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『ソニック』映画化・アニメ化はゲーマーにとって得なのか?どうやら得になるらしい。飯塚Pが語る、売上とリソースの“循環の変化”
『ソニック』シリーズの総合プロデューサーを務める飯塚隆氏に、最近の活動やマルチメディア化によるIP全体への影響、『ソニックレーシング クロスワールド』のシーズンパス販売の経緯などについて話を訊いた。

『ソニック』シリーズは今年、誕生から35周年を迎えた。「東京ゲームショウ2026」にもセガブース内に同シリーズに関連した出展がおこなわれ、『ソニックレーシング クロスワールド』や『SONIC PICO PARK』の試遊のほか、35周年を記念したライブが開催された。
『ソニック』シリーズはセガを代表する看板タイトルのひとつだ。1991年にメガドライブ向けにシリーズ第1弾となる『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』を発売。以来、さまざまなかたちでシリーズが展開され、35周年を迎える2026年の1月時点でシリーズ累計本数は17.7億本を突破。過去から現在までセガの顔であるソニックは、今ではゲームだけではなくアニメや映画など、幅広いジャンルで活躍を見せている。
弊誌は「東京ゲームショウ2026」の会場にて、『ソニック』シリーズの総合プロデューサーを務める飯塚隆氏にインタビューを実施した。同氏の最近の活動やマルチメディア化によるIP全体への影響、『ソニックレーシング クロスワールド』のシーズンパス販売の経緯などについて話を訊いた。
世界中にますます広がるソニックの活躍

――飯塚さんは『ソニック』シリーズのプロデューサーとして今や顔のような存在ですが、長くシリーズに携わる中で現在はどのようなかたちでクリエイティブに関わっていらっしゃいますか。
飯塚隆(以下、飯塚)氏:
もちろんいろいろなことに取り組んでいますが、私自身、本業はゲーム屋さんなのでやっぱり『ソニック』の新作ゲームにおもに注力していることは変わっていません。なので『ソニックレーシング クロスワールド』はもちろん、『SONIC PICO PARK』も全面的に見ています。あとは当然まだ言えない新作タイトルも手がけていますので、やっぱりメインはゲームですね。ただ、私の仕事時間の中ではゲーム開発の割合が少なくなっているのも事実でして……(笑)
映画もそうですし、Netflixで配信予定のキッズ向けアニメなどの発表もあって、『ソニック』シリーズに関わる商品群が増えていて、そういったところまで全部チェックをしています。そういった意味ではゲーム制作以外の仕事が増えているというのが現状ですね。
――ゲーム制作以外の仕事が増えたのは、飯塚さんにとって正直嬉しいですか。それとも寂しいですか。
飯塚氏:
ゲーム以外の仕事が増えるというのは、それだけ『ソニック』シリーズのブランド力が上がって皆さんと一緒に仕事ができる機会が増えたっていうことなので、それは良いことなんです。でも、1日一切ゲーム開発の仕事をしなかった日は、ちょっと落ち込みますね(笑)
――飯塚さんがマルチメディア展開を監修するときは、どういったところに指摘をされる傾向がありますか。
飯塚氏:
たとえば映画であればパラマウント・ピクチャーズが制作していて、100%セガの責任ということで動いているプロジェクトではないんですね。そういったものに関しては、ストーリーの良し悪しとかそういった部分には口を出さないようにしています。私はあくまでもソニックはこういう行動をしないはずとか、キャラクターのデザインはこうあるべきとか、ソニックのキャラクター性を保つためのアドバイスをしている感じですね。
――ライセンス管理者に近いようなお仕事ですね。
飯塚氏:
そうなりますね。ただ、フォーマットがないものなので、ライセンス部署っていうのはガイドラインがあって、ガイドラインに従って指示をするんです。でも、私のやっている仕事はガイドラインがないんです。新作の映画とかアニメだと元になるものがないんですよ。そういったところで、私が介入する余地があるという感じです。

