Cygamesは、PlayStation 4向けに発売予定の対戦格闘ゲーム『グランブルーファンタジーヴァーサス』(以下、GBVS)のクローズドβテストを、5月31日から6月2日未明までの3日間実施した。

『GBVS』は、2014年にリリースされて以来登録者数2300万人を超え、2019年10月からはアニメ第2期が放送予定となっている王道スマホRPG『グランブルーファンタジー』(以下、グラブル)を題材に、『GUILTY GEAR』シリーズや『BLAZBLUE』シリーズのアークシステムワークスが開発を手掛ける格闘ゲーム。対戦格闘ゲームファンはもちろん、『グラブル』をプレイしている騎空士に向けても開発が行われている注目作だ。そんな本作のβテストに参加してきたので、そのレポートとして『GBVS』の内容を紹介していく。今回は、格闘ゲームを遊ぶものの勝敗にはそれほどこだわらないYokoyamaと、格闘ゲームを日常的にふれ特にアークシステムワークスの作品をよく遊ぶKashiwagi、遊び方の異なるふたりの視点によるダブルレビューという形でクローズドβテストの模様をお送りさせていただく。

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Yokoyamaによるインプレッション

 

3Dでありながら、2Dとしても魅せるグラフィック

『GBVS』でまず目を惹いたのは、顔立ちの良い『グラブル』のキャラクターの魅力をそのまま3Dへ落とし込んだようなグラフィックだ。クローズドβテストの時点で実装されていたのは、グラン/カタリナ/シャルロッテ/ランスロット/フェリの5人。対戦中は、彼らが2D格闘ゲームのキャラクターとして、滑らかなモーションと派手なエフェクトを伴って画面の中を縦横無尽に動き回る。一方で、開幕の掛け合いや奥義の演出など、一度カットシーンに入れば3Dモデルを生かした躍動感あふれる動きとカメラワークになり 、さながらアニメを見ているような感覚で楽しめように仕上がっていた。

この3Dを2Dとして見せつつ、3Dの利点も活用する表現は、『GUILTY GEAR Xrd -SIGN-』以降の『GUILTY GEAR』シリーズでも見られたアークシステムワークスのお家芸。それが『GBVS』でも存分に発揮されているというわけだ。細かな3Dモデルの出来栄えについては、クローズドβテストの時点でも元々のイラストが持っている魅力が十分に表現されていたように思う。これは余談だが、フェリのスカートの裾から黒い布がチラチラと見え隠れしていたものの、それが何なのか確認はできていない。シャルロッテの方はスカートのガードが固く、筆者がクローズドベータテスト中そこまで触らなかったこともあり、未確認だ。

また、ロビー用にもデフォルメされた専用のモデルが用意されている。特に困り顔のフェリはなんとも言えない魅力があり、味わい深い仕上がりとなっていた。

 

初心者でも遊びやすい、シンプルな基本システム

次は操作面からシステムへ触れていこう。攻撃は弱攻撃(□ボタン)/中攻撃(△ボタン)/強攻撃(×ボタン)、投げ(L1もしくは□+×)とオーバーヘッドアタック(L2もしくは△+◯)───しゃがみガードで防げない中段攻撃。加えて、特定のコマンド入力とボタンの組み合わせによって成立するアビリティ(必殺技)など、格闘ゲームとして基本的なものが用意されていた。特徴的なのは、方向キーとの組み合わせで必殺技が簡単に繰り出せるアビリティボタン(R1)と、ガードボタン(R2)の二つだ。

