“やや不評”レースシム『Project Motor Racing』、アップデート2.0で評価がほんのり上向きに。開発者にローンチ不評の原因を訊いたら、懺悔と反省、そして改善への展望が返ってきた
レースシム『Project Motor Racing』のSteam評価が“やや不評”なのはなぜなのか、これからどうするのか。開発者に訊いてきた。

『Project Motor Racing』は 2025年11月25日にPC(Steam/Epic Gamesストア/Microsoft Store)/PS5/Xbox Series X|S向けに発売されたレーシングシミュレーター。『Project CARS』の開発で知られるIan Bell氏がCEOを務めるStraight4 Studiosが開発し、日本での販売はセガが担当している。
Ian Bell氏の新作ということもあり、レーシングシミュファンの注目が高かった本作。プロ・アマを含む約200名のドライバーを開発チームに迎えてフィードバックを得ていたほか、日本ではレーシングゲームを多く製作したセガが販売を担当するなど多くの期待を背負った作品だった(関連記事)。本稿執筆時点でSteamユーザーレビューは「やや不評」のステータスとなっている。ローンチ時にはパフォーマンスや挙動を中心に多くの批判が寄せられ、アップデートを重ねた現在でも多くの課題に直面している。
2026年4月1日には、大幅改修パッチとなる「アップデート2.0」が公開。QOL改善とともに車の挙動やプレイヤーへのフィードバックなど、多くの点にテコ入れが入った。日本車が登場するDLCである「Project Motor Racing: Japanese GT500 Pack」も公開され、コンテンツ追加にも意欲的だ。また、4月8日からは価格改定が実施され、7590円(税込)であった価格が4400円(税込)まで引き下げられている(関連記事)。
このたび本誌ではStraight4 Studiosのコミュニティ&マーケティング責任者であるAlex Martini氏にメールインタビューをする機会に恵まれた。本作のローンチが不評であった原因やその分析、今後いかにユーザーの信頼を回復していくのか、さまざまなことを率直に訊かせていただいた。

──『Project Motor Racing』のレビューは「賛否両論」で、ネガティブな評価を多く受けています。その原因はどういったものとお考えでしょうか。
Alex Martini(以下、Martini)氏:
プレビュー版と製品版で差が生まれた大きな原因は、開発終盤におこなった変更にあります。アクセシビリティ向上やハードウェア保護を目的とした調整をしたのですが、結果として運転の快適さを損なう形になってしまいました。それがローンチ時にプレイヤーが訴えていたフォースフィードバック(※)の問題に繋がりました。
※機器の振動やハンドルの重みなどでプレイヤーに与えられるフィードバックのこと。以下、「FFB」。
また、開発が長期化する中で、私たちはだんだんと開発者目線に寄っていってしまいました。狭い世界の中で開発を続け、進捗や目標の達成ばかりに目が向き、外側にいるプレイヤーの視点を蔑ろにしてしまっていたんです。開発チームとプレイヤーのズレについても認識していましたが、「後からなんとか調整できる」と思い込んで軽視してしまいました。本来、こうした調整に関する決断を正確にくだすのが私たちの仕事です。今回はその責任を果たすことができませんでした。
──特に車両のハンドリングについては、ユーザーから多くの批判が寄せられています。どのような部分が問題だと認識されていますか?
