『龍が如く8外伝』では「真島なら許される限界」まで後先考えずはっちゃけた。真島担当声優も交えて訊いた、開発者インタビュー
セガは2月21日に、『龍が如く』シリーズ最新作『龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii』(以下、8外伝)を発売する。対応プラットフォームは、PC(Steam/Microsoft Store)/PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One。
龍が如くスタジオは本作発売に向けて、全国6都市を巡るイベント「真島のマジ祭り」を実施。弊誌は同イベントの大阪会場に参加し、キャスト・開発陣に話を訊いた。今回は『龍が如く』シリーズを率いる制作総指揮の横山昌義氏・シリーズチーフプロデューサー阪本寛之氏・プロデューサーの堀井亮佑氏ら開発陣と、本作の主役となる真島吾朗役の宇垣秀成氏・新キャラのジェイソン・リッチ役の松田賢二氏らキャストふたりにインタビュー。とにかく走り続けた2024年の感触・2025年の抱負や、本作での真島の描かれ方について語ってもらった。
「真島のマジ祭り」は、北は札幌、南は福岡まで6都市を巡る全国ツアーイベントだ。昨年12月1日の札幌会場から始まり、今年の1月25日には東京会場でフィナーレとなる。『8外伝』グッズの先行販売や試遊、等身大真島吾朗フィギュアを据えたフォトスポット、本作出演キャストとのフォトセッションおよび開発陣との交流会なども実施。真島吾朗好きはもちろん、『龍が如く』シリーズファンが詰めかけるイベントとなっている。
会場スペースにはファンがみっしりと集まり、賑いを見せていた。また、印象的だったのはファンたちの表情だ。等身大真島吾朗フィギュアの周辺ではひっきりなしに写真撮影が行われ、まるでテーマパークに来たかのような笑顔を見せるファンも見られた。ファン層としても、老若男女幅広く多彩に集まっていた印象だ。
会場は商業施設であり、一般客も通行。そうして通りがかる人々も興味津々で、特にイベントに来たわけでもなく「真島の兄さんやん!」と声をあげる人も見られ、『龍が如く』シリーズの浸透度がうかがえた。やがてフォトセッションのために宇垣秀成氏・松田賢二氏の両名がスペースを訪れると会場は大興奮。開発陣も同様に大人気で、ファンたちは目を輝かせて過ごしていた。そんなフォトセッションの後、キャスト陣・開発陣に『8外伝』にまつわる話を訊けた。
『8外伝』はいろいろな真島三昧
──よろしくお願いいたします。真島はとにかく人生をエンジョイしている人ですが、過去作では「マジな真島」もしばしば顔を出しました。『8外伝』では「マジ真島」も堪能できますか。
横山昌義(以下、横山)氏:
海賊になるまでは結構「マジ」ですよ、記憶もないですし。序盤は割とシリアスというか、あんまりはっちゃけている感じではないですね。
宇垣秀成(以下、宇垣)氏:
海賊の姿になってもはっちゃけていないところはいっぱいあります。
堀井亮佑(以下、堀井)氏:
海賊になるのがゴールではないので、そこを経た上でちゃんと目的がいくつかあって、そこに向かう熱い展開があったりなど、仲間との絆といった部分も描いています。メインは特におちゃらけていないというか、男らしいドラマになっています。ほかの寄り道の部分では当然はっちゃけた部分もありますが、全体的にはすごく一本筋の通った、熱い男の話になっていると思います。
──真島は以前から作品のリアリティラインを下げるような人間離れした動きを見せていました。今回は邪神まで召喚する暴れっぷりですが、ここまで好き放題させると「次どうしよう」と不安になったりしませんか。
横山氏:
もう次のことは考えてないですからね。今日もファンの方から「真島が主人公になってくれてすごく嬉しいです」と言われて「今回が最後だと思いますんで、楽しんでください」とお伝えしているんで。
一同:
(笑)
宇垣氏:
今のところはピー音を入れてください!(笑)
横山氏:
本当に、基本的には後先のことはあまり考えてないので。「ここまでインフレしたらどうしよう」とかは考えてないですね。
──それでは過去作含め、リアリティと演出のバランスについてはあまり意識していない……?
