Steam新作ローグライト『ひっぱるなよ、串焼きマスター!』、ちゃんと面白いけど不可解。なぜ串焼きなのか?“ひっぱるなよ”って?謎は深まり、お腹が空いた

『ひっぱるなよ、串焼きマスター!』はお料理系のドタバタゲームだろうか?いや、ローグライト・タワーディフェンスゲームだ。

Steamでは多種多様な新作ゲームがあり、不思議なモチーフのゲームも後を絶たない。2月2日にリリースされた『ひっぱるなよ、串焼きマスター!』は、タイトルからすでに異彩を放つ作品だろう。串焼きをテーマにしていることは明白ながら、タイトルからそのジャンルは想像がつかない。お料理系のドタバタゲームだろうか?いや、そうではない。

本作は、串焼きをモチーフとしたローグライト・タワーディフェンスゲームだ。さまざまな食材をグリル上に並べて、押し寄せてくるネズミを撃退する。本作の主役となる食材たちには肉や海鮮、野菜などさまざまな分類が存在。またそれぞれ、しょっぱい・辛い・甘いなどの味わいが設定されている。それぞれの分類や味に特化したビルドを構築し、自分が思う最強のグリルを作り上げていく。

つまり料理ゲームと思いきや、バリバリの「戦闘ローグライト」ゲームとなっている。開発元の説明によると、本作は夫婦ふたりで制作しており、『Brotato』にインスパイアされているという。ポテトがエイリアンと戦うゲーム『Brotato』に影響されたのなら、食べ物がバトルする作品になるのは分からなくもない。しかしなぜよりによって、串焼きをピンポイントでモチーフにしたのか。やっぱりよく分からないが、ツッコんでばかりいても仕方ないので疑問は飲み込んで、まずはプレイしてみることにした。

本作では同じ種類の食材や味を集めるとバフが得られるという。またプレイ開始時には、「肉の達人」や「レモンイーター」などそれぞれ特化した効果をもつ“焼き師”を選んで、ゲームを始めることになる。ということは、最初にある程度ビルド方針を決めておいた方がよさそうだ。ところで、筆者はときどきリアルでバーベキューをやる。焼くのはもちろん肉だ。というわけでまずは肉特化ビルドを目指してみることに。

ゲームプレイでは、串の上に食材を配置して戦う。食材はシューター系と防御系の二種類に大別されており、シューター系の食材は同じレーン上にいるネズミめがけて弾丸を発射する。一方の防御系は自分から攻撃することはないが、その名の通り防御力が高い。シューター系がネズミに触れられると一発でダウンするのに対し、防御系は数回耐えて跳ね返すのだ。

現実的にはネズミが一回触れた時点で食品としてアウトだろうが、たぶん防御系の食材には3秒ルール的なものが適用されているのだろう。あるいは「火を通しているのでセーフ」という発想かもしれない。衛生的に大丈夫なのかはよく分からないものの、それでもタンク的な存在がいるのはゲームとしてありがたい。

とにかく、本作では前列の串に防御系の食材を配置してネズミの攻撃に耐えつつ、後ろからシューター系の食材で攻撃するのが基本戦術のようだ。また、串に刺した食材は直接動かせないが、串を掴んで動かすことは可能。ぐりぐりと串を動かして、ネズミどもに狙いを定めていく。

一般的なタワーディフェンスゲームはプレイ中の操作量が比較的少ないイメージがあるが、本作は串の操作で結構忙しい。一本の串には3つまでしか食材を刺せないが、ネズミが出現するレーンは6つある。放置しているとフォローしきれないのだ。

とはいえゲームはマウスのみで簡単に操作でき、ドラッグで串の位置も気軽に調整できるため、忙しくはあっても難しくはない。肉が焦げないように管理する、串焼きマスター感は味わえる。しかし串を頻繁にドラッグしていると、「ゲームタイトルの“ひっぱるなよ”ってなんだ?」と新しい疑問が胸の中に沸き起こってきた。串はひっぱられたくないのだろうか。謎は広がるばかりだ。

規定数のネズミを撃破するとステージクリアとなり、ショップがオープンする。品ぞろえがランダムのショップには新たな食材が並んでいるほか、食材を強化できる調味料も売られている。ただし調味料にはデバフも付いており、相性が悪い組み合わせだとむしろ不利になることも。また調味料は購入すると、焼き師が問答無用で手持ちの食材すべてにぶっかけてしまう。勝手に唐揚げにレモンをかける人のパワーアップ版だ。そのため買い物は慎重に吟味する必要がある。

たとえば牛乳は肉ダメージを強化するが、野菜ダメージと味ダメージはダウンさせてしまう。筆者としては「なんで牛乳で野菜ダメージが下がるんだ、白菜のミルク煮込み美味しいのに!」と抗議したくなるが、開発者には逆らえない。またほかにも、生クリームやバターなどが肉ダメージを上げる調味料になっている。この世界では、乳製品が肉用のバフアイテムとして活用されているようだ。つまり目指すべきはフリカッセということだろう。実際作っているのは串焼きだが。

