『World of Tanks』『World of Warships』で知られるウォーゲーミングのタイトルは、アジアだと日本ユーザーからの人気が断然トップ。今後のコラボタイトルの展望などを開発元に訊いた

国産アニメとのコラボも積極的におこなうウォーゲーミングの日本戦略とはいったいどういったものなのか。今回弊誌はインタビューを実施。ラボレーションタイトルの今後の展望などさまざまな話を伺うことができた。

ウォーゲーミングは戦車戦を題材とした『World of Tanks』(以下、WoT)、艦隊戦を題材とした『World of Warships』(以下、WoWS)といった、基本プレイ無料のオンラインマルチプレイゲームを多数手がけている会社だ。両作では主に第二次世界大戦の時代を舞台に、戦車や戦艦や航空母艦といったさまざまな兵器を操り、プレイヤー同士でマルチプレイの対戦を繰り広げる。

一見硬派なミリタリーアクションであり、実際のゲームプレイもそうであるものの、『WoT』および『WoWS』は過去にコラボレーションとして「蒼き鋼のアルペジオ」、「ガールズ&パンツァー」といったアニメ作品や、最近では『WoWS』において『ブルーアーカイブ』とのコラボを発表(関連記事)。硬派なミリタリーアクションといったイメージに縛られない、さまざまな作品とのコラボレーションを実施している。

先述のとおり国産アニメとのコラボもおこなうウォーゲーミングの日本戦略とはいったいどういったものなのか。今回弊誌は、『WoT』、『WoWS』の両方のタイトルにてパブリッシングディレクターを担当するウォーゲーミング社のEric Shin氏にインタビューを実施。ウォーゲーミングタイトルの日本における現状や、コラボレーションタイトルの今後の展望などさまざまな話を伺うことができた。本稿ではそんなインタビュー内容をお届けする。

Wargaming APACリージョナル フランチャイズ パブリッシングディレクター:Eric Shin氏

日本のユーザーには広く受け入れられている

――日本においてはウォーゲーミングタイトル『WoT』、『WoWS』は、現状どのように受け入れられているとお考えでしょうか。

Eric Shin氏:
まずウォーゲーミングでは、『WoT』と『WoWS』という大きな2つのフランチャイズがあり、「WoTフランチャイズ」の下に『World of Tanks』、『World of Tanks Modern Armor』、『World of Tanks Blitz』の3タイトルがあります。「WoWSフランチャイズ」においても同じように『World of Warships』、『World of Warships: Legends』や『World of Warships: Blitz』といった3つのタイトルがあり、タイトルごとに差別化された特徴やスタイル、ゲームプレイ体験が提供されています。グローバルでさまざまな展開をしておりますが、日本ではすべてのタイトルにおいてアジア地域ではトップと言えるほどの数字を叩き出しております。

もちろんグローバルで見た場合、ドイツなどヨーロッパ系の国々の方が売上は高かったりしますが、アジアという地域限定で見るとやはり日本はトップと言えるほど素晴らしい成果を上げており、日本のユーザーからは好意的に受け入れていただいていると思っております。

――アジアの他の地域と比べて日本の地域のユーザーの特徴はありますでしょうか?

Eric Shin氏:
まず、日本人のプレイヤーの方々は、特にアジア地域で見たとき、ミリタリーや歴史について深く知っている方々が多いですね。またそれらに深い興味を持っている方が多い、というのが非常に特徴的な部分であると捉えています。ウォーゲーミングのタイトルの時代背景でいうと第二次世界大戦がベースとなっております。その時代背景を鑑みますと、日本でも陸海空問わず、さまざまな兵器がありました。ウォーゲーミング作品でもそうした兵器がさまざま登場しますし、日本のユーザーに対しても受け入れられている部分が大きいのではないかなと思っています。

また特徴的な部分としまして、日本のユーザーは特に人気IPとのコラボレーションという部分に強い興味を持っていただいております。過去「ガールズ&パンツァー」や「蒼き鋼のアルペジオ」、『アズールレーン』のほか、今回発表された『ブルーアーカイブ』といった多くの作品とコラボをしてきました。それらはすべて好意的に受け取っていただけております。そういったところもほかの地域と比べた際に特徴的な部分かと思いますね。

もちろんほかのアジア地域において、韓国や台湾、タイなどでもこういったアニメやゲームとのコラボレーションは好意的に受け取られて楽しまれてはいます。ただ、やはり日本と比較した際に、熱量の差は大きいですね。

――日本向けのマーケティングでウォーゲーミングが再び力を入れることになった理由はあるのでしょうか。

Eric Shin氏:
日本が「アニメに強いから」ですね。ここ数年で我々が学んだのは、アニメとミリタリーという分野においては共通する部分が多いということです。ただ、これが全世界共通の認識というわけではないんです。やはりアメリカやヨーロッパ地域は、アジア地域と比較するとこういったアニメ作品とのコラボというのを嫌う人も比較的多いです。船や戦車など歴史上の兵器は、かなり硬派なイメージをもたれているからだと思います。ただそんな中でも、『WoT』や『WoWS』を長期間プレイされている、いわゆるコアユーザーと呼ばれる層の多くは、アニメについても大好きな方々が多くいます。