『GBVS』のアビリティは、通常の格闘ゲームの仕様とは異なり、RPGやMOBAなどで見られるような、技を一度使ったら次に使えるまでのクールタイムが生じる方式が採用されている。アビリティボタンを使ってアビリティを発生させた時、コマンドによってアビリティを繰り出すテクニカル入力に比べてクールタイムは伸びてしまうが、それ以外の点はテクニカル入力と同じ。筆者もテストプレイ中は、特に対空でアビリティボタンを使用していたのだが、クールタイムが伸びると言ってもそこまで気になるようなものではなく、むしろ素早く確実に出せるメリットが勝っていたように思う。ガチガチの初心者以外にとっても、コマンドが化けたり、入力ミスによるリスクを考慮せず、咄嗟に、確実に出したい技を出せることの意味は大きい。このアビリティボタンによって、複雑なコマンドを入力できなくとも、多彩な技を駆使してそれっぽく誰でも対戦が楽しめるように仕上がっている、と言えるのではないだろうか。
【UPDATE 2019/6/22 16:50】
アビリティボタンによって出せるアビリティは、弱版に限られると記載しておりましたが、コマンドリストに△・R1及び◯・R1の同時押しによって、性能が変化する旨が記載されておりましたので、修正いたします。

 

ガードボタンはその名のとおり、ボタンを押すとガードが出来るボタンだ。格闘ゲームプレイヤーにとっては、方向キーを相手と反対に押してガードするのはもはや染み付いた動作だが、格闘ゲームに慣れていないプレイヤーにとってガードとは方向キー以外のボタンでするもの。主にそんな格闘ゲーマー以外のプレイヤーに向けて、このガードボタンが用意されている。

一方、本作に実装されている防御面のシステムは、昨今の格闘ゲームにおいては珍しく、通常ガードと回避のみに限られている。ジャストガードがあると言っても奥義ゲージが微量増加する程度で、回避も少し間合いを詰めたりその場で攻撃を避ける程度のもの。ゲージを消費し距離を置いたり、専用のリソースを使ってダウンを奪う仕切り直し用の専用システムは用意されていない。全体的にゲームスピードが遅めに設定されていることも手伝って、駆け引きはシンプルに。従来のアークシステムワークスのタイトルよりもプリミティブな読み合いに重点が置かれているように思えた。

クローズドβテスト中特に印象的だったのは、とにかく初心者が多く、そんな彼らともある程度対戦が成立したことだ。『グラブル』の顔立ちが良いキャラクターたちがボイスを伴ってゲーム内で動き回っているだけでも楽しい部分はあるだろうが、『GBVS』に用意されているアビリティボタンをはじめとした初心者でも遊びやすいようにという配慮の数々や、シンプルで原始的で、懐古的ですらあるゲーム性が、少なくともクローズドβテストでは機能していた証左ではないか。楽しそうに遊ぶ初心者たちとの対戦を経て、筆者の目に『GBVS』はそんな風に映った。

 

Kashiwagiによるインプレッション

『GBVS』の3日間に渡るクローズドβテストでは、実プレイ可能時間は15時間程度だったにも関わらず非常に密度の濃いゲーム体験ができた。Yokoyama氏に代わって、以下ではキャラクターごとのプレイ感と、総合的なゲームプレイについて軽く述べさせて頂く。

 

プレイアブルキャラクター所感

クローズドβでは、原作『グラブル』でも人気の高い5人のキャラクターが使用可能であった。個性豊かな各キャラクターを、実際にプレイしてみた感触を軽く紹介する。

・グラン
もはや格闘ゲームのお約束である、波動昇竜持ちの主人公枠。ジャンプの軌道が高いこのゲームにおいて、「波動で飛ばせて昇竜で落とす」戦法は有効ではあるのだが、しかしてこのキャラの真価はその小足にある。早い発生とそれなりのリーチ、目押しで連続ヒット、ガードさせて有利という性能を誇り、密着では3回、ダッシュ慣性つきでは5回刻むことができる。小足からは他の地上技や必殺技、はてには奥義まで連続ヒットするためリターンも十分である。攻略が進んだクローズドβ終盤では、前述の「飛ばせて落とす」戦法よりも、下段をスカせる突進技や割り込みの昇竜でダウンを取った後にひたすら小足を押し付けて固める戦法が主流であった。

