AUTOMATONライター陣が選ぶ「ゲーム・オブ・ザ・イヤー 2020」

AUTOMATONライター陣が選ぶ「ゲーム・オブ・ザ・イヤー 2020」。今年はライター個人のGOTYだけでなく、AUTOMATON全体としてのGOTYも選定。



今年は各ライター・編集員の個人的なGOTYだけでなく、投票によるAUTOMATON全体としてのGOTYも選定した。選定方法としては、ライター・編集員で候補作品を募り、その中から選ぶよう、ライター・編集員が投票。一番票数の多い作品を、AUTOMATON全体のGOTYとみなした。

結果、僅差でGOTYに選ばれたのは『The Last of Us Part II』である。
投票用の候補作品リストは以下のとおり:

『The Last of Us Part II』
『サイバーパンク2077』
『ゴースト・オブ・ツシマ』
『ファイナルファンタジーVII リメイク』
『Hades』
『天穂のサクナヒメ』
『DOOM Eternal』
『龍が如く7 光と闇の行方』

以下、全体投票で選ばれた『The Last of Us Part II』について、ライター・編集員の短評を記していく。


――コントローラーを握る手に痛みを感じ、もう進めたくないと思えるほどのめり込んだ

私が続編に期待した展開が次々と裏切られた。圧巻のディテールで描かれた本作の物語を一言で表すとそうなる。と同時に、「ゲーム」という媒体でしかなしえない、脳に焼きつけられる革新的なディレクションであったと付け加えたい。本作以上にコントローラーを握る手に痛みを感じ、もう進めたくないと思えるほどのめり込んだ作品は他に存在しない。

by. Tetsuya Yoshimoto

――簡単には分類できない事柄が、複雑さをそのままに、これまでにないほど鋭く描かれていた。

おそらく「わかりやすさ」が優先され、これまで物語の中心になることができなかったキャラクター達がいたはずだ。本作では、そういった属性を持つ登場人物らこそが、ストーリーを動かしていたことが強く印象に残っている。キャラクターが、「普通でない」とされがちな性質について意味を求められることなく、ただ存在していた。本作に登場する人々を善と悪に分けることができないように、キャラクターそれぞれの個性についても、そのまま受け止めることしかできない。簡単には分類できない事柄が、複雑さをそのままに、これまでにないほど鋭く描かれていた。

by. Maho Ikemi

――ゲームを純粋な双方向メディアとしてフル活用した作品

私としては総合的な完成度が突出していることと同時に、ゲームを純粋な双方向メディアとしてフル活用した作品が、インディーではなくAAA級の予算と莫大な時間をかけて丁寧に制作され、大衆狙いの商品として世に出たこと。そして実際に高い評価を受けた事実を由来としてゲーム・オブ・ザ・イヤー 2020と認定したい。

昨年度から今年にかけてインディー含め既存IPに頼らない独自性の高いタイトルが人気を博している。本作は既存IP作品ではあるものの、エンターテイメント性を廃し表現としてゲームを使った人気作品として、この潮流の象徴となるゲームと言える。これが意味するところは、消費者のゲームに対する認識が変化したことと同時に、現在はいかに内容が実験的であろうとも、楽しさを提供するものでなくとも、クオリティの高さと宣伝さえ両立できればインディー・メジャーの括りなく多くの人間から評価される時代であるということだ。

by. Takayuki Sawahata

――並大抵の作品にはない、正と負の感情爆発

今年は「議論を巻き起こす大作」が多い一年であった。ゲーマーからの凄まじい反発やラブコールを生み出した「待望の期待作」たち。そんな中、ゲームの技術的な状態や企業対応というより、作品性起因でゲーマーから膨大なエネルギーと嵐のようなうねりを引き出したのが『The Last of Us Part II』であった。異様なほどの質・量で広がりを見せた、正と負の感情の爆発。それはゲーム・オブ・ザ・イヤーという、1年を代表するゲームを考える際に到底無視できない現象であった。

開発陣は、危ない橋を渡ることになると理解しながら、作品と向き合い、情熱を注ぎ、1作目のファンが求む「あるべき姿」に迎合するのではなく、作り手が「語るべき」だと信じる物語を追求した。賛否ある作品になると分かりつつ、一人でも多くのゲーマーが自分自身で体験して賛否を判断できるよう、アクセシビリティという観点でも入念なケアを行き届かせた。最良の状態で体験できるよう、ローンチ時点で技術的にもコンテンツ的にも妥協のない完成品として発売させた。そうして万全の状態で世に出たからこそ生まれた、ゲームが放つ熱量とゲームに触れた人々が放つ熱量の乗算的効果と反応。畏敬・興奮・憎悪。ゲームとしての仕上がりはもちろんのこと、並大抵の作品にはない感情爆発を招いた『The Last of Us Part II』が、2020年を代表するゲームとして選ばれることに異論はない。

by. Ryuki Ishii


以上、2020年のAUTOMATONゲーム・オブ・ザ・イヤーをお送りした。2020年はコロナ禍の影響もあり、イレギュラー続きの年になった読者の方も多いと思われる。そうした中でも、こうした年末記事が、1年のゲーミングライフを振り返るきっかけに少しでもなれば幸いである。



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