グラビティゲームアライズ株式会社は、『Aeruta(アルタ)』のNintendo Switch/PS5/PS4用ダウンロード版を12月10日に配信開始する。あわせて、Nintendo SwitchおよびPS5向けには、パッケージ版および限定特典を同梱したコレクターズBOXも同日発売予定だ。本稿ではPC(Steam)版をすでにじっくり遊んでいた筆者が、Nintendo Switch版でいよいよ“逃げ場”を失った感想をお届けしよう。

『アルタ』は、ダンジョンを探索するアクションパートと、パン屋を経営するシミュレーションパートの二つの要素を備えたハイブリッドアクションRPG。プレイヤーは、キツネ耳の少女「チャヤ」となり、「アルタクリスタル」をめぐる大騒動へと巻き込まれていく。

弊誌はこの度、『アルタ』のNintendo Switch版を先行プレイする機会に恵まれた。筆者はPC(Steam)版をプレイ済みであり、すでにチャヤの魅力を存分に味わっていた(関連記事)。ケモミミ少女に加えて、個性豊かな街の人々、そして歯ごたえのあるアクションと忙しないパン屋経営にどっぷりと浸かっていく。とはいえいちどプレイして油断していた筆者は、Nintendo Switch版をプレイして“逃げ場のなさ”を味わう事になった。

※本記事は開発中のビルドを使用しており、製品版とは仕様や内容が異なる場合がある点に留意されたい。

“勇者”目指してダンジョン探索、“借金返済”目指してパン屋経営

本作の舞台は、チャヤをはじめ、さまざまな種族の動物たちが暮らす世界。現在は穏やかな時間が流れているが、はるか昔、この世界は災厄に包まれていた。しかし、「アルタクリスタル」を携えた勇者たちの活躍により、平和がもたらされたという経緯がある。そして時は流れて現在。勇者を目指すチャヤは、冒険者ギルドのミッションに挑戦している最中、ひょんなことからパン屋のオーブンを破壊。借金返済のため、パン屋で働くことになる。こうしてチャヤの“冒険者”と“パン屋”の、二足のわらじ生活が始まるのだ。

本作ではカレンダー形式が採用されており、上述した「アクションパート」と「シミュレーションパート」のどちらを進めるか、その日の状況に応じて判断することになる。まずアクションパートでは、シナリオの進行に応じて解放されるダンジョンから行き先を選択。3種類の武器から一つを装備し、回復アイテムのパンを持って挑む仕組みだ。ダンジョンはルート選択式で、通常の敵が出現するエリアをはじめ、建築に必要な木材を大量入手できるエリア、強敵が出現するエリア、宝箱からレア素材を獲得できるエリアなどに分かれている。そして、最深部で待ち構えるボスを倒せばダンジョンクリアとなり、その日の行動が終了する。

かわいい“グラフィック”と、かわいくない“難易度”

ただし本作は、どこか温かみや優しさを感じるグラフィックに反して、難易度ノーマルでも戦闘はまったく優しくないので注意したい。一見愛らしいザコ敵の攻撃でも、一発でHPがごっそり削られるうえ、凶悪なトラップがいたるところに仕掛けられているのだ。なかでもボスは攻撃力、体力ともに高く、ゲームオーバーになることもしばしばある。

一方で、難易度は通常のノーマルにくわえ、敵の攻撃でひるまなくなるカジュアルが存在。いつでも変更できるうえ、ゲームの内容には影響しない。たとえ力尽きても、ダンジョン内で手に入れた素材は持ち帰ることができ、さらに本作は基本的に時間制限が存在せず、失敗による痛手はほとんどないのだ。そのため、筆者のようにアクションが苦手でゲームオーバーを量産するプレイヤーでも、安心してプレイできる。

そしてアクションパートで筆者が何より推したいのは、チャヤの動きだ。戦闘中は、画面狭しとチャヤが躍動してくれる。例えば、武器を振るう際には、スマートな動きに合わせてふさふさの尻尾が揺れるだけでなく、キツネ耳までぴょこぴょこと動いているのだ。華麗な武器さばきと、元気いっぱいに揺れる耳や尻尾。真剣に戦っているはずなのに、どうしてこんなにかわいいのか。また、チャヤのアクションに見とれてうっかりゲームオーバーになっても、先述したようにデメリットなく再挑戦できる。つまり、チャヤの動きはじっくり見つめ放題だ。Nintendo Switch版でもそうしたチャヤの魅力や上質なドット絵アニメーションは健在であった。

