Activision Blizzard訴訟問題について社員たちが連名で公開状を送る。動揺広がる社内、業務への支障を伝える開発者も【UPDATE】

Activision Blizzardが、女性従業員に対するセクハラや不当な待遇などで訴訟されていた問題とその対応について、同社社員が連名による抗議の公開状を同社重役に送った。海外メディアの報道によれば、1500名を超える多数の社員が公開状に署名しているようだ。

Activision Blizzardが、女性従業員に対するセクハラや不当な待遇などで訴訟を起こされた問題とその対応について、同社社員が連名による抗議の公開状を同社重役に送った。KotakuPC Gamerなど海外メディアの報道によれば、1500名を超える多数の社員が公開状に署名しているようだ。
 

 
Activision Blizzardおよびその子会社Blizzard EntertainmentとActivision Publishingは7月20日、米国カリフォルニア州の公民権保護機関である公正雇用住宅局(Department of Fair Employment and Housing、DFEH)から訴訟を起こされていた。訴状では、同社において男性従業員を中心とした有害な職場文化が蔓延しており、女性従業員へのセクハラや不平等な対応など、差別的な扱いがあったとされている(関連記事)。

訴訟を受けて、Blizzard Entertainment社長のJ. Allen Brack氏、およびActivision Blizzard 社CCOであるFrances Townsend氏は、同社社員向けに声明を綴ったメールを送信した。内容はそれぞれ「DFEH側の訴状の内容は歪曲されており間違いも多い」「真に無意味で無責任な訴訟」としてDFEH側を批判しつつ、現在の同社は過去の有害な職場環境から改善を重ねていると主張するものだ。これらのメールは、社員や各メディアの手を通じて公開されるに至った。

一方で、元従業員・現役の従業員たちはSNS上で続々と声をあげた。実際に被害を受けた当事者であるという元従業員の証言や、重役たちによる上述の社内メールの内容を批判する現役従業員の声明が投稿されている。また、従業員からは「現在のチームでは不当な扱いは受けていない」といった意見も共有されており、従業員や同社作品ファンへの個人攻撃やハラスメントは控えるようにという呼びかけもある。いずれにせよ、コミュニティおよび関係者はActivision Blizzard社に批判的な傾向を見せている(関連記事)。
 

 
Activision Blizzardおよび子会社への批判が強まるなか、従業員たちが大規模かつ公的な動きに出たようだ。有志社員たちは、前述の重役による社内メールに関する反対意見を示す公開状を作成した。Kotakuによれば、この公開状はすでに同社の管理職たちに向けて送信されているとのことだ。以下に公開状の全文を翻訳して記載する。
 

 
Activision Blizzardのリーダーたちへ。

私達、この公開状に署名した従業員たちは、DFEHによる訴訟に関するActivision Blizzard, Inc.およびその法律顧問による声明と、続いて送信されたFrances Townsendによる社内声明が、私達が信じる会社のあるべき姿に相反し侮辱するものであるという意見に賛同します。はっきり言えば、私達の従業員としての価値観はリーダーたちの言動に正確に反映されていません。

私達は、社による一連の声明が、私達の目指す業界内外の平等性への探求を毀損するものであると考えています。DFEHによる訴えを“歪曲されており間違いも多い”ものとして扱う声明は、社内に被害者を疑わせる雰囲気を醸成します。一連の声明はまた、加害者にきちんと責任を取らせ、将来的に被害者が申し出やすい環境を整える能力を組織がもっているかどうかを疑わしくさせるものです。一連の声明が明らかにしたのは、社のリーダーたちが私達従業員の価値観を軽んじているということであり、トップレベル役員からの早急な是正が必要です。

社の重役たちは私達を守るための行動を取ると主張していますが、訴訟とそれに続く社の問題ある反応を見た今、指導者たちが己の利益よりも私達従業員の安全に重きを置くとは信じられません。多くの元従業員・現役の従業員がハラスメントや不当な扱いについて述べているにも関わらず、訴えを“真に無意味で無責任な訴訟”と断じることは、まったく容認しがたいことです。

私達は、一連の訴えの深刻さを踏まえた、ハラスメントや暴行を受けた被害者たちに理解ある公式見解を求めます。また私達は、Frances Townsendが、彼女の声明の有害な性質を鑑みて、彼女自身の過去の公約に従って女性従業員ネットワークのエグゼクティブ・スポンサーを辞任することを求めます。そして、従業員やコミュニティが安全に声をあげられる環境を実現するための、新しく有意義な取り組みに重役たちが協力することを求めます。

私達は、不当な扱いやハラスメント受けたすべての友人たち、チームメイト、同僚、そしてコミュニティメンバーたちと共にあります。私達は、愛する社が、在籍していることを誇りに思える職場になるまでは沈黙しません、引くこともありません、あきらめません。私達が社を変えます。
 

 
従業員連名による公開状の内容は以上となる。原文についてはKotakuを参照されたい。公開状のなかで社員たちは、Activision BlizzardおよびTownsend氏のDFEHに対する言論を強く批判している。同氏および社の対応に強い不信感を抱いている社員は多いようだ。海外メディアPC Gamerの報道によれば、この公開状には1500名を超える社員が署名しているとのこと。

また、一連の動きが実務に影響を与えているとの指摘も見られる。『World of Warcraft』シニアシステムデザイナーを務めるJeff Hamilton氏は、Twitterにおいて今回の件への意見を表明。同氏は連続ツイートで社の声明と姿勢を批判しつつ、社内状況について触れた。同氏によれば、現在『World of Warcraft』にまつわる業務は全体として「ほとんど仕事になってない」状態だとしている。今回の訴訟および社の対応が従業員に与えた精神的動揺は大きいようだ。
 

https://twitter.com/JeffAHamilton/status/1419115702569472003

 
Activision Blizzardおよびその子会社が7月20日に訴訟されてから約1週間。その間、従業員たちによる意見表明は散発的だったものの、ついに連名による公開状が同社に直接突き付けられることとなった。同社重役たちは、社員たちの大きな声を受けていかなる対応を見せるのだろうか。

【UPDATE 2021/07/28 17:03】
Activision BlizzardのCEO、Bobby Kotick氏は日本時間7月28日、従業員に向けてメール送信された声明文を、同社サイト上で公開した。Kotick氏は声明文のなかで従業員たちへ「正しい共感と理解を提示できなかった」として謝罪、5つの具体的な対策を即時開始するとしている。対策には人事異動や多様性ある従業員の雇用、そして従業員やコミュニティから不適切とされたゲーム内コンテンツの修正という、ゲーマーにとっては気にかかるものが盛り込まれている。今後は法律事務所WilmerHaleの協力のもと、従業員へのサポートやポリシーの見直しを進めていくとのことだ。全文(英語)は同社投資家向けサイトを参照されたい。

Sayoko Narita
Sayoko Narita

貪欲な雑食ゲーマーです。物語性の強いゲームを与えると喜びますが、シューターとハクスラも反復横とびしています。

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