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コーディング不要ゲーム制作ツールはAI時代をどう生き残る?『RPGツクール』『ウディタ』『Bakin』『SRPG Studio』開発者が語る、「全人類ゲームクリエイター化」の野望
国内のノーコードゲーム制作ツールの開発者の方々にお声がけをし、座談会後編。AIの進歩に対し、制作ツールはどう付き合っていくべきかなど語っていただいた。

誰しも一度は「自分だけのゲームを作ってみたい」と思い立ったことがあるのではないだろうか。そんな野望の実現を助け、日本のインディゲーム・フリーゲーム文化を支え続けてきたのが、国産のノーコードゲーム制作ツールの存在だ。
弊誌AUTOMATONでは、国内のノーコードゲーム制作ツールの開発者の方々にお声がけをし、座談会を企画した。国内には多くのツールが存在するが、海外製のさまざまなツールも存在するなかで、彼らはいまどういう思いで開発をしているのだろうか。
今回お招きしたのは、『RPGツクール』シリーズに長年携わり、最新作『RPGツクールU2U』ではプロデューサーを務める一之瀬裕之氏。『RPGツクール』を祖とし、独自のフルコマンド方式を展開した『WOLF RPGエディター(ウディタ)』の開発者であるSmokingWOLF氏。3D表現と2D表現を融合させた『RPG Developer Bakin』チームリーダーの長井伸樹氏。SRPG特化の制作ツール『SRPG Studio』のサファイアソフト氏だ。 後編となる本稿では、ユーザー製ゲームに驚かされた“あるある”話のほか、AIエージェントとRPG制作ツールの付き合い方についての内容をお届けする。なお、インタビュー前編はこちらに掲載している。
制作中の不具合相談では、プロジェクトを丸ごと送ってOK
――皆様がびっくりしたり、感心したりしたユーザー製のゲームについて教えてください。
SmokingWOLF氏:
最近の注目作なんですけど、第18回ウディコン(※)に投稿された『RIMWING』というロボット風のゲームがありまして。マウスで操作盤を触ってメカを操縦するんですけど、エフェクトもしっかり作られててアニメーションもバリバリするのですごく熱いんですよ。臨場感というか操作感が楽しい1本です。装填も発射も全部ボタン押して、リロードガシャってドラッグ操作をしたり色々やる感じのゲームですね。
※ウディコン……SmokingWOLF氏が年に一度開催しているゲームコンテスト

――これが『ウディタ』で作られているってすごいですね。
SmokingWOLF氏:
『ウディタ』は何でも作れるツールですが、使いこなしてくださっている開発者の方々には頭が下がる思いです。本当にありがとうございます。
――そういえば『RPG Developer Bakin』も、早期アクセス当初はRPG以外のジャンルばかり作られると話題になっていましたね。
長井氏:
一応「RPGを作るツール」を標榜しているのですが、全然違うゲームを作ってくる人がいっぱいいますね(笑) アーリーアクセス開始して1年目くらいでスパロボみたいなの作ってくる人がいたり、FPSを作ったり。一番びっくりしたのはフランスのアーティストの方が送ってきたゲームで、開けて起動したら宗教的・超アートなムービーが次々流れるゲームだったんですよ。めちゃめちゃびっくりしましたね。
うちではよく子供向けのワークショップをやるんですが、彼らの発想にもよく驚かされます。巨大な石像やら巨大な家具が画面奥から次々降ってくるのをよける 謎のゲームとか、ジャンプしたら果てしなくジャンプし続けるゲームとか……(笑)
――サファイアソフトさんはいかがでしょう。
サファイアソフト氏:
具体的なタイトルではないのですが、不具合の問い合わせなどでゲームのプロジェクトファイル自体をいただくことがありまして、それを開いただけでも「これは桁違いだな」というのが分かる時はありますね。一式をzipファイルに圧縮しても、8GBくらいあったり。
SmokingWOLF氏:
そういう報告、めっちゃ来ますよね。
長井氏:
『RPG Developer Bakin』は3Dも扱うから余計にだと思いますが、すごいサイズのときがあります。
――どこに不具合があるか分からないから、とりあえず全部送ってくださってる感じなんでしょうか。送り方として、こうしてほしいとかはありますか。
サファイアソフト氏:
公式の立場として「関係ある部分だけ送っても大丈夫ですよ」とは言ってはいます。ただ、制作者様が不具合とは関係ないと思っていた部分が実は関係あったりするので、全部送っていただけるとエラーチェックがはかどりやすいですね。なのでサイズが大きくても、全く迷惑ではないです。
SmokingWOLF氏:
うちも基本的に全体のゲームが動くやつを送ってくださる方がデバッグがしやすいですね。
長井氏:
ユーザーさんが見ている現象と実際に内部で起こっていることは違うこともすごく多いので、同意見です。

