『LoL』日本公式プロリーグLJLが発表した2019年の新体制を分析。昇降格を廃止した、実質的なフランチャイズ化か

『リーグ・オブ・レジェンド(LoL)』の日本公認トップリーグ「League of Legends Japan League(LJL)」を運営するライアットゲームズ(Riot Games日本法人)は、11月30日に2019年より適用するリーグ運営の変更点を発表した。これによると2019年は二部リーグである「LJL CS」開催と一部・二部リーグの入替戦を行わず、2018年の競技シーズン終了時のチームでリーグを運営するとのこと。また、2018年までLJLに参加していたチーム「PENTAGRAM」の不参加にともなう追加チーム1枠の公募も開始している。

 

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海外リーグに続くフランチャイズ化となるか?

『LoL』各地域の公認リーグは一般的に、プロのトップリーグである一部とアマチュアのトップリーグである二部が開催されている。春夏の各スプリットの最後に一部リーグの最下位2チームが二部リーグの最上位2チームと入替戦を行い、昇格・降格が行われるのが通例だ。

しかし近年はこの入替戦が存在しない「フランチャイズリーグ」となる地域が相次いでいる。中国は昨年夏から、北米は今年春からすでにフランチャイズ化を果たしており、二部リーグへの降格が廃止された環境でプロチームが競い合っている。今年3月には、来年春からはヨーロッパもフランチャイズリーグになるという告知が行われ、つい先日にはこれまでの名称「EU LCS」から「LEC」へのリブランドも発表された。

以上に挙げたフランチャイズリーグは全て、世界大会への出場枠として3チームを持つ「メジャーリージョン」だ。世界大会出場枠を1チームしか持たない小規模地域「マイナーリージョン」としては、2019年よりトルコの公認トップリーグ「TCL」で、昇降格が廃止されフランチャイズ化するという発表が今年6月に行われている。『LoL』プロシーンにおける昇降格の廃止をフランチャイズ化と定義すれば、LJLの変化はマイナーリージョンではトルコに引き続き2番目のフランチャイズ化と捉えることができるだろう。

昇降格がない場合、一体どのようなことが起こるのだろうか。昇降格があるプロリーグでは、降格はチームとその運営母体にとって大きなリスクとなる。投資を行ったチームが一部リーグから落ちてしまえば、競技環境が劣る二部リーグで少なくとも3か月を戦い抜いて一部に戻らねばならない。一部リーグで戦えなくなった所属選手たちも他の一部チームへの移籍を試みるのが一般的なので、チーム側からすればそれまでの投資が無に帰してしまう。降格がなければ、こうしたリスクを前提にしないチーム運営が可能となる。このメリットを最大限に活かして今年躍進したのが、北米リーグ「NA LCS」から世界大会に出場し、北米チーム初の準決勝出場を果たしたチーム「Cloud9」だ。「Cloud9」は勝てるチームの構成を試行錯誤していた期間、今夏スプリットの第2~5週は最下位圏をさまよっていた。降格制度が存在していた頃であれば、入替戦行きを避けるためにできるだけ勝数を確保しておかなければいけないゆえに、こんな冒険は許されなかっただろう。「Cloud9」が世界大会でこれまでにない好成績を収めた結果、他地域のトッププレイヤーたちがさらに盛んに北米に流入するようになっている。このように降格がないことで長期的な取り組みが可能になれば、結果的にリーグのレベルも上がっていき、コーチや選手たちのモチベーションも上がると言える。

智将Reaperedヘッドコーチが韓国式の戦略的な選手入れ替え方式を取り入れた結果、世界大会準決勝まで上り詰めた。画像出典:LoL Esports Photos

一方でアマチュアリーグからの昇格制度がないと、トップリーグへの道は第三者から見てとても不明瞭で、非常に狭いものになる。北米やヨーロッパにおけるトップリーグ参加チームの公募においては、申し込み時にチームの運営・戦略についてなどの参加プランの提出が義務付けられていたが、審査はリーグを運営するRiot Gamesが行うために外部から参加基準を推し量ることはできなかった。一部リーグへの参加資格を実力で問うのが入替戦だっただけに、継続して観戦するファンからすると、フランチャイズリーグ立ち上げ時に新規参加したチームは評価しづらい側面がある。

