『朧村正 怪奇譚』開発者インタビュー。本作は単なるリマスターではなかった、大変身の″リニューアル版”、PC版リリースの背景なども訊く

ヴァニラウェアの開発ディレクター中西渉氏と、マーベラスのプロデューサー塩田誠氏にメールインタビューを実施。

マーベラスは『朧村正怪奇譚』をPS5/Nintendo Switch 2/Nintendo Switch/PC(Steam)向けに2027年2月4日(Steam版のみ2月5日)に発売予定だ。価格は全プラットフォーム、パッケージ版・ダウンロード版ともに税込6578円。複数の特典を同梱した限定特装版は税込8778円、デジタルデラックスエディションは税込7678円となる。

本作は2009年にWii、2013年にPS Vita向けに発売された『朧村正』の現行プラットフォーム向けのリニューアルを図ったタイトルだ。

原作の『朧村正』は『十三機兵防衛圏』『ユニコーンオーバーロード』などを代表作とするヴァニラウェアが担当。妖(あやか)しが跳梁跋扈する元禄時代の日本を舞台に、抜け忍の青年「鬼助」と、美濃国鳴神藩の姫君「百姫」が、妖刀をめぐる因縁と戦いに巻き込まれていく物語を描く、横スクロール形式の”絢爛絵巻和風”アクションRPGである。

基本的なゲームの作りはWii、PS Vitaの原作に準拠しつつ、キャラクターや背景といったグラフィック全般は高解像度化。それだけに留まらず、ゲームシステムの改良からマップ構造の刷新、新要素の追加なども図られており、単純なHDリマスターとも、リメイクとも言いがたい作りが大きな特徴となっている。また、PS Vita版のDLCで追加された4名のキャラクターのエピソード「元禄怪奇譚」もあらかじめ収録。そのPS Vita版をベースにした純粋なHDリマスター版も「クラシックモード」として用意されている。

今回、弊誌では先行プレイ(関連記事)と同時に制作チームへのメールインタビューの機会を得られた。本作の制作経緯、ゲームシステムの改良やマップ構造の一新を図った狙い、ゲームバランスに関する細かな変更点から、ヴァニラウェア代表の神谷盛治氏から新たに提案されたアイディアにまつわるエピソードなどを伺っている。回答者は以下2名となる。

ヴァニラウェア有限会社 開発ディレクター 中西渉氏
株式会社マーベラス プロデューサー 塩田誠氏

――本作の始まりについてお伺いします。前回のPS Vita版が出たのは13年前の2013年でしたが、なぜ、いまこのタイミングに現代のプラットフォーム向けの『朧村正』を制作するに至ったのでしょうか。

塩田誠氏(以下、塩田氏):
マーベラス内部で「『朧村正』を現行機で楽しめるようにしたい」という声は常にありました。私もそのひとりです。ヴァニラウェアさんとはこれまで何度かお話をしてきたのですが、今回、両社のタイミングが合ったので実現することができました。

制作体制としましては、ヴァニラウェアさんは開発、マーベラスはプロデュースやローカライズ、各地域での販売などを担当となっています。また、ゲームシステムや追加要素の内容については基本的にヴァニラウェアさんにお任せしています。計画している開発スケジュールに対して、どこまでの要素を追加するのかを議論することはありましたが、中西さんと私は2人とも『朧村正』のファンでもあるので、結局は「入れられるだけ入れよう」に着地してしまって、それぞれの立場で苦しむことになりました。

中西渉氏(以下、中西氏):
ゲーム体験としてより深みが出たり、遊びやすくなったりすると思う要素は積極的に入れていきました。塩田さんとはスケジュールとの兼ね合いでよくお話ししましたが、こちらが入れたいと言ったものは寛大な心で許していただけることが多く、とても助かりました。きっと色々とご苦労をおかけしたと思います……。

――Wii版の頃より脚本を担当されているヴァニラウェア代表の神谷盛治さんから、今回の『朧村正怪奇譚』の制作が決まった時に何かしらリクエストが出されたりはしたのでしょうか。差し支えなければ教えていただければと思います。

中西氏:
リクエストというかたちではありませんが、各地の温泉の背景を描き分けて全16種類にするというのは神谷さんのアイデアでした。

プロジェクトが本格的に始まる前からそんなお話をされていて、気づけば背景イラストが次々と出来上がっていて驚きました(笑)。背景班もそれぞれ張り切って作ってくれたおかげで、とても見栄えのする新要素になったと思います。

