戦国オープンワールドゲーム『Sengoku Dynasty』の「難民から集落のリーダーへと成長する」テーマは豊臣秀吉モチーフで、網野善彦で勉強した。来日した開発者にいろいろ訊いた

『Sengoku Dynasty』は、戦国時代の日本を舞台にしたオープンワールド・サバイバルゲーム。東京ゲームショウ2024にて、プロデューサー兼ナラティブデザイナーのJakub Zgierski氏にお話を伺う機会を得た。本作についてのインタビューの様子をお届けしたい。

Sengoku Dynastyは、戦国時代の日本を舞台にしたオープンワールド・サバイバルゲーム。プレイヤーは戦から逃れてきた難民となり、資源を収集し道具や建物をクラフトしながら、侍のいない「平民の持ちたる国」で新たな集落を築くことが目標となる。

2023年8月からSteamで早期アクセス版が配信されるも、コンテンツ不足などの理由で「賛否両論」を獲得。しかしアップデートを続け記事執筆時点では73%が好評とする「やや好評」まで評価が持ち直している。まるで0から集落を築きあげていく本作の主人公のように、地道にユーザーの声を聞き、改善を繰り返してきた結果だろう。今回は東京ゲームショウ2024にて、プロデューサー兼ナラティブデザイナーのJakub Zgierski氏にお話を伺う機会を得た。2025年にコンソール版リリースも決定した本作についてのインタビューの様子をお届けしたい。

プレイヤーキャラに「生きる道」を持たせたかった

――スタジオと作品紹介をお願いいたします。

Jakub Zgierski(以下、Zgierski)氏:
プロデューサー兼ナラティブデザイナーをつとめているJakub Zgierskiと言います。ポーランドの「Superkami」という20人ほどの会社で、ドイツのパブリッシャーToplitz Productionsとともに『Sengoku Dynasty』を開発しています。

同パブリッシャーは中世ヨーロッパを舞台にした『Medieval Dynasty』も制作しており、本作は日本の戦国時代を舞台とした関連作として作られています。『Sengoku Dynasty』は戦国時代ということでバトルも用意されていますが、メインとしては難民として0からコミュニティを形成し、村を作りあげていくシミュレーション要素が強いタイトルです。

――3月に実施された大型アップデート「Kintsugi(金継ぎ)」の反響はどうでしたか。

Zgierski氏:
プレイヤーの皆さまにはおおむね喜んでいただいています。「Kintsugi」アップデートのメインは、クマとオオカミといった新たな動物を追加したり、建築関係の基本システムを改修したりと村の運営にまつわる要素の改善を詰め込みました。

ただゲームのコアを変えるような新要素を追加したのではなく、ロード時間やパフォーマンスの改善などを中心にゲームの下地を整え、プレイヤーが遊んで楽しいと思える機能を実装しています。ただその分非常に大変でして……2024年で一番大きいアップデートでしたね。

――8月に「Ikigai(生き甲斐)」アップデートが配信されました。こちらの内容についてくわしく教えてください。

Zgierski氏:
「Ikigai」は名前通り生き甲斐を実装して、『Sengoku Dynasty』に新たな命を注入するアップデートです。プレイヤーはメインキャラクターの「生きる道」として「統治者」「職人」「武士」「僧」の4種から選択して、対応するパークツリーの能力をアンロックしていくことができます。

――どれか1つの道を選んだら、異なるパークツリーの能力は獲得できないのでしょうか?

Zgierski氏:
たとえば職人の道を選ぶと職人関係のスキルセットを伸ばしやすいなど、キャラクターの個性や得意分野をイメージしてもらえれば。もちろんゲーム全体を楽しんでほしいので、パークツリーが異なる能力も手に入れられるので、職人でもいざというときは戦うこともできますし、武士になっても農業に精を出すことも可能です。

――現在パークツリーは4種存在していますが、今後増やす予定はありますか。

Zgierski氏:
現状では「統治者」「職人」「武士」「僧」の4つから増やす予定がありませんが、たとえば武士が、最終的に剣士や武術家の道に進むなど、パークツリー内で枝分かれさせることを考えています。パークツリーのほかにダイナスティという育成要素が存在しており、一定以上のダイナスティレベルに到達すると、新たな制作物のレシピを入手できたり、マルチプレイに参加できたりするようになります。こちらは一般的なプレイヤーランクのようなものを想像していただければ良いかと。

――「Ikigai」アップデートでは、スタミナを管理しつつ相手の体勢を崩して戦ういわゆる「ソウルライク」を彷彿とさせるバトルが導入されました。こちらの理由について教えてください。

Zgierski氏:
まず新たなバトルシステムを導入した理由として、プレイヤーから戦国時代が舞台にもかかわらずバトルが味気ないと物足りないというリクエストが多く寄せられたためです。アクションバトルと言っても多くのシステムがありますが、「ソウルライク」的なバトルにした理由は、「ソウルライク」は難易度の幅があるとはいえ操作は万人がマスターしやすいバトルだと考えていること。