・カタリナ
グランと同じく波動昇竜持ちだが、中距離の制圧力が非常に高いレイピア持ちのキャラ。△と↓+△ のリーチが長く、また飛び道具の隙も短いため、これらの技の先端距離では無類の強さを誇る。また、使い勝手の良い突進技と、グランほどではないにしろ固めに使いやすい□と↓+□を持つため、密着距離でも戦える。総じて優等生なキャラではあるのだが、クローズドベータの環境下では「ジャンプ、自分以上にリーチの長いムチ、高性能な突進技などをひたすら捌きつつ△、↓+△などで差し返し、自分の得意な距離を維持する」という異常に硬派な立ち回りを要求されるキャラとなっていた。使い手の実力が如実に現れるキャラであったと言える。

・シャルロッテ
通常技のリーチが非常に短いが、代わりに優秀な必殺技で立ち回りをカバーするキャラ。ガードしても反撃が非常に取りづらく、判定も強い突進技を持つ。めくり判定もある優秀なジャンプ攻撃と、攻めの継続に使える「ソード・オブ・リュミエール」、中下投げ択が組み込まれた「ノーブル・ストラテジー」など、捕まえた相手をそのまま轢き倒す能力に長けている。いわゆる溜めキャラではあるのだが、『GBVS』ではコマンドの簡易入力があるため、溜めを作らずとも必殺技を使うことができる。クールタイムは全体的に長めであるためテクニカル入力のほうが好ましいが、後ろ溜めを作らずに突進ができるのは非常に大きなメリットである。特殊技が当て身であることと、解放奥義である「ノーブル・エクスキューション」がリーチこそ短いものの発生が非常に早く、上にも判定があり飛びに強いため、不利状況からの逆択で相手にリスクを強く意識させることができる。

・ランスロット
スピードキャラ枠であり、特殊な空中軌道で相手を翻弄しガードを崩す能力に長けたキャラ。小技の発生が早く、密着状態からガンガン攻めることができる。ダウンを取った相手に飛び道具を重ね、二段中段、遅らせ中段、着地下段、着地投げ、めくり中下段など多彩な崩しを繰り出してくる。攻めにループ性があり、崩しの強さと相まって非常にアークシステムワークスらしいキャラ。また、無敵技が空中転移という特殊な必殺技になっており、一点読みの空中投げでしかリスクを背負わせることができない。クローズドβのような閉じた環境では「わからん殺し」が発生しやすいため、ランスロットに訳が分からないまま倒されたという人は多いのではないだろうか。

・フェリ
ムチとペットで戦う遠距離キャラ。クローズドβのプレイアブルキャラクターの中では屈指のリーチの長さを誇り、相手の通常技の遥か外側から一方的に技を振り続けることができる。この手のキャラクターは地上の牽制を読まれて、飛ばれて近づかれると無力なことが多いが、フェリは空中ガード不能の対空技と無敵のついた昇竜を持っているため飛びにもかなりのリスクを背負わせることが可能。空中特殊技で画面端から脱出することもでき、カタリナ以上に長い下段である↓+△はなぜか低姿勢で弾を抜けることができる。遠距離を維持してムチを振っているだけでも強いのだが、昇り中段になるジャンプ+□と設置技を利用してセットプレーじみた攻めを展開することもできる。また、唯一奥義が2種類あるのも特徴だ。

 

アークシステムワークスなりの回答

『GBVS』のシステムは非常にシンプルに作られている。通常技から通常技をキャンセルするいわゆる「ガトリング」のシステムやジャンプキャンセルはほぼ存在せず、密着状態からボタン3連打のコンボが用意されているのみだ。ジャストガードのシステムは存在するものの、奥義ゲージが増加するのみで硬直軽減などの効果はなく、溜まる奥義ゲージの使い道も「100%になったら奥義が打てる」というだけのものとなっている。原作『グラブル』を意識した独特のクールタイムシステムや、「避け」「回り込み」といった特殊動作は存在するが、他のメジャー格闘ゲームタイトルに比べると覚えなければいけないシステムは非常に少なく、また把握しなければならない画面内の情報量もかなり削ぎ落されている。

