ネクソン傘下のEmbark Studiosは6月13日、チーム対戦FPS『THE FINALS』にてシーズン3を開始した。本作はPC(Steam)/PS5/Xbox Series X|S/GeForce NOW向けに、基本プレイ無料で配信中。

本作にてプレイヤーは、バーチャル世界のアリーナで繰り広げられる戦闘ゲームショーの出場者となり、さまざまなゲームモードでの対戦をおこなう。マップとなるアリーナには、実在のロケーションをモチーフにした環境も用意され、建物を丸ごと吹っ飛ばすなどできる本格的な環境破壊要素が特徴のひとつだ。

シーズン3では「リカーブボウ(弓)」や敵やオブジェクトを引き寄せられる「ウィンチクロー」などさまざまな武器・ガジェット・スキルなどが追加された。加えて日本の京都をモチーフにした新アリーナ「京都 1568年」も登場。また既存コンテンツについても、さまざまな要素が調整されている。


そんな『THE FINALS』について、弊誌は今回ストリーマーのなるぷでぃんぐ氏にインタビューを実施。同氏はこれまで『THE FINALS』を1000時間以上プレイしており、YouTubeTwitchで配信/動画投稿も精力的におこなっている、かなり本作をやり込んでいる人物だ。同氏によれば、初めて本作に触れるユーザーも、一度本作を離れてしまったプレイヤーも、シーズン3が開幕した今『THE FINALS』を遊んでみてほしいという。その理由はなぜなのか、そしてじっくり遊び込んでいる同氏にとって『THE FINALS』の魅力はどこにあるのか。さまざまな点を訊いてみた。


撃ちあいだけじゃないからこそ

――『THE FINALS』の特徴や魅力を説明していただけますか。

なるぷでぃんぐ氏:
『THE FINALS』の魅力は、フィールドを破壊できること、その破壊から生まれる戦略の創造性、この2点が両立していることだと思います。ゲームコンセプトでもある「建物を壊しながら戦える」というのは本作ならではのシステムですし、そこから生まれる戦略というのもこのゲームの魅力だと考えています。

FPSというジャンルでは、基本的に銃による撃ちあいになる場面が多く、最終的にはエイム力、いわゆる“対面力”で決着がついてしまいがちです。本作はそうした対面力だけでなく思考能力、発想能力次第でも勝ちに繋がりますし、勝ち負け以上にドラマがあって面白いです。

また僕が『THE FINALS』のプレイをはじめた当初は、「銃を撃たなくても勝てるんじゃないか」「建物を壊して、オブジェクトを埋めたらどうなるんだろう」といったことばかり考えて遊んでいました。しかもプレイしていてそれが実現可能だとわかっていきました。建物を崩したり、アイテムを使ったりして地形やオブジェクトに干渉できるという対戦FPSは珍しいですし、そうして想像力をはたらかせる瞬間の楽しさをきっかけに本作にハマりました。


――本作ならではの楽しみはどこにあるのでしょうか。

なるぷでぃんぐ氏:
まず、本作の基本ルールになる「キャッシュアウト」では、3人ずつの4チームでアリーナに登場するふたつの金庫を取りあうことになります。そして勝利条件は、「試合終了時にもっとも多くキャッシュを確保していること」です。なので相手との撃ちあいを重視する必要がなく、キャッシュの強奪を意識した戦略が好きですね。キャッシュを相手から奪うには6秒かかるのですが、試合が終わる約6秒前に触れて、終了直前に取りきれたときの快感は、このゲームでしか味わえないと思います。


――普段はどのようにプレイされているのでしょうか。

なるぷでぃんぐ氏:
基本はいわゆるランクマッチがメインです。ただ一緒にプレイするフレンドの中にはカジュアルに遊ぶプレイヤーもいるので、ランクマッチをせずに気軽に遊ぶこともあります。

カジュアルに遊ぶときには、スレッジハンマーでひたすら建物を破壊したり、ガムガム銃を使って相手を足止めして戦ったり、キャッシュアウトステーションを浮かせて、その下にジャンプパッドを設置するといった戦法もとったこともありました。とにかく思いついたことを片っ端から試すことが多いですね。ランクマッチでは勝敗がかかっていて、なかなかチャレンジできないので。

