『Dead by Daylight』PTB4.1.0考察。思い切ったバランス調整により、殺人鬼カニバルとヒルビリーの立場は逆転
Behavior Interactiveは7月9日、『Dead by Daylight』にてプレイヤーテストビルド(以下、PTB)4.1.0を公開した。バージョン4.1.0には殺人鬼「カニバル」「ヒルビリー」のバランス調整、専用サーバーの改善が含まれている。本稿では、今回実施されたPTBを体験した後、バランス調整の具合や度々議論の対象となっていた、専用サーバーでの殺人鬼の攻撃の当たり判定についても確認していきたい。
バランス調整:チェーンソー
今月7月4日に報じられたバランス調整の項目を見たユーザーの反応としては、比較的弱い部類の殺人鬼とされていたカニバルの上方修正を喜び、高速移動に加え一撃で生存者をダウンできると能力面で優遇されていたヒルビリーの弱体化に納得をしていたように思える。
しかしその実態は、少々やりすぎ感が否めない調整となっていた。まずはリワークされたカニバル、ヒルビリーのチェーンソーの調整具合について解説したい。
上の動画は、リワークされたカニバルが通常所持しているチェーンソートークンを3つ消費しひたすら真っすぐに移動したシーン。従来のカニバルのチェーンソーと比較して圧倒的に攻撃可能範囲が伸びに伸びている。さらにチェーンソーのトークンを1つ増やすアドオン、チェーンソー攻撃1回ごとの推進距離を伸ばすアドオン等を組み合わせることで、その攻撃範囲はさらに増加する。もちろん当たれば一撃でダウンする攻撃だ。
あまりにも攻撃可能時間の長く,パーク「与えられた猶予」によって攻撃を1度我慢した生存者を、トークンを消費しつつ追い続け、2撃目を与えることができるようにもなっている。ある程度は、板や窓枠を工夫してチェイスを行なうことができるだろうが、追われている際のプレッシャーは従来とは比較にならないだろう。
しかし、このカニバルのチェーンソー攻撃中にトークンを消費し攻撃時間を伸ばす行為は、“追加で攻撃を行なっている”と処理されるため、カニバルと相性が良いとされていたパーク「弄ばれる獲物」を装備している場合は、追加攻撃を行なうたびにトークンを1消費する点に注意したい。せっかく3トークンを溜めて移動速度を速くしたところで、場合によっては1回のチェーンソー攻撃ですべて消費してしまう可能性がある。
続いて、ヒルビリーのチェーンソーに設けられたオーバーヒートシステム。ナースを弱体化した際と同様にチェーンソーがゲージ制の能力となったのだが、現状ゲージの最大量が非常に少なくチェーンソーがすぐにオーバーヒートを起こしてしまう仕様となっている。
上記は“彫刻”と呼ばれるチェーンソーダッシュの移動速度を上げる代わりに、チェーンソーを構えてから走り出すまでのチャージ時間が延びてしまうアドオンを2種装備した動画。構えてから走り出す頃には既に全体の半分ものゲージを消費してしまっていることが分かるだろうか。
従来のように、チェーンソーを使うフリをするようなフェイントを挟んでしまうと、その分ゲージを消費し、チェーンソーを当てられるタイミングでオーバーヒートを起こしてしまうケースがいとも簡単に起こりうる。彫刻を付けないデフォルトの状態ですら、走り出すまでに4分の1ほどのゲージを消費してしまうため、チェーンソーを構えたまま生存者との読み合いを悠長に行なう余裕が無くなってしまった。
オーバーヒートを起こしてしまったチェーンソーは黒い煙が立ち込め、生存者から見ても今チェーンソーが使えない状態であることが筒抜けになってしまう点も苦しい。もはやチェーンソーはただの移動用で、攻撃は通常攻撃と割り切ってしまった方が良いかもしれない。
“私たちはほとんどの部分でヒルビリーの性能に満足しています。ヒルビリーの特殊能力は非常に汎用性が高く、マップを素早く横断したり、生存者との距離を詰めたり、瞬時に瀕死にさせたりすることができます。生存者の視点から見ても適度に対抗手段があり、純粋に上手いプレイヤーが勝つことが多い面白いチェイスに繋がっています。