――生けるガイドラインということですね。飯塚さんは35周年を迎えた『ソニック』シリーズの歴史を長く見ていますが、これまでにどういう時期があったと思いますか。
飯塚氏:
『ソニック』シリーズのゲームの話をすると、まず『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』が誕生した1991年から1997年ぐらいまでの間が『ソニック』シリーズのクラシック期です。
次に『ソニックアドベンチャー』が1998年に誕生して、そこからソニックが新しく3Dで動き出して喋ってという、新しいソニックとして進化し始めたセカンドジェネレーションになりますね。
さらにもうひとつ区切るとしたら映画が公開した頃ですね。2020年に公開されて、それが世界中でヒットさせていただけたおかげで、『ソニック』フランチャイズが飛躍的に伸びて、映画も今は4作目まで予定していますので、そういった意味では2020年から『ソニック』ブランドが膨らんだ新しいジェネレーションが始まったんだなと感じています。
――『ソニック』シリーズは1年に1本をコンスタントにリリースするようなペースになっていますよね。
飯塚氏:
この35年間、『ソニック』シリーズは何らかのかたちで毎年新作をリリースしてきたんですよ。ただ、新作と言ってもメインストリームのシリーズだけじゃなくて、モバイルだったりダウンロードタイトルだったり、何らかの形で新作をリリースし続けていますね。でも、昨今は開発期間が長いんですよね。昔は2年くらいで開発もできていたので毎年リリースも難なくできていたのですが、それが3年かかるタイトルだったり、5年かかるタイトルだったり、スパンが長くなってきたんです。それが原因でタイトルコントロールが難しくなっているという現状はあります。
――それでも、ちゃんとリリースを続けられていますよね。しかもホリデーシーズンにリリースするとなると、ユーザーからの期待も大きくなりますよね。
飯塚氏:
開発タイトルを複数もっていることでクオリティもリリースタイミングも良いかたちで皆さんに提供できるようになっていますね。
――それができるようになったのは最近なんですか。
飯塚氏:
それはやはり昔の体制だとできないことでしたね。それこそ『ソニック』シリーズのブランド力が上がったおかげで、それだけコストを掛けられるようになったところが大きいですね。

――そういった背景があるとはいえ、年1本のペースで大型タイトルをリリースするのは大変ですよね。
飯塚氏:
本当に大変ですよ(笑)開発期間が延びているので当然1ラインでは実現できないですし、2ラインあったとしても難しいですね。でも、年1本のリリースを実現するために複数ラインを確保して同時並行で開発を進めているわけです。
――かつ、『ソニック』シリーズのアイデンティティも品質も守らないといけないですよね。
飯塚氏:
私は今、総合プロデューサーというかたちで全タイトルをコントロールする立場にあります。で、各プロジェクトにはディレクターやプロデューサーがついていて、タイトルを仕上げる体制はそれぞれ用意しています。その上で、私がトータルでそれらを見ているというかたちでキャラクター性やバランスを保っているかたちですね。
昔、『ソニック』シリーズが今とは違った体制のとき、1本1本のプロジェクトが独自の進化を遂げていました。こちらのタイトルは進化したけど、別のタイトルではそれを受け付けなくてまったく別の方向に進むような。
一方で今はトータルでプロデュースすることによって、こちらのタイトルでこういう新しい技を覚えたから、あちらのタイトルでもその技を引き継ごうといった感じで、ゲームデザインの中でもトータルでバランスが取れるようになったのは大きいですね。
――品質について深堀った話をすると、昔はMetacriticスコアでの『ソニック』シリーズ評価はばらつきがありましたが、最近の作品はスコアが安定している印象があります。理由はなんでしょうか。
飯塚氏:
やはり一番大きな要因はかけられるリソースです。『ソニック』ブランドが低迷しているときは、やっぱり1タイトルにかけられるコストも少なかったので、その中で何とかやっていました。でも、今は『ソニック』シリーズへの期待値も上がってかけられるコストも増えてきているので、より丁寧なゲーム作りができるようになったのが大きいです。
――過去作の「もうちょっとここがこうだったらな……」というところはリソースの問題と直結しているんですか。
飯塚氏:
リソースの問題がかなり大きかったですね。今は開発チームがかなり大きくなってきているので、たとえばこのタイトルが間に合わなそうだったら、ほかのスタッフがサポートに入ってクオリティとスケジュールの両方を維持できる体制になっているんです。そういったサポート体制がチーム内で用意できているわけです。
――昔と比べると開発にゆとりは感じられますか。
飯塚氏:
そういうサポート体制のおかげでユーザーに品質の高いものをちゃんと提供できる体制にもなっていますが、逆に言えばプレッシャーも大きくなっているんですよね。
――『ソニック』シリーズはもう100万本が当たり前みたいになっていますからね。
飯塚氏:
やっぱりMetacriticスコアも下げるわけにはいかないので、ちゃんとハイスコアを出せるタイトル作りをしようというプレッシャーも多くなっているので、どっちが良いかという……(笑)ゲーム作りはどっちの苦しみもあって大変だと思います。
映画・アニメを作ってもゲームは遅れない

