『あつまれ どうぶつの森』の住民などを「Googleでの検索回数」により人気ランキング化。数字で『あつ森』を測るチャレンジと、データで見えない愛のかたち


『あつまれ どうぶつの森』における住民やアイテムの人気を、「Google検索回数」で測ろうという試みが実施されている。プレイヤーの一部は、何かにつけてランキング化するのが好きだ。発売されてまもないころは、どうぶつをランク付けする「Tierリスト」づくりが流行を見せた(関連記事)。ユーザーが思い思いに番付を作成することで違いを楽しんでいたのだ。一方で、これらの格付けは一種のお遊びであり、絶対的なデータなど存在しないと認識することは、コミュニティで暗黙の了解となっていた。

ところが今月、『あつまれ どうぶつの森』を客観的な数値で格付けしようとする挑戦者が現れた。ランキングを作成したのは異色のチャレンジャー、イギリスに所在する水族館Blue Planet Aquariumだ。ふだんは公式ブログで海洋にまつわる情報やアクアリウム関連のトピックを発信しているが、豊富な海遊びコンテンツを擁する本作にアカデミックな嗅覚が働いたようだ。

Blue Planet Aquariumは人気ランキングを作るにあたり、シンプルで明確な基準を打ち出している。それはずばり「どれだけGoogleで検索されたか」である。昨今では、Googleトレンドなどの浸透などにより、どれだけ検索されているかが可視化しやすくなっている。同館はすべての住民・家具・服の検索数についてひとつひとつ検討。もっとも検索された回数が多かった/少なかった対象についての統計をとることで、『あつまれ どうぶつの森』における“人気度”を測ろうとしている。あくまで数値上のデータには限界があるものの、興味深いデータのひとつにはなりそうだ。その結果を覗いてみよう。
 

 
まず住民の人気度を見てみると、トップには純白の貴公子ジュンが君臨。国内でも9月29日の誕生日にはTwitterにて「ジュンくん」がトレンド入りしており、納得の人気度といえるだろう。次点は古参の眼光ニコバンで、熾烈なレースを制して僅差で2位にランクイン。ではその後を追うのは何者かというと、キュートな虚空女子やよいが3位を制した。彼女の背後には、ホラー系から癒しキャラへと変遷した歴史がある(関連記事)。長らくのファンにとって嬉しい快挙といえるだろう。

そして4位・5位はタコであった。軟体女子力バツグンのタコリーナ、衝撃のルックスで親しみと複雑な思いを抱かせるタコヤの頭足類コンビが揃ってトップ5入りしている。ちなみにBlue Planet Aquariumは検索数が少ない住民のマニアック度ランキングも作成。スズメのちゅんのすけ、番長系イノシシいのっちなどが通好みとしてランクインしており、このあたりは国内で統計をとると結果が変わってきそうだ。
 

 
人気の活動ランキングでは博物館への寄贈や虫とりが上位入り。いずれも情報が入り用となるやり込み要素であり、年間を通して検索しながら攻略を進めているプレイヤーの多さを示唆しているだろう。島づくりが2位となっているのもエンドコンテンツの強さをうかがえる。一方「住民との会話」がランクインしているのは、日課として本作を続けるユーザーによる支持かもしれない……が、具体的にどのような検索ワードで引っかかっているのかはいまいち判然としない。

ユニークなのは服とアクセサリーのランキングだ。トップを占めるのはクイーンの冠・王冠・ゴールデンアーマーと露骨にギラついた三銃士。いずれも高額なベルや大量の金鉱石を必要とする衣装で、人気というよりは攻略対象・ステータスとして求めるユーザーが多いのだろう。黄金シリーズが上位を独占するかと思いきや、4位にはなぜかナップサックが滑り込んだ。こちらはシャンクによる限定販売アイテムではあるものの、必ずしもレアとはいいがたい代物。もしかすると非売品である「ははのナップサック」の検索も流入した数値なのかもしれない。そして5位はメイド服である。紳士淑女の欲望はどんなレアリティにも匹敵するようだ。
 

 
家具のランキングの中でもロケット・とうだいはマイル引き換え限定の島づくりアイテム。マイル家具は好みのカラーバリエーションの入手難度もあって、情報交換が欠かせない品々だ。とりわけランキング入りした2点は、使い方次第ではSF風の島やトリックアートにも化けるあなどれない大型アイテム。島づくりにおける流行も人気度にかかわっているだろう。アイアンウッド家具やカッティングボードは、ユーザー間トレード市場での人気ぶりも著しいことで知られる(関連記事)。またシンプルなパネルは、マイデザインを貼ることで無限の可能性を発揮する最強カスタマイズ家具として島づくり職人に愛用されている。
 

 
ユーザー発の人気度ランキングが主観に依存する結果である一方で、「検索件数」という明確な基準をもって順位付けを試みたBlue Planet Aquariumのチャレンジは一定の目新しさをもっているといえるだろう。実際、ある程度ユーザーの肌感覚で納得がいく結果が出ている部分もあったのではないか。

一方、統計的なデータと“肌感覚”のズレも興味深い点といえるだろう。たとえば「人気住民」ランキングには数々のプレイヤーを狂気憔悴に陥れたジャックがランクインしていないのだ。よく番付を見ると18位にかろうじてランクインしているものの、絶対的なデータとは言い切れない。ちゃちゃまる・みすずといった『あつまれ どうぶつの森』初出の定番人気キャラクターの姿が見えないことから、あくまで推測に過ぎないが『どうぶつの森』初代からの検索件数を含めた累計でデータをとっているのかもしれない。また、英語名のみで検索されたという可能性も考えられそうだ。

確かに『どうぶつの森』ユーザーにとって「格付け」は人気コンテンツのひとつ。しかしそこにあるのは真の1位を決めたい欲望よりも、各々が自身の偏愛を発揮したランキングを披露することで、互いの“推し”の共通点や違いを楽しみたいというコミュニケーションツールとしての意味が強いだろう。数字によるデータでは測りきれない愛情表現のかたちが、『あつまれ どうぶつの森』におけるランキングなのかもしれない。Blue Planet Aquariumの研究成果は改めてそのことを認識させてくれたといえよう。