年末年始は『オクトパストラベラー 大陸の覇者』をじっくり遊ぼう。時間がたっぷりあるときこそ遊ぶべき、大ボリュームのシングルプレイRPG

シングルプレイRPG『オクトパストラベラー 大陸の覇者』は、年末年始にうってつけのタイトルだ。本作がじっくりと腰を据えて楽しめるRPGとして作られているからである。年末年始という時間がたっぷりあるときだからこそ。

年末の候、仕事や学業を納め、おうち時間をのんびり過ごしている方も多いのではないだろうか。いつもより多く自由時間を確保できる年末年始は、集中してゲームをする時間を取るのにぴったりである。スクウェア・エニックスが運営するスマートフォン向けシングルプレイRPG『オクトパストラベラー 大陸の覇者』(以下、『大陸の覇者』)は、そんな年末年始にうってつけのタイトルだ。本作は、Nintendo Switch/Xbox One/PC(Steam)向けに発売中の前作『オクトパストラベラー』の雰囲気や世界観を踏襲し、重厚なストーリーや美しいドットグラフィックが高く評価されている。『オクトパストラベラー 大陸の覇者』は、iOSおよびAndroid向けに配信中だ(ダウンロードはこちらから)。

そんな同作は配信から1年2か月ほどを経て、ストーリーの節目が目前に迫っている。『大陸の覇者』のストーリーは節ごとに区切られる。現在『大陸の覇者』では3節「授けし者」編の終章リリースを1月に控えており、2月からは新たなメインストーリーが開幕する。リリースされているメインストーリーに追いつくための応援キャンペーンも実施されており、まさにいまが始めどき。

そして年末年始にプレイしていただきたい一番の理由は、本作がじっくりと腰を据えて楽しめるRPGとして作られているからである。本作はシングルプレイRPGで、コンシューマー向けに発売された前作『オクトパストラベラー』と同様のこだわりをもって制作されている。重厚なメインストーリー、戦略的なバトル、HD-2Dで描かれる懐かしくも美しいグラフィック。年末年始という時間がたっぷりあるときだからこそ、これらを堪能していただきたいのである。


大ボリュームのメインストーリー

筆者は2020年10月の『大陸の覇者』リリース時、そのメインストーリーの完成度に圧倒されたプレイヤーの一人である。実はリリース前に先行プレイをさせていただいていたのだが、先行プレイの時点でそのクオリティに圧倒され、リリースを待ち詫びていたタイトルでもある。

リリース時、メインストーリーは2節まで実装されていたが、時間を忘れて没頭してしまったことを覚えている。2節クリアまでかかった時間は60時間ほど。寄り道はほとんどしなかったので、本編のボリュームだけでもなかなかのものだ。このボリュームこそが、時間たっぷりある年末年始に本作をプレイすべきである理由のひとつである。なお、本作にはスタミナのような時間回復制のシステムはなく、メインストーリーを進めたければいくらでもゲームを続けることができる。仮に年末休みから三が日までぶっ通しでプレイしたとしても、回復アイテムや有償のゲーム内通貨を砕きながら進む必要はない。

『大陸の覇者』のメインストーリーは、人間の内面を生々しく暴き出すような重い物語だ。権力・富・名声のそれぞれを極め、非道の限りをつくす敵に立ち向かう人々を描いた1節。富・権力・名声のすべてを極めたエドラス王国の国王・パーディス三世による恐怖政治に抗う人々を描いた2節。そして再び権力・富・名声のそれぞれ物語に立ち返り、1・2節で登場したキャラクターがその後どう運命に翻弄されていくかを描く3節。1節と3節は物語が富・権力・名声の3つに分かれており、最後にすべてを締めくくる「終章」で区切りがつくかたちだ。現在は3節の章ごとの物語の配信が完了し、1月に終章の配信を控えている。


