今年一番お得だったゲームは何か?AUTOMATONライター陣が選ぶ「ベストコスパゲーム」
今年2018年を振り返る、AUTOMATONの年末企画第一弾。「コストパフォーマンスがよかったゲーム」が何かというのは、ゲーマーにとってどこか気になるものではないだろうか。長く遊べるゲームが必ずしも優れているとは限らないが、少なくとも長く遊べるゲームというのは、それだけプレイヤーを引き付ける理由があることを意味する。どれくらいの金額でゲーム本体もしくはゲーム内アイテムを購入して、どれくらい遊べたかというのは、個人として2018年を振り返る上でも興味深いトピックだろう。年間ベストと重なる部分もありながら、また違った切り口で評価するライター陣たちの「ベストコストパフォーマンスゲーム」を紹介したい。
【UPDATE 2018/12/30 9:30】
各タイトルの対応プラットフォームを追記
「気持ち良い」の裏にあるもの
『Dead Cells』
購入価格: 2480円 / プレイ時間: 190時間以上
対応プラットフォーム: PC/PlayStation 4/Xbox One/Nintendo Switch
マイNintendo Switchのプロフィールを見てみると、『Dead Cells』のプレイ時間が190時間以上とダントツだった。ローグライト&メトロイドヴァニアの「ローグヴァニア」なる2Dアクションゲームである。今年の8月7日に発売されたことを考えると、毎日1時間以上はプレイしていた計算になり、買い切り2480円の元は十分過ぎるほど取ったと言えるだろう。とうにすべての難易度でクリアし、現時点のバージョンでアンロックできるものは解放し尽くしており、残る新鮮な要素というとデイリーチャレンジくらい。要するに、もはや特に目的もなく何度も何度もプレイし続けているわけである。
元々リプレイ性の高さを特徴とする作品で、たとえば幅広い要素におけるランダム性の高さが、それに寄与していることは間違いないだろう。ただ、個人的にはそれよりも「気持ち良さ」がカギとなっているように思う。壁を駆け登ったりドッジロールを駆使しての主人公の流れるようなアクションや、ハイペースなゲームスピード。また敵の攻撃の予備動作がはっきりしており、パリイにて形成逆転を狙いやすいのも気持ち良さに繋がっている。
さらに忘れてはならないのは「音」だ。高所からストンピングした際や、敵を斬ったり扉を蹴破った時、あるいはクリティカルが発生した際など、何気ないアクションから特に強調してほしい場面まで、さりげなく、しかし手応えの感じられる響きが返ってくる。細かいビジュアル的な演出と組み合わせていることも効果的。なぜ毎日毎日プレイし続けているのだろうかと考えを巡らせるなかで、複合的な要素のひとつとして音の重要性に気づかせてくれた作品である。
by Taijiro Yamanaka
あの名作RPGの続編? 正式リリースへの期待が高まる
『DELTARUNE』
購入価格: 無料 / プレイ時間: 5時間ほど
対応プラットフォーム: PC
『UNDERTALE』をクリアしたプレイヤー向けという注意書きと共に配信された無料デモゲーム。前作との繋がりは明言されていないが、前作と共通するキャラクターも多数い流ので『UNDERTALE』ファン必見の作品(作者のToby Fox氏曰く、厳密には別世界との事)。現時点ではプレイできるのは一章のみだが、さまざまな期待が膨らむゲームだった。章の最後には大ボスも待ち受けており、ストーリー的にもとても区切りの良いところまでプレイ可能となっている。衝撃のラストシーンは正式リリースが待ちきれなくなる事間違いなし。
今作では仲間キャラクターが増え、三人のパーティーバトルとなった。戦闘シーンの戦略性が増える事はもちろん、様々な場所で仲間同士の掛け合いを楽しめる点もポイントが高い。特筆すべきは隠しのやり込み要素。特定条件を満たせば裏ボスである、とある人物と戦う事ができる。その戦闘BGM「The World Revolving」は今作屈指の名曲。非常に難易度の高い戦闘シーンも相まって、これ以上ない盛り上がりを迎えるだろう。ネタバレが厳禁のゲームなので詳しく書けない事が残念だが、前作で大人気の某ボス戦を連想する出来栄えとなっている。
