ボクセル鉄道構築ゲーム『Station to Station』は、リラックスできるのに「シビアでいじわる」なゲームだった。絶景と難題のアメとムチ、最後はすべてを制する全能感

Prismatikaは10月4日、『Station to Station』を発売する。対応プラットフォームはPC(Steam)。『Station to Station』はボクセルグラフィックで描かれた世界で鉄道を構築していくゲームだ。プレイヤーは閑散とした土地に鉄道を走らせ発展させていく。

パブリッシャーのPrismatikaは10月4日、『Station to Station』を発売する。対応プラットフォームはPC(Steam)。定価は税込1980円で、リリース記念セールとして10月11日まで10%オフとなる税込1782円で販売中だ。

『Station to Station』はボクセルグラフィックで描かれた世界で鉄道を構築していくゲームだ。プレイヤーは閑散とした土地に鉄道を走らせ発展させていく。小麦畑から製粉所、牧場からチーズ工場に駅を置き、線路によって施設たちをつなげることで土地が発展する。鉄道を使う事で、閑散とした土地を緑豊かな活気あふれる土地にしていくのだ。

鉄道をテーマにしたゲームというと、巨大で複雑な鉄道網を作り上げるような作品が多いイメージで、本作のビジュアルはそういった作品と比べるとよりシンプルで牧歌的な印象を覚える。精細に作られたボクセルアートで表現された美しい自然と、ゆったりと走る列車を見ているとまるで鉄道模型を見ているかのような気持ちになるはずだ。そんな穏やかに見える本作だが、遊んでしばらくしていくとある事に気づく。それが本作の「シビア」さと、各ステージに仕掛けられた「いじわる」さだ。いじわると言っても、それによってストレスのみ生じるようなものではない。むしろ、本作の穏やかさの中にちょっとしたいじわるが入ることで、心地よく、そして楽しくプレイすることができたのだ。


リラックスして楽しめる産業発展

いわゆる鉄道が題材となっている作品ということで、列車を通すことで産業を発展させ、より多くの乗客を運び、延々と複雑な物流網を広げ続けるようなシミュレーションゲーム的な側面が強い印象をもっていた。しかし、実際にプレイしてみれば、本作のプレイフィールはどちらかというとパズルゲームに近いと筆者は感じた。

まず、本作はステージ制を取っており、農業や工業など、その土地ごとの産業施設を資金を使って鉄道で繋ぎ、発展させていく。小麦畑と製粉所を鉄道で繋ぐことで、小麦を小麦粉へ加工。さらにその製粉所とパン工場を鉄道で繋いで小麦粉をパンへと加工する。このように施設と施設を鉄道で繋ぐことによって、資金を獲得する。そしてその資金の中でさらに新たな課題へ挑み、すべての施設を繋ぐべき場所へ繋ぎ終えたらステージクリアとなる。


施設同士が繋がれると、その施設の周辺は何もない土地から、美しい大地へとゆっくり変化する。薄暗い灰色からめきめきと美しい緑色が広がる瞬間見れば、自分の力で土地を活性化した達成感に満ち溢れる。また、本作には時間に関する制限がなく、どれだけじっくりと細かく線路を敷いていようが構わないというところも魅力の1つだ。熟考したいプレイヤーや、作られた鉄道網の見た目まで気にしたいプレイヤーなども安心して本作を楽しむことができるはず。時間に追われるプレイが不得手な筆者も、常にリラックスした状態で楽しむことができた。




ほのぼのではないシビアな課題たち

先述したように、時間に追われず自由にゲームを楽しめる要素がある一方、ゲームから求められる課題は段階的にシビアさをあらわにしていくのが本作。ステージで使える資金はしっかりと限りがあり、敷いた線路の長さや、段差およびほかの線路を乗り越える橋などの設備に応じて、一気に資金が減っていく。なので、次々とステージ上に配置される施設をできるだけ安価に繋ぐことで、資金を得つつ、ほかの線路とかぶらないように線路の作りまで意識しなければならないのだ。

そのため「追加資金を支払い橋をかけて、短めの線路を作る」のか「大回りする長めの線路を作る」のかといった選択を、ステージ内で何度も迫られることとなる。筆者は基本的に橋を作ることを極力避け、曲がりくねった長い線路を敷いていった。しかしステージを進めるたびに施設の数は増し、長い線路たちはいつしか新しく敷く線路たちを通せんぼするように。やむを得ず、泣く泣く橋をかける結果となってしまった。現在もっている資金やステージ全体の構造をしっかりと理解し計画することが、適切なルートづくりに重要なのだ。


また、本作にはステージクリアのほかに、一定の資金を所持したままクリアする「資金クリア」と、ステージごとに用意された「スペシャルボーナス」が存在する。こちらに関してはあくまでボーナス要素の一環なのだが、これを狙うとさらにゲームがシビアになる。特に資金クリアに関しては、対応する施設同士を一直線に線路で繋ぐだけのゲームプレイでは絶対にクリアすることができないようになっており、プレイヤーにあるテクニックが要求されることになる。それが「カード」を使ったより良いルートづくりと、連続して施設を繋げたときに発生する「累積ボーナス」を狙ったゲームプレイだ。

