『FF14』吉田P/Dメディア合同インタビュー。“プラチナ”がテーマカラーの「暁月のフィナーレ」新ジョブの立ち位置や気になる疑問点について聞く

『ファイナルファンタジーXIV』新情報発表会の開催後、メディア合同インタビューがおこなわれた。弊誌AUTOMATONも当日の発表内容に関連した内容を質問する機会をいただくことができた。

スクウェア・エニックスは2月6日、『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FF14』)の新情報発表会を開催し、次回拡張パッケージとなるパッチ6.0「暁月のフィナーレ」がお披露目となった(関連記事)。新情報発表会の後はメディア合同インタビューがおこなわれ、弊誌AUTOMATONも当日の発表内容に関連した内容を質問する機会をいただくことができた。回答者は、プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏。本記事はそこでのインタビューの内容をお届けするものである。 
 
  

 
テーマカラーは“プラチナ” 

────これまでの新しい拡張パッケージにはテーマカラーがありましたが、「暁月のフィナーレ」にはテーマカラーはありますか? 

開発チームには「プラチナ」という言い方をしています。白ではありません。“夜明け”、“暁月”ということを考えたときに、黒でもない、白でもない、そこに向かって一瞬しか見えない黄色が混ざったようなプラチナのような輝き、という話をしました。ロゴも金なのか黄色なのか、というギリギリの線を詰めています。「漆黒のヴィランズ」だと世界が夜のこない天候に覆われているところから始まったかと思いますが、今回もみなさんに驚いてもらえるような仕掛けはゲーム内に用意しています。テーマカラーとしてそこに合わせて色調整をしていくので、それがプラチナだということを覚えておいていただければと思います。 

────「暁月のフィナーレ」のロゴのコンセプトや、込められた思いなどを教えてください。 

そのものずばりをお答えすることは難しいのですが、ハイデリン・ゾディアーク編で描かれてきた、絶望に対する希望やそれに向かっていく英雄たち、といったテーマを天野喜孝先生にお伝えしました。そのあたりのニュアンスが含まれています。 

────ロゴの意味はパッチ6.0をプレイすればわかるということでしょうか。 

そうですね。「そういうことだったのか!」と感じていただけると思います。後ろの丸い部分は月なのか、もしかしたら惑星ハイデリンかもしれませんね。そういうところはパッチ5.5のメインストーリーをやりながら推察していっていただければと思います。 
 

「暁月のフィナーレ」のロゴ 

 

月での体験はどのようなものになるのか 

────過去には空中や水中への移動アクションが追加された拡張パッケージもありましたが、今回はそのような追加はあるのでしょうか? 

「暁月のフィナーレ」では、移動に関する新しいアクションは特に追加しません。今回は『ファイナルファンタジー』として、また、ハイデリン・ゾディアーク編のラストを迎えるにあたって、最高のラストパートを拡張1本分のボリュームで作っています。そのストーリー体験を最高のものとして詰め込もうという部分にフォーカスしているから……というのと、実はもう僕にネタがないからです(笑) 

月に行くにあたって、「無重力ですか?」と開発チームには言われたのですが、無重力では泳いでいるのと(ゲーム体験は)変わりませんよね。一回飛び上がったら帰ってこられないし……。一般的なMMORPGにあるような操作系の体験は『FF14』にはすべて揃っているので、そこで無理に「体験だから」とひねりだしたものを入れたとしても、面倒くさいことをやらなければならなくなってしまいます。なので、今回はズバっと追加なしにしました。 

────となると、「月に行く」という体験はどのようなものになるのでしょうか。 

「そもそも月って何なのか」とか、「月の裏側や中身がどうなっているのか」とか、といったところでしょうか。ちょうど1年前ごろから宇宙モノのサイエンスが好きで見ていたんですが、現実にある月もどのように成立したのか学説が分かれています。現実の月の裏側がどうなっているのかは僕らにはわかりませんが、せっかくのファンタジーなので、僕らの考える月の存在をドーンと出し、「『FF14』チームは月をこう定義したのか!」と想像力をかきたてられるようなことをしています。それから、シナリオでも説明がありますが、一応空気はあるのでご安心ください(笑)窒息ゲージがあって外に出たままでは死んでしまう……などの仕様はございません。 
 

 
ジョブ関連について 

────新たなジョブとして、バリアヒーラーの賢者が実装されます。すでに実装されている学者と新ジョブの賢者がバリアヒーラーとしての役割を担うことになりますが、バリアヒーラーのなかではこの2ジョブはそれぞれどのように差別化されていくのでしょうか。 