ただそこで試してみた戦術が、ランクマッチや大会での戦術に活きることもあります。たとえば先日開催されていたコミュニティ大会「GGL:THE FINALS VOL.2」では自分が参加していたチームは2位に入賞することができました。そのときに反重力キューブを使った戦術がうまくいきました。カジュアルマッチで反重力キューブの使い方を探っていたときに「キャッシュを浮かせて戦えば、キャッシュを取られる心配もなく戦闘に集中できる」と気づいたことが発端で、大会でも試してみたら、見事に刺さったという感じです(笑)

*本作コミュニティ大会「GGL:THE FINALS VOL.2」にて、なるぷでぃんぐ氏が出場したチーム「清く正しく美しく」のクリップ

大会ではトッププレイヤーの方も参加されることがあり、撃ちあいが強い人も多いです。その中で勝つには、発想から来た戦略も鍵になってくるのかなと思います。なので「こうしたら面白いんじゃないか」という発想があったら、大会やランクマッチで遊んでいない方でもクリップや戦略などをSNSに発信してもらえると凄く嬉しいですし、そうして幅広いプレイヤーが交流できる楽しさがあるのも本作の魅力だと思います。


――本作ではeスポーツや大会も見どころのひとつですが、観戦者視点で本作ならではの部分はどこにあると思いますか。

なるぷでぃんぐ氏:
大会だと撃ちあいでも印象的な場面が生まれますね。たとえば「GGL:THE FINALS VOL.1」のMÅMЁさんのプレイではジャンプパッドを使って、上空からロケットランチャーやチャージ&スラムを用いつつ建物の屋上の床を壊してエントリーをおこなっているクリップがあります。こういう風に建物の破壊を絡めた、立体的な立ち回りや撃ちあいなどは、迫力たっぷりで面白いです。真上直上から敵が降ってくるというのは、なかなか他タイトルでは見られない場面じゃないかと思います。

*「GGL:THE FINALS VOL.1」優勝者のMÅMЁ氏による、ジャンプパッドを活用したプレイ

ほかにもキャッシュの奪いあいなど、オブジェクトを巡った駆け引きも大事なので、その点も注目できるポイントかと思います。あとはビルドごとに所持できる装備の違いなどによって、強力な構成も生まれたりするんですけど、それに対して奇想天外な組み合わせで戦い、一瞬の隙をついたことで順位が逆転することもあるのも面白いところですね。

*「GGL:THE FINALS VOL.2」予選における、なるぷでぃんぐ氏のチーム「清く正しく美しく」の逆転シーン

――Embark Studiosの開発方針についてはどのように考えていますか。

なるぷでぃんぐ氏:
1週間に1度のペースでこまめに調整を入れてくれるのが嬉しいですね。強すぎる武器や、不具合があっても調整が早くてありがたいです。ベータテスト期間やシーズン1はチーターも見られましたが、その対応や対策も早かったと思います。実際シーズン2からはほとんどチーターを見なくなりました。周りのプレイヤーからも「運営が優秀」といった評価はよく聞きます。


シーズン3は“別のゲーム”級

――シーズン3ではワールドツアーが実装されましたが、感触はどうでしょうか。

なるぷでぃんぐ氏:
ワールドツアーはシーズン3のやりこみ要素のひとつかなと思っています。シーズン2のランクマッチのシステムを流用しているので、既存のプレイヤーも馴染みのあるルールだと思います。ワールドツアーでは、ランクとは異なりますが、バッジシステムがあります。ランキングも存在していますが勝利数によって決まるものではなく、プレイして獲得した総合のキャッシュ、お金の金額でランキングシステムが組まれているので、数をこなせばランキングに乗れるという面で、初心者でも経験者でも楽しめる仕様になっていますね。

ワールドツアーのバッジは上がっていくだけで、下がることはないので、負けてもランクが下がるストレスはないです。新武器や新しい戦術を試しながら遊べるのも嬉しいですね。今までランク限定だったキャッシュアウトのトーナメントルールに、幅広いプレイヤーが触れられるモードかと思います。