――『ソニック』シリーズはいわゆるマルチメディア化……トランスメディア展開が盛んです。ゲーマー目線で、マルチメディア化も良いけどそれよりもゲームを作ってほしいという考えもありますが、マルチメディア化はゲーム作りに対してポジティブな影響はあるんでしょうか。
飯塚氏:
もちろんあります。例を挙げると映画ですね。映画のおかげで『ソニック』シリーズの知名度が上がって、より世界中でソニックというキャラクター、そしてゲームに興味をもってくれる人が増えたおかげでゲームの売り上げにも貢献しています。その結果、ゲームの売り上げが良いと次のタイトルを作る際のリソースも増えるので、より品質の高いものが提供できるという好循環が生まれるんです。そういう意味ではマルチメディア、トランスメディア展開はゲームにとって大きなメリットがあります。
あと、トランスメディアにはゲーム制作者のリソースは使っていませんので、映画やアニメを作っているから新作の発売が遅れたみたいなことはないのでご安心ください(笑)
――いろいろなトランスメディアをする中で、予想外に人気だったものはありますか。
飯塚氏:
映画は本当に予想を超えてヒットしましたね。
――IPとして映画の公開前後はやっぱり全然違いますか。
飯塚氏:
全然違いますね。あとはアニメですね。特にNetflixの台頭は大きいです。今まではトランスメディアでアニメを作りましょうとなったとしても、それを放送してくれるテレビ局などにアプローチして、OKがないと先に進めなかったんです。それがNetflixだと「これをやりましょう」と手を組んだ段階で全世界に配信できるわけです。それはブランドを広げるという点で大きなメリットですね。
――リージョンごとに契約するのが大変だと聞きます。
飯塚氏:
テレビアニメは本当に大変ですね。やっとフランスで流れたとか、やっとカナダで流れたとか、それぞれに営業をかけないといけないので。「ソニックトゥーン(Sonic Boom)」も1作目のシーズン1はカートゥーンネットワークと組んで製作しましたが、シーズン2は放映が少なくなって、せっかく作ったのに世の中にあまり知られていないという状況になってしまいましたし。そういうこともあって、スタート地点からNetflixと手を組めるというのは大きいです。
『ソニックレーシング クロスワールド』を長く遊んでもらいたくて……