物語の見どころは、権力・富・名声という栄華の象徴を軸に、人という生き物の欲深さや醜さを描いている点である。人間の欲深さから生まれる悲劇や、栄華のすべてを極めてもなお尽きない欲望。そして、非道の限りを尽くすそれぞれの栄華を「極めし者」たちに抗う人々。巨大な悪に対して立ち向かう善なる人々という構図の、王道RPGらしいストーリーが展開されていく。また、現在配信されている最新章「名声を授けし者 3章」では、前作『オクトパストラベラー』の内容にも関わる展開に多くのプレイヤーが衝撃を受けた。

国は燃え、民は死に、それでも前に進もうとする人々を描くメインストーリーでは、終始重い展開が続く。しかし、本作全体を見ると重い話ばかりでもない。たとえば、ガチャ要素である「導き」で加入するキャラクターたちの背景を知ることができるトラベラーストーリーは、読み味はスッキリとして元気が出るような内容のものも多い。

筆者が好きなトラベラーストーリーは、★5剣士フィオルのものだ。リプルタイドの自警団員としてドタバタと研鑽を続けるフィオルが、新人自警団員ミカとの交流を通じて成長する物語である。フィオルの立ち絵で後ろに描かれている女性がミカなのだが、立ち絵の背中合わせ構図の理由やフィオルの奮戦など、見どころたっぷりのストーリーだった。キャラクターの立ち絵はストーリーがリンクしているものも多く、その点に着目して遊んでみてほしい。

★5フィオルの立ち絵


前作を踏襲したバトルシステムは戦略性抜群

ブーストシステムを活用したバトルシステムは、前作に引き続き『大陸の覇者』でも健在だ。コンシューマー向けタイトルであった前作のシステムはスマートフォン向けに手触り良くアレンジされており、本作では前衛/後衛4人ずつ、あわせて8人のパーティを編成することができる。弱点を突き、敵のシールドを削って行動不能にするのを基本とし、戦略的なバトルを楽しめるのだ。

本作のバトルはなかなか歯ごたえがあり、誰もがプレイするメインストーリーであっても適当に進めているだけでは勝つことができない。敵の弱点や行動パターンを把握し、適切な編成と装備を整える必要がある。どうしても勝てない場合は有償(無償配布もあり)のゲーム内通貨であるルビーを使い、全滅時にコンティニューをおこなえる。


ストーリーでのバトル演出は実にコンシューマーRPG的だ。味方NPCの参戦や戦闘中の敵からの語りかけなど、昔ながらのRPGの伝統を継いだ演出も多く見られる。2節以降は特に顕著で、ストーリーの流れを汲んだ特殊効果や演出が戦闘を盛り上げてくれた。前作『オクトパストラベラー』がコンシューマー向けのタイトルだったこともあり、演出には同等の力が入れられていることを感じさせてくれる。

シングルプレイRPGだから自分のペースで遊べる

本作はシングルプレイRPGで、他のプレイヤーと関わる要素は皆無である。アプリ起動時にも「本作はシングルプレイRPGです。コンテンツは定期的に追加されますが、ご自分のペースでお楽しみください」というメッセージが流れ、一人でプレイを完結できることを基本方針として開発されていることがうかがえる。PvP要素のあるコンテンツはなく、ソーシャル要素はおろかフレンド機能すらない。実際にプレイした印象としても、キャラクターの加入がガチャであることを除けば、コンシューマータイトルのスマートフォン移植版のように感じられる。

アプリ起動時のメッセージ


また、本作はメインストーリー以外にもやりこみ系のコンテンツが充実している。リリース当初はメインストーリー以外のコンテンツが少なく、ボリューム不足を指摘されたこともあった本作。しかし、1年以上の運営を積み重ねてさまざまな内容を実装していったことで、現在は充実したコンテンツで遊ぶことができる。たとえば、「闘技大会」ではメインストーリーよりもさらに高難易度なバトルが楽しめることに加え、優勝すればその大会の王者を仲間にすることができる。