――新武器やスキルもさまざま追加されましたが、注目しているものはありますか。

なるぷでぃんぐ氏:
新武器に関してはいろいろ触ってみた結果、双刀がかなり面白いです。攻撃はいたってシンプルで、両手でそれぞれ剣を振るのですが、それだけではなく防御もできるんです。防御して弾いた弾が相手に当たるとダメージまで与えられます。先日フレンドと検証した限りでは、弾いた弾のダメージは減衰していないようでした。中距離くらいであればしょっちゅう弾が跳ね返ってくるので、銃を持つ相手に近づくまでに防御する駆け引きも生まれそうで、双刀ならではの立ち回りも開発できればと思っています。そのうちスナイパーライフルで撃った弾が跳ね返されて、かえってやられてしまうというようなクリップも出回るんじゃないかと楽しみにしています(笑)

ほかにもスキルに関していえば、ヘビービルドにウィンチクローという、敵やオブジェクトを掴んで引き寄せるスキルが追加されました。今はこれが大好きで、シーズン3が始まって以来一番使い込んでいます。というのも、シーズン2までは中距離の撃ちあいが多く、近接武器やショットガンなどが輝ける、短射程での戦いが生まれづらかったんです。今ではウィンチクローによって無理やり引き寄せて、一方的に攻撃ができるようになりました。今まで注目されにくかった近距離武器が使いやすくなったように感じますね。

*ウィンチクローと近距離武器SA1216を組み合わせて活用したクリップ

さらにウィンチクローはオブジェクトも引き寄せるので、キャッシュが絡んだ戦略にも活かせそうです。お互いのウィンチクローでキャッシュを引っ張りあう、といったような、面白い場面も見られそうです。キャッシュ強奪の阻止もできそうなので、研究のしがいがあるなと思っています。


――新アリーナの「京都 1568年」もシーズン3の注目点のひとつですが、お気に入りの戦術や場所をお聞かせください。

なるぷでぃんぐ氏:
まずは京都の再現度がすごいなと思っています。実は僕は京都出身で金閣寺も馴染み深い場所ですが、そんな僕の目線でもこだわりがすごく感じられます。いわゆる“エセ日本”になっていなくて、良い意味で期待を裏切られました。

ゲームプレイにおいては、広さもあり、高低差もありということでライトビルドの有用性が高まっていると思います。もっといえば、竹林地帯や建物の床下など、遮蔽や逃げ道が多いマップになっています。なのでライトビルドの弱点である体力の少なさをカバーできるかなと思います。相手を翻弄する立ち回りができますね。


逆にライトビルドを相手取った場合、どこに逃げられたかという選択肢が多いので予測が難しくなりました。シーズン3になってからは相手を逃がしてしまうことも増えましたね。さっきまで目の前にいたのに、次の瞬間真後ろにいたみたいなやられ方をすることも多いです。地形を活かした戦術も今後もっと研究されていくんじゃないかなと思います。


――シーズン3では本作のランクマッチにおけるルールが、キャッシュアウトからターミナルアタックに変更されました。プレイしていてどのような変化がありましたか。

なるぷでぃんぐ氏:
ランクマッチはまったく別のゲームといっていいほど環境が変わった感覚があります。ターミナルアタックはキャッシュアウトと違い、倒されても蘇生ができないので、より撃ちあいが強いプレイヤーが活躍している印象です。とはいえ、まだシーズンが始まって日も浅いので、今後戦略性がどれだけ深まっていくのかも研究しがいがありそうです。

特に今はライトビルドのLH1というセミオートライフルが非常に強い印象ですね。これまではうまい人が使う分には強いという立ち位置だったんですが、射撃のリコイルコントロールがやりやすくなりました。火力も高く、中遠距離でヘビービルドにも強く出られるので、ライトビルドのデメリットでもある体力の低さを補って余りあると思います。(※本インタビューは6月18日に実施。6月19日のアップデートにてLH1のダメージは下方修正された)


逆に、今まで環境の中心にいたヘビービルドについては、使用率の高かったルイス軽機関銃が調整され、ダメージなどが弱体化されました。またターミナルアタックが1ラウンド2分の制限時間で展開されるスピード感のあるモードなので、ヘビービルドだと付いていきにくい印象もあります。ライトビルドはシーズン1、シーズン2とあまり日の目を見なかったので嬉しい反面、ヘビービルドにももうちょっと頑張ってほしいので、今後のバランス調整にも期待したいです。


