『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FF14』)内で、『FF』シリーズの生みの親・坂口博信氏が非公式のブランドを立ち上げたようだ。1月21日、坂口氏はTwitterでブランド「sakaGUCCI」の立ち上げを宣言し、マーケットに「チョコボのぬいぐるみ」を出品。その後はパーティ募集からの直接取引による限定販売の手法を取り、転売やなりすまし行為への対策をしながらのブランド展開をおこなっている。1月26日0時からは第5弾として、サルエルパンツコーディネートのセット販売を予定している。
坂口氏は『ファイナルファンタジー』シリーズの生みの親として知られる人物だ。2021年10月2日におこなわれた『FF14』のプロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏との対談を機に『FF14』のプレイを開始。対談終了後も『FF14』を続け、すさまじい勢いでメインストーリーを攻略する様子が話題となった(関連記事)。12月7日に正式サービスが開始された大型拡張ディスク「暁月のフィナーレ」のメインストーリーが一段落すると、同氏はクラフターのレベリングに着手。調理師のレベルが90に達した際には、最新の食事である「パンプキンポタージュ」を調理してマーケットへと出品していた。
『FF』シリーズの父である坂口氏のお手製料理ということで、この出品は非常に多くの注目を集めた。
そこで懸念されたのは転売行為のほか、同姓同名の別人が製作した“偽物”が出てくる可能性である。『FF14』のクラフト品には、製作者の銘が刻まれる。『FF14』では、同姓同名のキャラクターは同じワールド内に作成することはできない。坂口氏が拠点を構えるAnimaワールドには坂口氏のキャラクターであるHironobu Sakaguchi氏は一人しかおらず、Animaワールドのマーケットに出品されたHironobu Sakaguchi銘のアイテムは、坂口氏の手作りアイテムのように見える。
しかし、別のワールドに作成した同姓同名のキャラクターで製作したアイテムをAnimaワールドのキャラクターに渡せば、データ上はまったく区別のつかない“偽ブランド品”を販売することができる。また、パンプキンポタージュのような所持品にスタックできるアイテムであれば、同じアイテムを坂口氏製作のものとまとめることで、Hironobu Sakaguchi銘のアイテムを増殖させることもできる。これらの手法は『FF14』の仕様の裏を突いたものであり、規約違反ツールなどを使用することなく誰でもできてしまうものだ。
実際に坂口氏がこれらの被害に遭っているのかどうかは定かでない。しかし、パンプキンポタージュの販売の際、どこかからこういった被害の可能性があるという話を聞いたのかもしれない。以降のアイテム販売については転売行為や同姓同名キャラクターによる製作物が出てくる可能性を考え、さまざまな試行錯誤が重ねられている。
sakaGUCCIのアパレルアイテム第1弾「ウインターセーター」は、パーティ募集で配布した7枚と、坂口氏が知人に配布した3枚の、計10枚の限定品として販売された。以降販売されたアイテムも数量は限られ、希少性の高いアイテムとなっている。パーティ募集内では購入希望者に転売はしないよう強くお願いをしたうえで、素材費にチップを加えた価格での取引がおこなわれているようだ。また、購入アイテムはその場で武具投影してアイテムをBIND状態(トレードや出品ができない状態)にする決まりもある。購入後は坂口氏と一緒に討伐コンテンツへ行くツアーも実施されており、武具投影したお手製の装備を着て思い出づくりもでき、なおかつ転売防止にもなるという一石二鳥の策である。
ネームバリューをゲーム内アイテムの付加価値にした例として、過去にはヴィジュアル系ロックバンドGLAYのボーカルを務めるTERU氏が、自身のキャラクター銘入り装備のマーケット出品をおこなった例がある。TERU氏はMukky Queenの名前でGungnirワールドで活動しており、自身の銘の入った装備「カミーズ」を1着5000ギルで販売。しかし、似た名前のキャラクターによる偽物の出品や、高額転売行為が問題となり、Gungnirワールドのカミーズ市場は荒れた。坂口氏のアイテム販売の際にコミュニティ内で生まれていた懸念のなかには、このカミーズ問題を踏まえてのものも少なくなかった。sakaGUCCIのなりすましや転売対策が徹底しているのも、TERU氏の前例があってのことなのかもしれない。
『FF』の父が手掛ける『FF14』のゲーム内ブランド「sakaGUCCI」。転売や偽ブランド品の対策を徹底したことで希少価値を高め、ファンへのサービスにもなる新たな試みである。坂口氏は今後の大きな展開として、このブランドで稼いだギルをゲーム内世界に分配するような試みも思案しているようだ。今晩0時にも手渡し販売がおこなわれる「sakaGUCCI」の今後の動きから目が離せない。
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