また、肉系の食材は“会心”にまつわる特殊効果をもっているものが多い。たとえばシューター系の「チキンレッグ」は会心発動時に弾丸が敵一体を貫通する。また防御系の「ステーキ」は会心発生時にHPが3回復する。クリティカル率をアップする系の調味料を集めるとシナジーがあるのは間違いない。会心率を上げる調味料は油類だったので、油・豚脂・牛脂などを手当たり次第にぶち込んでいく。胃もたれがしてくる。

どう考えてもグリルの上はギトギトだが、間違いなく火力は上がっている。タンク役のステーキが体を張る必要もなく、いちいち串の位置を微調整しなくても、初期配置でネズミどもを圧殺できるハイパワーだ。“ひっぱるなよ”、つまり、串の位置を動かさなくてすむビルドがゴール……ということだろうか。ここでタイトル回収が果たされたと考えていいのか。

答えははっきりとしないままゲームは進み、最後のステージではボスが登場する。圧倒的な肉の猛攻でネズミの親玉を撃破し、首尾よくクリア。ここまで20分ほどのプレイスルーだった。テンポよくローグライトらしい成長要素を堪能でき、楽しい。クリアした肉たちも誇らしげだ。何度もネズミを跳ね返したステーキは、おそらくこの後廃棄処分だが。

ステーキの処遇はともかく、一度クリアしたことでさらなる高難易度が解禁されたほか、複数の焼き師がアンロックされた。魚が発射する弾丸を増やす「弾丸魚」や、肉系食材を所持できない代わりに野菜系食材のダメージを大幅強化する「白菜同好会」など、名前も性能もクセが強い焼き師たちが登場している。次のプレイは悩みつつ、「塩振りおじさん」をチョイス。塩味の食材を強化するようなので、食材の種類ではなく味付けに焦点を当てた“しょっぱい味”ビルドということになるだろう。

しょっぱい味の食材は昆布や枝豆、ベーコンやシュウマイなどが該当している。特性はちょっと変わっており、「弾丸が味方の上を通過すると、塩味が強くなる」といった効果をもつものが多い。つまりしょっぱい系をたくさん集めて、固めて配置すると威力がぐんぐん上がるようだ。“塩分過剰摂取”の文字がちらつくが、血圧を気にして串焼きはできない。

しかしいざプレイすると、しょっぱいビルドは難しかった。固めて配置しないと威力を出しづらいが、ネズミはワイドに攻めてくる。三本ある串をあっちこっちに動かしているうちにネズミが防衛網をすり抜けてしまい、グリルにダメージが入ることがしばしば。串を“ひっぱるなよ”どころか、ひっぱりまくった挙句の醜態だ。

また、しょっぱい系向け調味料としては塩や味噌が用意されているが、これらは本当に塩味しか強化しない。その他の食材には何の効果もないのだ。筆者が「しょっぱい食材だけでは戦線維持が難しい」と安易な考えでほかの味付けの食材に手を伸ばすと、意味もないのにひたすら塩をかけまくる、やっかい塩振りおじさんだけが残っていた。こんなビルドで勝てるはずもなく、グリルが破壊されて敗北。脂ギトギトだった前回のビルドも踏まえると、串焼きは健康を顧みずに一切妥協なく作ることが肝要なのだろう。串焼き道はなかなか奥が深い。

結局「なぜ食材が戦うのか」の答えは得られなかったが、本作はほどよいアクション性と戦略性、それにローグライトらしいインフレ感も組み合わさった、ゲームとしての遊び心地が良い作品だ。一周20分程度とテンポもよく、遊びやすい。また、ボスを倒してクリアしたあとはエンドレスモードに突入することも可能。どんどん強くなるネズミ軍団を相手にするチャレンジ要素であり、気がすむまで串焼きを育成し続けられる奥深さもある。

しかし本作最大の特徴は、ビルドのことを考えているとお腹が減ってくることかもしれない。「ベーコンとハムをメインに、豚脂とショウガで強化して、ナツメグパウダーとクローブを追加したら強いんじゃないか?」などと考えていると、なんだか本当に美味しそうな気がしてくるのだ。

肉を焼いて、タレを付けて食うだけがバーベキューではない。改めてそんなことを本作に教えられた気がする。思い付きが失敗することもあれば、意外な組み合わせが功を奏したりするのが料理だ。ネズミと戦う串焼きがいたってよいではないか。みなさんも本作で串焼きに向き合い、現実の献立に反映したりしてみてはいかがだろうか。とりあえず筆者は本当にお腹が空いたので、夕飯にチキンフリカッセを作ることにする。

ひっぱるなよ、串焼きマスター!』はPC(Steam)向けに配信中だ。価格は800円で、ゲーム内は日本語表示に対応している。また現在リリース記念セールがおこなわれており、2月9日まで10%オフで購入可能だ。

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Akihiro Sakurai
Akihiro Sakurai

気になったゲームは色々遊びますが、放っておくと延々とストラテジーゲームをやっています。でも一番好きなのはテンポの速い3Dアクションです

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