Steamの新たなレビュー爆撃対策が初適用。『ボーダーランズ3』PC版のEpic Gamesストア時限独占に対する大量の抗議レビューが対象

Steam Databaseは4月6日、『ボーダーランズ2』のSteam版に投じられたユーザーレビューにて、「トピずれのレビュー(Off-topic review)」の検出が初めておこなわれ、4000件以上の不評レビューがレビュースコアから除外されたと報告した。

Steamのデータベース情報を扱うSteam Databaseは4月6日、『ボーダーランズ2』のSteam版に投じられたユーザーレビューにて、「トピずれのレビュー(Off-topic review)」の検出が初めておこなわれ、4000件以上のレビューがレビュースコアから除外されたと報告した。同作のレビュースコアはここ数日で「賛否両論」に落ち込んでいたが、これにより「圧倒的に好評」に戻っている。

 

『ボーダーランズ3』発表でおこなわれたレビュー爆撃

Valveは今年3月16日、Steamのユーザーレビューの再考を掲げ、「トピずれの(論点のずれた)レビュー荒らしを特定し、レビュースコアから除外する」と発表していた。Valveの言う“レビュー荒らし”とは、「プレイヤーがゲームのレビュースコアを下げる目的で、短期間に大量のレビューを投稿すること」と定義されており、一般にはレビュー爆撃(Review bombing)とも呼ばれている。そして、その中でも将来のゲーム購入者の満足度とは無関係な話題に焦点を当てているレビューは“トピずれ”であるとしている。

そうしたトピずれレビューはレビュースコアに反映されるべきではないとし、Valveは独自ツールにて異常なレビューの動きを検出した場合、調査チームが確認をおこない、検出期間に投じられたレビューはすべてレビュースコアから除外する措置をおこなうとのこと(関連記事)。これの初の事例が、今回『ボーダーランズ2』にて確認されたわけだ。なお、トピずれのレビューであっても、レビューそのものが削除されることはない。レビュー全体の何割がそのゲームを好評としているかや、その結果表示される「非常に好評」などの表記の根拠から除外されるということである。

『ボーダーランズ2』にてトピずれのレビューが大量に検出された原因については、その検出期間(4月3日から6日まで)からして、シリーズ最新作の『ボーダーランズ3』に関連したものであると見て間違いないだろう。2KとGearbox Softwareは4月3日、『ボーダーランズ3』の発売日を発表すると同時に、PC版をEpic Gamesストアにて時限独占販売することを明らかにした。Steamに登場するのは早くても2020年4月になる(関連記事)。これを受けて、Steamで販売中の『ボーダーランズ』シリーズ全作品に、Epic Gamesストア時限独占に対する不満を述べる不評レビューが大量に投稿されることとなった。これにはスピンオフ作品であるTelltale Gamesの『Tales from the Borderlands』も含まれる。そして今回、『ボーダーランズ2』だけでなく、ほかのすべての作品でもトピずれレビューとして検出され、レビュースコアからの除外がおこなわれた。

 

効果的だったレビュー爆撃

これまでにも、たとえば同じくEpic Gamesストアの時限独占販売となった『Metro Exodus』に関連して、Steam上のシリーズ作に大量の不評レビューが投稿されることがあった。ただ、同作においてはSteamにて発売予定としていながら、発売日の約2週間前に突然Epic Gamesストアでの時限独占販売に切り替えたため大きな批判へと繋がったが、『ボーダーランズ3』の場合は最初からEpic Gamesストア独占としてアナウンスされた。Epic GamesストアはSteamと比較して不足している機能が依然多く、また独占販売そのものに嫌悪感を示すゲーマーも多いため、人気シリーズ作の続編がEpic Gamesストアの時限独占となったことに不満を感じることは理解できる。だとしても、それをSteam上のシリーズ作品に対するレビューで表明することは筋が通っているとは言いがたく、トピずれであると判断されても仕方がないだろう。

Steamでのレビュー爆撃は、それがトピずれであるか否かに関わらず、結果的にパブリッシャーや開発元から何らかの対応を引き出してきた歴史がある。これもまた、『ボーダーランズ』シリーズ作品への不評レビューに繋がったのかもしれない。ただ、Gearbox SoftwareのCEO Randy Pitchford氏は、こうしたレビューの悪用行為をValveが許しているため、(『ボーダーランズ3』のEpic Gamesストア時限独占を決めた)2Kの判断には満足しているとし、自社の販売タイトルについてもプラットフォームを再考する可能性を示唆している。この時点では、Pitchford氏はトピずれレビューの除外がValveによって実施されたことには気づいていなかったようだが、メーカー側の受け止め方の一端が垣間見える発言である。

『Garry’s Mod』の開発者として知られるGarry Newman氏も、是非はどうあれSteamでの大量の不評レビューは、エンドユーザーがメーカーを動かすにあたって効果的だったと述べる。一方で、ゲームをターゲットにするのは必ずしも適当ではないとし、パブリッシャーや開発元をユーザーが直接レビューできるような機能を別途設けるべきかもしれないと提言している。ただ、これも『ボーダーランズ3』のような例の場合、Steam上でおこなわれた場合はトピずれになるかもしれない。

ともあれ、Valveによって新たな対策が実施され始めたいま、今後同様に大量の不評レビューが投じられレビュースコアから除外された場合に、メーカーはこれ良しと無視するのか、以前のように何らかの反応を見せるのか、その対応が注目されそうだ。また、Valveは今回の例とは別のどのようなレビューに対して、今後トピずれと判断していくのかも興味深い点である。

Taijiro Yamanaka
Taijiro Yamanaka

国内外のゲームニュースを好物としています。購入するゲームとプレイできる時間のバランス感覚が悪く、積みゲーを崩しつつさらに積んでいく日々。

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