プレイ時間はやり込み要素も含めれば5時間ほど。だが、このゲームをただクリアさせただけで終わらせるのは非常に勿体無い。本作をプレイし終えたユーザーならば、このゲームに散りばめられた伏線の数々に気づいている事だろう。随所で見られ『UNDERTALE』の設定との差異、名前をアナグラムした際に見つかる意味深な暗示、キャラクターの不可解な行動……。製品版への想像を膨らませながら、これらの謎へ自分なりの回答を模索してみるのも面白い。これだけ多くの要素を秘めている作品を無料でプレイできるのだから、ベストコスパゲームは『DELTARUNE』を推したい。
by Naoya Ito
平成最後に現れた時間泥棒界のダークホース
『ダンジョンメーカー』
購入価格: 360円 / プレイ時間: 100時間以上
対応プラットフォーム: iOS/Android
2018年5月、突如話題になった『ダンジョンメーカー』によって私の時間はゴミになった。本作は、魔王となってダンジョンにモンスターやワナを配置し、ワラワラと迫りくる勇者を返り討ちにするローグライク・ダンジョンビルドゲーム。スマホで遊べる手軽さとちょっとエッチなドット絵も魅力だが、それに惹かれて手にとったプレイヤーの時間を、えげつないほど奪い取る中毒性がポイントだ。
本作では、ランダムな三択を繰り返して自軍を強化していくという、ローグライクを単純化しつつ中毒性だけを取り出したようなシステムが、『Slay the Spire』から引用されている。これが『巣作りダンジョン』のようなダンジョン育成ゲームにばっちりハマっていて、どのようなダンジョンを作り上げるかというマクロな戦略性と、その過程が毎回変わるランダム性によって、高いリプレイ性を生み出している。いま最善になるのはどの選択肢かを、一戦闘ごとに判断し、その繰り返しの果てに、魔王・モンスター・ワナのシナジーが機能してダンジョンがブン回るのを眺めるのはまさに快感である。しかも、新しいモンスター、武器などはプレイを繰り返すことによりランダムにアンロックされていくため、ゆっくりでありながらも着実に戦力は底上げされていく。「あともう1ターン」だけでなく、「あともう1周」のインセンティブまでもが高い。
結果、360円で買った本作で100時間以上はゆうに遊んでしまった。もはやコスパが良いというより時間泥棒である。戦闘速度を3倍にするアップグレードがどうしても獲得できず、それが本作と距離を置くきっかけになったが、もし引いていたらもっと凄まじい時間を溶かすことになっていた気がする。ちなみに、本作は今でも精力的なアップデートが続けられており、新キャラクター、新要素がどんどん追加されている。またちょっとやり始めてみようかな……。ああ年末年始が……。
by Takumi Kuriki
新印象派の絵画に、迷い込んでしまったかのような体験
『The Witness』
購入価格: 3980円 / プレイ時間: 150時間以上
対応プラットフォーム: PC/PlayStation 4/Xbox One/iOS/Android
クリアまでおおそよ50時間。何度か最初からやり直したので、合わせると150時間以上だろうか。浪費した時間に対し、筆者は一切の後悔はしておらず、むしろ未だにこの世界の虜だ。
『The Witness』は、一人称視点のパズルアクションゲームである。一筆書きのように、始点から終点までの正しい道筋を描くことで、パズルを解いていく。計700以上ものパズルの根底には、このようなシンプルで直感的なコンセプトがある。カーソルを動かして触覚的にパズルを解く楽しみ、島の至る所に存在する謎を解明していく喜びが、本作には溢れている。巧みに計算されたパズルと、ビジュアルデザインが見事にマッチしており、プレイヤーを飽きさせない。
ここまでの説明だと、一見すれば本作は「難解なパズルを解くカタルシスを得るゲーム」のように感じるかもしれないが、実は違う。ゲームを進めると判明するが、無響室で孤独に淡々と数式を解いているかのような、背筋が凍る体験がプレイヤーを待っている。要するに、ただのパズルゲームではない。
『The Witness』は、「謎」に満ちたゲームだ。プレイ時間が150時間を超えた現在も、未だ「謎」だらけである。製作者のJonathan Blow氏は、芸術への偏執さで有名だが、本作はその考察が大いに現れた作品ではないかと思う。まさに、数学的な考えのタイプの人が作ったようなゲームでありながら、ミニマルなゲームによくある「気取り」がない。本作は、徹底して抑制的であり、画家のジョルジュ・スーラの作品のような、新印象派の美しさ・薄情さが同居しているかのようだ。このような点からも、唯一無二のゲーム体験だったと思うし、このゲームでしかできない体験もあると思う。お値段以上の作品だ。
