『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』では攻略に役立つ多彩な装置が登場する傍らで、実用性など度外視した“役に立たなそうなマシン”たちも生み出されていた。昨今では不思議な特性を備えた素材「エレベーターの柵」がユーザーにより発見されたことで、役に立たなそうなマシンの研究も過熱している様子だ。
『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』は、Nintendo Switch向けに発売中のアクションアドベンチャーゲームだ。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』の続編にあたる。本作ではリンクの新たな能力「ウルトラハンド」によって、物体同士を繋げたり、ゾナウギアを組み合わせたりして幅広いものづくりが可能。本作発売後から、プレイヤーの創造性から数多くの発明品が誕生してきた。
SNS上ではアイテム収集装置や戦闘ロボ、優れた移動手段である空中バイクなど、さまざまな機能をもつマシンが生み出されてきた(関連記事1、関連記事2)。その一方で生み出されてきた、“何の役にも立たなさそうなマシン”も一定数存在。攻略上の機能性などは備えていないものの、「見ていて楽しい」「触って楽しい」といった鑑賞・遊戯向けのメリットを有する発明といえる(関連記事)。
そんな国内外の本作コミュニティでは昨今、ゴーレム製造房・右脚の蔵の「エレベーターの柵」がさまざまなもの作りに利用されている。柵は、ゾナウギアなどを用いてエレベーターを破壊することで無理やりもぎ取ることが可能。不思議な特徴を備えていることが注目されている。役に立たなそうなマシンづくりにおいても、エレベーターの柵は新たな可能性をもたらした様子だ。
たとえば上記ユーザーは「Black Metal Link」として、物々しい装置を作成。「異次元悪霊」の防具に身を包んだリンクが、エレベーター柵で逆十字を形作った飛行マシンに乗り込んでいる。マシンの上部では二つの火龍の頭が回転しており、リンクめがけて炎を吹き付ける構造。役に立たなそうどころか、対策なしで乗り込むと炎によるダメージを受けてしまう危険な装置となっている。一方でメタルバンドのコンサートのステージ演出のような、イカした映像を作り出している。
また下記のユーザーが投稿した動画には過去作プレイヤーには“懐かしい”マシンが紹介されている。ユーザーが作成したのはエレベーターの柵と扇風機を組み合わせた“UFO”のような物体。牛たちの上で回転して飛行しながら、機体中央から鏡による光を放っており、さながら「アブダクション(誘拐)」をおこなうUFOのような様相だ。
動画におけるリンクは頭装備に「ムジュラの仮面」を被っており、このUFOは『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面』のオマージュと見られる。同作においては、ロマニー牧場のイベントにて牛を盗む“オバケ”退治のイベントが存在した。オバケたちはUFOにて襲来し、退治に失敗すると牧場の少女・ロマニーと牛たちがUFOの光に飲まれて連れ去られてしまう。ロマニーは後日帰ってくるものの、うつろな様子でまともに話をしなくなる。
そうした要素のほかオバケたちの奇怪なデザインやイベント中の不気味な音楽も相まって、印象に残っているプレイヤーは多いのかもしれない。スレッドは本稿執筆時点で約2600件のUpvote(高評価)・139件のコメントが寄せられ、注目を集めている。当時プレイした際に感じた驚きや恐怖を思い出しているというユーザーも散見される。攻略上の機能性などは有していないものの、ユーザーに懐かしさとトラウマを呼び起こす作品となったようだ。
ほかには、失敗が元になったと見られる役に立たなそうなマシンも報告されている。そのマシンは、エレベーターの柵を土台にしつつ「柵を重ねたパーツ」を組み合わせる構造だ。エレベーターの柵は風の影響を受けやすい性質を備えていると見られ、柵を重ねるとその性質がさらに強まる様子。そのため柵を重ねたパーツを、風を受ける“帆”のように用いることで、大きな推進力を得られることが報告されていた。
上記ユーザーのマシンは焚き火にハイラルボックリを投げ込むことで上昇気流を発生させ、機体を浮かせることに成功。しかしやたらと派手な上昇気流のエフェクトとは裏腹に、機体はあまり動かず不安定な挙動を見せている。ハイラルボックリでの上昇気流では、扇風機のように安定した推進力を得ることはできないようだ。ユーザーは「エフェクトがかっこいいと思っただけ」としてこの動画を投稿。たしかに派手な旋風を生じさせながら移動する様子はかっこよく、乗り物としては使いにくそうだが見ていて楽しさはある。
そのほかReddit上では“今は役に立たなそう”ながら、将来の可能性を感じるマシンも報告されている。下記ユーザーは「跳ねるへんてこな物体」を紹介。レールとおきあがりこぼしをそれぞれ二つずつ組み合わせ、接地部分には凍結肉が付けられている。向きの違う二つのおきあがりこぼしがそれぞれ直立しようと作動し、さらに凍結肉が地面に滑る性質によって、何度もぴょこぴょこと跳ね回る様子だ。一見面白い動きを見せるだけの装置ながら、スレッド内には「この挙動を歩行のための機構に利用するとよさそう」といった提案も見られる。たしかに応用が可能であれば、独特な動きを見せるマシンを作れそうだ。
また別のユーザーは「無重力宇宙船の試作機」と題して、人工衛星のような形状のマシンを紹介。機体には二つのエレベーターの柵のほか、台車に二つのおきあがりこぼしが水平方向に付けられている。
このマシンは上昇気流のある、または低重力のエリアにおいて運用可能とのこと。二つのおきあがりこぼしの作用によってか、重力や上昇気流の影響を受けない様子だ。一方で扇風機付きの盾などによって、水平方向の移動が可能。投稿者は浮遊石とは違った操作が可能とアピールしており、さらなる可能性があると確信していると綴っている。現状では運用できる場所が限られそうなものの、今後の研究次第で新たな運用法が発見されるかもしれない。
エレベーターの柵は超軽量かつ基本的に壊れることがない。また特殊な物理演算といった性質も備えている。そのためユーザーたちは、実用性の有無に関わらずさまざまなもの作りに利用しているわけだ。今回報告されている“役に立たなそうなマシン”においても、通常の素材では動かなかったり炎上してしまったりすると見られるマシンを柵によって実現しているのだろう。なお今回の報告におけるマシンはいずれも攻略上の機能性などはなさそうなものの、用いられているテクニックは今後意外なかたちで応用されるかもしれない。
『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』はNintendo Switch向けに発売中だ。
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