そのため、特殊能力そのものへの変更は最小限にとどめています。ヒルビリーがチェーンソーを使ってできること (長距離移動、チェーンソーを使うフリ、急カーブなど)を削除することはしません。その代わりプレイヤーの腕前によって変化するプレイに焦点を当て、チェーンソーを効果的に使うことに重点を置き、チェーンソーを乱用することへの小さな欠点を追加するだけにしたいと考えています。
『Dead by Daylight』開発チームが、殺人鬼カニバル・ヒルビリーのバランス調整の内容を発表した際に、上記のようなコメントを述べていたことは記憶に新しい。しかしながら、まさかここまでの上方・下方修正が入るとは誰も予想できなかったのではないだろうか。本作は過去にディレクターであるマシュー・コート氏から「完全なバランスを取ることは諦めている、カオスを楽しんでほしい」と発言したことが印象的だが、今回のバランス調整は現時点では過去に類を見ないほど大味な仕上がりになっているように感じてしまう。
しかし殺人鬼ナースの弱体化が結果的に上手くハマっていることを鑑みると、開発チームが定義しているように“プレイヤーの熟練度”によって、このバランス調整が結果的にちょうどいいものとなるのかもしれない。
バランス調整:アドオン
殺人鬼カニバルとヒルビリーに施されたバランス調整はチェーンソーの仕様変更のみならず、アドオンも一新されることとなった。7月4日に報じられたニュースではその一部が紹介されていたが、PTBにて全容を把握することができたため、一部解説を含めながら紹介したい。
カニバル
■玉虫色の刃(ウルトラレア)
・チェーンソーで生存者に攻撃を命中させると、チェーンソーのチャージ数が最大まで回復する
複数の生存者を発見した際に、連続でダウンさせることを狙いやすくなるアドオン。癖が少なく扱いやすい。残念ながら、同じウルトラレアであるキャブレター調整ガイドと併用できない。1人目の生存者をダウンさせチェーンソー攻撃が続いている中チャージが回復、そのまま自動的にチャージが消費され更に3チャージ分ダッシュが……とはいかない。
■キャブレター調整ガイド(ウルトラレア)
・チェーンソーダッシュを行なうと自動的にチャージが全て消費される
・チェーンソーダッシュの持続時間が少し減少
・チェーンソーダッシュの最大速度が少し減少する
・チャージ速度が少し減少する
チェーンソーのチャージ数を消費する条件として、チェーンソー使用中に能力ボタンを再度押す必要がある。その手間を省いてくれるアドオン。使ったチャージの数だけ、長時間走り続ける。通常チャージの消費を効率的に行なうためには、チェーンソーの1本目のゲージを使い切る直前に再度能力ボタンを押す必要があるため、筆者のようなリズム感のないプレイヤーからすると、いくつか減少効果はあるものの使いやすいアドオンだ。
さらに大きなメリットとして、1度の攻撃ですべてのチャージを消費することからパーク「弄ばれる獲物」との相性が非常に良い。通常チェーンソーの3チャージをすべて使った攻撃を行なうと、弄ばれる獲物のトークンを追加攻撃の度に消費してしまうのだが、このアドオンでは1回の攻撃判定しかでないためトークンが1つしか消費されないというわけだ。しかしデメリットも1点、チェーンソーによって板を割ってしまうとアドオンの効果の関係からすべてのチャージ数を消費してしまう。これを無理に避ける必要はないが、チェーンソーのチャージが0になった状態で、離れてしまった生存者を追うかどうかはその都度判断が必要だろう。
■デプスゲージ(ベリーレア)
・チャージ数が増加する
・チャージ時間が少し増加する
・掃討チェーンソーの最大速度が少し上昇する
チャージ数を増加させる唯一のアドオン。チェーンソーを構える速度こそ少し遅くなるものの、それ以上のメリットを享受できる。
■絶品のチリ(ベリーレア)