by Yu Naganeo
死と隣り合わせの冒険に出よう
『The Bard’s Tale Trilogy』
購入価格: 1520円 / プレイ時間: 35時間以上
対応プラットフォーム: PC
筆者はダンジョンRPGが大好きである。新たなダンジョンRPGが世にリリースされると聞けば飛びつかずにはいられないという半ば中毒のような状態で長らく時を過ごしている。そんな筆者が選ぶのはもちろん、販売開始前からストアページに張り付いて購入した『The Bard’s Tale Trilogy』だ。
「バーズテイル」を御存知ない方も多いと思うので、軽くどのようなゲームか触れておこう。とはいえ説明は簡単だ。『ウィザードリィ』を思い浮かべて頂ければ、ほぼ正解である。すなわち自分が作成した冒険者たちでパーティを組み、ダンジョンを探索。モンスターの群れを倒して未知のアイテムを獲得し、鑑定結果に一喜一憂する。ただし本作独自の要素も非常に多い。パーティの最大人数は8人で、モンスターもメンバーにすることもできる。また、メンバーが死亡しても復活に失敗することはない。しかしそこでヌルゲーだと判断するのは早計である。本作はHP回復手段が貧弱で、寺院での高額な治療がメインとなっているからだ。他にも色々と過酷な要素があり、ウィザードリィとは異なるベクトルでのシビアな冒険を楽しめるのだ。
本作のコスパの良さは、単純に三作セットだから……という点は勿論ある。価格1520円ということは、一作あたり500円弱だ。一方で、最初のシナリオをクリアするのに筆者は35時間かかった。二本目のシナリオは未クリアだが、野外マップの追加により半オープンワールドのようになっており、恐らくは一作目と同等かそれ以上の時間がかかることだろう。それが三本である。もちろん『ウィザードリィ』同様に、レアアイテム集めやキャラクター育成も楽しめる。さらに実装は延期されてしまったが、レガシーモードの搭載も予定されている。過去に原作をプレイしたことがある方は懐古にひたりながら、プレイしたことがない方も現在と比較して進化に驚きながら楽しめるはずだ。すなわち、一粒で二度おいしい作品なのである。ヌルいダンジョンRPGには飽き飽きだ!という方には、是非チェックして頂きたいところだ。
by Kouzou Suzuki
迷いから生まれる中毒性のサイクル
『Hollow Knight』
購入価格: 1480円 / プレイ時間: 80時間以上
対応プラットフォーム: PC/PlayStation 4/Xbox One/Nintendo Switch
筆者が本作をクリアするまでにかかった時間はおよそ22時間。真エンド達成までの時間は約50時間、追加要素を遊び尽くして計80時間超。なぜここまで長い間プレイできたのかといえば、探索の面白さとさまざまな収集要素、そしてやりごたえ抜群のボス戦。『Hollow Knight』という作品が、高難易度メトロイドヴァニアとして完成されすぎているからだと言える。
具体的な要因を上げるなら「トラップ満載なダンジョンの中を強制的にさまようことになる」システムデザインだ。ダンジョン探索には地図がつきものだが、本作の地図はプレイヤーが書き込む方式をとっているばかりか、地図自体も簡単に入手することはできない。そのため、やっとの思いで地図を手に入れ眺めた時、思い通りに動けないストレスからの開放と埋まってない部分の多さからくる驚きによって、プレイヤーは探索欲求を自然と刺激されてしまうのである。
探索の果てに相まみえるボスの面々はこれまた非常に戦っていて楽しい。どのボスも、初見では先ず撃破できないような殺意でもってプレイヤーを殺しに来るが、必ず攻撃の合間合間に短いながら隙が存在し、かわせないような攻撃も、何度も練習すれば、必ずかわすことができる丁寧なつくりになっている。ボスを倒すと主人公を強化できる装備品が貰え、さらなるダンジョン探索が可能となる。
迷いながらもダンジョンを探索し、ボスを倒し、さらにダンジョンの奥地へ進むというサイクルはプレイヤーに対し圧倒的な中毒性を生み出す。そのサイクルの中で与えられる物語の断片と美しいアートワークは、もっと知りたい、見たいという欲求からその中毒性を加速させる。
