Summer Game Fest主催者、“E3キラー”との呼び名に対して「E3は自滅だった」と語る。実現しなかった“人気ゲームイベント共存への道”

 

ゲームイベント「E3 2023」の開催中止が、今年3月に発表された。2019年以来となるオフライン開催が今月6月に計画されていたが、実現は叶わなかった格好だ。また、同イベントは近年苦境にあり、ユーザー間でもその存在感の喪失がささやかれる状況だ。

かつてE3のキーマンとして活躍していた、別のゲームイベント「Summer Game Fest」の主催者が、E3の現況について自身の考えや想いを述べる一幕があった。特に「Summer Game FestがE3を逆境に追い込んだのではないか」といったユーザー見解については真っ向から否定。“E3の現況は自滅であった”と述べている。海外メディアVGCによるポッドキャスト番組にて語っている。


E3(Electronic Entertainment Expo)は、例年アメリカのロサンゼルス・コンベンションセンターで開催されてきた世界最大規模のゲームイベントだ。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、2020年の開催は中止となり、2021年にはE3として初めてのオンラインイベントとして開催されるも、2022年にはふたたび全面中止に。そして今年は、PAXなどの大型イベントを手がける企業ReedPopに運営を託し、オンライン・オフライン双方での開催に向けて準備が進められてきたが、今年3月に開催中止が発表された(関連記事)。

E3 2023の中止について、ジャーナリスト/司会者のGeoff Keighley氏が見解を述べている。同氏は6月1日に配信された海外メディアVGCのポッドキャスト番組に出演。自身が「海外フォーラム上で“E3 Killer”と呼ばれていること」についてどう思うかと問われた。

Keighley氏は、もともとE3のキーマンとして活躍していた人物(詳細は後述)。そして、2020年より開催されてきたゲームイベント「Summer Game Fest」(以下、SGF)を主催する人物でもある。同イベントは2021年からは6月に実施されており、今年も日本時間6月9日から開催予定となっている。つまりE3と開催時期が重なるゲームイベントだ。同氏の主催するSGFが影響力を増したことでE3は苦境に追いやられ、再起を図るイベントでもあったE3 2023は中止に追い込まれたのではないか、との見解が海外フォーラム上では投じられているわけだ。

一方でKeighley氏はこの意見を一蹴しており、同氏の考えでは「E3は自滅したようなものだ」という。その根拠として、同氏はE3 2023の中止後もSGFの参加企業がまったく増えていない点に言及。SGFがE3 2023から参加企業を引き抜いた、あるいは結果的にE3 2023からSGFに参加企業が流れたといった事実はないようだ。また同氏はSGFを立ち上げた理由についても「E3というワゴンから車輪が外れ落ちるのを見たから(I saw the wheels falling off the wagon of E3.)」と比喩を織り交ぜて伝えている。E3に対抗したわけではなく、同イベントがすでに崩壊していくなかで、SGFの実行に踏み切ったということだろう。

そもそもE3 2023とSGFとは“共存する”予定であったといい、その実現にむけてReedPopとは何度も話し合いを重ねていたそうだ。また両イベントは方針も異なっていた。E3 2023は大規模展示会および一般客向けイベントの二つの軸で計画されていた。対してSGFは、生放送によるオンライン向けのショーケースイベントとメディアやインフルエンサー向けの非公開イベント「Play Days」の二軸で開催予定となっている。

両イベントには狙いや運営方針に大きな違いがあり、E3 2023とSGFの共存は合理的な計画であったとKeighley氏は述べている。また同氏は、各企業はE3 2023とSGFの両方に参加することもできただろうと説明。たとえばゲームの発表をSGFでおこない、E3 2023で一般客向けにプレイアブル出展するというアイデアをもつ企業もあったという。そうした点から、同氏はSGFの存在がE3 2023を中止に追い込んだとは考えていないわけだろう。

なおKeighley氏は1994年のE3第1回開催から、25年間にわたって参加してきた人物だ。2017年以降はE3のライブ放送パネルセッションE3 Coliseumのプロデューサー兼ホスト役を務めてきた。しかしE3 2020においてKeighley氏は、E3 Coliseumのプロデューサーとしての仕事を辞退し、同イベントに参加しないと表明(関連記事)。当時は要因はたくさんあるとしつつ、イベント内容を知って参加に抵抗を覚えたと述べていた。その後先述のとおり、Keighley氏は独自のゲームイベントSGFを立ち上げた経緯がある。なおE3 2020については、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて中止された。

つまりKeighley氏はいちユーザーとしても、スタッフとしても同イベントに長期間携わってきた人物といえる。同氏はE3は自分にとって人生の一部であったといい、近年の影響力を失いつつあるE3を見て心が痛んでいたとも述べている。E3 2023の中止についても残念に思うと語っており、復活を望むファンにとっても中止は寝耳に水だっただろうとコメントした。

またKeighley氏は近年のE3におけるソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の不在についても言及。SIEの不在も含めて、ここ7、8年のE3は自分たちのよく知る、好きであったイベントではなくなっていたとの想いを抱いていたそうだ。近年主要な参加企業が離脱していったことも、E3が影響力を失って今年の開催中止に繋がった要因ではあるだろう。

なおKeighley氏は、E3 2020への不参加を表明した際「E3がもっとデジタルかつグローバルなイベントになる必要がある。多くの人々にとって大きな意味をもつブランドであり、展示会場だけのイベントであるべきではない」との考えを、理由を訊いたユーザーに伝えていた。こうした理念はSGFの運営体制にも垣間見え、同氏の思い描く“E3のあるべきだった姿”をSGFが体現している面もあるのだろう。

Summer Game Fest 2023」は日本時間6月9日午前4時から開催予定だ。一方のE3は、将来の開催について現在再評価をおこなっているという(関連記事)。