そのほかの腕試し系コンテンツとして、各地に点在するNPCとの対戦がある。『大陸の覇者』では街のNPCたちに話しかけ、彼らの持ち物を買い取ったり、ねだったり、対戦に勝利することで貰い受けたり、バトル中に呼び出す仲間にしたりできる。「歴戦NPC」「レベル100NPC」と呼ばれるNPCはその中でも対戦に勝利するタイプなのだが、これがかなりの強敵だ。善良な一般市民のような顔をして街に紛れ込んでいるが、その猛者ぶりは話しかけた際のテキストでも一目瞭然だ。なお、彼らに勝利すると、貴重な武器やアクセサリーを手に入れることができる。そのほかにも各マップに存在するシンボルエネミー討伐や武器強化コンテンツ、サブストーリークエストなど、遊べる幅は広い。


シングルプレイRPGとして自分のペースで楽しめるということは、何時間でも寝食を忘れて没頭できるということでもあるし、他人のプレイ状況を気にせず中断しながらプレイしやすいということでもある。時間はたっぷりあるものの、大掃除や買い出しなど、意外とやることも多い年末年始。おせちを作り、部屋を片付けながら、攻略に詰まったバトルの戦略を考えるのも良いのではないだろうか。

前作をプレイしていると嬉しい要素も

本作には前作『オクトパストラベラー』をプレイしていると嬉しい要素が、そこかしこに散りばめられている。グラフィックは「HD-2D」を採用した美しいドット絵で描かれ、前作コンポーザーでもある西木康智氏が手掛ける美しい楽曲が世界を彩っている。前作とクオリティの変わらない安心感はフィールドコマンドにおいても健在だ。ロケーションが追加されるたびにそこに住まう人々も追加され、細やかな人物設定を「聞き出す」ことができる。

ロケーションとしては、リプルタイドやクリアブルックなど、前作に登場した街並みが登場。また、前作主人公たちと深いかかわりのあったザンターやオデット、セシリーなどのキャラクターたちも、本作ではプレイアブルキャラクターとして遊ぶことができる。前作のファンで、「スマートフォン向けか……」という理由で敬遠していた方は、騙されたと思ってプレイしてみてほしい。プラットフォームがスマートフォンというだけで、「RPGを遊んでいる」という感覚はコンシューマー版とほとんど変わらないからだ。


復帰してみて感じたこと

前述のとおり、筆者は2020年10月のリリース時に本作にドハマりし、当時実装されていたメインストーリーを一気にクリアした。しかし、その後のストーリーは1章ずつ小出しにリリースされていったこともあり、終章までストーリーが実装されたら一気にクリアしようと考えて休止していた。期間限定のコラボイベントやフォトスポットの更新時などにログインはしていたものの、追加されているコンテンツにはしばらく触れていなかったのだ。今回記事を執筆するにあたって改めて本作に触れたところ、リリース時にはなかった便利機能やキャラクター強化要素などが追加されていた。ここでは、筆者のようにリリース時に遊んだものの現在は休止中の方に向けて、追加されている要素を紹介していこう。

代表的なものとしてあげられるのは討伐依頼。討伐依頼は、1日1枚補充される受注書を消費してボスモンスターを倒すデイリーコンテンツだ。コンテンツ内には複数のボスがおり、リリース当初は毎日このボスを手動で倒さなければならなかった。現在は「簡易討伐」というシステムが実装され、突入パーティを選択するとバトルを省略して報酬を得ることができる。サポートアビリティや装備品による経験値やリーフ獲得量アップ効果を受けることはできないもののドロップアイテムなどは変わらず入手することができ、デイリー消化がぐっと楽になっている。


キャラクターの育成にもさまざまな要素が追加されている。大きなアップデートとしては、「天賦覚醒」と「必殺技」の追加が挙げられるだろう。天賦覚醒は、アイテムを使用してキャラクターの基礎パラメータやバトルアビリティ設定枠を増加させるシステムだ。天賦覚醒に使用するアイテムはレアリティごとに異なり、★5キャラクターは覚醒石、★4以下のキャラクターは導石を用いる。★5キャラクターのみ使用する覚醒石は、天賦覚醒の実装にあわせて新規追加されたアイテムだ。導きでキャラクターが被った際に獲得でき、実装以前に被りが発生していた場合も手紙にて送付されている。