・トークン消費時のダッシュ持続時間がそこそこ増加する
・チェーンソーの攻撃チャンス時間がそこそこ増加する
■軽量シャーシ(ベリーレア)
・チェーンソーの回転数を上げている間、8メートル以内の生存者のオーラが視えるようになる
・回転数を上げている間の移動速度が少し低下する
チェーンソーを構え始めた際に、近くにいる生存者のオーラが見えるようになるというアドオン。多くの場合、生存者を目視した状態でチェーンソーを構えるため、あまり実用性はない。
■錆びた鎖(ベリーレア)
・チェーンソーで負傷した生存者が120秒間かなり重傷効果に苦しむ
・この効果は重複しない
目立っていないが“かなり重傷”という新たなステータス効果が生み出されたアドオン。通常重傷というステータス効果は、生存者がダウンや負傷から回復するために必要な時間が20%伸びるという効果だが、かなり重傷は恐らくそれ以上の効果が期待できるものだろう。
■グリース(レア)
・癇癪を起こしている間の移動速度がそこそこ上昇する
・癇癪の持続時間が少し増加する
能力の設計上ではデメリット効果であるはずの、癇癪を起こしている間の移動速度が増加するという、非常にロマンを感じるアドオン。PTB開始後一番最初に試した。同様の効果を持つアドオンがアンコモンにもあるため併用した結果、殆どスタンに近い状態からじわじわ移動できているかも、と知覚できる程度にはなった。
■市販の潤滑剤(レア)
・脅威範囲内に他の生存者が誰もいない状態で、チェーンソーで生存者をダウンさせると、20秒間その生存者のオーラが隠される。
殺人鬼視点では、効果が発動しているか確認できないため、期待できるほどの効果は得られない。生存者がバーベキュー&チリに映りやすくなる程度だろう。
■暗獣の刻印(レア)
・チェーンソー使用時の移動速度がそこそこ上昇する
・チャージ時間が少し増加する
■残虐なチェーン(レア)
・チェーンソーで攻撃された生存者は90秒間重傷のステータス効果に苦しむ
■汚れたチェーン(レア)
・チェーンソーが命中した生存者はアイテムを落とす
■スピードリミッター(アンコモン)
・チェーンソーの攻撃を受けても自動的に瀕死状態にならない
・チェーンソー命中によって得られるBPが50%増加する
■チリ(アンコモン)
・トークン消費時のダッシュ持続時間が少し上昇する
・チェーンソーの攻撃チャンス時間が少し増加する
■ナイフの傷(アンコモン)
・チェーンソー使用時の移動速度が少し上昇する
・チャージ時間が少し増加する
■プライマリー・バルブ(アンコモン)
・癇癪を起こしている間は移動速度がそこそこ上昇する
■自家製マフラー(アンコモン)
・癇癪の持続時間がそこそこ減少する
■チェーンソー用ヤスリ(コモン)
・癇癪の持続時間が少し減少する
■植物油(コモン)
・チェーンソーのクールダウンが少し減少する
■点火プラグ(コモン)
・癇癪を起こしている間、移動速度が少し上昇する
■長いガイドバー(コモン)
・チャージの回復速度がそこそこ上昇する
ヒルビリー
■玉虫色のレンガ(ウルトラレア)
・チェーンソーダッシュを5秒維持すると、ダッシュし終えるまで探知不可のステータス効果を得る
ダッシュを5秒以上継続できるマップかつ、ゲージを保っている状態でのみ効果を発揮できるアドオン。実用性は殆どないが、生存者が驚いてくれる反応は見られるかもしれない。
■ロープロのチェーン(ウルトラレア)
・チェーンソーダッシュ中、パレットを破壊してもダッシュが止まらなくなる
・チェーンソーが命中した生存者は1段階のみダメージを受ける。
面白い効果をしているが、デメリットが大きすぎるため扱いに困るアドオン。従来のヒルビリーは忘れて、2回攻撃前提の立ち回りをすれば効果的に扱えるシーンもあるかもしれない。
■トンプソンの密造酒(ベリーレア)
・チェーンソーの操作性能がとてつもなく上昇する
・障害物に衝突したときの反動がかなり上昇する
・重複する
