『Dead by Daylight』開発者ショートインタビュー。多くのプレイヤーが悲鳴をあげた「リング」コラボ新チャプターの、2種類の恐怖
Behaviour Interactiveは『Dead by Daylight』の新たなチャプターとして、「リング」から着想を得た「貞子ライジング」を配信する。殺人鬼として貞子、生存者として浅川陽一が追加される。本実装は3月9日を予定しているが、先行してSteam版でPTB(パブリックテストビルド)が配信され、すでに多くの反響を呼んでいる。
話題となっている怖すぎる待機画面(関連記事)やメメントモリの演出に加え、原作をもとにした忠実な描写にも制作陣のこだわりが見える。たとえば「呪い」の発動に必要なゲージ数である7という数字は、呪いのビデオを見ると1週間後に死ぬという設定から来ていると推測できる。また、本チャプターで大人になって登場した浅川陽一が海洋生物学者という職業を選んでいることも、貞子自身の海への関わりの深さを考えると偶然ではないだろう。
今回、「貞子ライジング」の配信にともない、Behaviour Interactiveのクリエイティブディレクターであるデイブ・リチャード氏へのメールインタビューを実施。キャラクターの物語からビジュアルデザイン、音楽、ゲームプレイの仕組みなど、あらゆる面を監督している氏に、本チャプターについての質問をおこなった。その内容をお届けする。
――まず「リング」とこれまでのコラボ作品で、違った点があればお聞かせください。
これまで『Dead by Daylight』で行ったコラボレーションと比較して今回の「リング」が異なる点は、KADOKAWA様から浅川陽一の物語を創造する機会をいただけたことです。本チャプターを通じて「リング」唯一の生存者である彼のその後の物語を伝えることが出来るのは、今日においてのビデオゲームというコンテンツの重要さを物語っていると思います。
――心理的な恐怖で構成される、静かなホラーを表現することの難しさはありましたか?
確かに「リング」のようなサイコホラーと、スラッシャースタイルのホラーは大きく異なります。今回課題となったのは、貞子の「相手を静かに呪い殺す」という部分をどのように『Dead by Daylight』で表現するかという点でした。
――貞子のジャンプスケア演出は国内外で話題になっています。
こういう風に話題になるのは素晴らしいことだと思います。私達もプレイヤーのリアクション動画を観てとても楽しんでいます!
――ほかの殺人鬼とはまた違った怖さがありました。制作中からこのような反応は想定されていましたか?
新たな殺人鬼を創造する際、どういうタイプの怖さを表現したいかは事前に決めてあります。ゆっくり迫り来るような恐怖や、瞬間的でグロテスクな恐怖など、殺人鬼によってさまざまです。貞子の場合、2種類の恐怖を表現することができました。それは「不気味で背筋が凍るような怖さ」と、ジャンプスケア演出のように「一瞬で驚く怖さ」です。
――貞子のキャラクターデザインとして、こだわった点はどこでしょうか?
日本のホラーを代表するキャラクターとしての貞子を表現したかったので、KADOKAWA様側のスタッフと話し合いながら、原作の貞子を忠実に再現することにこだわりました。彼女がアメリカの殺人鬼とどう違うのかを考え、立ち方、動き、腕の位置など、細かい部分まで再現しました。
――井戸を上るためになくなった爪など、かなり忠実に再現されています。
貞子の不気味な雰囲気を演出するため、細かい所までリアリズムを求めました。貞子のなくなった爪は良い例で、井戸に落とされた彼女の苦悩と怒りを表現するとても重要な部分としてゲーム内に追加する必要がありました。そのほかにも「貞子は物理的に攻撃しない」という設定に関しても、ゲーム内でどのようにサバイバーをフックに掛けるかという点についてKADOKAWA様と話し合いました。
――殺人鬼としての貞子の開発コンセプトについてもお聞かせください。
「リング」のように既に存在する作品を元にキャラクターを作成する場合、なるべく原作に忠実であることが課題になります。それに加えゲーム内に新たなキャラクターを追加する際、重要になるのがプレイするのが楽しい、対戦するのが楽しいと感じてもらえる存在であることです。作品に忠実でありながら、『Dead by Daylight』のアレンジを加えることで、ほかの殺人鬼とは一線を画すキャラクターを創造しました。
――呪いを7ゲージ貯めることが難しいとの声もあります。今後変更される予定はありますか?
『Dead by Daylight』が楽しく遊べるよう、開発チームが常にゲームバランスの改善をおこなっています。PTBで多くのプレイヤーにフィードバックをいただき、データを収集することで公式リリースに向けて調整をしていきます。呪いゲージについても現在検討中で、リリース後にはより素晴らしいチャプターになるので期待していてください!
――ありがとうございました。
メールインタビュー実施後、さっそくPTBのフィードバックを受けていくつかの変更が発表された。貞子の「具現化」「幽体化」の速度変更、見える範囲、脅威範囲、そして呪いシステムへのバランス調整が含まれ、全体的に強化されるかたちだ。呪いのゲージは貯まるのが速くなり、また減らせる量も少なくなるため、生存者はより呪いメーターを注視する必要があるとのこと。その他の詳細は公式ニュースを参考されたい。
新チャプター「貞子ライジング」は3月9日に配信予定。ジャパニーズ・ホラーの金字塔「リング」の世界観が加わった新たな『Dead by Daylight』は、霧の森でプレイヤーをさらなる恐怖に誘い込むだろう。
※ The English version of this article is available here