今年一番の短編ゲームはどれ?AUTOMATONライター陣が、2019年短くも心に残った作品を振り返る

今年2019年を振り返る、AUTOMATONの年末企画第2弾。今回は、2019年に発売されたゲームの中から、プレイ時間こそ短かったものの、満足できた、もしくは心に残ったという、各ライターのベスト短編を選出していく。

(年末企画第1弾、今年一番やりこんだゲーム編はこちら

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『198X』

小さい頃は、人生はもっと簡単だった-ー『198X』より

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開発元:Hi-Bit Studios 販売元:Hi-Bit Studios
対応機種:PC
初回プレイ時間: 1時間

アーケードゲームに魅了された青年の物語を描く『198X』は、ナラティブなアドベンチャーゲームだ。本作の主人公Kidは、寂れた郊外に住んでいる。家族とともに暮らし、何不自由ない生活を送る毎日。しかし青年は、辟易していた。そう、代わり映えのない日常に。本作ではこういった具合に、青年の独白を通じて物語が進行する。若さゆえの苦悩、葛藤、そして行き場のない感情。誰にでもあったであろう繊細な時期が、精細なピクセルアートとともに語られていく。それはノスタルジックでありながらどこか美しい。

丁寧に作られたアーケードゲームも本作の魅力のひとつ。主人公の青年は、心の拠り所として一軒のゲームセンターを見つける。やがてゲームだけが自らを別世界へ連れていってくれる存在だと気付く。その過程でプレイヤーも、ジャンルの異なる5つのゲームをプレイすることとなる。どのゲームも単体作品として成り立つレベルに達しており、非常に遊びごたえもある。とは言っても、プレイできるのはわずか1ステージほど。ゲームが終われば、再び青年の独白へと移る。この手法はまるで、退屈な日常と、刺激的な非日常を対比しているかのようだ。そしてその時、プレイヤーは気付くだろう。ゲームに魅了されたのは、他の誰でもない自分自身だということに。

by. Nobuya Sato

 

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『シロナガス島への帰還 完全版』

ーー珠玉のミステリーアドベンチャー

開発元:旅の道 販売元:旅の道
対応機種:PC(BOOTH/DMM/Steam版は来年2月に発売予定)
初回プレイ時間:6時間+2時間

シロナガス島への帰還 完全版』は、2019年夏に開催されたコミックマーケット96にて頒布されたクリック型短編ミステリーサスペンスADV。『シロナガス島への帰還』に、エクストラシナリオとしてクリア後の後日談を追加した完全版だ。

主人公は、ニューヨークに住む私立探偵池田戦と、完全記憶能力を持つ反面極度のコミュ障を抱える目隠れ少女・出雲崎ねね子の2人。自殺した富豪の娘から遺書に記されていたシロナガス島の調査と、死の真相の究明を依頼され、2人は絶海の孤島シロナガス島へと赴き、クローズドサークルと化した島で事件に巻き込まれていく。奇妙な仕掛けのある館。島に隠された陰惨な秘密。怪物。それぞれ思惑を持つ、怪しげな登場人物たち。発生する殺人事件。探偵と助手の少女は、シロナガス島の秘密にまつわる殺人事件と対峙し、その真相へと迫っていく。本作の特徴は、ミステリーとして上質な物語が紡がれているのはもちろん、演出にも力が入れられていることだ。犯人当てや、爆弾解体など時間制限付きのイベント。ふとした瞬間にやってくるホラー表現。表情豊かなキャラクターたち。これらの演出がゲームプレイに彩りを加え、プレイヤーをシロナガス島へと誘う。プレイ時間は6時間だが、映画を1本見るような感覚で一気にプレイできる作品だ。価格は500円と実際安いので、興味を持った方はぜひプレイしてみて欲しい。

またエクストラシナリオは、漂着した島を舞台に繰り広げられるなんでもありのホラー・コメディ。焚き火を囲んで語られる怪談や宇宙人、ヒロインたちの嘔吐シーンもあり、本編後に軽く読むのにぴったりの物語になっている。

by. Keiichi Yokoyama

 

『The friends of Ringo Ishikawa』

ーーコントローラーで読み取る青春の光と影

開発元:yeo 販売元:yeo
対応機種:PC/Nintendo Switch
初回プレイ時間:約7時間

ジュブナイルという題材は、ゲームのみならず、古今東西、あらゆるメディアの上で語り継がれてきた。だがあえて「語らない」ことにより、青春の光と影とを描ききった傑作がある。『The friends of Ringo Ishikawa』。なんとロシアのスタジオによって制作されたこの青春群像劇は、日本特有の不良文化「ヤンキー」の美学をコミックや映画、「くにおくん」などを下地に見事再現していることそれ以上に、ゲームシステムを用いて文学を書き下ろすという、私が未だ観たことのないノベライズのあり方を見せてくれた。

