マルチプレイ対応島暮らしシム『スターサンドアイランド』は、究極のスローライフゲームになりそう。自由度抜群の建築に、“アタック待ち”恋愛システム

本稿では、近年ライバル作品も多いスローライフゲームというジャンルの中で、なぜこれほどの注目を集めているのか、その魅力を再発見していきたい。

『Starsand Island(スターサンドアイランド)』は、のどかな田舎の島「星砂島」で住民たちとともに暮らすライフシミュレーションゲームだ。対応プラットフォームはPC(Steam)/PS5/Nintendo Switch/Xboxで、ソロプレイまたはオンラインマルチプレイに対応。現在開発中だ。

本作を手がけるSeed Labは、4月29日よりKickstarterにてクラウドファンディングを実施。開始からわずか数日で個数限定のリワードが売り切れ、急遽大幅な補充がおこなわれるという凄まじい人気っぷりを見せた。予定されていた終了日時以降も支援を募る「レイトプレッジ」を経て、6月14日の最終日までに目標額のおよそ3倍に相当する約31万ドル(本稿執筆時点のレートで約4600万円)の資金調達に成功した。

そんな『スターサンドアイランド』は、今年筆者がもっとも大きな期待を寄せている作品の1つだ。本稿では、すでに判明済みの情報をフォローアップしつつ、近年ライバル作品も多いスローライフゲームというジャンルの中で、なぜこれほどの注目を集めているのか、その魅力を再発見していきたい。

あこがれの島生活

『スターサンドアイランド』の舞台となる「星砂島」は、亜熱帯の穏やかな気候に包まれた桃源郷。その特徴的な形から「深海に輝く星」とも称されるこの島で、人々は自然と海との調和、そして古来からの伝統を重んじながら暮らしてきた。プレイヤーは都会の喧騒を抜け出して、故郷である星砂島へと里帰りし、島の住民たちとのんびりと日々を過ごしていく。

本作はアニメ風の3Dグラフィックや幅広いキャラクターメイクが持ち味。さまざまな背景・ストーリーを持つ個性豊かな登場キャラクターたちと自由に交流し、絆を深めていくことが可能。プレイヤーの選択次第では、人生のパートナーとして関係をより特別なものへと発展させることもできるだろう。

またメインとなる職業が5つ存在しており、農業や漁業のほか、牧場で動物を育てたり、遺跡を探索して敵と戦ったりすることが可能だ。そのほか料理、ダイビング、虫捕りなど、ここには書ききれないほどにアクティビティも多彩。それぞれのプレイヤーが思う「理想の島暮らし」を実現するための要素がふんだんに盛り込まれた作品となっている。

自由度抜群の建築システム

本作の建築システムは非常に柔軟。家具などの配置に留まらず、壁・床・屋根などの材質やレイアウトも自由に決めることが可能だ。また住居以外のさまざまな施設も島内に好きに建てることができるため、都市化するほどの大規模な開拓から、本来の自然の景観を守るプレイまで、高い自由度が謳われている。

そして、本作を代表するカスタマイズ要素として「オーシャンパーク」が存在する。オーシャンパークは前述したクラウドファンディングの主目的だったとされる要素であり、星砂島の本島対岸の海域に建設することができる水上公園だ。ここでは、ウォータースライダーや観覧車といった100種類以上の建築パーツを組み合わせることで、プレイヤーが自由自在に空間をデザイン可能。NPCだけでなく、オンラインマルチプレイで他のプレイヤーを呼んで一緒に楽しむことができるという(関連記事)。。

このオーシャンパークに対して、筆者は特に関心を寄せている。それは、建築の自由度が高いとされる本作において、珍しくはじめから用途が決まったエリアであるからだ。将来的には星砂島全体を自由にカスタマイズできるようになるといった構想も開発元により語られているため、技術的な障壁による“落としどころ”という可能性はもちろんあるが、筆者としてはこうした専用エリアを設けられているということにむしろワクワクを感じる。

というのも、筆者はスローライフシムや都市開発シム、サバイバルクラフトゲームなどをプレイする際、エリアごとのコンセプトや役割をしっかりと決めてからでないとなかなか建物を作り始められないタイプだ。もちろん、あとから手直しがどの程度しやすいかにも左右されるため作品次第ではあるものの、丁寧に作ろうと思うがあまり、最初の一手がなかなか出ないという経験がある人は筆者のほかにもいるかもしれない。自由すぎることにより、自身のなかに不自由さが生まれる状況とも言える。そんなプレイヤーたちは、オーシャンパークで心置きなくリゾートを作りこむことができそうだ。