それ以外については、最初に奥義の着脱などのシステム周りの構想をお話しし、あとは基本的にお任せいただいています。

――本作はリマスターのように見えて、数々の変更点や調整が加えられているというリメイクの側面を持った作りが特徴ですが、これはどのように呼ぶのが正確になるのでしょうか。私個人の印象としては「リニューアル」が本作を表するのに適切な言葉であると考えているのですが、いかがでしょうか。

塩田氏:
おっしゃる通り『朧村正怪奇譚』は単なるリマスター版ではありません。ヴァニラウェアさんの職人技とも言える技術と熱意によってキャラクターや背景はひとつずつ丁寧にレタッチされ、ゲームシステムにも大幅な変更や調整が施されています。

私はよく「リファイン」という言葉を使っているのですが、たしかに「リニューアル」が適切かもしれませんね。

――試遊を通して感じたのが、アクションのレスポンスといった操作感が原作のWii版などとほぼ一緒だったことです。ベースとなるゲームエンジンを当時から引き継いでいるのだろうかと思ったのですが、実際のゲームエンジンは当時のものが継続して活用されているのでしょうか。それともゼロから再構築されているのでしょうか。

中西氏:
ベースとなっているエンジンは当時から変わらず内製のものとなっています。とはいえ、PS Vita版から十数年経っていますので、まず現行機で動かすだけでも一苦労でした……。

内部的には使用しているツールが異なるなど、環境の違いはありますが、ソースコードはWii版当時から脈々と受け継がれてきた、いわば秘伝のタレのような貴重な(?)ものです。

――初代Nintendo Switchでもテレビモードで60fpsを実現しているなど、最適化に関しても相当な取り組みをされたことが伺えますが、実現に当たってはどのような苦労がありましたか。

中西氏:
フレームレートについてはプログラマーさんが粘り強く対応してくれました。おかげで、快適に遊んでいただけるものになったと思います。アクションの気持ちよさにも直結しますので、そこはこだわった部分になりますね。

――操作についてはジャンプが(今回試遊したPC版ですと)Aボタンで、PS Vita版を踏襲していましたが、今回は回避もRBボタンを1回押すだけで簡単に出せるようになりました。ここを変えたのは、どのような狙いからでしょうか。

中西氏:
原作当時よりもコントローラーのボタン数が増えていますので、それに合わせて操作をいくつか最適化しています。緊急回避をボタンひとつで出せるようにしたのは、その代表的な変更です。ほかにも、忍袋の道具を方向キーひとつで使えるようにするなど、より快適に遊んでいただけるよう手を入れています。

――操作周りとは対照的に大きく変更されているのがマップ構造(およびレベルデザイン)です。これはどのような意図をもって調整されたのでしょうか。ほかに今回はエリアの入り口付近までショートカットできるポイントも複数追加され、利便性の向上も図られていますが、その便利になった部分で一番大きいものはなんだと思いますか。

中西氏:
マップを設計し直すにあたっては、あまり緻密な操作を要求するマップにならないよう心がけています。全体的に構成が刷新されたため、原作をご存じの方ほど「あれ?」と気づいていただけるはずですので、そういった面でも新鮮さを感じていただけると思います。

ショートカットについては実はPS Vita版のDLC第3弾『白蛇』の際、親玉エリア内のショートカット機能を追加していました。本作ではその機能を逆輸入しつつ解放条件を緩和し、本編の2人でも使えるようにしたかたちです。

便利になった要素で一番大きいのは、やはり「駕籠かき」だと思います。原作では一方通行で使いどころが限られていましたが、本作では地図を持っている場所であれば好きな所へ移動できる、実質的なファストトラベル機能になっています。ショートカットとあわせて、移動の手間はかなり減っていると思います。

――レベルデザインの刷新により、全体のゲームテンポは原作以上に向上していそうと感じたのですが、一方でテンポよく進む代わりに百姫、鬼助のシナリオのボリュームが短く感じやすくなっているのではとの疑問が浮かびました。実際に百姫、鬼助それぞれのボリュームは原作と同等なのでしょうか。それともテンポ向上を踏まえた調整がされているのでしょうか。