堀井氏:いえ、考えてはいますよ。でも『8外伝』では海賊といったモチーフなどもあるので、それで地味なことをやっていたら逆につまらないじゃないですか。ドラマ的な部分でちゃんとシリアスなところは盛り込みつつも、ゲームとしてはやはりもうちょっとはっちゃけています。
「桐生だとできない、真島だと許されるユニークさ」があるんですけど、そうした部分をゲームに盛り込まないと真島を主人公にした意味が薄くなってしまうので。なので桐生よりはリアリティラインをちょっと下げて、バラエティ豊かなアクションが楽しめるようにしています。
──真島の持ち味を活かすゲームプレイにしている。
堀井氏:
そうですね。
阪本寛之(以下、阪本)氏:
それから、『8外伝』は『龍が如く7外伝 名を消した男』に続くアクション作品になります。『龍が如く8』はターン制RPGだったので、『7外伝』を受けた『8外伝』はどうアクションを進化させて、かつ真島のキャラクターも活かせるような内容にしようかと考えた結果、さまざまな要素を足しました。結果としてアクションゲームとしてシリーズで一番爽快で、やり込み要素もある、戦っていてすごく面白い仕上がりになったと思います。
シリーズチーフプロデューサーの阪本寛之氏
──真島は『8外伝』ではジャンプができますが、コンボの組み合わせなど含め、一体どのくらい跳べるのでしょう。
堀井氏:高さとしては、試遊版などで見られるくらいの高さが基本にはなります。 ジャンプしている間にブーメランを投げられたりだとか、「ある要素をこう組み合わせるとどうなる」といった遊びもあるので、最終的には深みもある、すごく良い仕上がりになったかと思います。
真島が主役の『8外伝』だからこその挑戦
──本作の開発にあたり、一番苦心したり、工夫が必要だったポイントはなんでしょうか。
堀井氏:
『8外伝』は真島が主人公なので、さきほど伝えたような桐生とは違う「真島らしさ」をいかに出すか。さらに海賊というモチーフもあるので海賊らしさ・真島らしさ・『龍が如く』らしさのバランスをいい具合に取りたかったので、その部分は苦労したと思います。
あとはやはり海賊なので海ですね。海戦など海周りの要素がいろいろ盛り込まれているんですが、陸のゲームばかり作っている僕らにとって初トライだったのでかなり難儀はしました。でも最終的には、納得のいく良いチャレンジになったなと思います。
──堀井さんは『龍が如く』シリーズに長らく携わっていますが、『8外伝』で初めてプロデューサーを務められます。以前とは開発への関わり方の変化もありましたか?
堀井氏:
今回も引き続きチーフディレクターを兼ねてやっているので、タスクのバランスとしてはちょっと変わっている部分はありつつ、大きくガラッと変わったとは感じてはいないです。ただ、『8外伝』って結構突飛で挑戦的なタイトルじゃないですか。その作品がどうやったらユーザーにも受け入れられやすいかな、といったところは今まで以上に真剣に作ったので、そういう部分では意識が変わったのかなと思います。
──コラボグッズなどを見ていると、真島が「マスコットキャラ化」している傾向があります。『8外伝』ゲーム内でもそのような扱われ方をしますか?
『8外伝』
阪本氏:
しますよ。グッズも、ゲーム内に出てくるものや実際に販売されるものがありますし。『8』でもいろんなハワイの企業さんとコラボをしたのですが、もう一段盛り上がりそうなかたちでコラボしているので、ゲームをプレイしてもらうとそういった部分も楽しめると思います。
たとえばビールを真島がゲーム内で作るんですよ、そのビールがゲーム内でゆくゆく……といった要素もあって、実在するものとリンクしたような施策もしています。
堀井氏:
「単にキャラグッズを入れた」というだけでは安易でつまらないので、リアルの世界とゲーム内をうまく繋げている部分は『8外伝』の魅力だと思います。ゲームの世界観の上でより良く、深くするために、一線はきちんと引きつつそうした要素を入れているかたちです。
素顔が見えるパーソナルトークへ
──皆さんは『龍が如く』シリーズ登場キャラのうち、ひとりと一緒にハワイを旅行するなら、誰がいいですか。
一同:
(どよめく)
横山氏:
えっ、紗栄子とかじゃないの?男性とは行きたくないし……。でも『龍が如く』シリーズに出てくる女性陣はみんな行ったら行ったで旅先で喧嘩をしそうだから……行って楽しそうな人ってことでしょ?宇垣さんの真島は?
