死人パワー継承ソウルライク『Deathbound』開発者インタビュー。『ダークソウル』が好きすぎて開発、しかしファンの期待も高く開発そのものがソウルライク

Tate Multimediaは8月9日、ソウルライクアクションRPG『Deathbound』をリリース予定。本稿では、ブラジルに拠点を置く本作開発元へのインタビューの内容をお届けする。

パブリッシャーのTate Multimediaは8月9日、『Deathbound』をリリース予定。対応プラットフォームはPC(Steam/Epic Gamesストア/GOG.com)/PS5/Xbox Series X|Sで、日本語表示に対応する。

本作はソウルライクアクションRPGだ。舞台となるのは、信仰と科学が入り混じる世界の大都市アクラティヤ。プレイヤーは「死の教団」の兵士として、アクラティヤに潜む「生のカルト教団」を排除すべく戦いを繰り広げる。なお立ちはだかる敵たちには、死を受容するための「悲しみの五段階」がそれぞれ性質として反映されているという。

本作の主人公は永遠の命を求める実験によって生み出された兵士で、倒れた戦士の魂をエッセンスとして吸収することができる。エッセンスを吸収すると、主人公はその戦士の姿に“変異”できるようになり、装備やスキルを使用することが可能になる。エッセンスは一度に4つまで装備可能で、冒険中にシームレスに切り替えながら戦える。さながらパーティーを組むかのように、個性豊かな戦士のエッセンスを組み合わせて、自分に合ったプレイスタイルを確立していく。


このたび弊誌は、本作の開発を手がけたTrialforge Studioにメールインタビューを実施。“ソウルライク”ゲームを作る難しさや、本作のゲームシステムにこめられた狙い、開発陣が『ダークソウル』シリーズに抱くリスペクトなどを伺うことができた。以下にその内容を紹介する。

──自己紹介をお願いします。

Italo Nievinski(以下、Nievinski)氏:
Trialforge Studioの創設者のItalo Nievinskiです。『Deathbound』の開発ではディレクターを務めています。Trialforge Studioはブラジルに拠点を置くゲームデベロッパーです。我々はユニークでプレイヤーの記憶に残るゲームの制作を目指しており、挑戦と成長を掲げてゲームを開発しています。そんなTrialforge Studioにとって、『Deathbound』は初めて手がける作品です。

──スタジオの場所や環境について教えてください。


Nievinski氏:
我々のスタジオ自体はリオデジャネイロにあります。とはいえスタッフはみなフルリモートで開発をおこなっておりブラジル中に分散しているので、開発環境としては人それぞれということになりますね。ふだんはDiscordを使って連絡を取り合っていますが、開発の節目などではみんなで集まってパーティーなどお祝いをしたりしています。

──ソウルライクゲームはなかなか作るのが難しいジャンルだと思いますが、なぜ初めての作品をソウルライクゲームにしようと思ったのですか?

Nievinski氏:
確かにソウルライクは開発が難しいジャンルですが、それでも制作することにしたのは、我々が『ダークソウル』の大ファンだからです。当スタジオにはハードコアなゲーマーが集まっており、みんな『ダークソウル』シリーズを愛しています。それに、我々が語りたいと思っていたストーリーを表現するのにソウルライクのシステムはぴったりだと思ったので、制作を決断しました。

──本家『ダークソウル』シリーズのほかにもさまざまなソウルライクゲームが存在していますが、本作ならではの特徴は何でしょうか?

Nievinski氏:
本作最大の特徴は、戦闘中にいつでもキャラクターを切り替えることができるバインドシステムです。本作ではプレイヤーは、エッセンスと呼ばれる過去の戦士の魂を4つまで装備し、シームレスに変身しながら戦うことができます。変身はアクションの最中におこなうこともでき、コンボ中に変身することでモーフストライクという特殊な攻撃を繰り出すことも可能です。バインドシステムはソウルライクの戦闘に本作独自の魅力を加えるものになっていると同時に、ストーリー上でも重要な意味をもっています。


──バインドシステムのアイデアはどのように生まれたのでしょうか?

