自体は一切弁解の余地はない一方で、多くの従業員たちの意向を無視した方針転換が背景にあったとも考えられる。なおForbes氏は、本件について憂慮する従業員たちはすでに退職したと明かし、「週末にかけてもっと多くの辞職者が出るだろう」としている。混沌の渦中にあるUnity Technologiesは、ここからどのように舵を取るだろうか。