『リネージュ2M』をPCでプレイ可能にするツール「パープル(PURPLE)」とは何か。韓国ユーザーの半数以上が利用する補助ツール

エヌシージャパンは、3月24日に『リネージュ2M』を日本国内向けに正式サービス開始した。同作は実はPURPLE(パープル)を通じてPCでプレイできる。PURPLEの機能について、開発責任者に訊いた。

エヌシージャパンは、3月24日に『リネージュ2M』(以下、リネ2M)を日本国内向けに正式サービス開始した。『リネ2M』は名前のとおり、過去に日本で一世を風靡した『リネージュ』シリーズの最新作である。対応プラットフォームはiOS/Android 、そしてPCだ。

本作はパープル(PURPLE)と呼ばれるツールを通じて、PCでプレイすることができる。そう聞くと単なるエミュレーターかと思えるが、そうした範囲に留まらないツールである。PC向けのリッチなビジュアル表現を可能にしたり、ソーシャル機能を搭載するなど、かなり多機能なツールになっている。しかしながら、実際のところ何がどこまでできるのかがわからず謎が多い。そこで、PURPLEの開発室長である金勳(キム・フン)氏へのインタビューを実施。本稿ではその内容をお届けする。なお本記事は、エヌシージャパンとのタイアップ記事である。

PURPLE開発室長 金勳(キム・フン)氏

――まずは自己紹介をお願いします。

PURPLEの開発室長のキム・フンといいます。PURPLEは、進化するゲーム市場にあわせ、エヌシーソフトのモバイルゲームのクロスプレイをサポートするために開発されました。PURPLEは韓国では『リネ2M』のローンチと共に初めて市場に出しました。今回日本のゲーマーにも『リネ2M』と共に披露することになり光栄です。

――今回リリースされるPURPLEについて改めてご紹介をお願いします。

PURPLEはPCで『リネ2M』を起動する機能を有しているだけでなく、より高いクオリティ、多様な便利機能、安全なセキュリティを提供し、『リネ2M』がより遊びやすくなるように最適化されたツールです。具体的には、PCで起動中のゲームをスマホからリモートで操作できるPURPLE onや、ゲームをしながら友達とチャットが楽しめるPURPLE talkといった機能を備えています。

開発に至った経緯は、前作『リネージュM』が「Nox」や「Bluestacks」などPC上で起動するAndroidエミュレーターで遊ばれることが多かったためです。そういったユーザー向けにもっとPCでプレイしやすくなるような機能だったり、エヌシーソフトのゲームにもっとも最適化されたプラットフォームを作りたいと思い、PURPLEを開発いたしました。


――クロスプレイや多様な便利機能をサポートするとのことですが、グラフィック面についてはいかがでしょうか。

PURPLEでは『リネ2M』のフル3Dグラフィックをそのまま提供することができるようPURPLE開発に力を入れました。本来のグラフィックの美しさをそのままに、4K解像度/60 fpsに対応させています。またスマホでのプレイと比べて視野の広さも約2倍にまで広げることができます。こうした要素により、快適にゲームを楽しめることでしょう。

――グラフィック部分に関してとても力を入れてらっしゃるんですね。

『リネ2M』はスマホゲームですが、これまでの開発を活かし、PCでも最高のクオリティのグラフィックが堪能できるようゲーム開発段階からさまざまな工夫を凝らしています。この点はぜひ、皆さんご自身の目で見て体験して頂ければ嬉しいです。


――なるほど、ありがとうございます。モバイルのゲームをPCでプレイする上で欠かせない要素として、操作性が挙げられるかと思います。そちらについてはいかがでしょうか。

実際にプレイしてみるとわかると思いますが、『リネ2M』はターゲティングなど時々細かなコントロールを必要とする場面があります。数百人規模での戦闘が行われる血盟(ギルド)同士の戦いがその最たる例です。PCではそういった場面で、キーボード・マウスを利用し的確な操作を行うことができるようになります。またスキル1つ1つにキーを割り当てることができるなど、キーボード設定を非常に細かく行えるようにもしています。

――ここまで細かくキー設定が行えると、ほとんどPCのMMORPGと遜色なくプレイすることもできるように思えます。やはりPURPLEは『リネ2M』のリリースを前提に、並行して開発が行われたのでしょうか。

