オープンワールド新作『エレックス2』は、すべてが「一度きり」のハードコアRPG。数ある可能性を前に一度切りの人生を楽しむ

新作オープンワールドRPG『ELEX II(エレックス2)』が3月1日に発売される。『ELEX II(エレックス2)』は、先の読めない展開でもって生きることの難しさと面白さを表現する

コロナ禍で窮屈な生活を強いられる毎日。寒さも厳しく、肉体的にも精神的にも抑圧され縮こまってしまう今日このごろ。かつての様に外出し、新鮮な感覚を直に浴びたいという人も多いのではないだろうか。丁度いいところに、THQ Nordic Japan株式会社から新作オープンワールドRPG『ELEX II(エレックス2)』が3月1日に発売される。対応機種はPC(Steam)/PlayStation 4/PlayStation 5/Xbox One/Xbox Series X|S。

数々の選択肢を繋いでいく星の物語は、先の読めない展開でもって生きることの難しさと面白さを表現する。本稿はTHQ Nordic Japan株式会社提供のPC(Steam)版ゲームコードをもとに、『ELEX II』のゲーム内容を紹介するものである。各種ストアでは予約が実施されている。PS4PS5パッケージ版/PS4・PS5ダウンロード版/Xbox One/Xbox Series X|Sダウンロード版/Steam版

作品概要

『ELEX II』はポストアポカリプス風の世界観を基盤に、剣と魔法と機械の物語が展開するオープンワールドアクションRPG。前作『ELEX』の続編作品である。話はつながる部分もあるが、今作から遊ぶことも差し支えない。ゲーム内は日本語表示に対応。

開発を手がけるのはPiranha Bytes。同スタジオは『Risen』シリーズや『Gothic』シリーズなど、ハードコアユーザー向けの硬派なRPG作品を世に数多く送り出してきたことで知られており、本作も例にもれず、やりごたえ十分の作品に仕上がっている。プレイヤーは前作からの主人公である「ジャックス」として、宇宙から迫りくる新たな敵に対抗すべく、5つの部族から協力を得るために、惑星マガランを再び東奔西走することになる。会話中の選択肢やプレイヤーの行動によって、物語の内容は変化する。

一度切りを強調するゲームデザイン

画像は開発中のもの


オープンワールドアクションRPGである『ELEX II』のゲームシステムは主に、三人称視点を採用した戦闘アクションと、自分らしいキャラクターを生み出すための、ポイント振り分け型ステータスを中心に形作られている。RPG作品としては「成長することが難しい」ことを特徴としており、能力を上昇させること自体が難しく、実際に上げるにしても慎重な判断が求められる。だが高い値のステータスが求められる機会は多い。キャラクターとの会話中に登場する選択肢のアンロックをはじめ、武器を装備するための条件、旅を快適にするアビリティの習得にもステータスの値は関わってくる。また結果として、ステータスが伸びにくいことから装備品を入れ替えることが難しく、敵の攻撃が痛い。戦闘の難易度が非常に高くなっている。

つまり、成長するにはクエストをクリアして経験値を得たいのだが、そうしたクエストでは多くの場合、道中で難しい戦闘をこなさねばならず、クリアしてレベルが上ったところで、どのステータスにポイントを振り分けるかは手持ちの装備や獲得したいスキルと相談となる。たとえばスキル獲得を優先してポイントを振り分けてしまうと武器の更新ができず、その後のクエストで苦しむということも考えられる。一方で武器を優先してしまうと欲しいアビリティが取れないばかりか、ストーリーを進行させる上で重要な選択肢の幅が狭くなってしまうこともある。まるで転がり続ける石ころのように、プレイヤーの選択は主人公をあてどない未来へと導いていく。ときにぶつかり誰かを傷つけ、ときに自ら傷つきながらも、ひたすらに物語は進んでいく。まさに諸行無常を体現する様相は、噛めば噛むほど面白い、どこか癖になる独特の旨味を内包している。

『ELEX II』をプレイしていると、「もしも」の未来を考えることが多い。あのときこうしていれば、違う光景が広がったのかと夢想する。それこそ私達が後悔を繰り返しながら生きていくように。自らの可能性を削ぎ落としながら前に進み続けているように。プレイヤーの脳裏に自然と浮かぶ、あり得たかも知れない未来の数が、ゲームプレイのスケールと体感的な自由度をより大きなものにし、高難易度からくるリプレイ性の低さが、それらより強固なものとして私達に印象づける。できるはずなのにできないこと、選べない選択肢をプレイヤーに逐次提示していき、ストレスをリアリティや没入感に変換する。これが本作のゲームデザインにおいて大きな特徴となっている。数ある可能性を前にして人生は一度きりだ。

シンプルな戦闘と複雑な事情絡み合う物語

画像は開発中のもの


では、本作の細かな部分について見ていこう。『ELEX II』の戦闘アクションに関しては武器種によってモーションが異なるものの、少ないボタン入力で完結する非常にシンプルな作りとなっており、物理攻撃は一度の行動につきスタミナを、遠距離攻撃は弾薬を消費する形式になっている。スキルの獲得状況においてはマナを消費し魔法を使うことも可能。だが「ジェットパック」と組み合わさることで、シンプルなアクションは一気に迫力あるものへと変化する。ジェットパック自体は腰に装備した推進装置を稼働させることにより、空中に高く浮かび上がり移動するという、これもまたシンプルな要素であるが、戦闘中に発動すれば、空高くから一方的に敵を狙撃、蹂躙することが可能になる。また敵の群れを彼らの敵対派閥まで誘導し、自分は高みの見物、なんて軍師じみたこともできる。

