『ファイナルファンタジー レゾナンス』レビュー。「昔のファイナルファンタジーという概念」を、令和式に提供するゲーム

本作は「もしも『ファイナルファンタジー』がドットのまま進化を遂げていたら」という作品コンセプトを掲げている。これは果たして懐かしさの安売りなのか。

スクウェア・エニックスは近年、スマートフォン対応ゲームを買い切り型タイトルへリメイクする試みをしている。その代表が『オクトパストラベラー0』。本作『ファイナルファンタジー レゾナンス』もまた、そうした試みを通じて生まれた1本である。そして、本作は「もしも『ファイナルファンタジー』がドットのまま進化を遂げていたら」という作品コンセプトを掲げている。これは果たして懐かしさの安売りなのか。いや、決してそうではない。『ファイナルファンタジー』が今もなお、冒険を続けていることがわかるゲームだ。

「ドットのまま進化しなかった」歴史を簡単におさらい

まずは前提をすり合わせておきたい。『ファイナルファンタジー レゾナンス』は『ファイナルファンタジー ブレイブエクスヴィアス』の実質的なリメイク作品であると同時に、もしも『ファイナルファンタジー』がドットのまま進化を遂げていたら、という作品コンセプトを掲げているゲームである。ゆえに、本作を語る上で重要なことは『ファイナルファンタジー』がどのような作品形態の変遷を辿ったのかについて簡単に触れること。そして、本作のコンセプトと変遷の関係性を説明することだ。

『ファイナルファンタジー』シリーズは常に「時代」と共にあったタイトルである。ハードウェアの発展、消費者を取り巻く環境と相互に影響を与え合ってきたゲームシリーズだ。「テーブルトークRPG」を電子的に再現し、個人でも遊べるようにする試みの延長……コンピューターRPGの影響のもとスタートした本シリーズは、ナンバリングを重ねるごとに、主人公≠プレイヤーという図式や、起承転結を用いた「ドラマ」を提供するゲームになっていく。

ゲームシステムについては、テーブルトークRPGの要素を落とし込んだジョブシステム、バッテリーバックアップ方式によって可能になったセーブ機能と、HP、MPといったリソースを管理しつつ、フィールドを往復してキャラクターのレベルを上げる遊びの組み合わせ、といった基礎を築いた後、『ファイナルファンタジーIV』にてATB(アクティブタイムバトル)が導入される。これはコマンドバトルにリアルタイム制を持ち込む試みであり、ゆえに『FFIV』はいわゆるターン制のコマンドRPGよりもアクションRPGに親和性がある。現に、『ファイナルファンタジーXV』以後のナンバリングタイトルはゲームジャンルがアクションRPGに変化している。

この変化については旧来の「リソース管理とレベル制」という、プレイ時間をプレイ体験に直接変化させる仕組みが、情報の氾濫とタイムパフォーマンスを重視する方向へ、人間の生活環境が変化するにつれ求められなくなったこと。そして、幅広い年代に親しまれている作品にアクションゲームが多いことなどが要因として推察される。執筆時点における流行は「瞬間的な入力と結果」を求める仕組みだ。総プレイ時間は重視されなくなっている。

ドットのまま進化を遂げていたら、とは何を意味するのか

以上、『ファイナルファンタジー』はコンピューターRPGからドラマチックなRPGへ。ジョブとリソース管理を基礎としたコマンドバトルは瞬間的な入力を重視するアクションバトルへ、という変遷を辿ってきた。では本作が掲げる「『ファイナルファンタジー』がドットのまま進化を遂げていたら」というコンセプトは一体何を意味するのか。

先日弊誌に掲載された開発者インタビューによれば、「最近の『FF』は反射神経が要求される」「腰を据えてパーティービルドを深く考えるところから始める『ファイナルファンタジー』新作を、個人的にもう一回プレイしたいという気持ちがあった」「そうしたクラシックな『FF』を求めている人は自分以外にもきっといるはず」だと、プロデューサーの中島啓輔氏は語っている。言葉を文字通り受け取るのであれば、ドットのまま進化を遂げた『ファイナルファンタジー』とは、リアルタイムに対応するための反射神経が必要なく、ドットを使用していた『ファイナルファンタジーVI』までの体験をベースにしたゲームであると考えられる。また、HD-2Dの演出技法に鑑みるに、映像については『ファイナルファンタジーVII』以降のシネマティックな迫力を組み込む狙いがあるのだろう。

しかしながら、『ファイナルファンタジーVI』までの「体験」をベースにすることはできないだろう。それらは古い作品だからだ。変化し続け、新しくなる私たちの生活様式に適合しないからである。先述したように、今ユーザーから求められているのは、アクションにしろRPGにしろ、今の時代の遊びやすさを提供する仕組みだ。

