Unity TechnologiesのCEO兼社長が退任。波乱のUnityから去る

 

Unity Technologiesは10月10日、John Riccitiello氏が同社のCEO兼社長などを退任することを発表した。退任は即日おこなわれ、暫定CEO兼社長兼取締役として元IBMの社長などを務めたJames M. Whitehurst氏が就任している。


Unity Technologiesはゲームエンジン「Unity」の開発を手がける企業。John Riccitiello氏は2014年より同社のCEOなどを務めてきた人物だ。2004年の創業以来のCEO・David Helgason氏に交代するかたちで同社を率いてきた。なおHelgason氏はRiccitiello氏にCEOを引き継いだ後も、取締役として同社事業に携わっている。ちなみにRiccitiello氏は、同社以前には2007年から2013年にかけてElectronic ArtsのCEOなどを務めた経歴をもつ。

今回、Riccitiello氏がUnity TechnologiesのCEO兼社長、および会長ならびに取締役を退任することが発表された。同氏の退任は即日おこなわれ、James M. Whitehurst氏が暫定CEO兼社長兼取締役を務めるという。Whitehurst氏はIBMの社長やシニアアドバイザーを歴任したほか、2008年から2020年にかけてはオープンソースソフトウェアのクラウド技術サービスなどを手がけるIBM傘下のIT企業Red Hatの社長兼CEOを務めていた経歴をもつ。IT業界のベテランが暫定的なトップとしてUnity Technologiesを率いる体制となるわけだ。

またRiccitiello氏の退任後、Unity Technologiesの会長には同社取締役会のリード・インディペンデントディレクターを務めるRoelof Botha氏が就任。またRiccitiello氏も円滑な引き継ぎのために、当面はUnity Technologiesに助言をおこなうかたちになるようだ。

【UPDATE 2023/10/10 18:02】
Riccitiello氏の引き継ぎについて表現を調整


なお昨今のUnity Technologiesといえば、9月に発表されたUnity利用者向けの「Unity Runtime Fee」が物議を醸していた。Unity Runtime Feeは2024年1月から導入予定の新料金システム。Unity利用者が開発したゲームが、エンドユーザーによってダウンロード・インストールされた回数を基準として適用。ゲームの過去12か月の収益が最小しきい値を超えており、かつ累計インストール数が最小しきい値を超えている場合、さらにインストールされるたびに規定の料金の支払いが求められる仕組みだ。

収益および累計インストール数の最小しきい値を超えて、実際に支払いが発生する利用者は全体の一部にとどまる見込みとされている。ただ、インストールされただけで料金が発生する仕組みや、エンドユーザーによる正規インストールをどのようにして正確に把握するのか不透明な点、また以前のバージョンを以前の利用規約のまま利用できた従来の仕組みが、Unity Runtime Fee発表前に密かに封じられていたことなどにより、利用者からは大きな反発の声が上がることとなった。同社への信頼を失ったとしてUnityの利用をやめることを宣言する開発元も続出していた(関連記事)。

そうした騒動を受けてUnity Technologies側は謝罪をおこない、またUnity Runtime Feeの規定は変更された。まず無料で利用できるUnity Personalプランへの導入が完全に撤回。またUnity ProおよびUnity Enterpriseプラン利用者については、2024年にリリース予定のLTSバージョンよりUnity Runtime Feeが導入。支払い基準に達した利用者は、インストール数に応じたUnity Runtime Feeを支払うか、収益の2.5%を支払うかのどちらかを選択できるという。さらに、そのインストール数も収益金額も、利用者自身で報告して支払うかたちとされた(関連記事)。


波紋を広げたUnity Runtime Feeに対しては一連の規定変更がおこなわれ、開発者からは好意的な意見も寄せられている。一方、一度崩れた信用を完全に取り戻すことは容易ではない様子。将来的にまた受け入れづらい規定変更がなされるのではないかと疑心暗鬼になっているユーザーも見られる。

約9年にわたってUnity Technologiesを率いてきたJohn Riccitiello氏は、そうした出来事から1か月を待たず退任したかたちとなる。退任理由は明かされていないものの、同氏は退任発表のなかで「10年近くUnity Technologiesを率いて、従業員、顧客、開発者、パートナー企業に貢献できたことを光栄に思います」と綴っている。今後、Riccitiello氏のいない新たな体制でUnity Technologiesがどのような舵取りをおこなっていくかは注目されるところだろう。