『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FF14』)のプロデューサー兼ディレクターである吉田直樹氏は、5月9日にトピックス「FFXIV外部ツールの是非について」を公開した。パッチ6.11にてリリースされた『FF14』最高難易度コンテンツ「絶竜詩戦争」のクリアが報告されるなか、クリアチームが公開した動画内に映り込んでいた外部ツールについて、コミュニティが紛糾している状況に対応した内容とみられる。
トピックスでは、「外部ツールの使用は一切禁止である」という『FF14』利用規約の内容の再掲や、外部ツール使用が判明した場合にアカウント停止のペナルティが発生することなどが改めて説明されている。また、外部ツールの定義や、高難易度コンテンツにおける開発側のレイドレースとの関わり方など、コミュニティで問題視されていることについて一歩踏み込んだ内容が綴られている。
なお、本トピックスは冒頭に「本文は『全文』で意味を成しますので、一部の抜粋や切り抜きによる拡散は控えていただけますと幸いです」と記載されている。そのため、トピックスの内容についてはリンクより全文をご参照いただきたい。本稿では、このトピックスが出た経緯について解説していく。
「絶竜詩戦争」は『FF14』の最高難易度バトル「絶シリーズ」の最新コンテンツで、5月2日に海外チーム「Neverland」が世界最速のクリアを報告している(関連記事)。数日後、他のクリアチームが出たタイミングで「Neverland」の一部メンバーはボス撃破時のプレイ動画を公開。しかし、動画には通常の『FF14』ではありえないUIが映されており、国内外で論争を生んだ。魔法詠唱完了前にキャラクターを移動させても詠唱がストップしないラインを可視化するバーや、PTリストへのバフの効果時間の表示など、外部ツールを使用していることが明らかな状況だったのである。
動画公開後、クリアを称賛する声に付随して、「トップ層がツールを使用することの是非」について国内外で議論が巻き起こった。また、「この動画のようなUIを設定するにはどうすればいいか」といった内容を公式フォーラムに質問するプレイヤーすら現れた。この騒動を受け「Neverland」のメンバーであるSkylar氏はTwitterに「自分たちの動画でしか騒がれていないが、このツールは10万人以上が使用している。この外部ツールについて、使用の可否をスクウェア・エニックス及び吉田P/Dに問いたい」という旨を投稿(現在削除済)。世界最速クリアを果たしたプレイヤーがその話題性を利用して運営に外部ツールの使用可否を問うという、前代未聞の状況となっていたのである。
これまで『FF14』では外部ツールについてたびたび議論となっていたが、運営側の「使用禁止」というスタンスは揺らいでいない。2020年2月に放送された「第57回プロデューサーレターLIVE」でも外部ツール使用に対する運営側のあり方が解説されており、明確に禁止行為であることが説明されている(関連記事)。しかし同放送の吉田氏の発言によると、「禁止である」としつつも、外部ツールを使用していることを検知することや、配信画面やスクリーンショットに映っている表示が本当に外部ツールのものなのか判断することは難しいようだ。そのため外部ツールの使用は黒とされつつも、実際は黙認に近い状況であった。
「Neverland」のメンバーからの問いかけに対する運営からの回答は、トピックスにあるとおり「一切使用禁止」である。使用を公言している場合は優先的に調査がおこなわれ、規約に則っての処分が実施されるとのこと。それゆえか、今回「Neverland」メンバーが公開した動画はスクウェア・エニックスの著作権の申し立てにより削除されている。また、外部ツールを画面に表示しながら配信をおこなっていたストリーマーが放送中にGMに呼び出され、ペナルティを受けるという事例も発生しているようだ。これまで外部ツールの使用は“黙認”に近い状況だったが、今回の一件でより対応が厳しくなったものとみられる。
『FF14』公式Twitterでは、過去の「絶」シリーズにおいて、クリア者が複数出た際にお祝いのコメントを投稿し、トップのクリアチーム名やクリアタイムを公表していた。しかし、「絶竜詩戦争」ではチーム名は伏せられ、「クリアチームが誕生」と濁されている。もともと『FF14』のレイドレース文化はユーザー主体で発生し、非公式で発展してきたものである。公式コメントはその盛り上がりに貢献すべく出されていたものだったが、外部ツールによる競争の激化や論争を助長するのであれば、今後は控えることも検討されているという。「禁止」と明言されている外部ツールを大っぴらに使用する一部プレイヤーの言動により、運営側とコミュニティの繋がりまで希薄になってしまう可能性があるのは非常に残念なことである。
外部ツールは「一切使用禁止」であるという旨を改めて強調し、目立って使用しているプレイヤーに対してはペナルティ付与も実施された『FF14』。これまで黙認に近い状況であったにもかかわらず、意図を汲まずに大っぴらな利用を続けてきた一部プレイヤーによって、運営側とコミュニティの関係性すら淡白なものとなっていくのは避けたいところである。これ見よがしに禁止ツールを利用する人々が減り、モラルあるプレイヤーが増えることを願っている。
© 2010 – 2022 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
※ The English version of this article is available here