こうした要素から鑑みると、フランチャイズ化した既存リーグがチームに求めるのは、より積極的なリーグ参加であり、リーグへの大きな投資だ。選手を集めてチームを結成し競技に参加するだけでなく、リーグの価値を高めるプロモーションを能動的に行っていかなければならない。これを長期にわたって行うことで初めて、チームと組織の価値も高まっていくというのが、既存の海外『LoL』フランチャイズリーグだ。

 

公募資格に見る「LJLが求める組織」

新規参加チームの公募要項を見ても、LJLがフランチャイズ化の方向に傾いているというのがわかる。フランチャイズリーグにおいてはリーグ参加とリーグへの投資がイコールで結ばれるため、前提として信用が求められるのは当然だ。信用に関係しそうな項目についていくつか、その根拠を述べていこう。

チーム運営法人に要求されている「資本金1000万円」は、かつて株式会社を設立するにあたって必要とされていた資本金であり、法人に対する信用を保証するラインとして国内で慣行的に残っているものだ。またこの資本金額は一般人材派遣業など、一部の業務に対する認可のボーダーにもなっているため、公式試合に選手を参加させるに際し、今後何らかの法的な処理が必要になることも見据えているかもしれない。

「売上金5000万円」の条件は、簡易課税制度の利用に関する項目と思われる。単一年度の売上金がこの金額を上回ると、簡易課税制度の利用が不可能となる。簡易課税制度の利用が不可になるほどの売上がある法人には、正確な帳簿の作成が必須だ。これは財務の透明度を確保する上で設定されたラインと推測できる。

「常勤の取締役」は、もちろん責任者を明確にするためのものであろう。「常勤の従業員2名」についてははっきりとした根拠になりそうな法令はないものの、外国人が日本国内で会社経営を行うために必要な「経営管理ビザ」の取得要件として、2名以上の従業員をフルタイム雇用する規模の事業を行うことが求められるというのが関係しそうだ。経営管理ビザ取得のみの観点からすれば、資本金が500万円を超えている法人という時点で条件を満たしてはいるのだが、重要なのは法人として国内での活動実態が存在することなのだろう。

以上から、ライアットは日本国内の法制度をうまく利用して、LJL参加組織の信用および外部からの透明性を確保しようとしているのだと考えられる。また、確かな基盤を持つ法人がチームを持つことで、選手やスタッフの素行管理、健全なチーム運営といったメリットを期待しているとも推測できる。今回の新規チーム公募に設けられている条件は、再来年となる2020年から現行の参加チームにも適用されると記述がある。現行チームについては1年間の猶予を設け、フランチャイズリーグへの移行が可能かどうかを見極めるのかもしれない。

EU LCSからLECへのリブランドには、ビジュアル面の大きな刷新が含まれている。チームの信用を預かる基盤としてのリーグの役割も重い。画像出典:LoL esports Europe

なお、北米とヨーロッパではフランチャイズリーグ参加については、参加料が設定されていた。Riot Gamesからはっきりとした発表があったわけではないが、2018年の北米リーグ参加料は1千万ドル(約11億1350万円)、2019年のヨーロッパリーグ参加料は800万ユーロ(約10億3180万円)からと言われている。今年6月のトルコリーグの発表では参加料についての言及はなかったが、申込み後にチームに通達されていた模様。今回のLJL新規参加チーム公募要項にも参加料についての言及はないが、実態がどうなるかは不明だ。

 