本作はこの問題の本質を体験の形式に見出すことで解決を試みているように思う。つまり、過去の仕様そのものではなく、美化された思い出を現在のナンバリングタイトルに馴染めないユーザーに魅せる。「昔のファイナルファンタジーという概念」を提供する。見た目こそ過去作からの引用を通じて作られているが、中身は現代的な仕様に整えている。

『ファイナルファンタジー』という「概念」を提供するゲームシステム

では、本作の内容について述べていこう。『ファイナルファンタジー レゾナンス』はターン制のコマンドバトルを採用しているRPGである。ビジュアル表現にはHD-2Dを採用。基本的なゲームフローとしては、シナリオの流れに沿って作中の世界をデフォルメしたワールドマップを探索し、点在するダンジョンを踏破し、ボス戦をクリアすることでエンディングを目指していく。字面だけを読み取れば、本作はシリーズ初期作の遊びを引用しているように思える。しかし、実際の体験はまったく異なる。

先述したように、シリーズ初期作の遊び……敵とのランダムエンカウントが発生する中でHP、MPといったリソースを管理しつつ、フィールドを往復してキャラクターのレベルを上げる、いわばプロセスを遊びにした体験は、タイムパフォーマンスを意識する必要に迫られる現代の生活環境にそぐわない。「瞬間的な盛り上がりをいかに増やすか」。昨今におけるコマンドバトルを採用したRPGはプロセスを重視するのではなくスポットの体験を増やすことで、現在も存在感を放っている。

たとえば、スクウェア・エニックスが発売している『ブレイブリーデフォルト』シリーズはボス戦を強烈な難易度に仕上げる一方、ダンジョンを経験値の稼ぎ場所として最適化させている。ボス戦が山場であることを強調しているわけだ。『オクトパストラベラー』シリーズはゲーム側が設定した難易度を意図的に無視してダンジョンやボスを攻略可能な仕組みを設けている。プロセスにスポット的な体験を混ぜている。

『ファイナルファンタジー レゾナンス』は、シナリオを構成する複数のエピソード1つ1つを短くし、そのぶん量を増やしている。通過するダンジョンは非常に短く、ゆえにランダムエンカウント自体の発生頻度も低い。「ザコ戦があった」ことをスポット的に印象づける以上の意味を持たない。全回復アイテムが使える中継ポイントが豊富ゆえ、リソース管理も特に必要はない。レベル上げはすぐ終わるサブクエストをこなしたり、マップに点在する強めの敵を討伐したりすれば、いつのまにか済んでいる。あわせて、本筋を進行するだけであれば、ボス戦の難易度は低い。弱点属性を分析して、適宜回復や防御魔法を使っていれば詰まることはない。キャラクターが育ち切る終盤になれば、本筋のボス程度ならスタッガーを意識せずともゴリ押しが利くようになる。

本作には歴代シリーズキャラクターを装備する「ビジョン」というシステムが、いわゆる「ジョブ」システムの発展型として搭載されており、主人公たちのステータスの特徴もハッキリしている。APの制約とマスタリーボーナス(常在バフ)を通じて、主人公ごとに複数のビルドを作り出すことも可能だ。とはいえ、この仕様はプレイヤーへ攻略の選択肢を与えるに留まっている。試行錯誤しながら攻撃役、防御役、回復役、とバランスの良いパーティを組んでみてね、という提案以上の強制力はない。好きなキャラクターに好きなビジョンを組み合わせることが許されている。

ただ、「やりこみ要素」になれば話が変わってくる。その象徴たる隠しボス戦では特殊な行動パターンの分析と、それに適応可能なパーティ構築、効率の良いレベル上げが求められる。それでいて、プレイヤーが自力で発見する必要がある。隠し要素の発見。ボスの行動パターン分析。パーティ構築。レベル上げ。こういった時間をかけたリソースを突破の喜びに変換する昔ながらの遊びは、昔のものゆえに人を選ぶ。好きな人がやれば良い。本作が「昔のファイナルファンタジー」そのものを提供するゲームではないことを端的に示す仕様である。

『ファイナルファンタジー レゾナンス』はワールドマップや飛空艇、歴代シリーズに登場したキャラクターなど、モチーフの引用こそ行われているが、それによって構成されたゲームシステム、およびフローは過去作と似て非なるものだ。サクサク進行するダンジョンとスムーズなボス戦は場面転換をテンポよく発生させ、瞬間的な興奮を幾度にもわたってプレイヤーに提供し、ゲーム進行を促してくる。いわば点の集合を線に見立てたゲーム内容になっており、プロセスそのものを強調する「昔のファイナルファンタジーの体験」ではない。「昔のファイナルファンタジーという概念」を提供するゲームらしい仕様と言える。