戦闘中に必要となる武器は店売りのものを購入するか、フィールドの散策を通じて入手する。特定のアビリティを獲得していれば制作台で素材を消費し、クラフトすることもできる。アビリティの獲得自体にも所持金を消費するため、何にリソースを割くかはやはり慎重に考えなくてはならない。個人的に興味深い点として気になったのは、装備品のビジュアルである。本作はポストアポカリプスな世界観を舞台としたことで、雄大な自然と錆びついた廃材が絡み合うアートスタイルを基調としているが、アクセントとしてSci-Fi作品に登場するかのような近未来的意匠ゆたかなオブジェクトを採用している。武器にも当然その傾向は現れており、鉄塊という言葉そのままの見た目な武器から、鉄の剣、ショットガン、レーザーライフルのようなものまで、時代の振れ幅が大きく面白い。強くなっていく過程がわかりやすくもあり、先述した強くなることに苦労する仕様も相まって、良いデザインだと私は思った。

ちなみに戦いで失った体力は、火で調理した食品を食べる、ポーションなど薬剤を摂取する、寝床で眠ることでしか回復できない。仕様上、戦闘中にアイテムを使うことは非常に困難であるため、残り体力には常に気を配っておきたい。格上の敵にはドクロアイコンが、クリアが困難なクエストには受注した際に赤い逆三角形のアイコンが画面上に表示されるため、ひとつの目安にするといいだろう。このほか、宝箱を開けるためのピッキング、すれ違う人のアイテムを盗めるスリのアクションもある。当然ながら犯罪行為であるため、見つかってしまえば報復を受けるほか、ストーリーの展開に影響があるため注意が必要だ。悪人プレイはほどほどに。ちなみに私は失敗した際、警備員に袋叩きにされたことを報告しておく。

読書ができるようになるアビリティなんてものもある。フィールドには記録媒体も点在しており、本作の世界観に対してより一層の理解を得るための一助になるだろう。先述したジェットパックで飛び回りながら、車や家屋といった、旧時代の異物が廃墟として各所に佇む「惑星マガラン」を観光してみるというのも、本作におけるひとつの楽しみである。

画像は開発中のもの


シンプルな中身におちついたアクションに対し、さまざまな思惑が交差するストーリーは非常に複雑な仕様となっている。先述したように、プレイヤーは宇宙から来る敵に対して5つの部族から選んで協力を得ることになる。主人公が昔所属していたマッドサイエンティスト集団「アルブ」。隕石由来の魔法を使う「バーサーカー」。無法者集団「アウトロー」。戦闘機械を多数所有する「クレリック」。カルト組織「モーコン」。

だが元英雄とはいえ、主人公の声に部族の長が大人しく従ってくれるはずもなく。「あいつらとは絶対組みたくない、むしろ壊滅させよう」とか「未来のことを考えることより今を生きることを優先したい」など、各勢力は自分たちの都合ばかりで言うことを聞いてくれないのだ。そこで、主人公はあの手この手を用いて彼らを説得していくことになる。ときには会話で、ときには具体的な行動を持って部族間の折衝を行っていく。プレイヤーの選択と結果によって主要NPCの生存状況が変化し、それに伴って物語の動向も変わる。ここで重要なことは、――コレは現実においても重要なことだが――「嘘はバレる」ということだ。部族間の交渉の場において、どっちつかずの態度を取った結果、両者共々から嫌われてしまうということもある。自らのスタンスを明確にし、可能な限り誠実な態度で物事に当たっていくことをオススメする。

物語の内容そのものに関しては、本作が続編作品であり、前作から主人公が変わっていないということで、登場するキャラクターたちの多くとはすでに顔見知りの間柄になっているという前提のもと話が進む。そのため、ストーリー全体の構造に関して理解するにあたり少し時間がかかるかもしれない。また翻訳のクオリティに関しては全体的に直訳気味ではあるものの、文法が崩壊している部分はなく、意味を理解するぶんには困らないので安心してほしい。星の運命と愛する家族の命、そして自らの人生がどういった軌跡を描くのかはあなたの手にかかっている。

画像は開発中のもの


「選択できない選択肢」。「あったかもしれない未来」。オープンワールドアクションRPGという形式と連続する取り返しのつかない選択を通じて、世界の広さやゲームプレイの重さを演出する『ELEX II』。外出すること自体がリスクになってしまったコロナ下の生活を過ごす上で、旅の代わりに誰かの人生を生きてみるというのも一興だ。試行錯誤など生ぬるい、一度きりの冒険を楽しんでほしい。『ELEX II』は、PC(Steam)/PlayStation 4/PlayStation 5/Xbox One/Xbox Series X|S向けに3月1日発売予定だ。各種ストアでは予約が実施されているので、チェックしてみてほしい。PS4PS5パッケージ版/PS4・PS5ダウンロード版/ Xbox One/Xbox Series X|Sダウンロード版/Steam版

Takayuki Sawahata
Takayuki Sawahata

娯楽としてだけではなく文化としてのゲームを知り、広めていきたい。ジャンル問わず死にゲー、マゾゲー大好き。

記事本文: 276