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『キングダム ハーツ コレクション [I~III]』で遊び直す『キングダム ハーツII』は、“プーさんのひと言”すら切ない。大人になって知ったことも忘れたことも、全部しみる
『キングダム ハーツ コレクション [I~III]』で、久しぶりに『キングダム ハーツ』との“再会”を果たした。

大人になって、ふと再会したくなる人や場所を想うことがある。懐かしい刹那の記憶、一期一会の時間。そんな望郷の念に強くかられることとなった作品が『キングダム ハーツ コレクション [I~III]』だ。
『キングダム ハーツ コレクション [I~III]』は、ディズニーおよびスクウェア・エニックスが手がける『キングダム ハーツ』の主要タイトルを収録した『キングダム ハーツ – HD 1.5+2.5 リミックス -』、『キングダム ハーツ HD 2.8 ファイナル チャプター プロローグ』、『キングダム ハーツ III + リマインド』がひとつになったセットである。10月8日発売予定で、対応プラットフォームはNintendo Switch 2/PS5/XBOX Series X|S/XBOX on PC。なお、『KINGDOM HEARTS INTEGRUM MASTERPIECE』としてPC(Steam)版が発売中だ。
本稿には収録作品のうち、主に『キングダム ハーツII -ファイナルミックス-』および『キングダムハーツ 358/2 Days』(映像作品として収録)のネタバレを含むため留意されたい。
『キングダム ハーツ』シリーズを青春期から夢中になってプレイしてきた筆者が、このたび『キングダム ハーツ コレクション [I~III]』のコラムを執筆する機会に恵まれた。数ある収録タイトルの中で、今回筆者が執筆に選んだのは『キングダム ハーツII -ファイナルミックス-』とHD映像作品の『キングダムハーツ 358/2 Days』である。なぜこの2作品なのか。その理由はシンプルだ。実は筆者が『キングダム ハーツ』シリーズで初めて触れたタイトルは、ニンテンドーDS版の『キングダム ハーツ 358/2 Days』であった。シリーズ主人公のソラではなくロクサスが主人公となる同作を、いわゆる「パケ買い」で購入し、『キングダム ハーツ』シリーズの知識がない状態でプレイした。疑問や不安を抱えながらも、自分の意思で真実へと向かっていくロクサスの姿に心をつかまれたのを覚えている。そのため筆者にとってロクサスの存在は今でも大きい。
そんなロクサスに久しぶりに会いたくなり、自然と彼が登場するこの二作品を選んでいた。またプレイした後でも、大人になった筆者が『キングダム ハーツ』と再会するにあたって、あえてこの2作品から始めてよかったと思える。本稿では、『キングダム ハーツII -ファイナルミックス-』とHD映像作品の『キングダム ハーツ 358/2 Days』を通して、筆者が大人になって気づいた両作の魅力、そして忘れてしまったことを再び取り戻していく様子をお届けする。

大人になって再び『キングダム ハーツ』の世界へ
『キングダム ハーツ』シリーズは、伝説の武器「キーブレード」に選ばれた主人公のソラが、ドナルドやグーフィーをはじめとした仲間とともに、ディズニーやピクサーのワールドを巡り、世界の闇へと立ち向かっていく物語である。光と闇、そして心が大きなテーマとして描かれ、その深部にある謎に包まれたストーリーも展開される。
筆者は実のところ、きらきらとした夢がたくさん詰まった宝石箱のような世界観を、大人になってもピュアに楽しめるか不安であった。学生時代に何の疑問も持たずにのめり込んだ世界は、大人になった筆者を受け入れてくれるのか。しかし、それは杞憂に終わった。むしろ本作の世界やキャラクターが備えたピュアな魅力に気づかされることが多かったからだ。特に『キングダム ハーツII -ファイナルミックス-』では、大切な人や場所との再会を願うキャラクターが多く登場し、『キングダム ハーツ』へ久しぶりに帰ってきた筆者の心情とも重なった。
かつて同じ島で過ごした幼なじみ、王と家臣、もう二度と会えないかもしれない親友。そして、さまざまなワールドの住人たち。キャラクターたちの原動力となる再会への思いを追いかけるように、筆者は『キングダム ハーツ』の世界へと再び飛び込んでいった。