――『ソニックレーシング クロスワールド』はライブサービスゲーム寄りの作品である印象ですが、これは最初からそうしようという考えだったんでしょうか。
飯塚氏:
最初からこういったかたちにしたかったという気持ちがおおきいですね。というのも、『ソニック』シリーズにはスタンドアローンのゲームが多いので、リリース直後は盛り上がっても数か月するとみんなクリアして触らなくなってしまうというタイトルばかりなんです。でも、『ソニックレーシング クロスワールド』はオンラインタイトルなので長く遊んでもらいたい。でも、長く遊んでもらうためにはコンテンツを頻繁に追加していかないと、どうしても飽きが来てしまいますよね。
じゃあコンテンツを頻繁に追加していくためにはどうしたらいいのか。開発費は無尽蔵にあるわけではないので、それを回収しなくてはいけない。であればシーズンパスというかたちで有料化すると、最初に考えた理想から今のかたちが生まれた感じです。
――飯塚さんはビジネスプロデューサーという立場ではGaaS(Games as a Service)には興味がありますか。
飯塚氏:
モバイルタイトルなどはGaaSタイトルが主流ですが、決してGaaSをやりたかったわけではなくて、目指したところは『ソニックレーシング クロスワールド』を長く遊んでもらいたいという気持ちが一番ですね。
――『ソニックレーシング クロスワールド』をライブサービスに近いゲームとしてリリースした中で、飯塚さんが学びを得たことはありますか。
飯塚氏:
『ソニックレーシング クロスワールド』は、そもそもが一般的なGaaSタイトルとは違う、長く遊んでもらうためにはどうするかというところからのスタートだったので、お金を稼ぐというところをあまり考えずにスタートしてしまったんですね。それで結局シーズンパスというかたちでしか追加の開発費を集められなかったというところは、反省点でもありますね。
――一ユーザーとしては、やっぱりこのお値段で長く遊べるというのはありがたいところです。
飯塚氏:
ファン目線で作ったプランで、利益は二の次にしてしまいましたね……。今後はちょうどいいバランスを探れればと思っています。
――(笑)ありがとうございます。今後、いろいろなタイトルの用意があると思いますが、飯塚さんは今後どんなソニックのゲームを作りたい、広げていきたいというビジョンはありますか。
飯塚氏:
私個人の考えとしては、今までストイックにソニックのアクションゲームというかたちで作ってきましたが、今はファン層が変わってきたというか、映画やアニメをきっかけにファンになってくれたという人も増えてきています。つまりソニックの何が好きなのかという、それぞれのタッチポイントが違う環境になっているので、ストイックなアクションゲームだけではなくて、新規ファンにも向けて間口の広いソニックのゲームに触れてもらえるような作品を展開すべきかもしれないなと考えています。

――『ソニック』シリーズはそこまで積極的にリマスターやリメイクをされてない気がしますが、飯塚さんのご意向は?
飯塚氏:
そうですね。
――Wiiの頃は『ソニックと暗黒の騎士』のように剣を持ったソニックが冒険するような攻めた作品もあって、リマスターやブラッシュアップしてリメイクしたら面白そうな作品がたくさんありませんか。
飯塚氏:
ファンコミュニティからは『ソニック ワールドアドベンチャー』を移植してほしいとか、そういういろいろなリメイク・リマスター希望の声を聞くんですが、リソースが限られていまして……。限られたリソースの中でリメイク・リマスターを作るよりも、新作をユーザーに提供したい、新しい驚きを届けたいという思いの方が強いんですね。
リメイクやリマスターは同じ遊びをもう一度提供するということになってしまうのですが、今の時代に昔のゲームを作り直すのって、新作タイトルを作るのと同じくらいのリソースが
必要になるんです。グラフィックは全部作り直して、ゲームプレイも当時は荒かったものを今の時代にそのまま出せないので……。
――4:3の画面サイズを16:9にするだけでも簡単ではないですもんね。
飯塚氏:
そうなんです(笑)なので、今は新作にフォーカスしたいという思いの方が強いです。ただ、ファンからの「あのゲームを今遊べないからもう一度形にしてほしい」という声を受け止めてはいますので、首を長くしてお待ちいただきたいです。
――ありがとうございました。
[聞き手・編集:Ayuo Kawase]
[執筆・編集:Koutaro Sato]
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