『アサシン クリード ヴァルハラ』最新映像が「ゲームプレイなきゲームプレイトレイラー」だと批判される。問われる“ゲームプレイ映像”の定義

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Ubisoftが5月8日に公開した『アサシン クリード ヴァルハラ』のゲームプレイトレイラーが物議を醸している。ゲームを操作する様子を見せるという意味でのゲームプレイ映像ではなく、またゲームプレイの描写と思わしき箇所が少なかったからだ。

同トレイラーは、マイクロソフトが配信した「Inside Xbox Presents First Look Xbox Series X Gameplay」内で初披露されたもの。XboxのYouTubeチャンネル上で公開されている同トレイラーは、本稿執筆時点(5月8日15時)で高評価5288/低評価5959。Ubisoft North AmericaのYouTubeチャンネル上にある同トレイラーは、高評価1.8万/低評価3.1万を集めている。

 

「ゲームプレイなきゲームプレイトレイラー」

海外メディアの多くは同トレイラーをネタ扱いしており、Rock Paper Shotgunは「ゲームプレイなきゲームプレイトレイラー(no-gameplay gameplay trailer)」、PC Gamerは「実にすばらしい2~3秒ものゲームプレイ(incredible 2-3 seconds of gameplay)」と表現。Kotakuは「ゲームプレイトレイラーはゲームプレイを含むべきだ」と主張する記事を掲載した。

 

Ubisoftタイトルにおけるゲームプレイトレイラーの定義

ゲームプレイトレイラーと言われると、一般的には実際にゲームを操作する様子を捉えた映像を期待するかと思われる。だが必ずしもそうとは限らない。ここで注意したいのは、Ubisoftはゲームプレイトレイラーという言葉の使い方を変えた訳ではないということ。Ubisoftタイトルにおけるゲームプレイトレイラーは、実際にゲームを操作する画面を見せるのではなく、対象となるゲームにてどのようなゲームプレイが含まれるのか、見どころを凝縮してシネマティックに紹介する趣旨の映像となっているケースが多い(UbisoftのYouTubeチャンネル上で「Gameplay Trailer」と検索すると、過去作のゲームプレイトレイラーが確認できる)。

Ubisoftとしては、ユーザーを騙すつもりはなく、これまでどおりの手法でトレイラーを作っただけなのだろう。Ubisoftは今になって言葉の使い方を変えたわけではない。また過去作におけるゲームプレイトレイラーは批判に晒されておらず、今になって変える理由も見当たらない。つまりUbisoftではなく、情報を受け取るユーザー側の捉え方が変わったということ。これまで気にされてこなかったゲームプレイトレイラーの定義が、今になって気にされ始めたということ。では、『アサシン クリード ヴァルハラ』のゲームプレイトレイラーはなぜ、過去作におけるゲームプレイトレイラーとは違った捉え方をされたのだろうか。それには、映像公開に至るまでの道のりが関係していると思われる。

*上の映像は、前作『アサシン クリード オデッセイ』のゲームプレイトレイラー。『アサシン クリード ヴァルハラ』のゲームプレイトレイラーと同様、実際にプレイヤーが操作する際の画面を見せるのではなく、どのようなゲームプレイが含まれるのかを紹介する趣旨の映像となっている。なおUbisoftタイトルにおいて実際にキャラクターを操作するプレイ映像を紹介する際は、「Gameplay reveal」「Gameplay Demo」「Gameplay Walkthrough」といった別の言い方が用いられている。

 

なぜ今になってゲームプレイトレイラーの定義が気にされ始めたのか

今年は主要ゲームイベントが次々とキャンセルされており、E3を筆頭とした大型イベントにあわせて新作情報を集中的に発信するという、例年どおりのマーケティング方法は採用できない。違ったアプローチが求められる。そうした中、『アサシン クリード ヴァルハラ』が正式発表されたのは4月29日のこと。8時間におよぶティザー配信から始まり、4月30日に初のシネマティックトレイラー(ワールドプレミアトレイラー)が公開。同日には開発者コメンタリーや海外メディアによる開発者インタビュー記事など、情報が一斉に発信された。Ubisoftは順序立ててマーケティング活動を展開してきた上で、「次はゲームプレイトレイラーを披露」と告知したわけである。