夏休みは残り7日間
『キングダム ハーツII -ファイナルミックス-』では、黄昏の街「トワイライトタウン」で残り少ない夏休みを過ごす少年・ロクサスの日々から物語が紡がれていく。目覚めたロクサスが寝室の窓を開けると、目の前には夕焼けに染まった穏やかな街並みが広がっていた。この「トワイライトタウン」は筆者にとって忘れられないワールドの一つだ。黄昏時という束の間の時間を永遠に閉じ込めたような世界。もう戻れない何かを感じさせる切ないBGMの旋律。子どもたちが無邪気に交わす「夏休み」「思い出」「約束」「海」といった、大人になってからとらえ方が変わってしまった言葉の数々。
筆者は本作を初めてプレイしたとき、「なぜ本作はソラではなくロクサスから物語が始まるのか」という疑問を次第に棚に上げて、トワイライトタウンの情景に浸っていたことを覚えている。カートゥーン調の街並みは、今眺めるとシンプルなデザインであるが、大きな時計台や夕日を背景に列車が走る鉄道橋、そして街中を走るトラムなどが、ただの建造物ではなく子ども心をくすぐるシンボルとして登場していることにより、「トワイライトタウン」への没入感を引き立たせていると感じた。

そんなロクサス編の見どころは、なんといってもソラ編へとつながる物語の構成である。ロクサスが友人たちと過ごす夏休みは、不可解な事件と謎の敵によって徐々に狂わされていく。何者かの手により翻弄されていくロクサスは、友人の期待に応えられなかったり、同じ景色を見られなかったりと心苦しくなる瞬間を何度も経験することとなる。とても苦しい。夕日に照らされた時計台の上で、友人たちとシーソルトアイスを食べている瞬間だけがどうか続いてほしい。しかし夏休みが終わるように、アイスが溶けるように、青春時代はあっという間に終わりを迎える。青春時代真っ只中にプレイした際にもその儚さや郷愁は感じ取っていたが、大人になってからプレイするとさらに身にしみるものがある。
ロクサスの心情にフォーカスされた展開はとても感情移入しやすく、心を不安定に動かされる。そしてついに衝撃の真実を突きつけられたロクサスが辿り着く運命とは何か。それはプレイヤー自身で実際に体験してほしい。ここから本当の意味で『キングダム ハーツII -ファイナルミックス-』の幕が上がるのだ。
喉の奥で飲み込んでしまっていた言葉を突きつけられる
約1年間の眠りから目覚めたソラは、少しぼんやりとしながらも持ち前の明るさと好奇心で、同じく眠りから目覚めた仲間たちと、大切な存在のリクとカイリ、そして王様であるミッキーを探しに再び旅に出る。『キングダム ハーツ』および『キングダム ハーツ チェイン オブ メモリーズ』に続く本作では、過去作で出会ったワールドの住人たちとも再会することができ、そのつながりの強さに喜びもひとしおだ。

さまざまなディズニー作品のワールドでのソラ達のスタンスは、あくまで友達として力を貸すという、助っ人的立ち位置だ。そのため、ディズニーのキャラクターたちが織りなす物語は破綻することなく展開されていく。また、一緒にパーティーを組んで戦うこともでき、キャラクターとの個性あふれる連携技や召喚魔法といった、まさに『キングダム ハーツ』ならではの交流やアクションを楽しむことも可能だ。
各ワールドで入手できるキーブレードもワールドの世界観に合わせたデザインになっており、「ハロウィンタウン」で入手したキーブレードで攻撃をするとカボチャのエフェクトが出るなど、見た目もSEもこだわりを感じられる作りで気分も上がっていく。初めて本作を遊んだ当時は、キーブレードをとっかえひっかえし、そのこだわりの演出を楽しみつくしていた……が、時間を気にする大人になってしまった筆者は、つい機能面でキーブレードを選択していることに気づく。これは悲しいと思い、時間と心に余裕をもってプレイすることを心掛けていった。もっとも、子どものころは自然とできたことなのだが。

かろうじて童心を取り戻したところで、筆者のお気に入りのワールドを紹介しよう。黄色いくまのプーが登場する「100エーカーの森」だ。各地でちぎれたページを集めることで新たなエピソードが開放され、プーたちとの物語を追いながら各種ミニゲームを楽しめる。いわば箸休め的な立ち位置のワールドではあるが、改めて本作をプレイして筆者はこのワールドでの物語がいっそう好きになった。
過去作でも登場したこのワールドは、絵本の中に入っていく形で訪れることができる。しかし本作では、敵の襲撃により過去作で揃っていた本のページがふたたびバラバラに。その影響からか、絵本の中のプーはみんなのことをすっかり忘れてしまっていた。過去作で、記憶を失ってしまうかもしれないと不安になっていたソラに「ソラがプーを忘れても、プーはソラを忘れない。 そうすれば大丈夫だよ」とプーがかけた言葉にとても胸を打たれた筆者は、少し苦笑いしてしまう。
そんなプーの記憶を取り戻し、満月が見える夜の丘でソラがいなくならない方法を探していたというプーとソラが出会う。ソラがもう遠くに行ってしまわないためには、どうしたらいいのかとのこと。そんなに想ってくれる友人がいるというだけで幸福である。ソラも「時々会いに来るからな」と言葉を返す。そこで放たれたのが「時々はいやだな、いつも一緒がいいんだけどな」というプーの率直すぎる想いだった。