そうですね。PURPLEと『リネ2M』の開発チーム自体は別チームではありますが、ユーザーにより快適にゲームをプレイしてほしい気持ちは同じです。そのためお互いに意見を交換しながら、一緒に開発を行いました。


――最近のトレンドとして、クロスプラットフォーム機能を搭載したタイトルが増えてきていると思います。その中でも、『リネ2M』はとても力を入れているように感じました。

ありがとうございます。エミュレーターを使ったクロスプラットフォームの実現はこれまでにも多くあったと思いますが、ゲーム開発会社が自社のゲームに最適化されたクロスプラットフォームツールを作るのは韓国でも弊社が初めてです。他のゲーム開発会社よりプレイ環境に関して先駆けていると言えると思います。

――そのほか、PURPLEが提供する機能はありますか。

PUPLE onとPURPLE talkの詳細について、順にご説明いたします。
PUPLE onは、PC上で実行させておいた『リネ2M』を、モバイル PURPLEを介してリモートプレイすることができる機能です。この機能を使うことでどこにいてもオンライン上から途切れず、ゲームをプレイし続けることができます。またしばらく席を外しても攻撃を受けたり、死亡したときにモバイル のPURPLEを通じて通知を受け取ることもでき、すぐに対応することができますよ。くわえてPURPLEは、最大4つまでのマルチアカウントプレイをサポートしています。PCのPURPLEであれば、同時に複数のアカウントでプレイすることができるのです。スマホではPURPLE onを通じて、複数のアカウントを切り替えてプレイすることができるようになっています。


――かなり自由度の高い遊び方ができますね。しかしリモートで操作する際の不安として、ネットワークを理由とした操作におけるラグが気になります。PURPLE onではこのような遅延に対してどのような工夫がされていますでしょうか。

詳しくご説明することは難しいのですが、PURPLE onでは、ストリーミングプレイ起動時にラグや遅延なしで、すぐにゲームプレイができるよう最適化されております。またモバイル PURPLEでは、通知だけでなくキャラ情報ウィンドウにて全体的にアイテムの獲得状況が確認できるなど、ゲーム内の現状が簡単に確認でき、PURPLE onを起動する前でもゲーム情報がリアルタイムで把握できるようになっています。

――ありがとうございます。マルチアカウント運用や遅延など細かい点も含めてヘビーユーザーの声もしっかり拾って下さっている印象を受けます。

ありがとうございます。ただ、ヘビーユーザーというと、ユーザーの中の一部のみを指しているように見えてしまいます。しかしどちらかというと私達は「エヌシーソフトのゲームタイトルが好きな人がより遊びやすくなるように」を第一に考えて、さまざまな機能の追加を行うようにしています。その結果、ヘビーユーザーと呼ばれる方々も満足いただけるような内容にできているならば嬉しいですね。

PURPLE onも同様です。最近のスマホはPCにスペックが劣らないものも出てきていますが、全員がそれを持っているわけではありません。ユーザーの中には低スペックのスマホを使っている方もいるでしょう。そういった方でも自宅にPCさえあれば、快適にプレイできるようにしたいと考えてPURPLE onを開発していました。

――ありがとうございます。PURPLE talkは実際にどういうものなのでしょうか。

PURPLE talkは、PURPLE独自のコミュニケーション支援機能と考えていただけると良いかと思います。テキストチャットからボイスチャットまで、すべて行うことができます。『リネ2M』では血盟というコミュニティに所属をしてさまざまなコンテンツに挑むのですが、時には数百人が味方となるコンテンツも存在します。ゲーム内チャットですと、その人数でコミュニケーションを取ることは難しいため、そういった際はPURPLE talkの高品質なボイスチャット機能が役に立つでしょう。またPURPLE talkはゲーム内と常に連動しています。一般チャットから血盟メンバーのチャットまで、すべてのチャットを、PURPLEを通じて見ることができますし、ログインしていない間のチャットログも確認することができます。ゲーム内のユーザーとPURPLEを通じてリアルタイムでチャットすることも可能です。