*日本語版字幕付きワールドプレミアトレイラー

ゲームの設定や登場人物など、すでにゲームに関するさまざまな情報が発信され、ユーザーの期待は高まりつつあった。そこまで情報発信が進んだ段階で「ゲームプレイトレイラーを披露」と言われれば、実際にゲームを操作する様子を確認できるのだと思うのも無理はない。情報を追ってきたユーザーほど、「さらに踏み込んだ情報が明かされるはず」と期待することだろう。今回のゲームプレイトレイラーに対するユーザーの嘆きは、単にゲームプレイが披露されなかっただけでなく、「さらに踏み込んだ情報」が届けられなかったことに対する失望でもあるかと思われる。

また『アサシン クリード ヴァルハラ』のトレイラーが公開されたInside Xboxの放送タイトル自体、「Inside Xbox Presents First Look Xbox Series X Gameplay」という、普段とは違い「ゲームプレイ」を強調する内容であったことも、視聴者が抱く期待に影響していたことだろう。あえてゲームプレイという単語を含めていたことは注目に値する。そんな放送の大トリを飾る映像となれば、実際にゲームをプレイする、Ubisoftの命名法則でいうところの「ゲームプレイウォークスルー」や「ゲームプレイデモ」に該当するような内容を視聴者が期待してもおかしくはない。このように、ゲームをプレイする映像が流れるのだと解釈しやすい環境が整っていたのだ。

 

Ubisoftとマイクロソフトのコメント

さすがに開発者側も認識の齟齬が生じうることを察知したのか、事前に補足情報を発信していた。『アサシン クリード ヴァルハラ』のクリエイティブ・ディレクターであるAshraf Ismail氏が、ゲームプレイトレイラーの告知を行った際に、「Inside Xbox」で流れるのはあくまでもゲーム内映像のティザーであり、ゲームプレイ映像は別途披露するとコメントしたのだ。誤解を招かないよう、「ゲームプレイデモではない」とも念を押していた。

だが、みんながみんな開発者の発言を熱心に追っているわけではなく、先述したようなUbisoftタイトルにおける「ゲームプレイトレイラー」の定義を把握しているわけでもない。Ismail氏はInside Xbox放送後、「みなさんは、今日もっと多くの情報が発信されると期待していたことでしょう。我々は今後も長い期間にわたりマーケティングキャンペーンを展開していき、その中でより詳細なゲームプレイやゲームに関する情報をみなさんのもとへとお届けします」と発信。文章の内容から、誤解を生んでしまったことを踏まえての発言であったと思われる。

同じくInside Xbox放送後には、マイクロソフトのXboxゲームのマーケティング担当であるAaron Greenberg氏もゲームプレイの定義騒動に言及。前回のInside Xboxのように、事前に何も言わずに放送していれば、人々の反応は違っていただろうと述べている。「誤った期待を抱かせてしまったことは明らかで、その責任は私たちにあります」と伝え、ユーザーからのフィードバックを今後の活動に活かしていくと語った。変な言い訳をしない、マーケティング担当者として適切な回答だろう。なおGreenberg氏のコメントは、『アサシン クリード ヴァルハラ』に限らず、Inside Xboxの放送全体としてゲームプレイ映像の割合が低かったことを踏まえての回答と思われる。

文脈が変われば、言葉の捉えられ方も変わる。今回のInside Xbox放送および『アサシン クリード ヴァルハラ』の最新映像は、はからずもゲームプレイトレイラーの定義について考えるきっかけを、人々に与えることとなった。今後は誰かがゲームプレイトレイラーの公開を告知するたびに身構え、その定義を問いただすユーザーが一定数現れることだろう。誤った期待を生むことは、情報の発信者と受信者の双方にとってプラスに働かない。今回発生した「ゲームプレイトレイラーにはゲームプレイが含まれるべき」という主張および関連した議論が、「誤解を招かないためのコミュニケーション」の醸成につながることを期待したい。

なおマイクロソフトは今後も月次のInside Xboxを通じて、Xbox Series XやXbox Game Pass、Project xCloudに関する情報を発信していく予定。今年7月には、ゲーム開発部門Xbox Game Studiosの開発タイトルに関する情報を発信するとのことだ。

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