もちろんバランス的には、バリアヒーラーである2ジョブのどちらを使っても極端な差のないように制作しています。一番大きい差は「ゲーム体験」で、バリアを貼るという行為に対するアプローチの仕方が違います。学者の場合はペットであるフェアリーがいて、ヒールやバリアを行いつつ攻撃をする感覚になるかと思います。賢者の武器である賢具はペットではないので、当然「バリアを張る」という行動ひとつとっても学者とは全く異なるゲーム体験となります。どちらを使っていただいてもコンテンツのクリアに支障はないようにバランスを取っていきます。 
 

 
────ピュアヒーラーのみ、バリアヒーラーのみのパーティーでの攻略は可能なのでしょうか? 

それはプレイヤースキルにもよるのではないかなと思います。最近はヒーラーのみなさんから「ヒールが暇なんだよね」というお声があったので、再生編零式では攻撃頻度やダメージ量を多くしています。特に初期攻略の段階では、ピュアヒーラーだけでは回復が難しく、バリアを張らなければならない場面を意図的に作っています。今後もヒーラー2人はバランス良く、ピュアヒーラーとバリアヒーラー1人ずつの構成にしたほうがクリアしやすいようにしていくつもりです。また、新情報発表会でもお話しましたが、レイドファインダーのアルゴリズムを調整し、ピュアヒーラーとバリアヒーラーがマッチングするような仕組みを作っていく予定です。 

────ピュアヒーラーとバリアヒーラーの区分はロールとして分けられるのでしょうか? 

表示上はあくまでただのヒーラーです。IDなどではどちらのヒーラーでも当然クリアできるので、そこを分けてしまうと新規のプレイヤーが混乱する可能性もあります。高難易度コンテンツ(極・零式以上)はヒーラーロールのなかでピュアとバリアがいたほうがいいというおすすめの仕方はしますが、表示として明確に区切ることはしません。逆にその区切りがないことで混乱しそうだと判断すれば表示を入れる可能性はありますが、現時点で無理に分ける予定はありません。 

────ピュアヒーラーとバリアヒーラーを明確に分けるとのことですが、タンクに関してはMTとSTなどでカテゴリ分けをする予定はありますか? 

いまのところ予定はありません。現時点では若干ナイトにST適性がありますが、どのジョブも両対応できるので、カテゴリ分けはしません。4ジョブそれぞれの個性で、ゲーム体験の違いとしていきます。 

────新ジョブにはもう1ジョブ近接物理DPSの追加があるとのことですが、今の時点で4ジョブいる近接DPSにさらに追加をしようと考えた経緯と、近接物理DPS内の住み分けについてどのように考えているかを教えてください。最近のコンテンツでは近接は少し厳しい部分もありましたが、そのあたりの調整もされるのでしょうか。 

数に関しては、たとえば次の拡張が出たとして、そこにタンクを足してしまえばタンクは5ジョブになるので問題はないと考えています。現状、DPSロールをやりたいプレイヤーの方が多いので、拡張ごとにDPSジョブを追加しないということはないかなと思っています。近接の中でも、現在は竜騎士がメイルという少し特殊な近接DPSなので、そこに追加するのが新ジョブとなります。 

近接DPSが厳しいという部分は開発チームも認識しています。高難易度コンテンツでギミックを複雑に作っていくと、攻撃距離に制限のあるジョブはどのようなMMORPGでも厳しくなっていきます。そこは各ジョブにどのようなアクションを渡すかという部分で、極端に遠隔ばかりが有利にならないよう、ジョブの追加とは別軸で考えています。 

────今回の拡張パッケージのメインジョブがナイトとなった理由を教えてください。『ファイナルファンタジーIV』との関連はあるのでしょうか。 

正直とても悩みました。私の性格が天の邪鬼なので、プレイヤーのみなさんの想像の範疇を超えていきたいという思いが強いんですね。たとえば「漆黒のヴィランズ」という物語を作っていくうえでの最初のコンセプトは「光を打ち払って闇を取り戻し、闇の戦士として戦う」というものでした。プレイヤーのみなさんは「英雄」とか「光の戦士」と呼ばれるのは飽きてしまっただろうと思ったので、物語をひっくり返したんです。物語を逆さから見ることでゲーム体験を変えていきたいという思いもあります。 