基本的なシステムの骨格がほぼ出来上がっており、プラスアルファとして個性的な特殊システムを組み込むことで差別化を狙うことが多い2D格闘ゲームジャンルにおいて、このような原点に立ち返るゲームデザインは逆に珍しい。かといって『GBVS』に独自性が全くないわけではない。前述したクールタイムのシステムは「↓\→+○で牽制した後はしばらく同コマンドの必殺技が全てが打てないので前ダッシュや突進技を通しやすいし、→↓\+○などを使った後も同じく同系統の対空必殺技がしばらく使えないため飛び込みやすい」といったこのゲーム独特の駆け引きを生み出しているほか、バランス崩壊の原因となりやすい「ループコンボ」の排除にも成功している。

また、このシンプルなゲームシステムのメリットとして見逃せないのが「対戦までのハードルが低い」「読みあいポイントがわかりやすい」という点だ。アークシステムワークスの格闘ゲームはとにかく「攻め」が強いゲームが多く、初心者が対人戦に挑むにあたってまずは攻めの技術を身に付けることが求められる。ほとんどのキャラに強力な攻めのツールが用意されているので、まずは武器の振り方を覚えるのだ。この武器はたとえ上級者相手でも通用するようなものであることが多いため、武器の振り方さえ覚えてしまえば格上相手でも勝ちを拾うことができる。ただし、これは逆に言えば武器を用意できなければ対戦の前提を満たせないということでもある。それなりに対戦を形にしたいならば、どんな簡単なものでもいいのでコンボと連携を練習してくる必要がある。なまくら刀では振っても意味はないということだ。

『GBVS』のシステムは、この対戦までのハードルを取っ払うことに成功している印象だ。一通り技の性能を把握したならば、すぐに対戦に飛び込んでいける。相手の攻撃をガードしたので反撃したいが、必殺技でキャンセルされたら潰されてしまう。長い牽制技を振りたいが、ジャンプされたら空ぶって隙だらけになってしまう。見てから投げ抜けするのは難しいので密着した時点で投げ抜けを入れておきたいが、ジャンプや中段攻撃が怖い。他のゲームでは複雑なシステムや連携に隠れている「剥き出しの格闘ゲームの読みあい」がそこには存在しており、たとえ始めたばかりの初心者同士でもそれを体験することができるのだ。

真剣の斬り合いのようなアークシステムワークス他作品のシステムは、最初に要求する練習量こそ多いもののある程度実力差があっても番狂わせが生まれやすいという特徴があった。そういう意味では、『GBVS』の抜き身の読みあいでは、この手の読みあいを何千回何万回と繰り返してきた熟練の格闘ゲーマーに初心者が対抗することは難しいのかもしれない。しかし、『GBVS』のクローズドベータは、東京に用意された64人×40個のロビーがほぼ常時満員であり、福岡、大阪、札幌のロビーも常に半数以上は埋まっているほどの盛況ぶりであった。プレイ人口が多く、マッチングがしっかりしていれば初心者がわざわざ経験者を相手取る必要はない。原作『グラブル』のネームバリューと、ぱっと見でも人を惹きつける美麗なグラフィック、そしてクローズドβの参加人数。これらを見るに、『GBVS』は数多くの格闘ゲームが切望してきた「初心者は初心者同士、同じレベルでの対戦を繰り返し徐々にステップアップして経験者達と肩を並べて戦えるようになる」環境を用意できるのではないかと感じさせた。

『GBVS』のシステムは多くの格闘ゲーム経験者達にとって少し懐かしくて手に馴染むものであり、同時に初心者にとってはとっつきやすく、格闘ゲームのいろはをすぐに体験できるものであった。アークシステムワークスの今までのタイトルとは少し毛色が違うものではあるが、「初心者が経験者相手に勝てるのか」という問いかけにまた異なる方向からアプローチした「ジャンルの初心者にも勧められる格闘ゲーム」のひとつの回答なのではないだろうか。『GBVS』は既存の格闘ゲームファンに新しい価値を提供しつつも、新たな客層へもしっかりとしたアプローチを取っている。まるでピアノのツェルニー教本のように、初心者が手に取りやすく、しかし奥が深く、触れているうちに自然に格闘ゲームの技術が身についていくような、そんなゲームを期待させてくれるクローズドβテストであった。

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