ノスタルジーの安売りでは決してない

とはいえ、「概念」を提供するだけでは表現として、人の心を動かす力が弱い。ワールドマップや飛空艇、ジョブシステムといった過去作から引用してきたモチーフは、もともと作品ごとに用意された、表現目標を達成するためのツールである。その因果を無視して寄せ集めたところで、表面的なノスタルジーしか得られない。

しかし、本作はそうなっていない。既にサービスが終了した『ファイナルファンタジー ブレイブエクスヴィアス』の1stシーズンをベースにした物語体験が、「昔のファイナルファンタジーという概念」を支えとして堂々と君臨している。作品コンセプトとしてはこちらが本命だろう。

ネタバレを考慮して具体的な内容に言及はしないが、本作のストーリーは、『ファイナルファンタジー』シリーズによく出てくるような属性を持ったキャラクターたちが、苦難に満ちた過去を受け入れて乗り越えていくものである。そのために、「昔のファイナルファンタジーという概念」によって作られた世界を旅して自分を見つめ直し、歴代タイトルの力を借りて障害を打破するというわけだ。懐かしさの魅力に依存することなく、『ファイナルファンタジー』は悩みながらも歴史という積み重ねを活かして前進し続けていることを、ゲーム全体で示す構成は美しい。

ビジュアル表現として採用されているHD-2Dはカットシーンにてギュルギュル動くカメラが特徴となっている。ズームやパンはもちろん、広い空間を活かした自由自在なカメラワークが小さくまとまりがちなドットを中心にした絵作りに壮大さをプラスしている。もともと、「ドット絵」は複数の色を隣り合わせにすることによる、視覚認識を通じた情報の密度を特徴としており、いわば小さい画面に向けた表現である。一方で「3DCG」は空間の余白を活かす、大きな画面に向けた表現である。両者を組み合わせたものがHD-2Dであり、キャラクターの頭身と背景の壮大さのミスマッチなど、組み合わせたがゆえに発生する歪みが解決すべき課題として話題に上がるが、本作に使われているHD-2Dはカットシーン以外の平時でも綺麗にまとまっている。

ただ、個人的にはストーリーにおけるキャラクターのセリフ回しが弱い印象を受ける。先述したように、本作はシナリオを構成する複数のエピソード1つ1つを短くし、そのぶん量を増やしている。HD-2Dを採用している都合上、身振り手振りの演技は使えない。ゆえに、キャラクターを描く上で、短いテキストで強烈な印象を残す会話劇を生み出す必要がある。本作は状況を説明するわかりやすいセリフが多く、キャラクターの個性に関する表現に独自性があまり感じられない。ゆえに作中で印象に残る場面が少なかった。

これらの問題は本作が運営型のゲームを原作にしていることに由来していると筆者は推測する。いわゆる運営型のゲームはサービスを維持するにあたってユーザー数を集め続け、プレイを止める要素を可能な限り取り除く必要があるからだ。自然とわかりやすさ重視になるだろう。さらに言えば、もともと続き物だった物語にエンディングを書き直した結果、最終盤の展開が貧相になっている。しかしながら、この問題は「物語体験の全般を損ねている」というわけではない。美しい構成を崩すほどではないということは言及しておきたい。

総じて、『ファイナルファンタジー レゾナンス』は『ファイナルファンタジー ブレイブエクスヴィアス』の実質的なリメイク作品として十分なクオリティを持ったゲームである。多数のモチーフ引用と現代的なゲームデザインを通じて『ファイナルファンタジー』は悩みながらも前進し続けていることをゲーム全体で示す物語体験は、原作ファンにとって大きな魅力となるだろう。また、ナンバリングタイトルがコマンドバトルからアクションRPGへの転換傾向にある現在の状況に、一抹の不安を覚えている『ファイナルファンタジー』シリーズファンにとって、現代的なコマンドバトルをベースにしたゲームデザインを見せる本作の姿は類型作品も継続して発売されるのではないかという、安心材料となるだろう。

だが、筆者としては古典からの引用ではなく、皆が引用する古典となりうるゲームを作ってほしい。本作がそのための試金石になることを願っている。

© SQUARE ENIX

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Takayuki Sawahata
Takayuki Sawahata

娯楽としてだけではなく文化としてのゲームを知り、広めていきたい。ジャンル問わず死にゲー、マゾゲー大好き。

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