――コミュニケーションツールとしてかなり充実していますね。それほどエヌシーソフトのゲームにおいて、こういった機能のニーズが大きかったということでしょうか。

『リネ2M』においては、もちろんそうです。他社のゲームについても遊び方の動向について調査をした結果、いま世に出ているツールにこのような要素を足すことで遊びやすくなるだろうと考え、そして盛り込んだのがPURPLEになります。

――いままでなかったようなツールを開発するということで、社内から反対はなかったのでしょうか。

結果的には、ポジティブな反応が多かったです。エヌシーソフトでは多くのゲームタイトルを運用、開発していますが「ユーザーが必要としているものを直接提供する」という会社の文化があります。そのため、開発中はすべてが順調にいったわけではありませんが、全体的に会社の方針に助けられたところが大きいです。


――PURPLEは韓国で既にローンチされていますが、どういった部分がユーザーから高評価を受けていますか。

もっともユーザーから評価をしていただいているのは、PURPLE onです。実際に私も今自分の席のPCで『リネ2M』を起動しているのですが、PURPLEを通してどこにいてもゲームを操作できるのは便利ですね。PURPLE talkのチャットも同様に好評です。ゲームチャットは基本的にゲーム内にとどまった機能であることがほとんどですが、PURPLEはゲームを起動していなくても会話に参加でき、過去の会話も遡ることができますからね。

――最大4つのアカウントを同時に起動して遊べるようですが、韓国ではそのようにマルチアカウントでエヌシーソフトさまのゲームを遊ぶユーザーは多いのでしょうか。

私もこの機能を最初に開発した際、ハードコアユーザーしか使わないような機能になると思っていました。しかし実際に触ってみると、4つでは足りない……というところが正直な感想です。そのため、この機能は予想外にもかなりたくさんのユーザーが使っています。複数のキャラクターを自分で育て上げることができるメリットもあります。また韓国では友達が何かしらの理由でゲームが遊べない間、代わりにPURPLEを使って友達のキャラクターを育成するという使い方をしているユーザーもいるようです。

――友達のキャラクターを代わりに育てるという発想は、なかなか日本ではないイメージです。マルチアカウントを運用するというのはネットゲームが発展している韓国では割と当たり前なのか、もしくは『リネ2M』にてそういったプレイが流行っているのでしょうか。

韓国で一般的というよりも、『リネ2M』をプレイしているユーザー内ではマルチアカウントを運用するユーザーが多いようです。『リネ2M』はソロで遊ぶよりも、血盟単位で活動することが多いゲームです。そのため複数のキャラクターを持つことで、その数だけ必要に応じていろんな役割を担えることが理由かもしれませんね。MMORPGならではの遊び方と言えると思います。

――実際のところ、PURPLEの普及率はどのくらいでしょうか。

正確な数値を申し上げることはできませんが、韓国では『リネ2M』をプレイしているユーザーの半数以上がPURPLEを利用して下さっているようです。

――ほぼ必需品と言っても過言ではないですね……。PURPLEの今後についてお聞かせください。『リネ2M』以外のタイトルにも対応する予定はありますか。

まずは『リネージュM』に対応する予定です。韓国では既に『リネージュM』がPURPLEでプレイできるよう最適化されています。くわえて今後リリースを予定している『トリックスターM』『プロ野球H3』などに対応していく予定です。

※ 『トリックスターM』

※ 『プロ野球H3』


――PURPLEに加えていく予定の新機能はありますか。

韓国基準となってしまいますが、エヌシーソフトのさまざまなゲームタイトルに特化した機能の追加や、PURPLE liveというビデオチャット形態のライブ配信サービスを導入する予定です。日本でもこれらをお見せできる日が待ち遠しいです。

――最後に日本のユーザー向けにメッセージをお願いします。

日本で『リネ2M』とPURPLEをリリースできることを非常に嬉しく思います。韓国では多くのユーザーに愛用していただいているので、日本ユーザーにも満足していただけることを期待しております。最適化された環境で快適にゲームを楽しんでいただきたいです。ありがとうございました。

Tadashi Harao
Tadashi Harao

対人ゲームが好きです。初めて遊んだ対人ゲームはMGO、熱中のあまり息切れ起こしながら遊んでました。

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