正直ドキッとしてしまった。たぶん当時の筆者は、プーの呑気なわがままとして、何のことなく聞き流していただろう。たとえプーとソラでなくとも、誰だって“いつも一緒”にいるのは難しい。いつでも一緒にいたくなるような親しい間柄でも、そんな願いを口にするのは憚られる。そう、プーは筆者が喉の奥で飲み込んでしまうような言葉をすっと届けてくれるのだ。そんなプーにソラはプーの胸に指をさして、いつでもここにいるよと優しく伝える。泣きたいような、けれど喉の奥が詰まるだけで何も言えないような気持ちでプーたちと別れたのであった。
心とは何か、友情とは何か、絆とは何か
そんなソラとプーのやりとりを見て、友情や絆といった言葉が駆け巡る。『キングダム ハーツ』の世界では、キャラクターの想いがストレートに表現される場面も多い。大人になった今では聞くとほほえましくもむず痒くなってしまうセリフもある。しかし、そんな言葉の大切さに気づかされたのが『キングダム ハーツ 358/2 Days』だ。

『キングダム ハーツ 358/2 Days』ではロクサスが、XIII機関と呼ばれる組織で過ごした日々を描いている作品だ。過去の記憶がないロクサスは、同じ機関に所属するアクセル、シオンと親睦を深めていき、やがて唯一無二の親友となる。
詳しい内容は本稿では控えるが、任務後に「トワイライトタウン」の時計台でシーソルトアイスを三人で食べるシーンはあたたかく、そして切ない。ニンテンドーDS版を遊んだとき、このシーンに憧れバニラアイスに塩をかけて食べたことを思い出す。
それぞれ葛藤を抱えながらも相手を尊重し、たとえ沈黙の時間が長くても一緒の時間を過ごそうとする三人を見ていると、かけがえのない関係を何とかしてつなぎ留めたいという気持ちが伝わり、ぐっときてしまう。特にアクセルの言動には心を揺さぶられるものがあった。彼はロクサスとシオンの頼れる先輩でもあり、素直に疑問を投げかけてくる二人に対して、保護者のような立場で優しく答えを返してくれる。しかしアクセルには、機関での立場や彼自身の目的があり、やがて三人の友情を守りたい気持ちと、機関での立場との板挟みになっていく。
ストレートに感情をぶつけてくるロクサスとシオンに対して、アクセルは残酷な真実を伝えることができず、嘘をつくことしかできない。当時の筆者は「包み隠さず話したほうがいい」と思っていたが、今になると彼は身動きの取れない状態で、それでも懸命に状況を良くしようと行動していたことが分かる。そして物語が一つの結末を迎えることで、彼は親友にもう一度会いたいという一点だけで行動するようになり、『キングダム ハーツII -ファイナルミックス-』では、かつて言えなかった親友への想いを正直な言葉で口にするのだった。
この一連のアクセルの行動や言葉の変化に、大人になっても自分の気持ちに正直になって行動し、想いを伝えることができるのだと気づかされた。また、ロクサスとシオンに対して、親友や愛といった言葉の意味を教えたのもアクセルである。愛については多少はぐらかしていたものの、ピュアな質問にも真剣に向き合って答えるアクセルの姿勢には、大人として見習いたいものがある。
『キングダム ハーツ 358/2 Days』は『キングダム ハーツII -ファイナルミックス-』で敵として登場するXIII機関を中心とした物語になるが、三人を見ていると『キングダム ハーツ』のテーマである友情や絆、そして相手を想う気持ちを言葉や行動にすることの大切さも際立って見える。大人になり、映像作品として改めて味わう『キングダム ハーツ 358/2 Days』の物語で、三人の関係の尊さを嚙みしめることになった。

再会とはつながりによって生まれるもの
『キングダム ハーツ 358/2 Days』を体験してから『キングダム ハーツII -ファイナルミックス-』をもう一度プレイすると、出会いの中の出会いをさらに感じることができる。直接会っていなくても間接的なつながりによって大切な誰かと再会できるのだ。筆者が『キングダム ハーツ』に惹かれる理由がそこにある。“会える”ことはこんなにもかけがえのないものなのか。『キングダム ハーツ』シリーズの物語は、出会いと別れを繰り返した大人になるほど胸に迫ってくる。
そして、2027年後半に発売予定の『キングダム ハーツIV』では、また新しい出会いと別れが待っているのだろう。今のうちに『キングダム ハーツ コレクション [I~III]』をプレイして成長したソラたちとの“再会”を楽しみにするのもいいのではないだろうか。
『キングダム ハーツ コレクション [I~III]』は、Nintendo Switch 2/PS5/XBOX Series X|S/XBOX on PC向けに10月8日に発売予定。なお、PC(Steam)版は『KINGDOM HEARTS INTEGRUM MASTERPIECE』として発売中だ。
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