まず、カードとは「線路を安くする」、「貰える報酬50%アップ」などの効果を任意で使うことのできるシステム。ステージを進めていくと線路が複雑になりがちな本作では、このカードを使ったより良いルートづくりが、攻略のカギとなる。


そして、累積ボーナスとは、駅と駅を線路で繋げたとき、対応しあう駅が複数あった場合に発生するボーナスだ。例えば、小麦畑から製粉所、そしてパン工場へ運ぶ鉄道ルートを形成する場合、小麦畑・製粉所はペアになっているため、繋いだ瞬間に資金が獲得できてしまう。そこで、あえてお互いに対応しあっていない小麦畑からパン工場へのルートをまず線路で繋ぐ。この時点では資金は獲得できず、そこから小麦畑、パン工場のどちらかを製粉所に繋ぐのだ。繋いだ瞬間、小麦畑、製粉所、パン工場間の商業ルートが一気に繋がれたこととなり、順番に繋ぐよりも多く報酬が貰える。前述のカードとこの累積ボーナスをうまく使うことにより、より安く線路を繋ぎ、より多く報酬を得ることで、資金クリアを狙うことが可能だ。




徐々に芽をだす「いじわる」さ

しかし、ゲームを進めてくると、本作のシビアな課題たちに加え、ゲームの中に潜む「いじわるさ」が徐々に芽を出してくる。たとえば、対応した施設同士がステージ上の両端に置かれていたり、崖と細い通路が連続していて、コストの高い橋による“階段”を作らなければならなかったりと、あきらかにプレイヤーに意図的ないじわるさを見せてくるのだ。

そういったいじわるさが見えたときにどうするかが、プレイヤーの腕の見せどころとなる。カードを使って上手なルートづくりを意識するか、累積ボーナスを狙ってゆっくりと時間をかけ、様々な駅を一本の線路でつなぎ切るか、もしくは思いもよらない大胆な方法か…。こういったいじわるさに対して取れる選択肢の幅が多いというところも本作の魅力だろう。


しかし、最初から上手なルートづくりや、累積ボーナスを狙った巨大なルートづくりを意識すると、後々それが大きな失敗を産むことがある。ゲームを進めていくと、牛乳やチーズ、パンなどの加工品を求める「都市」という施設が登場。この都市が存在すると累積ボーナスを狙いやすくなり、一気に加工品を納められるルートづくりを狙いたくなる。

筆者は都市が出てくるとついつい累積ボーナスを狙ってしまい、小さな商業ルートを作ることを無視してしまいがち。目先の大きな欲にとらわれた筆者は、最後に全部のルートをつながるようにしようと、とにかくさまざまな駅に線路を敷いていった。しかしたくさん線路を敷いた先に待っていたのは巨大な富ではなく、「もうこれ以上線路ひとつ敷くことができない」レベルの資金不足。いわば“破産状態”となった現状を目の当たりにした時にはもう遅く、堅実なルートづくりの大切さを知り、静かにステージをリセットした。こういった「ついつい欲望に駆られる」ステージ構成も本作のいじわるさの一端だ。

パズル的ないじわるさが決して度を超えたストレスにならないのは、プレイヤーが取れる選択肢の幅が広いことに加え、本作のいくらでも時間をかけていいゆったりとしたゲームのつくりがそうさせているように感じる。じっくりと時間をかけてリラックスしつつ、シビアな課題といじわるに立ち向かうのは心地の良い時間だ。そして、そのいじわるさを解決したときに、美しいビジュアルやサウンドと共に豊かな大地が一気に広がっていき、心地の良いエフェクトと共に資金が一気に入ってくる。この演出はプレイヤーに、まるでこの土地すべてを制したような全能感を与えてくれるはずだ。


『Station to Station』は一見ほのぼのしたゲームに見えるが、シビアさといじわるさがしっかりと垣間見え、クリアした時には不思議な高揚感が味わえるゲームであった。ゲームでリラクゼーションしたい、でもほどよく難しくあって欲しい……と思うプレイヤーにはとっておきのゲームではないだろうか。また、目標に追われずただゆっくりと鉄道づくりをしたいというプレイヤーには、カスタムゲームモードをおすすめしたい。自分の好きな景観や地形で、好きなだけ自分の求めていた鉄道を作り上げることができるはずだ。

『Station to Station』は、PC(Steam)向けに10月4日配信予定。定価は税込1980円で、リリース記念セールとして10月11日まで10%オフとなる税込1782円で販売中だ。

Tamio Kimura
Tamio Kimura

エンタメ大好き系ゲーマー。COOPゲームが大好き、クライム系だったらなおよし。

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