繊細に描かれる住民たちとの絆

星砂島にはさまざまなキャラクターが暮らしており、誰とどのように日々を過ごすかはプレイヤー次第。仕事やプライベートを通して交流を重ね、好感度が上昇すれば親友や恋人として特別な関係を築くことができるようになる。本作ではプレイヤーが行動を起こすだけでなく、NPCのほうからアプローチしてくるといったシステムが導入されているようだ。

従来までの類似作品における恋愛は、プレイヤーがNPCを攻略するという言わば“一方通行”なものが一般的。対して本作では、逆にNPCのほうからプレイヤーに心を開いてくれる場面も存在するという。関係が深まるにつれて、話し方がさりげなく変化したり、特別なプレゼントを送ってくれたりといった場面も。まさにプレイヤーが“攻略される”といった体験が可能とのこと(関連記事)。

やはり人間関係はお互いがいてこそ成立するものであり、キャラクターとの関係性がプレイヤーの一存で決定されていくわけではないというのはとても好印象。恋愛や友情を落とし込むうえで、未来のゲームの姿を垣間見ている気すらしてくる。なおキャラクターたちはみな島で自身の役割をもって暮らしているが、プライベートと仕事という異なるシーンの間で、人間関係がどれほどシームレスに描かれるのかが、個人的には気になるところ。相性の合う相手であれば、仕事の一幕すら二人にとっての“デート”になりうるのだろうかという淡い期待も浮かんだ。

ちなみに本作ではNPCキャラクターだけでなく、動物たちとの関係も丁寧に作りこまれているようだ。ニワトリやヒツジなどの動物を飼うことができる畜産システムが存在し、親密度が高まると農作業の手伝いをしてくれたりもするという。また、動物にまたがってレースへの参加などができる「マウントシステム」も公開されているが、動物は誰彼構わず乗せてくれるわけではない模様。本作の動物は、撫でられるのが好きだったり、ひとりで過ごすのが好きだったりと、それぞれが隠れた性格や個性を備えている。そうした特徴をしっかりと見抜いて触れあうことにより、特別な絆を育むことができるようだ(関連記事)。

リアリティのある人間関係が描かれる本作だからこそ、自然豊かな田舎を象徴する動物たちとの関係が味気なく映ってしまう可能性もあったかもしれない。ただ紹介されている仕様を見るに、ユーザーのそうした懸念は完全に払拭されそうだ。本作において動物たちは、機能やシステムの一つとして組み込まれているのではなく、プレイヤーが心から向き合う友として存在感を示してくれるのだろう。

こだわり抜かれた島暮らしゲーム

ところで弊誌では以前、本作を手がけるSeed Labスタジオの開発陣に対してインタビューを実施している。その中では、人々がさまざまなプレッシャーを受ける現代社会において、「田舎での隠居生活」を通して心の安らぎを得てほしいというねらいが語られていた。いわゆる牧場ゲームをこよなく愛す開発メンバーたちが、人々に癒しを届けることを目指して作る“究極のスローライフゲーム”というわけだ。

さらに、本作は『ザ・シムズ』シリーズや『あつまれ どうぶつの森』、『Stardew Valley』といった作品からインスピレーションを受けて制作されたという話を伺うことができた。温かみのあるグラフィックをはじめ、自由度の高い建築システムや繊細な人間関係など、これまで伝えてきた本作の持ち味とも言える要素は、従来の作品に足りないと感じる要素なども分析するなかで、開発チームに強い影響を与えた作品の特色を巧みに受け継いでいるということがわかる。

大きな注目を集める本作の背後には、「理想の島暮らし」を目指す開発チームの一貫した強い理念があった。新情報が出るたびに期待がどんどん高まるばかり。実際にプレイできる日が待ち遠しい。

『Starsand Island(スターサンドアイランド)』はPC(Steam)/PS5/Nintendo Switch/Xbox向けに開発中。東京ゲームショウなどでの新情報公開に期待したい。

Shion Kaneko
Shion Kaneko

夢中になりやすいのはオープンワールドゲーム。主に雪山に生息しています。

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