そして『WoT』や『WoWS』はかなり長くサービスを続けてきたこともあり、コアユーザーの方々が楽しめる新しいコンテンツとしてコラボレーションを実施していく方針をとっています。ただIPコラボコンテンツをゲーム内にもってくるにあたり、どことコラボをするか、というのも課題のひとつに上がってきます。

そこで、コアユーザーの方がアニメが大好きなのであれば、そのユーザーが好む作品とどんどんコラボしていきたいという想いがあるわけです。そしてアニメといえば日本。多くのユーザーがいる点でも日本は非常に魅力的なマーケットですし、これからもどんどんフォーカスしていかなければいけないと考えていますね。

コアなユーザーが求めるコラボレーション

――美少女系IPとのコラボを積極的に打ち出されている印象があるのですが、そもそもコラボタイトルはどういった基準で決められているのでしょうか。

Eric Shin氏:
最初に重要なのが、そのタイトルがゲームのテーマである戦車か戦艦のどちらかを取り扱っているという事です。それを基準として今までコラボしたものは、戦車であれば「ガールズ&パンツァー」ですし、船であれば『アズールレーン』や「ハイスクール・フリート」、「蒼き鋼のアルペジオ」など、それぞれのジャンルが基準となったものがベースとして選ばれております。

もうひとつの要素というのが、ユーザーからの反応になります。単純に船がテーマだから、戦車がテーマだからとコラボを決めるわけではなくて、実際にプレイヤーがそれを求めているかどうか、それを楽しめるかどうかというのが非常に重要になってきます。ただ単にアニメ好きのためのコンテンツではなく、ゲームを楽しんでいる人たちが楽しめるコンテンツを提供できるのかどうか、というのを選定の基準にしております。

ただ、やはり戦車や戦艦といったものをテーマにした作品というのは非常に限られており、特に日本限定で見た場合、すでに大体コラボ済みですね。まだコラボできていない作品もあるのですが、今のところ実現できてはいませんので。今後どういったかたちでテーマに合ったものを見つけて、それを実現するのかというところは課題としてあります。

――戦車や戦艦がテーマではない『ブルーアーカイブ』や「ホロライブ」とのコラボについては、手ごたえはあったのでしょうか。

Eric Shin氏:
ホロライブに関しては、実は自信がある程度あったコラボでして。コアユーザーにはアニメファンが多く、日本のオタク文化のトレンドを追われている方が多いので、実際にホロライブのファンも多数いらっしゃいました。そういった方々から、ホロライブコラボを望む声も上がっていましたので、参考にさせていただいた面はありますね。

ただ今回の『ブルーアーカイブ』に関しては、実はいつもとはちょっと違うかたちで決定されたんです。今までコラボをしてきたタイトルと比較して、より新しいもの・流行りもののコンテンツをリサーチした結果、日本やアジア地域における人気タイトルとして『ブルーアーカイブ』の名前が上がり、そこからコラボレーションの話が始まりました。ウォーゲーミングとしてももちろん『ブルーアーカイブ』は直接戦車や船が出るゲームというわけではないので、コラボレーション自体少し難しいのではないかという心配もありました、ただ過去にいろんな作品とコラボしてきた実績がありますので、やりようはありますし、どういったものがユーザーに好まれるかというデータもしっかりとありますので、今回のコラボに踏み切り、実現することができました。

ちなみに『ブルーアーカイブ』が“『WoWS』”とコラボした理由については、元々『ブルーアーカイブ』には戦車は出てくるけど戦艦は出ていないんですよね。なのでかなり斬新なコラボになるんじゃないかという見込みがあったのが理由のひとつです。逆にいえば、戦車も作中に出てきてはいるので、今後もしかしたら『WoT』でもコラボが実現する可能性もあるかもしれません。そういった拡張性なども考えつつ、コラボを実施しています。

――コラボを実際にやってみて、日本での反響はいかがでしたか。

Eric Shin氏:
特に『アズールレーン』が抜群に良い反響を貰っています。またたとえば「ガールズ&パンツァー」や「蒼き鋼のアルペジオ」のような日本生まれのコンテンツに関してはファンが根強くついている作品で、ファンの方々が遊んでみたい、買ってみたいと思わせられるようなコンテンツをしっかり作りました。そうしたこだわりへの反響をいただいておりますし、ユーザーの方々にもしっかりと受け入れていただいているという印象を持っています。

ゲームIPとのコラボについても強い手ごたえを感じております。というのも、コラボによって元のゲームには登場しない、あくまでも『WoT』や『WoWS』でしか体験できない新しいものをユーザーに提供できるからです。