中西氏:
システムやレベルデザインなど変更点は多々ありますが、実際に社内で初見のスタッフにテストプレイしてもらったところ、意外にもプレイ時間は原作と大差ありませんでした。テンポよく進む一方で、ちょっとした寄り道要素が追加されていたり、奥義や装備品などで考えることが増えたりしているためだと思います。結果的に、ボリューム感としては原作とほぼ変わらないかたちになっています。

――今回の新要素の中でも特に大きなもので奥義の自由な付け替え機能があります。この機能を追加した狙いについてお聞きしたく思います。

中西氏:
『朧村正』を現代に蘇らせるにあたり、プレイヤーの遊びの幅を広げることを目標のひとつにしていました。奥義の付け替えを追加したのもその一環です。

原作では奥義が刀に固定されていたため、108種ある奥義の多くが終盤には使われなくなるうえ、戦略の幅も限られていました。そこで、奥義を自由に組み合わせられるようにすれば、戦い方の選択肢をさらに広げられると考えて導入しました。

――奥義の付け替えは、地上と空中それぞれに3つずつセットできるようになっています。なぜ地上と空中の2つを用意されたのでしょうか。その狙いについてお聞かせください。

中西氏:
数ある奥義を戦闘で活かしたい一方で、操作が複雑にならないようにしたいと考えていました。そこで、方向+奥義ボタンというシンプルな操作はそのままに、多くの奥義を使い分けられるよう、地上と空中それぞれに3枠ずつ用意するかたちにしてみました。

地上から空中へ奥義を組み合わせたり、間に通常攻撃を挟んで霊力を補充したりと、連携の仕方はさまざまありますので、ぜひ自分だけの組み合わせを見つけてみてください。

――自由な付け替えが可能になったことで、組み合わせによってはゲームバランスに影響する強力なコンボが生まれる余地ができたのではないかと思われます。そこを踏まえて、一部の奥義に再調整を加えていたりするのでしょうか。並行して根本のゲームバランスにも見直しが図られているのか否か、差し支えなければお聞きできればと思います。

中西氏:
程度の大小はありますが、奥義には全体的に調整を加えています。ゲームバランスについても奥義の付け替えや組み合わせだけでなく、霊力関連のシステム変更などに伴って、全体的に再調整しています。

――ボス戦も付け替え機能によって、原作以上に攻めやすくなっている印象を抱きました。回避もワンボタン発動になったことで使い勝手が向上し、全体的に一方的な勝利を狙いやすくなっていそうな印象を抱いたのですが、ボスの行動パターンは原作から変えていないのでしょうか。それとも何らかの再調整が行われているのでしょうか。

中西氏:
親玉の行動パターン自体に変更はありませんが、戦闘中に敵がオーラを纏う状態を「狂化」という仕組みとして統一しました。「狂化」状態の敵から攻撃を受けた場合は、奥義発動中であっても打ち合いが発生し、霊力ゲージが削られます。

これにより、奥義の発動が完全に無敵ということではなくなり、状況によってはかえって不利になる場面も生まれます。そういった駆け引きも含めて、本作ならではの攻防を楽しんでいただけるのではないかと思います。

また、序盤の比較的動きがゆったりした親玉ですと倒しやすくなっていますが、中盤以降の動きが激しい親玉は相変わらずの歯ごたえかと思います。前述の「狂化」状態の導入や、ゲーム全体のバランス調整の結果、回避や奥義に頼るだけでは押し切れない場面もありますので、緊張感のある攻防を楽しんでいただけると思います。

――ゲームバランスについては、原作の時よりも刀が壊れにくくなっているように思いました。通常攻撃時に霊力が溜まりやすくなっているためかと思ったのですが、このような調整を加えたのはどういった狙いからでしょうか。

中西氏:
原作では奥義を使うほど刀折れのリスクが高まっていましたが、今回は奥義をより積極的に使えるようにするため、奥義による「霊力消費」と敵の攻撃による「霊力ゲージの損耗」をシステム上で分けました。

これにより刀が折れにくくなったと感じられるかもしれませんが、霊力を回復するには通常攻撃を当てる必要があるため、流儀「無双」では打ち合いによる霊力ゲージの損耗、流儀「修羅」では被弾のリスクが伴う、といったかたちで調整しています。

――奥義に関しては、色んな組み合わせが試せるようになったことで「本編の最速クリアを目指せるやり込みの底も深まっているのでは?」と推測しています。実際にそのようなやり込みも原作以上に取り組みやすくなっているのでしょうか。