Nievinski氏:
バインドシステムは本作の根幹であり、実のところ本作のジャンルをソウルライクにすると決める前からコンセプトが存在していました。「複数のキャラクターを自由に切り替え、変身しながら戦うアクションゲームを作ろう」というところから、本作の開発がスタートしています。その後でジャンルをソウルライクにすることが決まり、アイデアを深掘りしていきました。攻撃中や回避中に変身することで特殊なアクションが発生するなど、具体的なシステムは開発中に考え出されたものです。

── ではバインドシステムは、本作にソウルライク作品としてどのような体験を生み出していますか?

Nievinski氏:
バインドシステムにより、プレイヤーはまったく異なるプレイスタイルのキャラたちのエッセンスを、いつでも自由に切り替えてプレイできます。そのためゲーム内のさまざまな状況に対して、素早く適応して戦うことができるのです。これはプレイヤーの戦術に大きな柔軟性を与える一方で、状況に適したキャラクターを選んでプレイすることを要求するという、ゲームに深みをもたらす要素にもなっています。

またエッセンス同士にはシナジーが存在するため、完璧なビルドのパーティーを組むことを考える楽しさも存在しています。なかには相性が悪いエッセンスも存在するため、プレイヤーは時としてジレンマに陥ることにもなるでしょう。すべての選択はバトルに大きな影響を与えることになります。

──本作はほかのソウルライク作品と比べて難しいですか、それともカジュアルですか?

Nievinski氏:
『Deathbound』はソウルライクゲームとしても、チャレンジングな難易度(高難易度)の作品だと思います。ですが、バインドシステムなど遊びに幅を与えるシステムを用意しており、プレイヤーはさまざまなプレイスタイルで遊ぶことが可能です。自分としては、ソウルライクゲームを遊んだことがないプレイヤーでも遊びやすい作品になっていると思っています。簡単というわけではありませんが、状況に適したキャラを使い分けることで、戦略的に難関を乗り越えていけますから。

全体として段階的に難易度が上昇していくような設計になっているため、挑戦をいとわないプレイヤーならソウルライクのファンに限らず、本作の戦いをお楽しみいただけると思います。『Deathbound』の世界は容赦がなく、プレイヤーの意志の強さを試します。本作の世界では栄光は与えられるものではなく、勝ち取るものです。

── 本作ではHPと連動して最大スタミナが減りますが、ソウルライクとしてはなかなか特徴的なシステムだと思います。思いついたきっかけや導入した理由を教えてください。

Nievinski氏:
体力に連動してスタミナが減るのは、リアルさから想像したシステムですね。シンプルに、傷ついた戦士は体力全快のときと同じようには戦えないはず、と考えました。ゲームデザイン面でいうと同システムの導入により、プレイヤーに同じキャラを使い続けるのではなく、キャラを切り替えながら戦うように促しています。

本作では特定の戦士が傷ついても、いつでも別のキャラに変身できます。別のキャラに切り替えている最中、リザーブのキャラたちの体力やスタミナは回復するため、上手くキャラを切り替えながら戦えば、スタミナのやりくりはずっと楽になります。バインドシステムに慣れれば、傷ついたキャラをリザーブに下げて回復させつつ、次々にキャラを切り替えて効率よく戦うことができるようになりますよ。


──本作ではフロム・ソフトウェアのソウルシリーズからの影響が随所に見られます。どの作品からもっとも強く影響を受けましたか?

Nievinski氏:
おっしゃるとおり本作はフロム・ソフトウェアの作品より影響を受けており、そのなかでもおそらく初代『ダークソウル』にもっとも強い影響を受けています。一方で、我々が本作で目指したのは新しいソウルライクゲームです。テンポが早くハイスピードで戦うことができるソウルライクをテーマに、アイデアをたくさん詰め込みました。本家ソウルシリーズを筆頭にほかの作品からのインスパイアを受けつつも、『Deathbound』独自の新しい遊びが提供できるよう努めました。

──本作のマップは入り組んでいますが誘導も丁寧に用意されている印象です。本作のマップ設計のテーマを教えてください。


Nievinski氏:
『Deathbound』におけるマップ制作の目標は、複雑に相互接続した構造をもちつつも、プレイヤーを圧倒せず探求心を阻害しないようなマップを作ることでした。そのためにまず我々は、ゲームの舞台となる街・アクラティヤ全体の3Dモデルのプロトタイプを製作しました。そうしてチームでマップ全体の構造を確認しながら、複雑さや難度バランスなどを調整し、ランドマークなどを加えてエリアごとに視覚的な特徴づけをしていきました。世界を広く感じさせるため、垂直方向に広がりをもった立体的な構造も意識しましたね。

