『LoL』中国に続いて北米トップリーグが2018年からフランチャイズ制へ。参加者全員に利益を配分するプロシーンを目指して


『リーグ・オブ・レジェンド(LoL)』を開発運営するRiot Gamesは6月1日、北米トップリーグ「NA LCS」が2018年からフランチャイズ制になることを発表した。今回の発表は昨年世界大会直前に発表された方針を具体的な施策にしたもの。フランチャイズ化は今夏開始と発表された中国に続き2地域目であり、今年4月に流れたが現実となった。

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長期投資を促進する永久パートナー制度

フランチャイズ化にともない、2018年のNA LCSからは「永久パートナー制度」が新しく定められる。この制度により、2018年最初の参加チームたちはその後の一部リーグ参加が保証され、二部リーグへの降格は基本的になくなることとなる。ただ、あまりにも結果を出せないチームをトップリーグに置き続けることを避けるため、直近の8スプリット中に5回、9~10位となったチームは一部リーグ参加資格を失う。

永久パートナーとしてNA LCSへ参加するには申請が必要であり、現在の参加チームは参加資格を保証されていない。申請時にはチームの運営・戦略についてなどの参加プランを提出せねばならない。提出された参加プランについてはRiot Gamesが審査を行い、2017年11月に最終的な永久パートナーが発表される予定だ。また、その時点のNA LCSに参加しているチームで永久パートナーに選ばれなかった場合は、それまでのリーグへの投資を補填されるとも書かれている。なお参加料は1千万ドルと報じられている

さらに、現在の二部リーグであるChallenger Seriesは「Academy League」にリローンチされる。新たな才能の育成・発掘を目標に、新二部リーグには一部リーグの参加チームが姉妹チームを参加させるようになるとのこと。

 

リーグで得られる利益をチームや選手へ分配

昨年夏に大きな批判対象になっていた項目だが、参加チームと参加選手の双方への利益分配システムが整備される。まず規定に定められた選手の最小給料額は7万5千ドルへと増額。現在の規定(PDFファイル)によればMinimum Player Compensationは1スプリットで1万2千5百ドルであり、大幅な増額となる。選手たちはリーグ全体の収益の35%を収入として保証されており、チームからの給与や報奨金がそれよりも少ない場合は直接補填を受けられる。一方で参加チームに対しては全体の収益の32.5%が配分されるが、その半分はリーグで収めた成績によって各チームへの配分率が変化する。リーグ全体の収益とはすなわち、NA LCSのメディア使用権やリーグ全体へのスポンサー料を合計したものだ。従来に比べてチームの収入が大きく増え、チーム運営費をまかなえるようになることが期待されている一方で、好成績を収めることへのインセンティブも含んだシステムとなっている。

 

選手を保護する「選手協会」の設立

競技シーンの大きな構成要素であるにもかかわらず、リーグ運営であるRiot Gamesや、直接の雇用主であるチームからすると弱い立場に置かれていた選手たち。そんな選手たちの技術向上や法務・財務を助け、キャリア形成を促進するために「Players’ Association」が設立される。Riot Gamesは協会設立に際して最初の出資は行うものの、実際の運営は投票で選ばれたNA LCS参加選手代表陣による独立したものとなる。リーグ運営・参加チーム・参加選手の三者協議において、選手サイドを代表することが期待される組織だ。選手協会は今年後半に設立予定。

NA LCSフランチャイズ化へのタイムライン。参加希望チームの受付期間は6月半ばまで。8月には選手協会についての告知が行われ、永久パートナーの発表は11月を予定している。

 

他地域への波及はあるか?

ビジネス規模としてはすでにファン文化を脱してしまったNA LCSだが、これらのシステム改定によってようやくその規模に見合ったシーンになりそうだ。今夏よりフランチャイズ化が発表済みの中国に続いての動きであることから、他地域でのフランチャイズ制採用についてもさまざまな推測が飛び交うところであるが、欧州トップリーグ「EU LCS」はフランチャイズ化を否定した。欧州のe-Sports市場規模は北米の約半分ほどであることから、同様の施策は機能しないという判断であろうか。韓国トップリーグは政府のe-Sports奨励政策によって運営されているところも大きく、現状のシステムが変更されるという話は今のところ聞こえてこない。その他の地域も、規模的にフランチャイズ制での運営は難しいだろう。選手協会の設立などは、経過がプラスだと判断できるのであれば取り入れる地域も出てくるものと思われる。来年の北米地域がどう変わっていくか、その動向に注目したい。