動物保護団体のPETA(People for the Ethical Treatment of Animals)が、『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』の最後の追加ヒーローとして同団体マスコット「Not a Nugget」の実装を求める活動を繰り広げている。海外メディアTheGamerが報じている。
『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL(以下、スマブラSP)』は任天堂の人気対戦アクションゲームだ。2018年のリリースから同作にはプレイヤーキャラであるファイターが定期的に追加されており、6月28日にはディレクターの桜井政博氏が「次の追加ファイターが同作最後の参戦キャラになる」との旨を表明している(関連記事)。今回PETAは、その最後の参戦キャラとして同団体のキャラ「Not a Nugget」を実装するように求めているのだ。
Not a Nuggetは可愛らしいひよこのキャラクターだ。その名の通り「ぼくは鶏だけどナゲットじゃないよ」と主張して、動物を食肉にすることに反意を示す思いが込められている。9月9日、PETAの公式Twitterアカウントは、「任天堂で働いているおじさんが『スマブラSP』のベータ版のスクリーンショットを送ってくれた」として2枚の画像をアップロードした。
上述のツイートに送付された2枚の画像は、Not a Nuggetが『スマブラSP』の世界に仲間入りしているコラージュ画像だ。ケンやマリオたちと同じステージに立ち、リザルト画面にも並ぶNot a Nuggetはやや浮いているものの、奇妙に凝った合成をされている。いずれにせよ、PETAには本気で「最後のファイターはNot a Nuggetだ」と主張するつもりはなく、広報を兼ねたジョークツイートであると見られる。「任天堂で働いているおじさん(My uncle works at Nintendo)」というのも、英語圏コミュニティにおいて、リークという設定のジョークなどを述べる際によく用いられるミームだ。
しかし、PETAは本気でNot a Nuggetのファイター化を望む動きも見せている。同団体は公式サイトにて、「PETAのキャラクターを実装するよう、任天堂と桜井氏に促そう!」として署名募集ページを公開しているのだ。同ページではNot a Nuggetにまつわるアイテムとして、「豆腐」や「ほうれん草」などヴィーガン食にまつわる食材が紹介されている。ほかにも、一部畜産業において利用されているとして、動物へ与える苦痛が問題視されている「スタンガン」およびナゲット製造に使われるミートグラインダーの刃などが凝った設定とともに提示されている。Not a Nuggetがアクションし技を放つところも動画になっており、気合の入りようがうかがえる。残虐表現などが抑えられている『スマブラSP』とはいえ、ひよこを戦いの場に送り出すのは大丈夫なのだろうかと、いささか心配だ。
渦中にあるNot a Nuggetの起源は不透明なものの、筆者の観測範囲内では2007年頃には動物愛護団体PETA2によって、ひよこの絵と共にスローガンのように用いられていた記録を見つけられた。またPETAは2012年には、アメリカの女優Alana Thompson氏がペットのニワトリに「ナゲット」と名付けた報道に反応。同団体は当時7歳ほどだったThompson氏に「ペットの名前をナゲットではなく、“ナゲットではない(Not a Nugget)”に変えてはどうか?」と提案している。Not a Nuggetは活動者によってTシャツなどの意匠にもされており、PETAにとって長い歴史を持つ愛着あるキャラクターのようだ。
PETAはゲーム文化に対しても深い関心を持っているようで、今回に限らずゲームにまつわる活動を見せている。2020年に同団体は『あつまれ どうぶつの森』における動物などの扱いについて異議を唱え、一部活動者がゲーム内で博物館を管理するキャラクター「フータ」のもとに殺到してデモ活動をおこなった(関連記事)。また、同年にはPETAフランス本部が狩猟ゲーム『Hunting Simulator 2』について「銃器をカメラに変えてほしい」と要望を送っている(関連記事)。ある種“クレーム芸”ともいえる突飛な主張をする例が目立つため、今回のケースも受け止め方に苦しむ印象だ。
PETAが本気でNot a Nuggetを『スマブラSP』“最後のファイター”に据えようとしているのか、それとも広報を主目的とした活動なのかは不明だ。しかし誰もが注目する最後のファイターが、PETAから参戦する可能性は一切ないだろう。署名運動などのパフォーマンスが、桜井氏をはじめ『スマブラSP』の開発に影響を及ぼさないことを望みたいところだ。そして実際の最後のファイターが誰になるのか、改めて参戦発表に注目したい。