復帰するのも、始めるのも今が一番

――リリースからシーズン3までに『THE FINALS』にはどのような変化がありましたか。

なるぷでぃんぐ氏:
リリース当初はC4爆弾をつけたガス缶を相手に飛ばして爆発させる戦法の流行などバランス面の課題や、先述したようなチーターの存在もありました。ただ、そうした課題は対策や調整によって今では改善されています。チーターについてはかなり減少しましたし、各ビルドの強みもはっきりして全体のバランスも良くなっています。シーズン3にして、本来の『THE FINALS』の楽しさが一番感じられる環境になっていると思います。過去に本作をやめてしまった人も、一度当時のイメージを捨てて「新作ゲームが出た」くらいの気持ちで触れてみてほしいです。


またキャッシュアウトのトーナメントルールがカジュアルに遊べるようになったのも非常に魅力的だと思います。ただ初心者の方にとっては、試合中のキャッシュの計算などになじみがなく、難しい部分もあるかもしれません。最初はそういった勝ち負けにこだわらず、建物を壊したり、いろんなガジェットや武器を使ってみたりするというのがおすすめです。あとはキャッシュをうまく確保できる方法を考えてプレイするのも上達に繋がると思います。初心者向けにおすすめの戦術について動画をまとめているので、ぜひ見ていただければ嬉しいです。本作を象徴するゲームモードなので、一度キャッシュアウトを遊んでもらって、慣れてきたらターミナルアタックなど、ほかのモードに触れつつ幅広く遊んでいくのがおすすめですね。

ビルドについては、シーズン3では(キャッシュアウトでは)ほぼすべてのビルドのパワーバランスが公平になっていると思うので、思い思いの武器やスキルを選んで遊んで、あったものを選ぶ、という遊び方がよいと思います。ただ、もしFPS初心者の方なら、ぜひ体力の多いヘビービルドから使ってみてください。ヘビービルドはスレッジハンマーなどもあるので、本作の醍醐味である「破壊」を十分に楽しめると思います。使いどころのたくさんあるウィンチクローを使えば、戦略の幅が広がるかもしれません。

*MF_TAKO氏によるスレッジハンマーを活用した場面のクリップ

――今が始めどき、そして復帰しどき、ということですね。それではここから先、シーズン3以降に『THE FINALS』に期待することはありますか。

なるぷでぃんぐ氏:
やはり『THE FINALS』の良さは、ほかのFPSタイトルとは異なる戦略性やスキルなどにあると思います。今回の新武器やスキルは期待を上回る良いものばかりだったので、今後も遊び心のある武器やスキルなどを追加してくれると嬉しいです。

あと本作はまだまだ未プレイの方も多いと思うので、他タイトルのような『THE FINALS』を代表するストリーマーや有名人も誕生して欲しいなと思います。かくいう自分も、『THE FINALS』をより多くの人にプレイしていただけるようなコンテンツ作りを頑張っていきたいと思っています。

*なるぷでぃんぐ氏による、初心者向けの「反重力キューブ」の使い方まとめ動画

――最後になるぷでぃんぐさんの今後の活動についてご紹介をお願いします。

なるぷでぃんぐ氏:
今はTwitchの方でのゲーム配信や、X(旧Twitter)で『THE FINALS』の情報を発信するのがおもな活動になっていますが、今後はYouTubeでの動画活動も本格的にやっていきたいです。YouTubeの方では、『THE FINALS』初心者の方とか未プレイの方でもわかりやすく、プレイしてみたいと思ってもらえるような、ゲームの魅力を最大限伝えられるようなコンテンツ作りに注力したいなと思っています。記事を読んでいただいている方には、よければSNSをフォローしてお待ちいただければ幸いです。

それだけでなく、個人主催の大会の開催も、大会の運営にも興味がありまして。『THE FINALS』のプレイヤーの方が気軽に、エンジョイで遊ばれている方も参加できるような、コミュニティが活発になるような大会の開催をしてみたいなと。あとは僕自身、実況解説に興味がありますので、『THE FINALS』の大会の実況解説にもチャレンジしたいと思っています。

――ありがとうございました。

THE FINALS』はPC(Steam)/PS5/Xbox Series X|S/GeForce NOW向けに、基本プレイ無料で配信中だ。

[聞き手・編集:Kosuke Takenaka]
[聞き手・編集:Hideaki Fujiwara]