――『RPGツクール』シリーズは名作も多いですが、一之瀬さんは印象的なタイトルはありますか?
一之瀬氏:
僕が一番尊敬しているのは『ゆめにっき』という作品ですね。ツクラーさんって「自分の内面を表現したい」「自分のストーリーを紡ぎ出したい」という方々が非常に多いんですが、『ゆめにっき』のききやまさんは、1人でドットも音楽も全部作って何年もかけて作品を作り上げた方です。しかも商品としてではなく、自分の内面を表現したいためだけに作っていて、結果的にユーザーの反響で大きな作品になった。すごく、“表現したい”という気持ちの原点を感じるんです。あと僕、実際にお会いしてお話を聞いたんですけど、『ゆめにっき』は実際にききやまさんが見た夢なんだそうです。本当に夢日記をつけているんだそうで。
――ご本人の体験記みたいな作品なんですね。
一之瀬氏:
『ゆめにっき』のリメイク版をSwitch版で作らせてもらった経緯があって、そのときに本編に出てこないモンスターのスケッチを見せていただいたんです。本当に日記をつけているんだなって分かって、すごいなと感じましたね。ツクール作品は他にも『To the Moon』をはじめとした海外作品もありますが、商売とはまた別の「表現」というところで『RPGツクール』を使ってくださっている皆様には感謝しかないですし、すぐに思いを作品にできるという部分を大事にしつつ、最新作に結びつけたいですね。
――私は『ゆめにっき』や『Ib』の世代ど真ん中なのですが、あの時代からフリーゲームに作家性が強い『RPGツクール』作品がどんどん増えていったと感じています。
SmokingWOLF氏:
『Ib』は『RPGツクール2000』で、『ゆめにっき』は『RPGツクール2003』の作品ですよね。2000シリーズは本当に素晴らしいツールでした。金字塔の時代でしたよ、あの頃は。

ゲーム制作ツールはAIエージェントとどう付き合っていくか
――最近はAIコーディングも広がってきていますよね。本日はその辺りのお話もうかがいたいと思っているのですが、ゲーム制作ツールはAIとどう付き合っていくかについて、皆さまどうお考えでしょうか?
SmokingWOLF氏:
先日『ウディタ』の内部に、AIがテストプレイをしてくれる機能を試験的につけてみたんです。それを使わせてみたら、『ウディタ』側のコード修正をしてテストしては、まだ直りきっていないのを見て勝手にゲーム終了させて、また自分でコード修正してテストして……と、指示したGame.exeのバグが直るまで健気に繰り返してくれたんです。それを見て、すごく楽で感動したんです。
個人的にも、これからはAIエージェントとツールが連携できないと選択肢に入らなくなる可能性を感じていて、将来的に『ウディタ』にMCPサーバー(AIエージェントの窓口)の導入を検討しています。これがあると勝手にバグ探させたりデータ書き換えたりテストプレイまでやってくれる。一方で、AIに文章でお願いしたらゲームを作ってくれてしまうので、「作ること自体の遊びを破壊する」んじゃないかという懸念もありますね。成果物の質を上げたいだけならAIはありなんですけど、作る楽しみを教えたい側はどうなのかなと悩んでいます。皆さんがどうお考えか気になりますね。
一之瀬氏:
AIって結局道具ですよね。モノづくりそのものには発想や企画が重要ですし、世の中でもWeb開発を含めてAIがコードを書くのが当たり前の時代になりつつあります。個人的にもMCPサーバー等を導入してエディターの中でゲームを作らせる世界はどんどん推進すべきだと思っていて、それがゲーム開発を壊すというイメージは僕にはありません。
僕も先日、『RPGツクール』のプラグインをAIに作らせてみたんですが、壁打ち3回くらいで思いどおりのものを作ってくれました。コードを覚える必要もなく、これができてしまう時代なんです。SteamはAIに関する販売規定を設けていますが、申告の対象になるのは主に、AIを使って生成したアートや音声、物語、ローカライズなど、製品に含まれてユーザーが触れるコンテンツです。一方で、開発作業の効率化を目的としてAIにコードを書かせるような使い方については、申告の対象ではないんですよね(※)。コードをAIが書くのはユーザーも認めている世界ですし、どんどん使ってスピードアップしていくべきだと思います。AIを使ってもモノづくりの楽しみはあると思いますし、あえて使わない選択肢もできますからね。
※Steamでは、アートワークやサウンド、物語、ローカライズなど、製品内に含まれユーザーが利用するコンテンツにおけるAIツール使用の情報について審査時の申告や情報開示が必要。一方で開発作業の効率向上のために使用されるAIツールに関しては、申告や情報開示は不要となっている(関連記事)
長井氏:
『RPG Developer Bakin』はゲーム作りを楽しんでほしいという理念が根底にあります。ですので作る方が楽しいのであればAIを使っていただければいいと思います。ツールって、筆や工具にあたるものだと思うんですよね。ネジを締めるのが大変なら電動ドライバーを使うような感じで、創作をAIにサポートしてもらうかたちで使っていただければいいのかなと。
サファイアソフト氏:
プラグインをはじめ、デフォルト素材を公式が用意しきれない部分をAIに頼んで作ってもらうなど、そういう補助的な使い方ができるといいですよね。AIの誕生によって制作ツールが不要になるというよりも、制作ツールを使って表現できる世界が広がったと感じていますね。
――私はプログラミングができない側の人間なのですが、AIにゼロからコードを作らせると、エラーが出た時にどう直せばいいか全く分からないんです。なので、制作ツールという大きなフレームのなかでAIが補助してくれるくらいのほうが、逆にわかりやすいかもしれません。
SmokingWOLF氏:
それでいうと現役のゲーム開発者の方から、『ウディタ』は完全にイベントコマンドで動かしているので、かえって安全にAIを使えると言われましたね。AIを自由にさせると、たまにコードの中に勝手にライセンス無視のライブラリを入れちゃうことがあるんです。エディター内のコマンドしか使えない『ウディタ』ならそれが起きないので、逆に強みになるねと言われて、なるほどと思いました。