■同調済みのキャブレター(ベリーレア)
・チェーンソーのチャージ時間がそこそこ短縮される
・基本移動速度が4.4m/sに低下する
ヒルビリー唯一の、チャージ時間を短縮するアドオンとなってしまった。しかもデメリットが強烈で、ヒルビリーがハントレスやハグといった鈍足の殺人鬼と同じ移動速度となってしまう。
■豚小屋のグローブ(ベリーレア)
・チェーンソーの回転数を上げ始めた時の熱量がそこそこ減少する。
チェーンソー起動時がもっともゲージを消費するため、使いやすさで言えば群を抜いているアドオン。従来のような立ち回りをしたい場合は、このアドオンに加えてコモンの“穴あきマフラー”もしくは“中古のエアフィルター”を装備すると良いだろう。
■頂点のマフラー(ベリーレア)
・脅威範囲外の生存者にチェーンソーの音がしなくなる
■すり潰した葉(レア)
・チェーンソーで攻撃を命中させると、探知不可のステータス効果を15秒間得る
■低反動のチェーン(レア)
・チェーンソーダッシュ中、障害物にぶつかった時の時間ロスがかなり短縮される
■母の助っ人(レア)
・懐中電灯に照らされると、移動速度が秒速0.2メートル上昇する
懐中電灯に照らされている間のみ効果が発動するのか、1度でも照らされたら効果が発動するかで評価が変わるアドオン。後者であるならば、懐中電灯を持ち込んだ生存者への強力なカウンターになりえるだろう。
■破滅の彫刻(レア)
・チェーンソー使用時の移動速度がそこそこ上昇する。
・チャージ時間が少し増加する。
・重複する。
■黒いグリース(レア)
・パレットで怯んだ後で目眩ましへの耐性が10秒間上昇する
■スピードリミッター(アンコモン)
・チェーンソーの攻撃を受けても自動的に瀕死状態にならない
・チェーンソー命中によって得られるBPが50%増加する
■ノーブランドのモーターオイル(アンコモン)
・チェーンソーの騒音範囲が少し縮小する
■大きなバックル(アンコモン)
・チェーンソーがオーバーヒートすると脅威範囲が8メートル縮小する
■死の彫刻(アンコモン)
・チェーンソー使用時の移動速度が少し上昇する。
・チャージ時間が少し増加する。
・重複する。
■穴あきマフラー(アンコモン)
・チェーンソーの冷却速度が少し上昇する
■ヘビークラッチ(コモン)
・チェーンソーダッシュ時の衝突ゾーンが縮小する
・チェーンソーダッシュの操作性がそこそこ上がる
■中古のエアフィルター(コモン)
・チェーンソーがオーバーヒートする上限が少し上がる
■安全ブーツ(コモン)
・チェーンソーがオブジェクトに命中した後の回復時間が少し短縮される
■親父のブーツ(コモン)
・チェーンソーダッシュのカーブ性能がそこそこ増加する
専用サーバー
最後に、専用サーバーの話題だ。今回行われたPTBは、サーバーの処理速度を2倍にすることで殺人鬼の攻撃の当たり判定が、より描写に正確になるようになるか確かめるテストも兼ねている。本ビルドに比べてさらに良いゲーム体験を得られるよう調整ということで期待していたが、残念ながら現時点ではそう上手くいっていないようだ。
マッチングするサーバーはどこもpingが100を超えている状態の部屋で、ゲーム内の挙動も上記のあり様だ。生存者・殺人鬼どちらのゲーム体験でも同様に非常に強いラグを感じる。殺人鬼を起点とする当たり判定の調整が上手くいっていないのか、もしくは処理速度を2倍にしたサーバーは海外にのみ設置しており、実は日本は対象外。そのため日本ユーザーは海外サーバーに接続してプレイをしている。そんな可能性も考えてしまうほどに、酷い有り様だ。続報を待ちたい。
今回のPTB期間の終了日程については発表されておらず、いつ本ビルドにテスト項目が実装されるかは定かではない。しかし過去のPTB期間から考えて、約2~3週間はテストを行なう可能性がある点に留意したい。Steam版ユーザーであれば誰でも参加可能なため、いち早くテスト段階のビルドに触れてみたい方は覗いてみてはいかがだろうか。