Martini氏:
最初に述べておきたいのは、車が「滑る」という点に多くの批判が寄せられていたのですが、これ自体は私たちの意図している挙動だということです。グリップの限界まで攻めたときに車が向きを変えたりスライドしたりする点は正常です。ローンチ後に物理エンジン自体も改めて見直しましたが、土台そのものに大きな変更は必要ありませんでした。
一番の問題は挙動そのものではなく、その挙動がどのようにドライバーへの伝わるかだったと考えています。特にタイヤモデルの挙動には段階的な変化が乏しく、グリップの限界やグリップを失う直前の予兆が分かりづらい状態になっていました。そうなると、車の動きを把握しながらハンドリングするというよりも「気づいたら急にバランスを崩してしまう」といったプレイ感覚になってしまいます。
この問題は、FFBにも大きく関わっています。『Project Motor Racing』では、より実車に近づけるという信念のもと、ステアリングラックを通して情報を伝えるアプローチを取っています。ですが、本物の車を運転したときに身体に伝わる情報すべてを再現することはできないため、ハンドルから得られる情報だけで車の状態が分かるようにする必要があります。
ローンチ段階ではタイヤモデルとFFBの調整が複雑で、プレイヤーが必要とする情報が十分に伝わっていませんでした。さらに、全体設定と車両ごとの個別設定が分かれていたことで、調整項目があまりに多く、理解が困難な状態にもなっていました。アップデート2.0では、この点を複数のレイヤーで改善しています。
──具体的にどういったアップデートなのでしょうか。
Martini氏:
まず、タイヤモデルを大きく見直しました。これまでGT3やGT4で進めてきた改善をさらに発展させ、GT、N-GT、Porsche 992 Cup、Mazda MX-5、そして「Japanese GT500 Pack」のDLC車両に反映しました。タイヤ管理の難易度はそのままに、グリップが限界に近づく過程を分かりやすく、そして車の状態が自然にプレイヤーに伝わることを目指しました。
次に、FFBの基本設定を見直しています。ステアリングラックベースのFFBを引き継ぎつつも、細かい調整なしでも直感的な挙動が得られるようになりました。さらに、FFB設定を説明するツールチップの追加や、車両ごとの設定にアクセスしやすくなるなどのユーザビリティも向上させました。
ステアリングアシストのような補助機能も追加しましたが、いずれも根底にあるのは「簡単にする」のではなく「プレイヤーに与える情報を増やす」というアプローチです。実車に近い仕組みを採用していても、それがプレイヤーに伝わらなければ意味がありません。これこそが『Project Motor Racing』らしさを保ちながら、より多くのプレイヤーに楽しんでもらうための正しい方向性だと考えています。
それ以外にも、衝突の表現についても改善を進めています。アップデートを通して壁や他車との接触時の挙動は大きく改善しましたが、まだ十分とは言えず、今後も継続して取り組んでいきます。

──本作の開発段階では実際のプロレーサーがフィードバックを与え、開発チームが熱意を持って受け止めていました。そうしたインプットは今後のアップデートにも活かされるのでしょうか。
Martini氏:
開発中に「ファクトリードライバープログラム」を通じて約200名のシムレーサーやプロドライバーから貴重な意見をもらっていましたが、結論から言うとその内容をうまく活かしきれてはいませんでした。
ひとつ目の原因はフィードバックの偏りです。マシンや挙動に多少問題があっても、上手いドライバーであればスキルでカバーしつつ走行できてしまうのです。その結果、フィードバックを得てもハンドリングの問題が表面化しづらく、調整の方向性が間違っていると気付くことができませんでした。
もうひとつの問題点が、開発体制そのものの問題です。以前は大規模なテスト体制を取っていたため情報が分散してしまい、フィードバックから問題点を洗い出すのが難しくなっていました。そのため、現在は少人数で密に連携する体制へと移行し、フィードバックをより正確に素早く反映できるようになりました。その結果、開発のスピードも上がり、もらった意見と実際の調整のズレも大きく減りました。
さらに、コミュニティの声を毎週整理・分析することでコミュニティ全体の声を拾い上げ、開発の優先順位に反映させる仕組みも取り入れました。引き続き外部のテストドライバーや専門家とも連携は続けていて、より実効性のある体制を整えています。
一番重要なことは至ってシンプルでした。コミュニティの声にしっかり耳を傾けること、そして、そこで得たものをきちんと形にしていくこと。これまでのアップデートではこの2つを強く意識しており、今後の改善にも活かしていきます。また、『Project Motor Racing』以降の作品はリリース判断のプロセスを見直し、外部テストを強化し、開発終盤の変更をより厳重に管理していく所存です。