国産RPG制作ツールが今後、生き残るには
――AIも登場し、いよいよ未来がわからない時代ですが、今後生き残っていくうえで考えていることなどありますか?
長井氏:
うちとしては海外でユーザーを増やしたいなというのと、もっと大人を引き込みたいんですよね。50代や60代をもうちょっと引き込めないかなと。「全人類ゲームクリエイター化計画」みたいなのを考えているので。50代60代ってゲームをやってきた世代だから、それより上の世代と比べてゲームに馴染みもありますし。
一之瀬氏:
50代~60代に対してゲームを作ってほしいというのは、新しい発想ですね。
長井氏:
ゲーム制作ってやろうと思ったらどこまでも、何千時間だって費やせる。ゲームシステムはもちろん絵や音やプログラム…いろいろな分野に興味を持つきっかけともなる。大変だけどやりがいも大きい。人生を豊かにするコスパのいい趣味なんですよと訴えかけていきたいですね。
サファイアソフト氏:
国産ゲーム制作ツールが生き残るためには、まず「とっつきやすさ」ですね。海外製のプロ仕様エンジンと違って、初心者でも分かりやすい素材が揃っていてすぐテストできる優しさは強みです。『SRPG Studio』としては、やはり「特定のジャンルにフォーカスする」ことでしょうか。「このツールはこれしか作れないけれどこれなら任せてくれ」というポジションを狙うのが、自分にとっての生き残り手段だと思います。

――最後に読者に向けて、一言ずつお願いします。
長井氏:
先ほども話しましたが制作ツールは工具セットみたいなものです。今日集まった皆さんのツールはもちろん、ステキなツールがたくさんあります。手にしっくりくるツールを使って自由なゲーム作りを楽しんでほしいです。そしてユーザーの皆さんは「ゲーム制作ツールでゲーム作るの楽しいぞ!」とぜひ宣伝してください!
あと、読者の方に向けてじゃないですが、とても楽しかったし、まだまだ話したりないので、またいつか皆さんと集まりたいですね!
サファイアソフト氏:
『SRPG Studio』を手にとっていただいて、「このツールがあったからゲーム制作ができた」と思っていただければとても嬉しいです。
SmokingWOLF氏:
私はツクールに始まるフリーゲームの世界に育ててもらった身なので、これからもフリーゲーム文化の熱量や楽しさを伝えていきたいと思っております。『ウディタ』ユーザーの皆様、いつも本当にありがとうございます。
一之瀬氏:
座談会の場を作っていただき感謝しています。現在開発中の『RPGツクールU2U』も、ツクールをスタンドアロン化してSteamで、日本だけでなく海外にも売っていこうという大きな方針転換をしました。ぜひご期待ください。
――ありがとうございました。
『RPGツクールU2U』:PC(Steam)
『RPG Developer Bakin』:PC(Steam)
『SRPG Studio』:PC(Steam/DLsite)
『WOLF RPGエディター』
[聞き手・執筆・編集:Aki Nogishi]
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