早くも公募枠を目指して名乗りを上げる組織たち

来年のシステム変更発表があった直後から、公募枠を目指して複数の組織が名乗りを上げ始めている。『PUBG』など複数タイトルのチームを抱え、福岡でeスポーツ専門ネットカフェも運営する組織「Sengoku Gaming」は発表翌日の12月1日、公募枠応募の意志とチームメンバーを発表した。発表の翌週となる12月4日に、日本テレビ傘下のeスポーツ組織「AXIZ」も、公募枠を目指してMOBA部門の選手およびコーチの募集を開始している。応募表明ではないが、韓国のゲーミング組織「ROX Gaming」は、元PENTAGRAMのトップレーナーであるPaz選手の加入を11月30日夜に発表。ROXはLJL参加歴のある「7th heaven」を前身とする『LoL』チーム「Smash It Down」を抱えており、このタイミングでの新加入発表は公募枠への応募を見込んだものと推測する見方が多い。

 

日本国内のシーン育成のゆくえ

アマチュアからプロリーグへの登竜門となっていた二部リーグ「LJL Challenger Series」の廃止により、国内シーンの選手育成は大きな転換期を迎えたと言えるだろう。日本国内のアマチュア大会の開催数は多くないため、アマチュアからプロになる道はますます狭くなったおそれがある。LJL新体制の発表内には「合同トライアウト形式などのプロプレイヤー発掘制度を導入予定」とあり、北米で毎年11月に行われているランク戦上位のプロチーム未所属プレイヤー招待イベント「Scouting Grounds」のような催しが開催されることを期待したい。こうした施策から、プロ選手志望者にとってはまだ道が見える状況ではあるが、他方で問題が叫ばれているのは選手以外の人材だ。『LoL』のチーム運営にはコーチやアナリストといったバックスタッフも必須であるが、こうした人材の登竜門的な場所はこれまで二部チームを主としたアマチュアチームが担ってきていた。また、日本という競技地域にとっては、隣接した強豪地域である韓国の存在も大きい。『LoL』の競技ルールの世界標準として、当該地域出身ではない選手をスターターに据える場合は2名までという制限が必ず存在しており、日本のルールも例外ではない。それでも、韓国から移入してくる選手やコーチはチームの大きな力となることから、多くの国内チームが韓国人選手を制限いっぱいまで入れている。こうした状況に今後変化が訪れるのか、といった点も気になるところだ。

LJLへの道となっていたCS。少なくとも1年間は、このロゴとお別れだ。

11月末のLJLシステム変更の公式告知に続き、12月3日に2019年版のLJL公式ルール(リンク先はPDF)も発表されている。しかしこのルールにはCS(二部リーグ)に関する記述がほとんど残されており、二部リーグを完全に廃止するかは不透明なようだ。この点についてライアット社員のAkadera氏は“「廃止」でなく「不開催」なので、今回は一律CSの記載を残しました”とTwitterにて疑問に答えている。実際に不開催とした2019年の経過と結果を見てから、随時判断するという方向なのであろう。他にも2018年以前のルールから大きく変更された点が複数あるため、競技シーンに少なからず興味があるのであれば公式ルールは熟読しておくとよさそうだ。

こうした変更により、日本における二部リーグおよび二部チームのゆくえは、不透明になってしまった。北米では一部リーグ参加チームに二軍である「Academy Team」の開設が義務付けられており、Academy Teamのリーグも一部リーグと並行してオンライン開催されている。トルコでも北米と同様の制度を取るようだ。Academy Teamは二軍としてファームの働きをする他に、パフォーマンスを落としてしまった一軍選手が勘を鈍らせないために参加できる競技シーンという面も持っている。ヨーロッパではAcademy Teamの開設は義務ではないようだが、各国でのアマチュア大会が全ヨーロッパ大会につながるサーキットシステムが整備されており、アマチュアシーンから新たな才能を見出せるようになっている。アカデミーリーグや草の根大会の整備には大きなプレイヤーベースが必要であるが、以上に挙げた地域に比べて日本での現在のプレイヤーベースは決して大きくない。ライアットとLJLが今後取る施策がどのようなものになるのかにも、注目していきたい。

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