宇垣氏:
いやっ、だって今回兄弟がこんなふうになってるから、本当は「冴島」って言わなきゃいけないんだろうけど、でも行きたくないもんね!
一同:
(笑)
宇垣氏:
いろんなこと考えて頭が回ってないけど……ほらあの子、目の見えなかった。
横山氏:
マコト?
宇垣氏:
マコト!女性と行くなら誰かと考えたんだけど、でもマコトと行っても辛いことが多そうで、黙ってなきゃいけないから……(*)。うーん、難しいなあ。
*真島吾朗が出会った、盲目の女性。真島はマコトに対して正体を隠している。
横山氏:でも『龍が如く』なんて本当に、日常生活を普通に送れない人たちの話だから……普通の旅行とかは一番向いてないんですよ。
堀井氏:
たしかに(笑)
宇垣氏:
まあ「ミナト区系女子(*)」を連れていきますかね。
*『8外伝』ゲーム内に登場する、オーディションで選ばれた女性たち
横山氏:
それはそれで絶対大変だよ!(笑)
堀井氏:
マサル(*)はどうですかね?
*『8外伝』に登場する、ロバートの秋山竜次氏演じる新キャラ
宇垣氏:
マサルは面白いかもしんないね!……あ、でも今ケンちゃんがいるし「行きたい相手はジェイソン」って言わなきゃいけなかった。ごめんね!ケンちゃんごめんごめん。
松田氏:
いえいえ(笑)
宇垣氏:
ジェイソンは誰と行きたいですか?
松田氏:僕はいま『龍が如く7 光と闇の行方』をやっているんで、会社経営でいろいろやってくれた鎌滝えり(改名し、現在は鎌滝恵利)ちゃんが……。ちょっと一歩引いた感じがいいですね、僕は。
横山氏:
たしかに鎌滝はいいかもしれない!鎌滝えりはオーディションで『7』に出演した実在の女優なんですけど、すげー面白い人ですよ。
宇垣氏:
あと秋山さんのところで秘書していた、花ちゃんもいいかもしれないな。あの人畜無害な感じ、花ちゃんも可愛いと思います。
──宇垣さん、松田さん、「真島のマジ祭り」大阪会場の雰囲気はいかがでしたか。
宇垣氏:
これは毎回言っているんですけど、本当にあったかいんですよ、皆さんが。こんな極道の危なそうなゲームなのに、打って変わってファンの皆さんは上品で、抱きついたり飛びついたりといったことをする人もいませんし。キッチリしてるところが本当に素晴らしいと思います。どこの地方に行っても僕らのことをあたたかく迎えてくれるので、「いい人たちだな」といつも感謝してます。
松田氏:
僕は2024年の 6 月ごろに、龍が如くスタジオのすごい人たちと初めてお会いして、その 3 か月後ぐらいにキャストの方々とお会いして、その 3 か月後ほどになるちょうど今まさに、『龍が如く』ファンの人たちとはじめましてでお会いして。
年末っていうこともありますし、僕はファンに「初めまして!『龍が如く』新ファミリーの松田賢二です!」という気持ちでお会いさせてもらっています。
──ありがとうございます。おふたりにとって2024年はどんな一年でしたか、2025年の抱負はありますか。
宇垣氏:
僕は本当に『龍が如く』のおかげですごく良い年を過ごせました。ここ何年でもなかったくらい良い一年で締めくくれていると思います。『8外伝』の発売が 2 月なので、そのまま引き続き2025年になだれ込めるすごく良い年だなと。
そして真島吾朗は2024年が還暦だったんですけど、僕はその前年還暦だったんです。そういう意味では、真島と同時に僕も還暦のお祝いをしてもらっているぐらいに超ハッピーな、「人生が変わるんじゃないか」ぐらいの一年で。何十年ぶりで小学校のクラス会があって、その時に「何やってんの」という話題で自己紹介して、『龍が如く』というゲームにも出ていると伝えて。
その子どもたちは『龍が如く』を知っているでしょうけども、同級生の大人たちはやらないので伝わらなくて、ほかの出演作品の話をしたり。でもその後にRGGサミットがネットニュースになって、それが広まった時に先生から僕にグループ LINE で「ウガロー(宇垣氏の小学校時代の愛称)すごいね!先生は本当に喜んでいます!」なんて言われて。するとほかの奴らも「すごいんだよ!」と言い始めて……。