「暁月のフィナーレ」はハイデリン・ゾディアーク編のラストを描くと決めた時点で、王道としてのラスト、これまでの『FF』シリーズならば「最終章に突入した!」という感覚を拡張1本分のボリュームで作るかたちとなりました。自分にとっての希望であったり、人々にとっての希望であったりというところを正面から描くには、やはり『FF14』のなかにあるジョブならばナイトではないかなと。それを背負いたいかどうかは置いておいても、すべてを背負って前に出ていくジョブならストレートにナイトかなということで決断しました。 

────レベルキャップ開放にともなって、ナイトのスキルもイメージに合うものが追加されるのでしょうか。 

ナイトには大技である「パッセージ・オブ・アームズ」があるので、あれを超えるのは大変なんですが……(笑)主人公ジョブだからと贔屓するわけにもいかないので、各ジョブにもますますそのジョブを好きになってもらえるようなアクションを用意しています。期待に応えられるよう頑張っていきます。 
 

 
消えた帯防具には「かつて」系説明文も追加 

────帯防具が削除になりますが、その分のパラメータ調整はありますか? 

もともとアクセサリーは単体で見ると、いわゆる“左側”の帯以外の防具よりも1つ1つのパラメータ影響は大きくありません。帯防具をなくしたことによってプレイフィールが変わるような調整にはならない予定です。ただ、今回はデノミネーションを行うので、そちらの影響のほうが大きいです。ですが、実は拡張ごとに内部計算式は変わってなくとも、サブパラメータの影響度合いなどは変えています。そのあたりを調整し、プレイヤーのみなさんは気付かない程度の変化にするつもりです。 

実は先ほどの新情報発表会で「装備が遺失物管理人に回収される前にマテリアを外しておく方がいい」という話をしたのですが、あの後すぐに開発チームから連絡がありまして……(苦笑)マテリアは外さなくてもきちんとシステム側で処理をするので、プレイヤーのみなさんは何もしなくて大丈夫なようです。申し訳ありません。 

────パッチ6.0以降に手元に残っている帯防具は、売ったり納品してトークンと交換したりすることは可能ですか? 

可能です。分解することもできます。変わるのは装備できなくなることと、説明欄に「かつて冒険者の腰を守っていると思われていたアイテム」と追加されるくらいです。 
 
 

小規模PvPには個別のジョブ調整を行う方針 

────少人数PvPについて発表がありました。ロールフリーマッチングというと、過去の8vs8のフィーストが連想されるのですが、どういった違いがあるのでしょうか。 

ルールもマップもすべて違います。現在のフィーストはヒーラーの負担が非常に大きく、ヒーラー次第であっという間に勝負がついてしまい、辛すぎてやりたくないという人が多いためにマッチングが機能しにくい部分があります。いま計画しているのは、ロールフリーにして全員に自己回復を持たせるゲームデザインです。そのなかで、それぞれのジョブの特徴を生かして戦っていくかたちになります。 

────フロントラインよりはフィーストに近いものなのでしょうか。 

相手からダウンを取るのがフィーストでしたが、新たな少人数PvPには陣取り要素などが加わってくるので、相手を倒すだけの戦いではなくなります。カジュアル性とマップを使った戦略性を両立させつつ、さらにレーティングマッチがしたい人と報酬を得るためだけに遊びたい人との2軸でやっていけたらなと考えています。報酬も装備だけではなく、まったく新しいものをこのために開発しています。今後、絵的なものとあわせてPLLなどで紹介していけたらと思います。 

────自己回復がある関係で現状のフィーストはバランスが良くないという意見もあるかと思うのですが、今後は少人数PvPと大規模PvPとで調整を分けることはありますか? 

次の少人数PvPからは大規模PvPとは別々に調整を行う予定です。少人数PvPはそれ専用のジョブバランス・ジョブアクションで調整していくつもりです。 

────その調整はフィーストも同様なのでしょうか? 

フィーストをそのまま残すかどうかはまだ決めきっていません。プレイヤーのみなさんには一度新しい少人数PvPに集中してもらってフィードバックをいただきたいのですが、そのときにフィーストがあるとプレイヤーも調整する側も分散してしまうためです。なので、フィーストは一度閉鎖する可能性も高いと思います。 
 

その他 

────無人島開拓で貿易ができるということですが、たとえばプレイヤーが歩いて特産物を運ぶような、Time to Win要素のあるデザインのコンテンツなのでしょうか?  

