『オーバーウォッチ2』がSteamで歴史的不評を獲得するも、“裏がある”との指摘。不評の半分以上が中国からのレビュー

『オーバーウォッチ2』がSteamでリリースされ歴史的不評を獲得している。一方で、単なるゲーム内容に対する不満だけではなさそうである。その理由のひとつは、中国での展開だ。

Blizzard Entertainment(以下、Blizzard)は8月11日、同社が手がける『オーバーウォッチ2』を新たにSteamストアで配信開始した。これ以降の同作はSteamユーザーレビュー上で「圧倒的に不評」のステータスを獲得。この状況について、X(旧Twitter)上のとあるユーザーが中国ユーザーの影響を指摘している。

『オーバーウォッチ2』は、Blizzard Entertainmentが手がけるオンライン対戦FPSゲーム。人気を博した『オーバーウォッチ』の続編として、基本プレイ無料タイトルとして配信中。前作から一新して基本の対戦人数を6対6から5対5へと変更したほか、シーズン制の採用や新ゲームモードなどさまざま変更とともに一新された続編タイトルだ。


PC版はこれまでBattle.netを介して配信されてきたが、シーズン6開幕にあわせてSteam版が配信。Steamでプレイできるようになったものの、ユーザーレビューは11万件以上が寄せられ、好評率9%の圧倒的不評。一部ではSteamでもっとも評価の低いゲームであるとラベリングされている。その評価は、ゲーム内容への評価だけのものではないようだ。

今回の『オーバーウォッチ2』Steamユーザーレビュー上での“低評価爆撃”については海外メディアで報じられている。各メディアではユーザーの低評価レビューから内容を引用しつつ、同作の基本プレイ無料化に伴うマネタイズ方針の転換、および前述のPvEモードに関する大幅な方針転換への言及が多数見受けられるとした(IGN)(PCGamsN)。同作は今回配信されたシーズン6「INVASION」に至る過程で、当初予定されていた本格的なPvEモード配信計画の大きな方針転換や、PvEアクセス権がバンドル販売形式になるなど、たびたびユーザーから批判が寄せられてきた(関連記事1、関連記事2)。今回の膨大な低評価は、そうした『オーバーウォッチ2』のこれまでの動向を踏まえたユーザーからの否定的な反応とみる報道がなされたわけだ。

しかしながら、ゲーム市場調査会社Niko PartnersのディレクターDaniel Ahmad(@ZhugeEX)氏は「この状況に関して英字メディアから報じられていない事実がある」として“低評価爆撃”の多くが「中国語(簡体字)」で投稿されていることを指摘した。本稿執筆にあたり弊誌でもSteamストア上からの(APIによる)確認をおこなったところ、レビュー全体11万180件のうち言語設定「中国語簡体字」によるレビューは6万8321件で全体の約62%。さらにその6万8321件のうち好評としたレビューは僅か3%(97%が不評)となっており、同氏の指摘に合致する結果となった。この結果からは、不評レビューの半数以上が中国ユーザーからきていることがうかがえる。


こうした背景には中国での『オーバーウォッチ2』が2023年1月23日以降、実質配信停止の状態にあったことが関連しているだろう。この配信停止はBlizzardが2022年11月17日、NetEaseとの中国現地パートナー契約を終了したことに伴う決定だ(関連記事)。VPNツールなどユーザーが各自で対策を講じることでプレイを継続することも可能ではあったものの、中国における長年のBlizzardタイトルの人気もあいまって、中国のユーザーコミュニティに大きな波紋を呼んだ(関連記事)。

今回配信が開始されたSteam版『オーバーウォッチ2』は、中国のプレイヤーたちにとってVPNツールを使わずにプレイすることが出来る新たな機会となった。しかしながら、だからといって過去の配信停止時にコミュニティから湧き起こった反感はおさまるものではなかったのだろう。その結果、新たな意思表明の場を得た中国プレイヤーたちはSteamユーザーレビューに殺到。そうした“不評の波”が世界各国の既存プレイヤーたちを巻き込み増幅。そうして今回、「圧倒的に不評」というステータスを得るまでに至ったものと考えられる。


本稿執筆時点での『オーバーウォッチ2』ユーザーレビューは11万180件中9%の好評で「圧倒的に不評ステータス」と10%を下回る好評率を記録。その一方でSteam版においてはピークタイムの同時接続プレイヤー数が連日6万人以上、人が少ない時でも常時2万人以上と人気タイトルと呼べる水準だろう。シーズン6「INVASION」ではPvEモード「ヒーローミッション」に加え、新ヒーロー・新モードなど本作において過去最大規模が謳われたアップデートが実施された。Steamストア上の評価推移も含め、同作の今後に注目したい。

オーバーウォッチ2』はPC(Battle.net/Steam)/PS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S/Nintendo Switch向けに基本プレイ無料で配信中だ。

Toru Ishikawa
Toru Ishikawa

雑食ゲーマー、好きな言葉は「Random loot」と「Permadeath」です。

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