またいわゆる篝火にあたる、ワープポイントの設置は最小限にしています。かわりにショートカットの解放などを積極的に盛り込むことで、プレイヤーに探検が進んでいる感覚を与えるようにしました。

──面白いソウルライクゲームにするためにどのようなことを意識されましたか?

Nievinski氏:
ソウルライク作品の開発をいっそう難しくしている点が、同ジャンルのプレイヤーはとても目が肥えているということです。ソウルライクを制作するにあたっては、本当にディテールに気をつかう必要があります。ゲームプレイだけでなく、世界設定や環境、キャラクターデザインなど、あらゆる要素をハイレベルに仕上げなくてはなりません。我々のような小さく予算も限られているスタジオにとっては難しい挑戦でしたが、本作を輝かせるために最大限の努力をおこないました。情熱をもって開発に取り組み、すべての要素について、あらゆる角度から検討をおこなってきました。ですので、意識したことは“すべて”ということになりますね。

──ちなみに『エルデンリング』のDLC「SHADOW OF THE ERDTREE」は遊びましたか?

Nievinski氏:
実は本作の開発に忙しく、ほとんど遊べていません。DLCが発売されたのがちょうど追い込みの時期で、本作のリリースに向けて作品を磨きあげることで手いっぱいでした。本作をリリースして一息つけば、ゆっくり腰をすえて遊べる時間ができると思うので、プレイするのを楽しみにしているところです!

──本作にはいろんな戦士のエッセンスが登場しますが、オススメあるいはお気に入りのエッセンスを教えてください。

Nievinski氏:
個人的に気に入っているのはカポエイラ使いのMamdile Ogateですね。カポエイラ使いというのはほかのゲームではあまり見ない設定だと思いますし、本作にブラジルらしさを加えてくれているエッセンスです。またデモ版のプレイヤーから好評だったのは槍使いの女性のIuliaですね。実際に人気があったことからもオススメのキャラといえます。

 


──本作ではアイテムの強調表示やクモ恐怖症モードなど、アクセシビリティが充実していますね。

Nievinski氏:
アクセシビリティのオプションを盛り込めたのは嬉しいです。こうしたオプションを作るのは、我々のように予算の限られたチームにとって簡単なことではないのですが、パブリッシャーのTate Multimediaが後押ししてくれました。残念ながらリリースには間に合わなかったのですが、発売後にはアップデートにより、色覚異常の方を対象としたオプションも実装予定となっています。こうしたオプションによって、より幅広いプレイヤーたちが我々の作品を楽しんでくれたらとても嬉しいです。

 ──日本の読者に向けたメッセージをお願いします。

Nievinski氏:
『Deathbound』について、日本から力強い応援が寄せられていることに本当に嬉しく思っています。我々ブラジル人は、日本の文化が大好きです。願わくば我々が日本文化を楽しむように、日本の人にもブラジルの文化を楽しんでほしいと思っています。本作にはソウルシリーズへのリスペクトとともに、ブラジルの魂が注ぎこんであります。

日本とブラジルは地球のほとんど反対側に存在している国ですが、遠く離れているにもかかわらず我々はこうして、つながりをもつことができています。『ダークソウル』という偉大な作品が日本から生まれ、その作品に大いに感動した我々が本作を作り、日本に向けて打ち返すのです。本当に素晴らしい時代だと思います!

また改めて、日本のプレイヤーの皆さんにお礼を申し上げます。Dōmo arigatōgozaimasu!

──ありがとうございました。

『Deathbound』は、PC(Steam/Epic Gamesストア/GOG.com)/PS5/Xbox Series X|S向けに8月9日配信予定だ。

Akihiro Sakurai
Akihiro Sakurai

気になったゲームは色々遊びますが、放っておくと延々とストラテジーゲームをやっています。でも一番好きなのはテンポの速い3Dアクションです

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