ありがたいことなんですけど、ハリウッドのレッドカーペットに現れたくらい大騒ぎになっちゃって。母に伝えたら大喜びしてくれて、友達なんかも「60になってもこういうことが起きるというのは、私達も励みになります」と言ってくれました。
2025年もそういう風になれたらいいなと思います。本当に良い年でした。
松田氏:
僕はさっきの質問でほぼ答えちゃったんですけど(笑)、『龍が如く』に携わって、「はじめまして」と「感謝」の2024年下半期でした。さっきの宇垣さんの話じゃないですけど、僕もちょっとだけいつもよりモテて……。感謝しまくりの下半期でした。
宇垣氏:
それは「俺はいつもモテるから」って言いたかったの?
松田氏:
いやいや全然モテない!(笑)『龍が如く』のおかげでちょっとモテたので……嬉しいです。
宇垣氏:
よかったですね!
松田氏:
2025年の抱負については、僕がいま『7』を遊んでナンバさんに抱いているような愛情を、皆さんもジェイソンにもってくれたらな、という思いです。
──ありがとうございます。開発陣の皆さんにとって2024年はどんな一年でしたか。
横山氏:
忙しい一年でしたね。
阪本氏:
本当に駆け足というか、もうダッシュレベルでなんかあっという間に。
横山氏:
2025年はもっと忙しい一年ですよ。だからまあ、それしかないかな。
──2025年はどういった展望がありますか。
横山氏:
展望はないっすよ。
一同:
(笑)
横山氏:
「2024年はどうでした?」っていったら「忙しい一年でした」と、「2025年はどうですか?」っていったら「もっと忙しい一年になりそうです」というだけなので。
でも中身としては、喋ってない未来のことは沢山ありますからね。もう『8外伝』のことは、僕らにとっては「現在のこと」じゃないんですよね。作り手ってそうじゃないですか。なので、「2025年」のことになると「はい、頑張ります」としか言えないかな。あまり多くを語るつもりはないですね。
──個人的な抱負はいかがでしょう。
堀井氏:
あります、『8外伝』は2025年発売になりますから。「海賊モノ」っていうのは挑戦的だったと思うのですが、良い経験も積めましたし、想像以上に面白い作品ができて、充実した一年だったと思います。あとはやっぱり作品が受け入れてもらえないとしょうがないので、2 月 21 日に発売したらひとりでも多くの方に届けたいですし、そのためにできることはやっていきたいです。今まで「『龍が如く』はあんまりね」と思っていた人にも刺さる魅力や、今まで敬遠していた人でも興味が湧くようなコンテンツを盛り込んでいるので、そういった人たちに届けたいですね。『龍が如く』というものを、もっと多くの人に愛してもらえるように頑張っていきたいなと思います。
──全員抱負がなかったらどうしようかと思いました。
堀井氏:
みんなありますよ(笑)
阪本氏:『8外伝』は発売日を迎えた後に受け入れられたかどうかの結果が出てくるので、多少時差があるんですよね。発売してから真の評価が出るのを僕らは待つだけなんですけど。その裏ではいろいろ考えたり、仕事はまだあるので、それを両立してやりながら2025年を迎えて、2月末を迎えるのかなと思います。また忙しくやって、2025年があっという間に過ぎるんだろうなっていう感じがします。
──ありがとうございました。
『龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii』は、PC(Steam/Microsoft Store)/PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One向けに2月21日発売予定だ。
[聞き手・執筆・編集・写真:Sayoko Narita]
[編集:Hideaki Fujiwara・Ayuo Kawase]