そしてコラボが日本のプレイヤーに受け入れられるということは、クオリティがしっかり担保できていることにもなり、韓国や台湾といったほかのアジア地域に関してもしっかりと受け入れられるレベルのものを提供できているという自信にもなります。特に面白いのは、ほかのアジア地域のプレイヤーの方々も、今は機械翻訳がありますので、簡単に日本で提供されているコンテンツを翻訳して理解することができるんです。日本で流行っていたり話題になっていたりとすると、それがそのまま伝染してほかの地域でもしっかりと評価され、反響を生むというような流れが見られます。

――日本のユーザーから貰ったフィードバックのなかで、印象に残っているエピソードがあれば聞かせてください。

Eric Shin氏:
まず特に印象に残っているものとしては、2017年におこなった『アズールレーン』第1弾コラボの時のエピソードがあります。『アズールレーン』といえば戦艦を題材にしたゲームですが、擬人化されているゲームではありますので、『アズールレーン』のプレイヤーが実際の戦艦のことを知っているかというと、そうではない方も多いんです。その方々が、コラボをした結果『WoWS』をプレイして、キャラクターの元となっている実際の戦艦を見た時に、多くの方が驚かれていたというのが印象的でした。

『WoWS』では実際の戦艦がしっかりと忠実に再現されているゲームなので、それに触れた『アズールレーン』のプレイヤーが「あのキャラクターの元となったのがこの船なんだ」という驚きをもって楽しんでいただけたんです。そこで新しい知見を得られた、というフィードバックで多くいただけたのが特に印象深かったです。

テーマに捉われず、ユーザーが喜ぶものを

――今後のコラボの展望はございますか。

Eric Shin氏:
先ほどお答えしたとおり、コラボ先の選定としては、作品のテーマがウォーゲーミング作品に合ったものであるかどうか、というのを重視していました。それで言いますと今現在大きなタイトルで残されているものだと、1タイトル思いつくものがあるといえばあります。

ほかにもコラボできそうなテーマや基準を満たしている作品は結構あるとは思うのですが、今までの経験で学んできたところとしては、意外とメカメカしいものであったりとか、SF過ぎるものはそこまでユーザーに受け入れられないんです。なので、実はコラボできそうな作品というのはかなり限られているというのが現状ですね。

そしてやはりユーザーの方々が何を求めているか、どういったものを待ち焦がれているのかという部分が非常に重要になってきます。過去のリサーチを見ると、いわゆる美少女系ジャンルであったり『原神』であったり『NIKKE』であったりといったゲームが非常に好まれている傾向にあります。

最初のテーマであった戦車や戦艦が基準のコラボは、正直なところもう数がほぼないという状態にはありますので、ユーザーが本当に好むものは何かを重視していきたいです。かわいらしい女の子が登場する作品や、アニメや漫画が次のコラボに対しての選定基準になってくるのかなと思います。

また、今まで『WoT』や『WoWS』に関しては、双方向でコラボする作品がほとんどありませんでしたが、最近ではコミュニティを巻き込んでプレイヤーを盛り上げて行く新たな方法を取り入れております。実際、『World of Tanks: Blitz』では、今年9月にホロライブとのコラボが予定されています。またたとえば最近発表された『ブルーアーカイブ』でも作中に戦車が出たりしますので、そういったかたちで、双方向のコラボを実施していきたいなと考えております。過去の実績やリサーチなどから吟味しつつ、『WoT』と『WoWS』どちらのプレイヤーも楽しめるようなコラボを今後展開できればと思っています。先ほど申し上げた『ブルーアーカイブ』における戦車の例も、もしかしたら今後本当にコラボが実施されるかもしれませんね。

――『WoT』『WoWS』で遊んでいる日本のユーザーに向けて、今後期待してほしいことはなんでしょうか。

Eric Shin氏:
ウォーゲーミングは日本を本拠地にする企業ではありませんが、私たちは日本の企業のように日本のユーザー目線で考え、そして行動しています。なので、ほかの海外企業よりも、よりユーザーの目線に合ったかたちでコラボを実施・提供できていると信じております。

とはいえ、もちろん完璧ではないとは思っていますので、これからも日本のユーザーがどういったものを好んでいるのかをどんどん勉強していきたいと思っています。特に今年からはさらに力をいれて展開を進めていく予定なので、ぜひ今後もウォーゲーミング作品に注目していただければと思います。

また、今後もユーザーがあっと驚くような新しいコンテンツの提供やアプローチをしていきたいと考えております。今回『ブルーアーカイブ』が“『WoT』ではなく『WoWS』で”コラボしたように、意外なコラボを今後できればと思っているので、ご期待ください。

――ありがとうございました。

World of Tanks』および『World of Warships』は、PC向けに基本プレイ無料で配信中だ。

Jun Namba
Jun Namba

埼玉生まれBioWare育ちです。悪そうなやつはだいたいおま国でした。RPG全般が好きですが、下手の横好きでいろいろなジャンルに手を出しています。

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