スピードラン走者のSuigi氏は10月26日、『スーパーマリオ64』のスピードランにおいて「0 Star」レギュレーションの世界記録を更新。自身のもつ世界記録6分20秒32を約4秒更新し、6分16秒61とした。
Speedrun(スピードラン)とは、日本ではRTA(リアルタイムアタック)とも呼ばれる、ゲームクリアなどの目標を達成するまでの時間を競いあう競技だ。スピードランの対象となっているゲームやレギュレーション、世界記録ランキングなどはSpeedrun.comで確認することができる。今回世界記録が更新されたのは「0 Star」と呼ばれる、『スーパーマリオ64』に登場するスターを一切集めずにクリアするレギュレーションだ。
本作では、本来であればいくつかのスターを獲得し、規定枚数のスターがないと開かない扉を開けていく必要がある。しかし0 Starではスターを1枚も取得しないため、扉を無理やり突破することとなる。ここで重要になるテクニックがBackwards Long Jump(BLJ)、いわゆる“ケツワープ”だ。壁や段差といった場所に向かって後ろ幅跳びを連続でおこない、マリオに後ろ向きの加速度を溜めることでとんでもない速度で移動できるテクニックであり、扉をすり抜けて本来進行できないステージなどに入ることも可能となる。
今回0 Starの記録を更新したのはSuigi氏。同氏は0 Starのほかにも、1 Starや16 Star、70 Starなどで世界記録を所持しているスピードラン走者だ。Suigi氏が0 Starカテゴリで初めて世界記録を獲得したのは今年の4月で、タイムは6分26秒台。同月中に3回も自己記録を更新し続け、4月16日には6分20秒32としていたが、6分20秒切りには届かなかった。それが今回半年ぶりの更新となり、そのうえ約4秒もの大幅な短縮となった。
Suigi氏の前回記録と、今回の記録更新時の動画を比較すると、今回は動画内タイマーにおける2分40秒付近「DDD skip」という箇所をスムーズに突破できていることがうかがえる。このDDD skipのDDDとは「Dire, Dire Docks(日本語版ではウォーターランド)」ステージを示している。
『スーパーマリオ64』では、開放にスターが30枚必要な扉の先に「ウォーターランド」と「ほのおのうみのクッパ」の2ステージが存在する。本来のゲームプレイでは、「ウォーターランド」のスター「クッパのせんすいかん」をクリアし、青い壁を後退させることで、「ほのおのうみのクッパ」への入口に進めるようになる。
しかし0 Starでは、扉を開放し、青い壁を後退させる手続きを踏まず、どちらもBLJでスキップすることになる。ここでおこなうBLJは、扉付近にある階段上で、階段に対して水平におこなう。このBLJは階段などの段差に対して垂直におこなうBLJに対し、SideBLJ(SBLJ)と呼ばれる。SBLJをおこない仮に扉抜けが成功しても、青い壁の判定にぶつかってしまうとウォーターランドに入ってしまい、ステージのスキップができなくなってしまう。そのためSBLJは角度が重要となり、かつ手すりなどにぶつかってしまわないように、速度も調整する必要があり、非常に高難易度のテクニックといえる。
ちなみに別のレギュレーションである120 Starでは、ユーザーの研究によって、最近新たに「Carpetless Setup」が提案されたばかり。「Carpetless Setup」は、「レインボークルーズ」ステージにてカーペット地帯をスキップする「カーペット無し走法/Carpetless」を人力でも大幅な更新を可能とする手法・手順(Setup)だ。「Carpetless Setup」によって10月12日に記録が更新されたことを皮切りに、10秒以上の更新が続いている(関連記事1、関連記事2)。
一方で0 Starは1回のランの長さが短く研究が進んでいることもあり、120 Starのように大幅な短縮が見込まれる余地は少ないレギュレーションといえる。したがってタイムを短縮するには、高難易度のテクニックをミスなく成功させることが必要となる。
今回の6分20秒切りは、こうした高難易度のテクニックを目立ったミスなくこなし続けた、Suigi氏の高い技量が光った結果だろう。なおSuigi氏はTwitchでの配信時に記録を更新し、X上でも世界記録更新を報告していた。配信時のコメントや投稿へのリプライには、称賛が多く寄せられている。
さまざまなテクニックを高精度で決め続け記録を更新したSuigi氏。『スーパーマリオ64』の0 Starカテゴリは6分10秒台という領域に突入しはじめた。本作では0 Starに限らず先述の120 Starでも記録更新が続いており、今後のスピードランコミュニティの動向も注目されるところだろう。