中西氏:
それは個人的にもとても期待していることですね。原作より街道での行動範囲の自由度も増していますので、工夫次第ではこちらが全く想定していなかった攻略法も生まれるのではないかと思います。

――ストーリーに関しての質問ですが、基本的に百姫、鬼助のストーリーはWii版の頃から特に変更はないのでしょうか。また、PS Vita版でDLCとして追加されたエピソード(元禄怪奇譚)も本作での実装に伴って、何らかの変更や拡充は図られているのでしょうか。それとも原作と同等なのでしょうか。

中西氏:
ストーリーに関しては原作のままです。ここはもう完成されたものですので、手を入れずそのままにしています。逆に言えば、カットなどされた箇所もありません。

『元禄怪奇譚』のストーリーについても原作のままとなります。短編集という位置づけ自体は変わっていませんが、強化可能な「符」の追加など、原作よりも遊びの幅は少し広がっています。また、原作では無かったチュートリアルも新たに追加していますので、『元禄怪奇譚』から遊び始めても楽しんでいただけると思います。

――本作にはPS Vita版ベースの「クラシックモード」も収録されていますが、このモードを導入された狙いは何でしょうか。同様の試みについては、ヴァニラウェアさんが過去に手がけた『オーディンスフィア レイヴスラシル』にもありましたが、その反響が背景にもあったのでしょうか。

中西氏:
今回は、高画質化した原作を永久保存したいという目的もありました。原作を遊べる環境を用意するのが年々難しくなっていくなか、現代の環境向けに本作を制作する機会に恵まれましたので、原作をそのままいつでも遊べるようにクラシックモードを搭載したかたちです。そのうえで、新しいモードの方は気兼ねなくゲームを再構築しています。

クラシックモードに関しては『オーディンスフィア レイヴスラシル』でも搭載しましたが、今回は発表の際に想像以上に大きな反響をいただき、驚きました。

――本作はヴァニラウェアさんの作品では初めてSteamのPC版が展開されるタイトルになります。PC版の開発自体がおそらく、今回が初挑戦だったかと思われますが、実際に取り組んでみてどんな苦労がありましたか? ちなみにどちらの会社さんが提案され、その後実現する運びとなったのでしょうか。

塩田氏:
PCプラットフォームへの展開は、今回のプロジェクトの最初から決めていました。原作から十数年が経ち、ヴァニラウェアさんが本気でリニューアルするわけですから、ひとりでも多くの方に『朧村正怪奇譚』を届けたいと考え、PCプラットフォームへの展開をマーベラスから提案しました。

中西氏:
PC版への対応自体が弊社では初の試みでしたので、様々な課題がありました。操作ひとつとっても、キーボードとマウスでも快適に遊べるようにする必要があるなど、考えることも対応する箇所も膨大で、全てが手探りでした。その甲斐あって、なかなか遊びやすいかたちになったのではないかと思います。

――PS Vita版、Wii版の経験があるプレイヤーの皆さんに注目してほしい部分、メッセージなどがありましたらお願いします。

塩田氏:
9月に公開したトレイラー「朧流遊戯伝」には、原作をやり込んだ方に向けた挑戦的なヒントをいくつか仕込んでいたのですが、そのほとんどが公開直後に気づかれてしまい驚きました。

かつてWiiの開発で第3の流儀(難易度)「死狂」を最後の一週間でねじ込んできたヴァニラウェアさんなので、きっとまだ何か隠しているような気がしてなりません。私は立場上、気が気ではありませんが、ここまで来たら皆さんと一緒に楽しみたいと思います。

中西氏:
WiiやPS Vitaの頃から応援してくださっている皆さんには本当に感謝しています。本作では、奥義の着脱による戦闘の変化に加え、街道での冒険の自由度も大きく増していますので、原作を遊び込んでいただいた方にこそ新鮮に感じていただけると思います。原作を知る方ほど気づける細かな変化もたくさんありますので、ぜひ探してみてください。

塩田さんにはだいぶハードルを上げていただきましたが(笑)、それを飛び越えられるよう最後までしっかり仕上げていきたいと思います。皆様も発売を楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。

――ありがとうございました。

『朧村正怪奇譚』は、PS5/Nintendo Switch 2/Nintendo Switch/PC(Steam)向けに2027年2月4日(Steam版のみ2月5日)発売予定だ。

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2D&3Dアクションと手ごわいストラテジーが大好物の人。積みゲーが一向に減っていかない呪いに悩まされています。

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