無人島開拓は「スローライフ」をコンセプトとしているので、他人と競い合うような要素は極力排除しています。他人との交流はゼロではありませんが、基本的に1人でやっていけるコンテンツです。自分が開拓していった無人島にどのような特産物を植えたり育てたりしていくかを考え、得られたものをシステムと対話して報酬を稼いでいく仕組みです。ご自身のペースでゆっくり開拓していってもいいですし、開拓に興味はなくとも育てられるものだけ育てるというスタンスでも損はしないようになっています。自分が取ってきたミニオンや連れてきた動物を育ててもいいですね。カジュアルに遊べるように作っているのでご安心ください。 

────パッチ5.0からフェイスという新機能が追加され、ソロプレイヤーから喜びの声が聞こえたと思います。パッチ6.0ではフェイスの新機能があるとのお話でしたが、それについてお話を聞かせてください。他にもソロプレイヤーが喜びそうな機能はありますか? 

シナリオに関わるところなので直接的にはまだ触れられないところがあるのですが、8人コンテンツを1人でやりたいという声や、昔のコンテンツでフェイスは使えないのかという声は多く届いています。お応えしたいところではあるのですが、アルゴリズムをコンテンツごとにフルスクラッチして作っているので、現状のフェイスには大きなコストがかかっています。それをどうやって汎用化していくかはいまチャレンジしているところです。 

パッチ6.0のメインストーリーで登場するダンジョンはすべてフェイス対応していますので、メインストーリーの進行を駆け抜けるなかで困ることはないと思います。暁のメンバーたちと一緒に戦い抜けるような体験は用意させていただくつもりです。 
 

フェイスにエスティニアンが実装され、無職であった彼にとうとう働き口ができる予定だ。 

 
────新情報発表会の途中にヒルディブランドの名前が出ましたが、次の拡張での出番はあるのでしょうか。 

「漆黒決戦 ノルヴラント」に召喚されていたので、紅蓮のラストにヒルディブランドが飛んでいった先はあそこに繋がっていたんでしょうね(笑)ただ、ちょっとマンネリ化してきたこともあって、事件屋関連のクエストは少しお休みしていました。 

ヒルディブランドは世界中からかわいがっていただいているキャラクターで、彼の物語の続きが見たいという声も多く頂いています。事件屋クエストは開発チームのみんなで作っていたストーリーなのですが、いったん充電できたかなとも思っているので、その声にはできるかぎり応えていきたいです。終わりにするつもりはありませんので、是非再登場にご期待ください。 

────今回も祖堅さんが音楽を手掛けているかと思いますが、吉田さんからはどのようなディレクションをおこないましたか? 

クライマックスに向けて、全部が感動巨編のような音楽だと「脂っこい!」となってしまうので、シナリオに合わせてどう強弱を配分するか考えてもらいました。祖堅にとっても僕にとっても「漆黒のヴィランズ」のメインテーマである「SHADOW BRINGERS」は挑戦的な曲でした。クリスタルタワーを混ぜることで『FF』感を出してはいるものの、かなりロックテイストな曲です。しかし、この「SHADOW BRINGERS」はすごくプレイヤーのみなさんに受け入れてもらえました。『FF』シリーズの14作目というところで、「改めて『FF14』の大きな物語のラストというものを思い切って提示していこう!」ということも話しました。祖堅も頑張ると思うので、是非期待してください。 

────今回の拡張でグラフィックスの向上やPC版の要求スペックが上がることはありますか? 

ありません。PlayStation 5版の発売に向けて描画に対して手を入れることはしていますが、グラフィックスエンジンの一新となると、これまで10年間作ってきたアセットのボリュームがとてつもないため、その再構築をするために莫大なコストがかかります。4Kテクスチャ対応などもありますし、そもそも作り方も変えないといけません。 

たとえば、もっとひらひらしたマントを作りたいとなったとき、3Dモデルのボーンという概念をリグに変え、物理エンジンを搭載して、キャラクターに個別に設定をして……でもパフォーマンスを食いすぎるので他のプレイヤーの物理はオフに……となるのですが、こうなると他のプレイヤーのマントはバキバキになっちゃったりするんです。全てのグラフィック構造を詰め直さないといけませんし、ハイデリン・ゾディアーク編のラストというゲーム体験を作ることに重きを置きたかったのでなしにしました。ある意味では、スペックを変えなくとも冒険の続きにおもむけると好意的に捉えていただけると幸いです(笑) 

ただ、DCトラベルもそうなんですが、私達は数年単位で物事を計画しているので、グラフィックの一新はいつかやりたいと思っています。途方もなく大変そうな仕事ではありますが、気長にお待ちいただければと思います。 

Aki Nogishi
Aki Nogishi

ポストアポカリプスとドット絵に心惹かれます。AUTOMATONではFF14をメインに担当します。

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