──ローンチの結果は厳しいものとなりましたが、アップデートを肯定的に捉え、まだ本作に希望を持っているユーザーがいます。今後、どのようにしてユーザーの信頼を再び得ようと考えているか教えてください。
Martini氏:
正直に申し上げて、本作はローンチの出来が悪く、プレイヤーの期待に応えられるものではありませんでした。これまでもお詫びはしてきましたが、何より大切なことは、問題をきちんと修正することです。
初期の評価に影響した要因はバグ、およびハンドリングに関する部分ですが、原因は単純なものではありません。いくつもの判断が重なった結果、期待外れのローンチにつながってしまいました。物理エンジンの土台自体に問題はありませんでしたが、新しい技術で試行錯誤していくうち、正しい方向に舵を取り直すことに失敗したのです。
7回のアップデートを経て、『Project Motor Racing』は私たちが当初目指していた状態にかなり近づいています。4月1日に配信されたアップデート2.0で、本作は次の段階に進むと考えています。アップデート2.0はプレイフィールの基準を改めて整え直して、現状をより分かりやすく示せる内容になっています。ですが、本当に大切なのはここからです。アップデートを通して、改善意思を真摯に示していこうと考えております。

──本作を遊んだ日本のプレイヤーにお伝えしたいことはありますか。
Martini氏:
まず初めに、『Project Motor Racing』をプレイしていただきありがとうございます。日本のプレイヤーの皆さんには、『Project Motor Racing』に貴重な時間を割いていただき、心から感謝しています。なかでも早い段階から参加して率直なフィードバックを寄せてくださった皆様には、どれほどお礼を申し上げればいいか分かりません。
ローンチ時の体験がユーザーの期待に応えられなかったことを、私たちは十分すぎるほど認識しています。シミュレーションやモータースポーツ文化に強い思いを持つ皆さんにとって、大きな失望につながったことも理解しています。そうした声はスタジオ内でも重く受け止めており、その後の改善を進めるうえで重要な指針となりました。
開発メンバーはレースゲーム、およびモータースポーツの歴史に対する強い敬意と愛着を持っています。とりわけ日本では、セガなどがドライビングゲームの在り方を長年にわたって形作ってきましたし、日本のレースシーンの長い歴史の中にはリアリティと競争に対する強い想いがあります。そうした系譜は私たちにとっても大切なものであり、現代でレースシミュレーションを作るうえで常に意識していました。
そして、『Project Motor Racing』に収録されている車種からも、私たちの日本の自動車文化、そして日本が世界のモータースポーツに与える影響に多大な敬意と愛着を持っていることを理解いただけると思っています。そうした想いは開発チームとして、そしてレースカーファンとして私自身も、ローンチ時の収録車両やDLCに反映させていただきました。「Japanese GT500 Pack」のようなコンテンツを通じて、そうした想いが実際にゲーム体験として伝わることを願っています。
アップデート2.0は大きな『Project Motor Racing』にとって大きな一歩です。そして、アップデートと同じくらい重要なのは、私たちの開発の進め方が変わったこと。より規律ある体制で、より焦点を絞り、ユーザーの期待にしっかり向き合う形へと進化していくことを約束します。
改めてこれまでのご支援とご理解、そして率直なご意見に心より感謝します。皆さんの信頼に応えられるよう、これからも『Project Motor Racing』の改善を続けていきます。
──ありがとうございました。
フィードバックの反映不足やユーザーへの配慮不足、そして開発体制の問題によりローンチが不評となってしまった『Project Motor Racing』。ローンチ時のユーザーレビューには車両の挙動以外にもAIの調整不足や最適化不足を指摘する声も多く、中には「この内容で早期アクセス版じゃないのか」といった非常に厳しい意見も見られた。
しかし、4月1日に大幅改修パッチとなるアップデート2.0が配信されたおかげか、本稿執筆時点でSteamユーザーレビューの「最近のレビュー」の評価は「賛否両論」にまで回復している。Martini氏の述べた通り『Project Motor Racing』にとって大きな進歩ではあることは間違いないが、まだ本作に不満を持つプレイヤーは残っている。アップデート3.0、4.0と繰り返していくうちに本作の評価は盛り返すのだろうか。改善を積み重ね、真摯にユーザーと向き合い続ける姿勢を崩さなければその日はいつかやってくるかもしれない。
『Project Motor Racing』は、PC(Steam/Epic Gamesストア/Microsoft Store)/PS5/Xbox Series X|S向けに発売中。PS5向けにはパッケージ版も発売されている。
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