冒険の相棒、それは「パン」

そして、チャヤの冒険を支えているのが、もう一つの柱である「シミュレーションパート」だ。というのも本作、戦闘中の主な回復手段が「パン」なのだ。しかもただのパンではない。「おふとん貝サンド」は80%の確率でHPを66%回復するが、残る20%ではわずか1%しか回復しないというギャンブル仕様。さらに「ポクポクシュー」は、HPを回復しつつ広範囲に爆音攻撃を放つという、まるで兵器のようなパンだ。食べ物として個性が尖りすぎているものの、そんな効果に反して見た目は実においしそう。どれもふんわり柔らかなドット絵で描かれており、思わず画面に手を伸ばしたくなる。

こうしたパンは、種類によってHPの回復量やステータス強化の効果が異なるが、新たなパンを開発するためにはシミュレーションパートを進める必要がある。加えて、拠点では武器の強化も可能だが、そのために必要なスキルポイントは、パンの開発やレシピの強化によって手に入る。つまり本作では、パン屋経営に励むほどダンジョン探索が楽になり、探索を進めれば新たなシナリオやパンのレシピが解放される。二つのパートが互いに恩恵をもたらす仕組みとなっている。

そんなパン屋の営業は、開店前の準備から始まる。開店後は、客が怒涛の勢いでなだれ込んでくるため、プレイヤーは品出しからレジ打ち、果てはゴミ掃除まで、あらゆる業務をほぼ一人でこなしていく。焼き上がったパンを頭に載せて陳列棚へ走り、お客さんが来ればレジへ急行。会計を済ませたと思えば、今度はゴミ掃除だ。店内を右へ左へと駆け回るチャヤの姿には、思わずほほが緩む。指がつりそうなほど忙しいのに、一生懸命なチャヤの姿に、やっぱりつい見とれて客に怒られてしまう。ただし、こうした作業はやがてバイトでまかなえるようになり、パンの種類を増やしたりレベルを上げたりすることで、毎日獲得できるコインがどんどん増えていく。進めていけば、かつての忙しさが懐かしくなる日も訪れるだろう。

クセ者揃いの住人たち

こうして獲得したコインは、広場の活性化やステータスの強化に使用できる。プレイヤーが営むパン屋のある「コムギ広場」は、ゲーム開始当初、シャッター通りのように寂れている。店はほとんどなく、人もまばらだ。しかし、コインや探索中に手に入れた素材を使用し、お店や道場などを建設していくことで、次第に広場全体が活気を取り戻していく。

そうすると、チャヤに負けず劣らず個性的なキャラクターが登場するようになる。一見ひ弱に見えるが、軽々と巨大な木材を運ぶヒツジの「ボリオ」。王家騎士団という誉れ高い職に就きながらも、少々抜けている「シヴァ」。そしてコインが大好きで筆者も大好きな「メルリーナ」だ。彼女は、魔女を思わせる神秘的な装いと、見るからに柔らかそうな旅商人だ。つかみどころがなく謎の多い人物だが、人の話にはいつでも真剣に耳を傾ける優しさの持ち主でもある。これが俗にいう“ママみ”だろうか。ほかにもさまざまな住人が登場し、会話やプレゼントを通じて彼らの好感度を高めることができる。

各キャラクターの好感度が一定値に到達すると、好感度シナリオが解放され、普段は見せない彼らの一面を知ることが可能だ。なかには、ほっこりするだけでなく、思わず涙ぐんでしまうシナリオもあり、気づいたころには推しキャラができているだろう。なお、筆者の推しは当然チャヤだ。

携帯モードで細部を堪能、TVモードではママみを浴びる

PC版でもお馴染みのポップなキャラクターデザインや温かみのある色遣いは、Nintendo Switch版でも健在だ。ドット絵のキャラクターは細やかに動き、カラフルな色彩も手元の画面で存分に楽しめる。小さな画面内で活き活きと動くチャヤたちは、これはこれで愛らしい。

さらに、顔を画面に近づけてまじまじと見れば、普段は気づかないような細部まで見えてくる。例えば、チャヤは就寝時にキツネの姿になるが、その際、前足で寝床をふみふみしていることに気づいた。これは、犬やキツネなどが寝床を整える「巣作り行動」を思わせる、動物ならではのしぐさだ。普段のチャヤは「天真爛漫」「天衣無縫」といった言葉が似合う愛嬌満点の美少女だが、こうした何気ない仕草を見ると、彼女がふわふわのキツネであることを改めて実感する。神は細部に宿るとは、まさにこのことだろう。もちろんTVモードにすれば大画面で遊ぶことができ、メルリーナのママみを全身で浴びることも可能。ちょっぴり大げさに言えば『アルタ』を二通りで楽しめるわけだ。