私が若しこのゲームの製作者に出会えたとして、先ず伝えなければいけないのは謝罪の言葉だろう。1480円という値段相応のクオリティだと先入観をもっていた自分を恥じたい。本来ならこの作品は倍額以上の価値のある作品だ。それをこの価格で提供するという行為に対し敬意を表する。
by Takayuki Sawahata
圧倒的資金力・運営力に支えられたエンタメモンスター
『フォートナイト バトルロイヤル』
購入価格: 基本プレイ無料(ゲーム内購入 月4000円) / プレイ時間: 300時間以上
対応プラットフォーム: PC/PlayStation 4/Xbox One/Nintendo Switch/iOS/Android
本企画の趣旨からしてリプレイ性の高いインディーゲームを選出すべきなのだが、筆者の年間プレイ時間が最も長いのは『フォートナイト』。本作に言及しないまま年を越すわけにはいかないだろう。個人的にはゲーム内での支出額を踏まえても十分にコストパフォーマンスの高い作品と言えるため、この部門にエントリーさせていただく。
同作は2017年に発売された作品ではあるが、真価を発揮したのは2018年に入ってから。圧倒的な資金力と運営力を武器に、年間を通じてプレイヤーに新しい話題や刺激、遊び方を届け、同時に偶然性を廃した課金制度により購買欲を程よく煽ることで、一大エンタメモンスターへと成長を遂げた。
2018年、ゲーム業界ではバトルロイヤル戦国時代が訪れるかと思いきや、インディーバトロワの多くはスタートダッシュに失敗。蓋を開けてみると競争相手の殆どは戦うまでもなく淘汰されていった。そんな中、『フォートナイト』はもはや他社では対抗のしようがないアップデート速度と頻度により新しいコンテンツを世に送り出し続けている。いつ戻ってきても新鮮味のある体験が待っていて、それらを無料で遊べるというのは驚異的である。
筆者個人としては、プレイ時間の大半を通常ソロモードに割いている。自分だけの力で勝利を掴むというのは、何度経験しても大きな喜びが伴うものだ。ただ筆者は序盤から激戦区に突撃するのが苦手。過疎エリアで効率よく物資と建築素材を揃えていくことを意識しながら遊んでいる。ゆえにシーズン毎のマップ変更でも、効率のよい新スポットを探すのが楽しみだったりする。フレッシュさを保つために新規マップを量産する必要はないと知らしめてくれたことも、本作の功績のひとつと言えるだろう。
by Ryuki Ishii
コストはお金だけじゃない
『Slay the Spire』
購入価格: 1580円 / プレイ時間: 50時間以上
対応プラットフォーム: PC
『Slay the Spire』は、非常に価値あるゲームだった。1580円という価格で50時間遊べたというのは確かにコスパが高いが、その数字自体に特筆すべきものはない。今や無料で何十時間も楽しめるゲームは珍しくなく、よりコスパが高い作品は探せばいくらでも見つかる時代だ。『Slay the Spire』が特別な理由は、生活にフィットしてくれたからだ。
2018年はありがたいことに多忙な日が続き、22時や23時に帰宅するという生活がもっぱらだった。食事をして湯船に浸かると、残された自由時間は長くない。就寝しなければ明日がもう迫ってくる。個人的には、そういった状況で大作ゲームを始めるのは難しいと感じた。没入感が強い半面、エネルギーを使うし、カットシーンの途中にタイムアップがくることもあり、あまり融通が効かない。休日に遊ぶのに適している。では平日に何をするか。『Slay the Spire』はそんな時間枠の中でうまく機能してくれた娯楽なのだ。
ゲームを立ち上げればクラスを選び、ダンジョンに潜る。カードを選択する形式の戦闘は、集中力はそれほど要さないが、それなりに思考力を使う必要がある。戦闘ごとにカードが落ち、レリックが入手できるなどランダム性が高いので、刺激が多い。なんとなーく遊べながらも刺激的な体験も味わえるというのは、疲れた人間にとっては心地よいのだ。中断し途中から再開することも支障ない。死んでしまったなら、そこで終われば良い。結果的に自分のライフスタイルにちょうどフィットしたゲームだったといえる。短時間といえど、ゲームしてから寝られるかどうかという点は、1日の生活の充足感を左右する。始めやすく終わりやすい、それでいて長く遊べる『Slay the Spire』はたとえ多忙な時でも生活を豊かにしてくれた。安価でありつつ、短時間でも遊べる満足度の高い作品であったのだ。
by Minoru Umise