本作は勉強、喧嘩、買い食い、ゲーム、読書、筋トレ、アルバイト、さまざまなアクションを通じてパラメータを向上させることが可能であるが、実のところ全くの無意味である。何故なら主人公「石川倫吾」自身に、これらを行う明確な動機や最終的な目標が存在しないからだ。しかし同時に、この一貫性の無いゲームプレイが倫吾というキャラクターに多様な側面を与えている。またいわゆる「効率の良い」ゲーム進行の形を取ろうとすると、せっかくの自由が規則的なルーティンになってしまう。やがてやることがなくなる。――ひょっとするとクラスの友人と語らう方が楽しいのでは――そんな疑念を振りほどきながら惰性で日々を過ごす事になる。ここに「各々将来を見出したマブダチの動向がイベント以外で知らされない」という演出が組み合わさるのだ。友人たちがどこか見果てぬ場所で足掻き、もがき苦しんでいる間、倫吾は数エリアで出来た地元という自分の世界に引きこもり、気晴らしに喧嘩を売ることしかできない。彼はずっと目をそらし続ける。世界の外側と、永遠の非実在。夢なんて無い。大人になんかなりたくない。だがモラトリアムは突然の終わりを告げる。『The friends of Ringo Ishikawa』は、本年度マスターピースの一作である。

by. Takayuki Sawahata

 

『Untitled Goose Game』

ーーいたずらガチョウのやさしい喜劇

開発元:House House 販売元:Panic Inc.
対応機種:PC/Nintendo Switch/PlayStation 4/Xbox One
初回プレイ時間:3時間30分

名も無きガチョウが、あの手この手のいたずらで村人を困らせるパズルアクションゲーム。ガチョウがガァガァ鳴きながら、目的地に向かうついでに「ToDOリスト」という名のいたずら計画をこなしていく。農園のおじさんを濡らすため、紳士を裸足にするため、内気な男の子に違うメガネをかけさせるため、住民たちの行動を観察し、いたずらの手口を考え、実行に移す。ときに羽ばたき、ときに盗み、ときに器物を損壊しながら。こんなにしつこく日常生活を妨げてくるガチョウがいたら、村から追放されてしまいそうな気もするが、この平和なスラップスティック村の住民はとにかくやさしい。いたずらがうまくいかないからといって何度ちょっかいを出そうと、始末されることはない。敷地から追い払われるくらいで済む。ゆえに大きなストレスを感じさせず、緩やかな緊張と緩和で癒してくれる。

ほっこりするだけでなく、インタラクティブなコメディ体験としても秀でているように感じた。作り手から遊び手への一方通行な笑いではなく、ゲーム全体を通してプレイヤーが舞台の上に立ち、意識的に行動を起こし、台本を探り当て、いたずらという行為の成功あるいは失敗に向けて軽やかな喜劇の主役を演じれる。誰でも遊べるカジュアルなゲームでありながら、ゲームならではのインタラクティブ性をまじえたコメディで微笑ませてくれる。思い返すと筆者は、昨年の同企画にて『Genital Jousting』のストーリーモードを選出していた。小難しいことは抜きにして、癒される短編コメディが好きなのだろう。

by. Ryuki Ishii

 

『A Short Hike』

ーー優しさで包み込む小さなオープンワールド

開発元:adamgryu 販売元:adamgryu
対応機種:PC
プレイ時間: 1時間10分

『A Short Hike』のトレイラーを見た時、映像を視聴しているだけであるにもかかわらず、形容しがたい感情に包まれたことは今でも覚えている。そして、ゲームをクリアした時には、泣きたい気持ちを抱いたことも覚えている。実際のところ、ちょっぴり涙が出てしまっていた。感動の物語があるわけでも、誰かが死ぬわけでもない。しかしながら、涙が頬を伝っていた。それは『A Short Hike』が強烈なほどの優しさでプレイヤーを包み込むゲームであるからに他ならない。

『A Short Hike』は、こぢんまりとした島を舞台としたオープンワールド型のアドベンチャーゲームだ。心優しく、心優しいからこそすぐに疲れてしまう女の子の鳥Claireとして、「誰か」に連絡するため、携帯の電波の入る場所に行くため山を登っていく。本作は題名のとおり、ちょっとしたハイキングを楽しむ作品だ。デコボコな山道をのぼっていくのもいいし、海に浸かり泳ぐのもいい。道中の鳥たちを助けたり、小銭を拾うのもいい。羽を広げて飛んでみるのもいいだろう。選択肢は幅広いが、何をしていても心地よさを感じられるのが本作の魅力。ローポリゴンで彩られる牧歌的なビジュアルと、アコースティックギターやピアノをまじえたBGMで、居心地の良さを提供する。Claireを動かす操作感は、挙動を含めて気持ちよく、何をしていても一定の心地よさを感じられる。雰囲気やストーリーだけでなく、テキストにシステムにゲームデザイン。すべてが優しい。小さな体と大きな心で、プレイヤーを抱きしめるのが『A Short Hike』なのだ。

ゲームとして目新しい部分はまったくといってない。極端にいえば、山を歩き小銭を集めて、より高い場所に行くために、羽を集めるだけのアドベンチャーゲームである。しかしながら、優しさによって個性を際立たせる『A Short Hike』。プレイ時間は70分程度であるが、プレイしている時間、筆者は優しさに包まれ、確かな幸福を感じていた。

by. Minoru Umise

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