「PS5用カートリッジ」は“勘違い”であることが濃厚に。SIEによる「意匠登録」の読み解きに注意

SIEが出願した、カートリッジ状の製品デザインの意匠登録が話題を呼んでいる。SIEのゲーム機というと真っ先に思いつくのはPlayStationであることなどから、これは次世代機PS5用のものではないかという噂が広まった。ただ、それは間違いだったようだ。

ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が出願した、とある意匠登録が今月発見され話題となった。それは、ゲーム機などに使用することが想定された、カートリッジ状の製品デザインである。具体的な用途については明らかでなかったが、SIEのゲーム機というと真っ先に思いつくのはPlayStationであることなどから、これは次世代機プレイステーション 5(PS5)用のものではないかという噂が広まった。ただ、それは間違いだったようだ。

海外メディアLetsGoDigitalは11月9日、SIEがブラジル国立産業財産権院に出願していた意匠登録を発見し報じた。また、日本の特許庁にも出願されていたことも判明。添付されたデザインの図面はどちらもほぼ同じで、それが上の画像だ。サイズは不明だが、ほぼ正方形のやや厚みのあるカートリッジで、前面上部には四角い枠がある。また、底面には12本の端子が確認できる。特許庁に提出された説明は以下のとおり。

本願意匠に係る物品は、文字、画像、動画、音声、プログラム等の各種データを記録可能な記録媒体である。本物品の複数のピンが設けられた先端部分がゲーム機等に設けられた差し込み口に装填されることにより、本物品に記録された各種データを読み出すことができる。

つまり、これはゲーム機などに使用する記録媒体のデザインとのこと。またLetsGoDigitalは、ブラジル側の出願内容に、創作者として森澤有人氏の名があった点に注目。森澤氏は、ソニーのクリエイティブセンターに所属するプロダクトデザイナーで、同社製品を幅広く担当しており、PlayStationブランドにも長年携わっているとされる。このことから、このカートリッジはPlayStation関連製品なのではと推測されることに。

PlayStationハードにていまカートリッジを使用するとなると、PS Vitaのような携帯ゲーム機向けが考えられるが、同製品は欧米で苦戦を強いられ、今年3月に全モデル出荷完了となったばかり。そこでLetsGoDigitalは、より可能性の高いものとしてPS5用のストレージ機器ではないかとし、予測レンダリング画像を作成している。PS5では「超高速アクセスが可能なカスタムSSD」をストレージに使用すると公式発表されている。これを交換式にし、容量別のカートリッジにして販売するのではないか、という予想だ。PlayStationハードにおいては、これまでに独自規格のメモリーカードが発売されていたこともあり、一定の説得力がある。

https://www.youtube.com/watch?v=zda5HtnZ7lE

しかし冒頭で述べたように、問題のカートリッジデザインはPS5のものではなかったようだ。海外メディアTweakTownは11月23日、このカートリッジはPS5用ではなく「toio(トイオ)」のものだと指摘した。toioはソニーが開発し、SIEからは今年3月に発売された製品。ロボットを使った遊びを提供するプラットフォームトイで、子供の創意工夫を引き出すことができるという。本体のほか、キューブ型のロボットや輪っか状のコントローラーなどを同梱する。

toioでは、ビジュアルプログラミングにて独自の遊びを作ることができるが、専用タイトルとして特定のテーマのゲームも提供されており、これはカートリッジで販売されている。上の映像で本体に差し込んでいるものが、そのカートリッジだ。全体の形状や、ゲームタイトルのラベルが貼られた部分など、今回発見されたカートリッジの意匠に非常によく似ており、先述の意匠の説明にあった用途とも符合する。日本では昨年12月に出願されており、toioの発売を控えて意匠登録したとみて間違いなさそうだ。

今回のカートリッジの一件は、少ない情報から推測したに過ぎない。ただ、まだ全貌が明らかになっていないPS5の姿の一端を示す推測となったため、大きな注目を集めることとなった。今年8月には、PS5の開発機と思しき筐体デザインが、同じくブラジルにてSIEが意匠登録していたことが報じられていた(上の画像)。その後、デベロッパーCodemastersのスタッフと思われる人物が開発機であることを認める発言をし、さらに実機だと称する画像が流出している(ZONEofTECH)。また今年11月には、SIEが出願したDUALSHOCK 4とよく似たコントローラーデザインが日本で意匠登録され、こちらもPS5のものではないかと報じられた(下の画像)。

どちらも真偽は依然として不明ながら、PS5のものと考えられそうな意匠登録が発見される流れが続いていたことが、今回のカートリッジの推測に繋がったのかもしれない。また、SIEが販売する“もうひとつのゲーム機”であるtoioについて、海外ではあまり広く知られていなかったことも一因だったと言えそうだ。

PS5は、2020年の年末商戦期に発売予定。現時点ではスペックの一部が明らかになっているほか、100GBのUltra HD Blu-rayディスクをメディアに採用すること、またハプティック技術を搭載した振動機能と、抵抗力を感じられるトリガーを持つ新たなコントローラーを導入することなどが発表されている(関連記事)。

ちなみに、PS5についてSIEのリード・システムアーキテクトMark Cerny氏に独占インタビューをおこなった海外メディアWIREDのPeter Rubin氏は、その際にPS5用コントローラーのプロトタイプに触れたそうで、見た目はDUALSHOCK 4とほとんど同じだったと報告している。SIEが意匠登録したコントローラーデザインは、端子部分やライトバーの有無以外はDUALSHOCK 4とほぼ同じ。あくまでプロトタイプとの比較だが、同氏の証言を裏付けるデザインであると言えなくもない。いずれにせよ、意匠登録はあくまで意匠を登録するためのもので、製品として導入されることが確定するわけではない。正式に、SIEより続報が公開されるその日を楽しみに待ちたいところである。

Taijiro Yamanaka
Taijiro Yamanaka

国内外のゲームニュースを好物としています。購入するゲームとプレイできる時間のバランス感覚が悪く、積みゲーを崩しつつさらに積んでいく日々。

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