とはいえ、筆者は2周目なので大きな驚きもないだろうと高を括っていたが、思わぬところにNintendo Switch版の魔性の魅力があった。というのも、当然Nintendo Switchの携帯モードではスリープ状態であればボタンを押すだけでいつでもどこでも中断したところから再開できる。この再開の手軽さは、『アルタ』の抗いがたい誘惑をさらに強めている。本作は一日の回転が速く、15分ほどでパン屋経営やダンジョン探索が終了するため、ついつい「あと一日だけだから!」と次の日を始めてしまう。こうした短いゲームサイクルはNintendo Switchの携帯モードと相性がよく、筆者はついにPCデスクから解き放たれ、リビングでもキッチンでもプレイしている。いよいよ日常生活が『アルタ』に侵食され始めた。PC版だったからこそ、席を外した際にプレイしすぎないように自制心を保てていた筆者にとって、もはや欲望を止めるものはない。特に筆者はSteam Deckを持っていないため、その感動もひとしお。出先や作業の合間などで片手間にプレイもしやすく、本作とNintendo Switchの親和性を感じさせてくれる。

夢にまで見た、チャヤとの「いつでもいっしょ生活」

筆者にとって何よりうれしいのは、やっぱり「いつでもどこでもチャヤに会える」ところだ。小さな画面で元気に動き回るチャヤは、まるで手の中で輝く真珠のよう。Nintendo Switchならチャヤをどこへでも連れていけるのだ。自宅だけでなく出先のカフェや職場まで。旅行先へも持っていける。何か嫌なことがあっても元気に動き回るチャヤを眺めていれば私は生きていける。『アルタ』からの“逃げ場”を失った私には、裏を返せばいつでも逃げ込めるケモミミ世界がある。そう思えるだけで、心の余裕が生まれ、人生は豊かになる。

以上が、『アルタ』のNintendo Switch版を先行プレイした所感だ。ついつい愛があふれてしまったが、フラットな目で見ても、移植版としての完成度には、多くのファンが満足することだろう。操作やUIに不便さはなく、ビジュアルやBGMもPC版と遜色ない。何より、ダンジョン探索とパン屋経営を繰り返す本作のゲームサイクルは、携帯モードの手軽さと抜群に相性がいいのだ。PC版で散々遊んだはずの筆者も、気づけば再び「今度こそやめるから」と言いつつ、パン屋を切り盛りしていた。初めてプレイする方はもちろん、PC版を遊び尽くした方にも、ぜひこの忙しくも楽しい毎日を味わってほしい。

そのほか、現在開発元は、『アルタ』のバージョン1.3と『ラグナロクオンライン』とのコラボDLCを計画中だ。1.3では、パティと一緒に楽しむカーニバルイベントや、湯けむりに包まれた温泉エリアが登場予定。Steamに投稿された開発日誌では、温泉につかるキツネのスクリーンショットが公開されており、続報が非常に気になるところである。

『Aeruta(アルタ)』のNintendo Switch/PS5/PS4向けダウンロード版は12月10日配信予定。Nintendo SwitchおよびPS5向けには、パッケージ版およびコレクターズBOXも発売予定だ。現在は各ストアにて予約受付中。

初回特典は、3種の武器をそれぞれ装備したチャヤが描かれた「イラスト入りのクリアしおり3種」。麺棒、レイピア、ムチ、それぞれでポージングが違うだけでなく、表情が違う。女王様のような堂々たる顔つきで、ムチをふるうチャヤ。レイピアを振り下ろす、尻尾がふわふわのチャヤ。そして、戦闘を楽しんでいるかのような享楽的な笑顔で麺棒を叩きつけるチャヤだ。どれも素敵だが、個人的には麺棒チャヤがお気に入りだ。是が非でも手に入れ、ドヤ顔で本に挟み、周りの人に見せつけたい。

一方、店舗別購入特典だが、こちらはアクリルキーホルダーや缶バッジ、オリジナルディッシュプレートなど、店舗によって異なる。

加えて、コレクターズBOXには、チャヤたちの日常を立体的に再現した「アクリルジオラマスタンド」や、80ページにもわたる「設定資料集」などが封入されている。BOX本体にも、本商品限定の描き下ろしイラストが使用された、豪勢なつくりだ。各種特典は筆者のようにPC版をすでにプレイしたファンにとっても、コンソール版で改めて本作を手に取りたくなる魅力となっている。

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