そして本作はバトル特化のタイトルではなく、あくまでシミュレーションゲームの一要素として戦闘が存在しているので、あまりにスタイリッシュでカッコいいアクションだとゲームに馴染まないと考えたからです。そのため“バトルもできる”という立ち位置で実装しており、バトルをせずにストーリーを進めることも可能です。

――11月に早期アクセス期間を終了して正式リリースされますが、その際のアップデート等の方向性について教えていただけたらと思います。

Zgierski氏:
バージョン1.0で追加されるメインはマップの征服要素です。今までに存在していたマップでは、どの地域を誰が治めているかは決めていませんでしたが、バトルで周りの城や土地を征服して今までとは異なるエリアをアンロックできるようになります。そして現在のバトルは山賊と戦うことが主ですが、相手の城を征服する際に侍が登場するなど、新たにバトル用の敵も実装予定です。

先ほどバトルを回避することもできるといいましたが、そちらでは橋を建設するクエストをこなし他国と貿易関係を結ぶことで交流を深めて、仲間として相手の国に足を運べるようになるなど、プレイヤーによってさまざまな遊び方ができるように設計しています。そしてキャラクターエディットを導入して、現在主人公はデフォルトで男性になっていますが女性も選択できるようになることと、待望の日本語ボイスが実装される予定です。


ゲームコンセプトは豊臣秀吉のエピソードがモチーフ

――最近日本の戦国時代が舞台のタイトルも増えてきましたが、時代考証やコンセプト作りで大切にしてることを教えてください。

Zgierski氏:
『Sengoku Dynasty』のゲームコンセプトは、豊臣秀吉のエピソードがもとになっているんです。海外で豊臣秀吉というと戦国時代の有名な人物というイメージが強かったのですが、制作するにあたって日本の歴史を勉強し、彼は農民から徐々に出世して天下人になったと知りました。そのドラマティックな人生をゲームで表現したのが本作になります。

――たしかに難民から徐々に成長していく主人公の設定は、豊臣秀吉を彷彿とさせますね。

Zgierski氏:
特に影響を受けたのが歴史学者「網野善彦」氏ですね。世界から見たイメージとして特に昔の日本は農業中心だったと思われがちなのですが、それだけではない目には見えにくい戦国時代の豊かな背景を氏の著書で知ってインスパイアされました。

――日本の戦国時代が舞台ということで、気になっている日本人プレイヤーも多いと思いますが、その人たちにリーチさせるような施策はどういったことを考えていますか。

Zgierski氏:
現在はSteamのみでプレイ可能ですが、2025年にPS5とXbox Series X|S向けにリリース予定なので、ゲームへアクセスしやすくなると思います。

――コンソール版の予定もあるのですね。ちなみに『Sengoku Dynasty』プレイヤーの日本人比率は分かりますか。

Zgierski氏:
10パーセントほどです。

――10パーセントですか。もっと日本人に届いてほしいという思いはありますか?

Zgierski氏:
もともと『Sengoku Dynasty』は日本の文化に惹かれてリスペクトを捧げながら制作しているので、日本以外のプレイヤーにも当然プレイしていただきたいですが、実際にゲームと同じ歴史の背景で生きていた日本人の方に遊んでいただき、レビューしてくださるとうれしいですね。


――今まで日本からの反応で印象深かったものはありますか。

Zgierski氏:
本作は加賀の一向一揆から影響を受け、能登半島をモチーフにしているのですが、ある日本人プレイヤーが長文でレビューを書いてくださった内容が印象に残っています。その方は石川県在住で2024年1月1日に発生した「能登半島地震」で家がつぶれてしまったのですが、避難中に『Sengoku Dynasty』をプレイしてくださっていました。そして実際に自分が住んでいた地域の近くに村を作り、発展していく過程で徐々に自分の心が癒され、このゲームに救われたとコメントをいただいて、思わずゲームを作って良かったと感動しました。

――それは感動的なエピソードですね。

Zgierski氏:
もちろんプレイヤーの日本人比率も気にしていますが、それよりも本作をプレイして感じたエピソードをぜひレビューやコメントで残していただけるとうれしいです。

――最後に読者に一言お願いします。

Zgierski氏:
まずはTGS2024にあわせて発表させていただいた11月の正式リリースをお待ちください。そして早期アクセスで遊ばれた方には、多くの改善点を実装に以前とは大きく変化しているのでもう1度プレイしてほしいとお伝えしたいのと、気になってるけどまだ遊んだことない方はぜひ正式リリースのタイミングでプレイしてみてください。そして今までの日本人プレイヤーの皆さまからのフィードバックやレビューは非常に大切にさせていただいていますので、改めてこの場でお礼を言わせてください。

――ありがとうございました。

『Sengoku Dynasty』は、PC(Steam)向けに早期アクセス配信中で、2024年11月に正式リリース予定。2025年にはPS5とXbox Series X|S向けにも展開予定だ。

[聞き手・執筆・編集:Yuuki Inoue]

Yuuki Inoue
Yuuki Inoue

RPGとADVが好きなフリーのゲームライター。同人ノベルゲームは昔から追っているのでそこそこ詳しい。面白ければジャンル問わずなんでもプレイするのが信条。

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