天賦覚醒は4段階までおこなうことができるが、まだ実装されたばかりのシステムのため、多くのキャラクターは3段階目までしか覚醒できない。しかし、天賦覚醒は4段階目まで達成せずとも十分に強い効果を発揮する。1段階目の攻防系基礎パラメータ30%アップ(上限50)は、少し触るだけで火力や防御力が変わっていることを実感できるレベルだ。2段階目ではバトルアビリティの設定枠1つ増加させることができ、戦略性の幅を広げることができる。3段階目はHP50%アップ(上限1000)で、生存力が格段にアップする。そして、一部キャラクターに実装されている4段階目では、強力な性能を有するアクセサリーを入手することができる。

天賦覚醒Ⅳアクセサリーはパラメータ上昇幅も特殊効果もかなり有用。


いわゆる“キャラ凸要素”である天賦覚醒に対し、必殺技は時間をかけてキャラクターを育成する要素だ。とはいえ、必殺技を会得するだけならそう時間はかからない。必殺技とあわせて実装された「秘技の試練」を達成することで得られる宝珠を使用して会得および強化をすることができるのだ。すべてのキャラクターの必殺技レベルを最大の10まで上げる……となるとかなりの時間が必要だが、レベル1の必殺技を会得するだけならパーティが揃っていればさほど時間はかからないし、必殺技はレベル1でも十分に強さを発揮してくれる。筆者が触れたところ、スタメン10人ほどの必殺技を開放するのにかかった時間は30分ほど。試練への挑戦権が日ごとに補充されるため、補充を待って10分ほどでさらに10人程度の必殺技を開放することができた。しかも、強化のため温存している宝珠は300個(必殺技開放に必要な宝珠は5~20個)ほど余っている状態だ。

最高段階まで実装されているキャラクターが限られている天賦覚醒に対し、必殺技はレアリティを問わず多くのキャラクターに実装されている。未実装のキャラクターも存在するものの、アップデートのペースは速く、すべてのキャラクターが必殺技を使えるようになる日もそう遠くないはずだ。また、高レアリティキャラクターの必殺技が強力なことはもちろんのこと、状態異常の無効化など、低レアリティのキャラクターの必殺技にも有用なものが多い。起死回生を狙えるものもあり、リリース当初と比較して戦略の幅が大きく広がっていると言えるだろう。


これらのキャラクター育成要素が加わったことで、育てていたキャラクターたちを、より強化しやすくなっている。筆者は休止前、闘技大会でどうしても勝てない対戦相手がいた。しかし、追加されていた要素で軽くパーティを強化したところ、その対戦相手に見事勝利することができた。とはいえ、弱点をしっかり把握して戦略を立てつつ何名かが戦闘不能になっての勝利ではあったので、バトルの緊張感はきちんと残されていた。育てていたキャラクターが環境の変化に置いていかれることもなく、インフレ感もなかったのは、ひとえにバランス調整の巧みさと言えるだろう。

また、個人的に嬉しかったのが、旅団メンバー同士のショートイベントが追加されていたことだ。リリース時はメインストーリーやトラベラーストーリーの良さこそ感じていたが、ガチャで加入するメンバー同士のつながりは少し希薄な印象だった。しかし、復帰してみればキャラクター同士の掛け合いを描くショートイベントが実装されており、彼らの関係性を知ることができるではないか。掛け合いキャラクターを全員所持していなくとも、トラベラーストーリーの序章を見ていればイベントを読めるのも良い。キャラクターを大切にしていることが感じられ、これからも応援したい気持ちになった。


おわりに

ここまで『大陸の覇者』が年末年始におすすめできる理由を語らせていただいた。スマートフォン向けシングルプレイRPGとして、じっくりと腰を据えて遊べる本作。ゲーム内で確認したところ、メインストーリー3節を中盤までクリアした筆者の現在のプレイ時間は110時間ほどだった。大ボリュームのメインストーリーを、年末年始にたっぷりと堪能しよう。『オクトパストラベラー 大陸の覇者』は、iOS/Android向けに基本プレイ無料で配信中だ。ダウンロードはこちらから可能である。


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Aki Nogishi
Aki Nogishi

ポストアポカリプスとドット絵に心惹かれます。AUTOMATONではFF14をメインに担当します。

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